発音記号を覚えるとなぜ得をするのか
英語は、つづりと発音が一致しないことが多い言語です。同じ ough でも、though、through、tough、cough で全部読み方が違います。つづりだけを見て発音を予想するのは、ネイティブにとっても簡単ではありません。
そこで役立つのが発音記号です。発音記号は「1つの記号=1つの音」というルールで作られているので、読み方さえ知っていれば、初めて見る単語でもおおよその発音がわかります。
発音記号を読めると何が変わる?
- 音声がない場面(紙の辞書、単語帳)でも発音を確認できる
- カタカナでは区別できない音(L と R、/æ/ と /ʌ/ など)の違いが目に見える
- 強勢の位置がわかる
- 発音の解説記事や動画の説明が理解しやすくなる
英語の辞書で使われているのは、国際音声記号(IPA)をもとにした表記です。辞書や出版社によって少し書き方が違うことがありますが、基本は共通しています。
ポイント:発音記号は暗記科目ではなく「道具」。よく出る記号から少しずつ使えるようにすれば十分です。
まずはここから:日本人が区別したい母音の記号
母音の記号は数が多いですが、日本人がまず区別したいのは次のグループです。
「ア」に聞こえる4つの音
日本語では全部「ア」ですが、英語では別の音です。
- /æ/:口を横に広げて「エ」と「ア」の中間。cat、apple、bad
- /ʌ/:口をあまり開けず、短く強い「ア」。cup、love、bus
- /ɑ/:口を大きく縦に開けた「アー」。hot(米)、father
- /ə/:力の抜けたあいまいな「ア」(シュワ)。about、banana の弱い部分
cap(/æ/)と cup(/ʌ/)、hat と hut は、この違いだけで意味が変わるペアです。
長い音と短い音
- /iː/:口を横に引いて長く。seat、sheep
- /ɪ/:力を抜いて短く、「イ」と「エ」の中間寄り。sit、ship
記号の後ろの ː は「長くのばす」という印です。ただし、/iː/ と /ɪ/ は長さだけでなく音色も違うことに注意しましょう。
- /uː/:唇を丸めて長く。food、pool
- /ʊ/:力を抜いて短く。good、book
二重母音
- /eɪ/:day、make(「エイ」)
- /aɪ/:my、time(「アイ」)
- /oʊ/:go、home(「オウ」。イギリス式の辞書では /əʊ/)
go を「ゴー」と伸ばすのではなく「ゴウ」と言う、というのは二重母音を意識すると自然にできます。
ポイント:「ア」の4兄弟と、長短のペア(iː/ɪ、uː/ʊ)を押さえるだけで、母音の見通しがぐっとよくなります。
子音の記号:アルファベットと違うものだけ覚える
子音の記号の多くは、アルファベットとほぼ同じ読み方です(p、b、t、d、k、g、f、v、s、z、m、n、l、r など)。覚える必要があるのは、見慣れない記号の数個だけです。
覚えたい子音記号
- /θ/:舌を歯の間に置いて息を出す。think、three
- /ð/:同じ形で声を出す。this、mother
- /ʃ/:「シュ」。she、fish
- /ʒ/:「ジュ」を柔らかく。television、usual
- /tʃ/:「チ」。church、watch
- /dʒ/:「ヂ」。job、bridge
- /ŋ/:鼻に抜ける「ン」。sing、thinking(g をはっきり言わない)
- /j/:「ヤ行」の音。yes、you(ジェイの音ではない!)
