なぜ日本人はこの音が苦手なのか
日本語のラ行は、舌先を上の歯ぐきのあたりに軽く弾くように当てて出す音です。この音は、英語の L とも R とも少しずつ似ていて、どちらとも違います。そのため、日本語話者は L と R を「同じラ行の仲間」として処理してしまいがちです。
同じように、日本語には TH(/θ/ /ð/)や V(/v/)にあたる音がありません。そのため、think は「シンク」、very は「ベリー」と、日本語にある近い音に置きかえてしまいます。
人は、母語で区別しない音の違いを聞き分けるのが苦手になりやすいことが知られています。ただし、これは「一生聞き分けられない」という意味ではありません。口の動かし方を知り、自分で出し分けられるようになると、聞き分けも改善しやすいと言われています。
この記事では、次の順番で進めます。
- 口の形を知る(鏡を使う)
- 単語で出し分ける
- ミニマルペアで聞き分ける
- 文の中で使う
ポイント:苦手な音は「耳」だけで直そうとせず、まず「口」から攻めるのが近道です。
L と R:舌先がつくか、つかないか
L の出し方
舌先を上の前歯の裏のつけ根(歯ぐき)にしっかりつけ、舌の両脇から声を流します。舌先をつけたまま「ウー」と声を出すイメージです。単語の最初の L は、日本語のラ行より舌をつけている時間が少し長いのが特徴です。
- light、love、listen、long
語末の L(feel、school、milk)は「ウ」や「オ」に近い暗い音に聞こえることが多いです。milk が「ミウク」に聞こえるのはこのためです。
R の出し方
舌先をどこにもつけず、少し奥に引くか、軽く丸めます。唇は少し丸めて前に突き出すと出しやすくなります。「ウ」の口から始めて「ゥラ」と言うイメージです。
- right、road、read、really
聞き分けのヒント
R は、こもったような響き(ウの響き)が加わって聞こえます。L は、すっきり明るく聞こえます。
ミニマルペアで練習
1つの音だけが違う単語のペアを「ミニマルペア」と呼びます。
- light / right
- lead / read
- collect / correct
- glass / grass
- fly / fry
まずは鏡を見ながら、舌先がついているか確認して発音します。慣れたら、目を閉じて音声だけで聞き分けます。
ポイント:L は「つける」、R は「つけない・丸める」。迷ったら舌先の位置だけに集中しましょう。
TH:舌を歯の間から少し出す
TH には2種類の音があります。
- /θ/(息だけの音):think、thank、three、math
- /ð/(声が出る音):this、that、they、mother
どちらも口の形は同じで、舌先を上下の前歯の間に軽くはさむか、上の前歯の裏に軽く当て、そのすき間から息を出します。/θ/ は息だけ、/ð/ は声帯を震わせながら出します。
よくある置きかえ
- think → sink(「シンク」になってしまう)
- three → tree
- this → zis
S や Z は舌を歯の後ろに引っこめた音です。TH は舌を前に出す、と区別しましょう。
練習のコツ
鏡を見て、舌先がほんの少し見えるか確認します。大げさに舌を出す必要はありませんが、最初は少し大きめに出して練習し、慣れたら小さくしていくのがおすすめです。
ミニマルペア
- think / sink
- thick / sick
- three / tree
- mouth / mouse
- they / day
文の中の TH
実際の会話では、the、this、that、they、there などの /ð/ は弱く速く発音され、舌がほとんど出ないこともあります。まずははっきり出せるようにし、文の中では軽く触れる程度でOKです。
ポイント:TH は「舌を見せる音」。鏡で舌先が見えれば合格です。
V と B:上の歯で下唇にふれる
B の出し方
上下の唇を閉じて、パッと開きながら声を出します。日本語のバ行とほぼ同じです。
V の出し方
上の前歯を下唇の内側に軽く当て、そのすき間から声を出しながら息を流します。唇は閉じません。「ブ」ではなく、ブーンと震えるような音が続くのが特徴です。F(/f/)と同じ口の形で、声を出すと V になります。
- very、voice、visit、love、five
よくある置きかえ
- very → berry(ベリー)
- vote → boat
- vest → best
ミニマルペア
- very / berry
- vote / boat
- van / ban
- curve / curb
練習のコツ
V を練習するときは、下唇に歯が当たっているか指でさわって確認すると効果的です。また、「ヴヴヴヴ…」と音を伸ばせるかどうかでチェックできます。B は伸ばせませんが、V は伸ばせます。
ポイント:B は「唇と唇」、V は「歯と唇」。音を伸ばせるかどうかでセルフチェックできます。
文の中で使えるようにする練習と1週間メニュー
単語で言えるようになったら、文の中で使えるように練習します。自作の練習フレーズを紹介します。
- L/R:Really, the red lorry rolled along the long road.
- TH:I think these three things are worth thinking about.
- V/B:Very few visitors believe the view is better than the video.
ゆっくり正確に言えることを優先し、慣れたら少しずつスピードを上げます。
1週間メニュー(1日10分)
- 1日目:鏡を見ながら L と R の口の形を確認。ミニマルペア5組を各5回
- 2日目:TH の口の形を確認。think / sink など5組を各5回
- 3日目:V と B の口の形を確認。very / berry など4組を各5回
- 4日目:ミニマルペアを録音し、翌日聞き分けクイズにする
- 5日目:4日目の録音でクイズ。間違えたペアを重点的に練習
- 6日目:上の練習フレーズ3文をゆっくり→普通の速さで音読
- 7日目:好きな英語音声を聞いて、L・R・TH・V を含む単語を5つ書き出し、まねして言う
よくある失敗
- いきなり速く言おうとする:口の形が安定する前に速くすると、日本語の音に戻ってしまいます。
- 聞くだけで直そうとする:苦手な音は、まず正しく出す練習から。
- 全部を一度に直そうとする:1週間に1つの音に集中するほうが定着しやすいです。
- 完璧を目指しすぎる:多少の癖があっても、文脈があれば通じる場面は多いです。自信をなくさないことも大切です。
L/R や TH が完璧でなくても英語は通じます。でも、口の形を知っていると、聞き取りのときに「今のは R かも」と気づけるようになり、リスニングの精度も上がっていきます。



