見出しの気になる言葉スラング考現学 第39回
「上等界隈」が1位――11月は若者言葉ランキングの見出しが並ぶ季節
原田英語がお届けします
火曜日のコーナー「見出しの気になる言葉」…英字ニュースや新聞の見出しに出てきた、気になるスラング・新語を深掘り。記者はなぜその言葉を選んだのか。元の見出しへのリンクつき。 コーナー一覧
火曜日は「見出しの気になる言葉」です。この週末、ギャル雑誌eggの「egg流行語大賞2026」と、女子高生への流行語アンケートの結果が相次いで出て、ニュースサイトに「1位は〇〇」の見出しが並びました。1位の「上等界隈」とは何か。そして、当の高校生はこの手の見出しをどう読んでいるのか。英語の見出しともくらべます。
1週末のニュース欄に「1位は〇〇」がずらり
eggは11月1日、公式YouTubeチャンネルで「egg流行語大賞2026」のTOP10を発表しました。翌2日には発表資料が配信され、地方紙のサイトにも「1位は『上等界隈』」の見出しが載りました。
選び方は、egg・nuts・KOGYARUのモデルや読者、小学生から20代のギャルへのアンケートと、SNSの動きの調査です。調査は9月28日から10月2日にかけて行われました。2位がフレネミー、3位が「ばり気まずい」、4位がドパガキと続きます。
同じ週末には、女子高生の調査チームによるアンケート結果も出ました。こちらは「今年一番使った流行語」の1位が「滅」で、〇〇すぎて滅の形でおなじみの言葉です。見出しの数字が並ぶと、11月が来たなと感じる人もいるはずです。
21位の「上等界隈」はどこから来た?
上等界隈は、ちょっとヤンチャで押しの強い人や、そういうノリを指す言葉です。「あの子、上等界隈っぽい」のように、見た目やキャラを言うのに使います。悪口というより、強くてかっこいいという褒め寄りの響きです。
元になったのは、元ヤンキーの男女が共同生活をするNetflixの恋愛リアリティショー「ラヴ上等」。2026年8〜9月に配信されたシーズン2の出演者で、nutsモデルのるるさんの発信から広まりました。発表の動画にはるるさん本人も出演し、1位を喜んでいました。
後ろの「界隈」は、もとは「そのあたり」という意味の古い言葉です。今は「〇〇好きの人たち」「〇〇っぽい人たち」をくくる便利な型になっていて、界隈をつければ新しい仲間の呼び名がすぐ作れます。上等界隈は、その型に番組名をはめた形です。
3「使う言葉」と「見る言葉」は別もの
女子高生調査の見出しは、ドパガキを「使う言葉」ではなく「見る言葉」だったと伝えています。ドパガキは「ドーパミン中毒のガキ」の略で、短い動画をやめられない自分を自虐的に言う言葉です。
調査は10月20〜22日、女子高生94人に自由記述で聞いたものです。今年一番使った言葉ではドパガキは2位でしたが、「SNSで見るけど実際は使わない言葉」では1位、「大人には意味が伝わらないと思う言葉」でも27.7%で1位になりました。
使わない理由には「意味がしっくりこない」という声があり、調査をまとめた側は「ガキ」がきつく聞こえることも理由のひとつと見ています。流行語ランキングに入っていても、口に出して使われているとは限らない、という当たり前で見落としやすい点を、数字ではっきり見せた調査です。
4高校生の6割が「流行ってないけど…」
さらにもう1本、報道そのものに高校生がツッコむ調査も10月31日に発表されました。全国の高校生386人に聞いたところ、テレビやネットニュースの「若者に流行っている」という報道に「流行ってないけど…」と感じたことがある人は62.4%でした。
理由で多かったのは、紹介される流行がひとつ前のもので、もう終わっているという時間差の指摘です。ほかに「一部のSNSの流行を若者全体の流行として伝えている」「東京とほかの県で流行が違う」という声もありました。
一方で「ない」と答えた人からは、学校やSNSでふだん見ているものが紹介されている、知らないのは自分が知らないだけ、という意見も出ています。ランキングの見出しを見たら、誰に聞いた何位なのかまで確かめる。それが一番まちがいの少ない読み方です。
5英語の見出しは「解読」がお決まり
アメリカでも秋は若者言葉の記事が増えます。ただ、見出しの型が少し違います。日本は「1位は〇〇」とランキングで見せるのに対し、英語は Decoding(解読する)、translated(翻訳した)、explained(解説)のように、大人が子どもの言葉を読み解く形が定番です。
10月の「Decoding Gen Alpha」の記事が取り上げたのは、fair enough を縮めたfairs、偽物っぽい人を責める larping、huzz、unc、話を切り上げさせるfriesの5語でした。9月には若者のメンタルヘルスを担当する記者が「α世代と週末を過ごしたら通訳が必要だった」という体験記を書いています。
日本の見出しが「何が1位か」を知らせるのに対し、英語の見出しは「大人がついていけない」ことをネタにします。どちらも、言葉のすき間を埋めたい大人が読者だという点は同じです。
ランキングの見出しは、流行の地図のようなものです。誰が描いた地図かを確かめてから読むと、見え方が変わります。今月はこのあとも、流行語の発表が続きます。辞書にも少しずつ足していきます。
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