特に /j/ は要注意です。アルファベットの j と同じ形ですが、発音記号では「ヤ・ユ・ヨ」の音を表します。
r と l の記号
記号の上では l と r は別の記号なので、辞書で確認すれば迷いません。辞書によっては r を /r/ や /ɹ/ のように書き分けていることもあります。
ポイント:子音は「θ ð ʃ ʒ tʃ dʒ ŋ j」の8つを覚えれば、ほとんどの単語が読めます。
強勢記号と辞書の使い方
強勢記号の見方
発音記号の中にある ˈ(上のほうの縦線)は、その次の音節を最も強く読むという印です。ˌ(下のほうの縦線)は、2番目に強い音節を表します。
たとえば「情報」の information なら、辞書では /ˌɪnfərˈmeɪʃən/ のように書かれています。ˈ の後の meɪ が最も強く、ˌ の後の ɪn が2番目に強い、と読めます。
辞書によっては、強勢のある母音の上にアクセント記号(´)をつけるなど、書き方が違うこともあります。自分の辞書の凡例(はじめのほうにある説明ページ)を一度見ておくと安心です。
辞書を使った練習の流れ
- 新しい単語を見つけたら、まず発音記号を見て自分で読んでみる
- 強勢の位置を確認する
- 音声つき辞書なら音声を聞いて、自分の読みと比べる
- 違っていた部分(母音の種類、強勢の位置など)をメモする
アメリカ式とイギリス式
辞書によっては、アメリカ英語とイギリス英語の2通りの発音記号が載っています。たとえば hot はアメリカ式で /hɑːt/、イギリス式で /hɒt/ のように書かれることがあります。どちらか一方を基準に決めておくと混乱しません。
ポイント:新出単語は「記号を見る→自分で読む→音声で確認」の3ステップ。これを習慣にすると、単語の発音ミスが減ります。
カタカナ表記との違いを知っておこう
日本の学習者がよく使うカタカナ表記は便利ですが、限界もあります。
- light と right はどちらも「ライト」
- cap と cup はどちらも「キャップ/カップ」とあいまい
- think と sink はどちらも「シンク」
- 弱い母音 /ə/ を表す文字がない
カタカナで覚えた単語は、発音するときに日本語の音に置きかわりやすく、聞き取りのときも実際の音と照合しにくくなります。
とはいえ、カタカナを完全に禁止する必要はありません。初めのうちは「発音記号+カタカナの目安」をセットで使い、発音記号に慣れてきたらカタカナを減らしていく、というやり方がおすすめです。
自作例:発音記号で読んでみよう
次の単語を、発音記号だけを見て読んでみてください。
- /ˈwɔːtər/(water、アメリカ式の一例)
- /bɪˈliːv/(believe)
- /ˈkʌmfərtəbəl/(comfortable)
comfortable は、つづりからは想像しにくいですが、発音記号を見ると「カンフタボー」に近い音だとわかります。辞書によっては、真ん中の音節を省いた形も載っています。
1週間で読めるようになる練習メニューとよくある失敗
1週間メニュー(1日10分)
- 1日目:「ア」の4兄弟(æ、ʌ、ɑ、ə)の記号と例語を確認し、cap / cup など3組を音読
- 2日目:長短ペア(iː/ɪ、uː/ʊ)と二重母音(eɪ、aɪ、oʊ)を確認
- 3日目:子音8つ(θ、ð、ʃ、ʒ、tʃ、dʒ、ŋ、j)を例語つきでノートに書く
- 4日目:強勢記号の見方を確認し、カタカナ語になっている単語5つの記号を読む
- 5日目:単語帳から10語を選び、発音記号だけを見て読む→音声で確認
- 6日目:間違えた単語を再チェック。どの記号でつまずいたかメモする
- 7日目:記号を見ずに、例語から記号を書いてみる(想起練習)
よくある失敗
- 全部の記号を一度に覚えようとする:まずはよく出る記号だけ。使いながら増やしましょう。
- 記号を見るだけで声に出さない:発音記号は「読んで音にする」ためのもの。必ず声に出して練習しましょう。
- 辞書ごとの表記の違いに混乱する:自分がよく使う辞書を1つ決め、その表記に慣れるのが近道です。
- 音声を確認しない:記号と実際の音を結びつけるには、音声とセットで練習するのが確実です。
発音記号が読めるようになると、英語の音の世界がぐっとクリアに見えてきます。今日から、新しい単語に出会ったら「まず記号を見る」習慣を始めてみましょう。


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