テクノロジー・未来

デマは真実より速く、遠くまで届く。プロが使う「横読み」でフェイクを見抜け

デマは真実より速く、遠くまで届く。プロが使う「横読み」でフェイクを見抜け

読む前に予想してみよう!

SNSでデマを広めているのは主にボットで、人間はあまり関係ない

研究カード(どんな研究?)
対象
X(旧Twitter)の投稿と一般のネット利用者
規模
約12万6000件の話題、約300万人/実験は数千人規模
研究の種類
大規模観察研究・比較調査・ランダム化実験
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

SNSでは偽ニュースの方が本当のニュースより速く広く拡散する、という大規模研究がある。プロのファクトチェッカーは記事を深く読む前に“横に”調べる。

ひとことで言うと怪しい情報は、その記事を読み込む前に「別のタブで調べる」のがコツ!

もくじ
  1. ウソは真実の6倍速い?
  2. プロは記事を“縦”ではなく“横”に読む
  3. 「本当かな?」と思うだけで効果がある
  4. まとめ

「拡散希望!」「これ本当にヤバい」――そんな言葉とともに流れてくるニュース。思わずリポストしたくなりますよね。

でも、ちょっと待ってください。SNSの世界では、ウソのニュースの方が、本当のニュースより速く・遠くまで広がることが、大規模な研究でわかっています。

しかも今は、AIで本物そっくりの文章や画像を一瞬で作れる時代。だまされないために、プロのファクトチェッカーが実際に使っている技を紹介します。

01ウソは真実の6倍速い?

なぜウソの方が広がりやすいのでしょう。研究者たちは、ウソのニュースの方が「目新しい」うえに、驚きや嫌悪感といった強い感情を呼び起こしやすいことを指摘しています。「え、マジで!?」と思った情報ほど、人は誰かに教えたくなるのです。

そして意外なことに、拡散の差を生んでいたのはボットではなく人間でした。ボットは本当の話もウソの話も同じくらい広めていたのです。

「驚き」をまとったウソは、確かめられた真実より先に走っていく。
「驚き」をまとったウソは、確かめられた真実より先に走っていく。

02プロは記事を“縦”ではなく“横”に読む

では、どうすれば見抜けるのか。米スタンフォード大学のサム・ワインバーグとサラ・マクグルーは、プロのファクトチェッカー10人と、歴史学の博士号を持つ研究者10人、スタンフォード大学の学生25人を対象に、ネットの情報をどう確かめるかを比べる調査を行いました(2019年に論文として発表)。

違いははっきりしていました。研究者や学生は、怪しいサイトを上から下までじっくり読んで判断しようとしました。ところがプロは、すぐに別のタブを開いて、「このサイトは誰が運営している?」「他の信頼できるところは何と言っている?」を調べたのです。

これが「横読み(ラテラル・リーディング)」。ページの中にどんなにもっともらしい説明があっても、それを書いた本人が「私は信頼できます」と言っているだけかもしれません。だから、外から確かめるのです。

03「本当かな?」と思うだけで効果がある

もう一つ、シンプルで効く方法があります。

2021年に Nature に発表された Pennycook と Rand らの研究では、SNSで記事をシェアする前に、「ニュースが正確かどうか」に注意を向けてもらうだけで、その後に質の高いニュースをシェアする割合が上がりました。多くの人は、ウソを広めたいわけではなく、正確さを考えるのをうっかり忘れているだけなのかもしれません。

また、デマでよく使われる「手口」(感情をあおる言葉、ニセの専門家など)を短い動画で先に知っておくと、だまされにくくなるという“予防接種”型の研究も、2022年にYouTube上の大規模実験で報告されています(Roozenbeek ら, Science Advances)。

04まとめ

SNSでは、驚きをまとったウソの方が速く、遠くまで届きます。そして広めているのは、私たち人間です。

だからこそ、シェアボタンを押す前の一呼吸と“横読み”。あなたのその一手間が、デマの連鎖を止める防波堤になります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 2018, researchers at MIT analyzed about 126,000 stories that spread on Twitter between 2006 and 2017. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 2018, researchers at MIT analyzed about 126,000 stories that spread on Twitter between 2006 and 2017. They found that false news was about 70% more likely to be retweeted than true news. True stories took about six times longer to reach 1,500 people.

The researchers believe false news spreads well because it feels new and causes strong emotions such as surprise. Bots were not the reason. They spread true and false stories equally, so the difference came from humans.

So how can we protect ourselves? A study by Sam Wineburg and Sarah McGrew found that professional fact-checkers do not read a suspicious website from top to bottom. Instead, they open new tabs to find out who runs the site. This is called lateral reading.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

2018年、MITの研究者たちは、2006年から2017年にTwitterで広がった約12万6000件の話題を分析しました。その結果、ウソのニュースは本当のニュースより約70%リツイートされやすいことがわかりました。本当の話が1500人に届くには約6倍の時間がかかりました。

研究者たちは、ウソのニュースがよく広がるのは、目新しく感じられ、驚きのような強い感情を引き起こすからだと考えています。ボットが原因ではありませんでした。ボットは本当の話もウソの話も同じように広めており、差を生んだのは人間だったのです。

では、どうすれば自分を守れるでしょうか。サム・ワインバーグとサラ・マクグルーの研究では、プロのファクトチェッカーは怪しいウェブサイトを上から下まで読まないことがわかりました。代わりに、新しいタブを開いて誰がそのサイトを運営しているかを調べるのです。これは横読みと呼ばれます。

4択リーディングクイズ

Q1. How much more likely was false news to be retweeted?

Q2. Why does false news spread well, according to the researchers?

Q3. What would a professional fact-checker most likely do with a suspicious website?

重要単語

  • misinformationC1
    名詞誤情報Misinformation spreads quickly on social media. mis-(誤って)+information。意図的な偽情報は disinformation と区別する。不可算名詞。
  • lateral readingC1
    名詞(句)横読みLateral reading means checking other sites first. lateral は「横の」。lateral thinking「水平思考」も同じ語。vertical(縦の)と対比。
  • fact-checkerB2
    名詞事実確認の専門家Fact-checkers open new tabs to verify a source. 動詞 fact-check。報道・SNSの長文で頻出。
  • noveltyC1
    名詞目新しさThe novelty of false news makes people share it. novel(小説/目新しい)の名詞形。nov-(新しい)= innovation と同語源。
  • accuracyB2
    名詞正確さThinking about accuracy helps people share better news. 形容詞 accurate。inaccuracy(不正確さ)も合わせて覚える。
  • retweetB1
    動詞・名詞リツイート(する)、再投稿False stories were retweeted more often. re-(再び)+tweet。現在の X では repost と呼ばれる。
  • suspiciousB2
    形容詞怪しい、疑わしいCheck who runs a suspicious website. be suspicious of ~「~を疑っている」。名詞 suspicion、動詞 suspect。

動画でもっと知る

SNSではウソのニュースの方が本当のニュースより速く遠くまで広がる、とMITの研究で判明。しかも広めていたのは主にボットではなく人間だった。プロのファクトチェッカーが使う「横読み」、覚えておきたい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Vosoughi, Roy & Aral (2018) The spread of true and false news online, Sciencedoi.org
  2. Wineburg & McGrew (2019) Lateral Reading and the Nature of Expertise: Reading Less and Learning More When Evaluating Digital Information, Teachers College Recorddoi.org
  3. Pennycook et al. (2021) Shifting attention to accuracy can reduce misinformation online, Naturedoi.org
  4. Roozenbeek et al. (2022) Psychological inoculation improves resilience against misinformation on social media, Science Advancesdoi.org