暗記が苦手な人に共通する「覚え方」のクセ
暗記が苦手な人の多くは、同じ方法をひたすら繰り返しています。単語帳を眺める、ノートに10回書く、赤シートで隠して読む。どれも間違いではありませんが、意味のない文字の並びをそのまま覚えようとする点で、脳にとってはかなり負担の大きいやり方です。
記憶術に共通する考え方はシンプルです。覚えたい情報を、すでに知っている何かと結びつける。音が似ている言葉、知っている単語のパーツ、頭に浮かぶ映像、よく知っている場所。結びつける先があると、思い出すときの「手がかり」が増えます。
ただし、記憶術は「一度使えば一生忘れない魔法」ではありません。覚える入口を作る道具であって、そのあと何度か思い出す練習(復習)をすることで、はじめて定着します。この前提を押さえたうえで、4つの方法を見ていきましょう。
ポイント:暗記の苦手さは「才能」より「道具の数」の問題であることが多い。使える道具を増やせば、単語ごとに覚えやすい方法を選べます。
4つの記憶術・使い分け早見表
まずは全体を比べてみます。
語呂合わせ
- 向いている単語:つづりや音と意味にまったくつながりが見えない単語、何度やっても覚えられない「天敵単語」
- 強み:一度ハマると思い出すスピードが速い。テスト本番でパッと出てくる
- 弱み:語呂を1つずつ作るのに時間がかかる。語呂だけで終わると、発音やつづりがあいまいになりやすい
語源
- 向いている単語:pre-、con-、-tion など、パーツに分けられる長めの単語。とくに高校〜大学入試レベル
- 強み:1つのパーツを覚えると、仲間の単語までまとめて覚えられる。知らない単語の推測にも使える
- 弱み:短い基本語や、由来と今の意味が離れた単語には使いにくい
イメージ(キーワード法)
- 向いている単語:具体的なもの・動作をあらわす名詞や動詞
- 強み:絵や場面で覚えるので、印象に残りやすい。英語の音に似た日本語(キーワード)と意味をつなげて1つの映像にする「キーワード法」は、外国語の単語学習で古くから研究されてきた方法です
- 弱み:抽象的な単語(theory、value など)は映像にしにくい
場所法(記憶の宮殿)
- 向いている単語:順番ごと覚えたいリスト、テスト範囲の単語をまとめて覚えたいとき
- 強み:自宅や通学路など、よく知っている場所に単語を置いていくので、順番も含めて思い出しやすい。古代ギリシャ・ローマの弁論術の時代から使われてきた伝統的な方法です
- 弱み:準備に少し手間がかかる。一語一語の意味を深く理解するのには向かない
ポイント:迷ったら「分解できる→語源」「分解できない→語呂かイメージ」「リストごと→場所法」と覚えておけばOKです。
同じ単語を4つの方法で覚えてみる
使い分けの感覚をつかむために、実際に単語を覚えてみましょう。ここで紹介する語呂やイメージは、この記事のために作った例です。
語源が得意な単語:transport(輸送する)
trans-(向こうへ)+port(運ぶ)。「向こう側へ運ぶ」から「輸送する」。port を知っていれば、import(中へ運ぶ=輸入)、export(外へ運ぶ=輸出)、portable(運べる=持ち運びできる)まで一気に覚えられます。
語呂が得意な単語:abundant(豊富な)
語源(ラテン語の「あふれ出る」に由来)もありますが、パッと思い出しにくい人は語呂で。たとえば「あ、ばんだんと(番台と)豊富に並ぶお菓子」のように、音と意味を無理やりでもつなげます。少しばかばかしいくらいのほうが記憶に残ります。
イメージが得意な単語:carpenter(大工)
「カーペンター」の音から「カーペットをペンで打ちつける大工さん」の場面を思い浮かべます。音(キーワード)と意味を1枚の絵にするのがキーワード法です。
場所法が得意な場面:テスト範囲の10語
玄関・下駄箱・廊下・トイレ・洗面所……と、自宅の場所を10か所決めておきます。玄関には「巨大な ladder(はしご)が立てかけてある」、下駄箱には「靴が全部 disappear(消えている)」のように、単語を1か所ずつ置いていきます。テスト中は、頭の中で家を歩けば順番に思い出せます。
ポイント:1つの単語に1つの方法、と決めつけなくて大丈夫。語源で理解して、語呂で思い出す、という「合わせ技」もよく効きます。
暗記が苦手な人向け・1週間の練習メニュー
いきなり4つ全部を使いこなす必要はありません。1日1つずつ試して、自分に合う方法を見つけましょう。
- 1日目(語源):単語帳から、pre-、re-、con- などで始まる単語を3つ選び、パーツに分けて意味を説明してみる。
- 2日目(語呂):どうしても覚えられない単語を3つ選び、自分で語呂を作る。作れなければ、市販の語呂集を借りてもOK。
- 3日目(イメージ):具体的な名詞を5つ選び、それぞれ1枚の絵を思い浮かべる。簡単な落書きをしてもよい。
- 4日目(場所法):自宅の中で順路を決め、場所を5か所選ぶ。そこに単語を5つ置く。
- 5日目(復習):1〜4日目の単語を、何も見ずにテストする。どの方法で覚えた単語が一番残っていたかをメモ。
- 6日目(合わせ技):残りにくかった単語に、別の方法を足してみる(語源+イメージなど)。
- 7日目(まとめテスト):1週間分の単語を全部テストし、自分の「得意な記憶術」を決める。
この1週間で大事なのは、どの方法が自分に合うかを実験することです。人によって、語呂が一番しっくりくる人もいれば、語源のほうが納得して覚えられる人もいます。
よくある失敗と注意点
失敗1:語呂を作るのに時間をかけすぎる
1語の語呂に10分悩むくらいなら、その時間で10語を復習したほうが効率的です。自分で作るのが苦手な人は、すでに作られた語呂を使うのも立派な方法です。
失敗2:語呂や絵だけ覚えて、英語そのものを忘れる
語呂は思い出すための「きっかけ」です。最後は、英単語のつづりと発音、そして例文の中での使い方まで確認しましょう。たとえば abundant なら、The region has abundant water.(その地域は水が豊富だ)のように、短い例文で1回使っておくと安心です。
失敗3:語源をこじつける
それらしい由来を自分で作ってしまうのは危険です。語源は辞書で確認できたものだけを使いましょう。
失敗4:記憶術をしたら復習しない
どの記憶術も、復習なしでは少しずつ薄れていきます。覚えた翌日、数日後、1週間後に、答えを見ずに思い出してみる習慣とセットにしてください。記憶術は「覚えるスピード」を上げ、復習は「忘れにくさ」を上げる、と役割を分けて考えると整理しやすくなります。
自分に合う記憶術を、教材で加速させよう
1週間の実験で得意な方法が見えてきたら、その方法に合った教材を使うと一気に効率が上がります。
語呂が合う人には、入試頻出の単語を語呂でまとめた 「超絶ゴロ暗記 大学入試英単語500」(haradaeigo.com/studyhack/goro/) がおすすめです。自分で語呂を作る時間がいらないので、そのぶん復習に時間を回せます。
語源が合う人には、パーツごとに単語を整理した 「語源で覚える英単語」(haradaeigo.com/studyhack/gogen/) を。接頭辞や語根ごとにまとめて眺めると、「この単語もこの仲間だったのか」という発見が続きます。
そして、どちらのタイプの人にも便利なのが 英語語源辞典「AIはらだくん」(https://www.haradaeigo.com/gogen/) です。気になった単語を入れると、語源の由来やパーツを解説してくれるので、語源をこじつけずに確かめることができます。
今日やること
今日の単語学習で、一番覚えにくい単語を1つだけ選び、「語源・語呂・イメージ・場所」のどれで覚えられるか考えてみましょう。1語でいいので、方法を変えてみる。それが、暗記が苦手な自分を卒業する第一歩です。



