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光を当てるだけで水から燃料が出る。日本発の「人工光合成」は葉っぱに勝てるか

光を当てるだけで水から燃料が出る。日本発の「人工光合成」は葉っぱに勝てるか

読む前に予想してみよう!

植物の光合成は、太陽光エネルギーの大半を栄養に変えている

研究カード(どんな研究?)
対象
光触媒による水分解
規模
実験室の光触媒〜100㎡の屋外パネル
研究の種類
実験研究・実証試験
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

光で水を分解して水素を作る「人工光合成」。始まりは1972年の日本の発見。100平方メートル規模の実証も行われたが、効率とコストの壁はまだ高い。

ひとことで言うと葉っぱのマネをして、太陽の光で燃料を作る研究!

もくじ
  1. 始まりは1972年の「光で水が分かれた」発見
  2. 100平方メートルのパネルで水素を作った
  3. 葉っぱに勝てる? 効率のリアル
  4. 「二酸化炭素から燃料」の挑戦も
  5. まとめ

植物の葉っぱは、地球でいちばん身近な“化学工場”です。太陽の光と水と二酸化炭素から、栄養(糖)と酸素を作り出しています。

このすごい仕組みを人間の手でマネして、太陽の光で燃料を作ろうというのが「人工光合成」です。

しかもこの分野、出発点は日本の発見。光を当てるだけで、水から燃料がポコポコ出てくる――そんな夢の技術は、いまどこまで来ているのでしょう。

01始まりは1972年の「光で水が分かれた」発見

水(H₂O)を水素と酸素に分けられれば、その水素は燃料になります。燃やしても出てくるのは水だけ。太陽の光という“タダのエネルギー”で燃料が作れたら、まさに夢のような話です。

ちなみに、光触媒は今では、汚れがつきにくい外壁やガラスなど、身近な製品にも使われています。

02100平方メートルのパネルで水素を作った

その後、日本の研究者たちは光触媒を改良し続けました。

2020年には、信州大学の堂免一成らのチームが、特定の光(波長350〜360nmほどの紫外線)について、吸収した光の粒をほぼ無駄なく水の分解に使える光触媒を Nature に発表しました(Takata ら)。ただし紫外線は太陽光のごく一部なので、これだけで太陽光全体の効率が高くなるわけではありません。さらに2021年には、100平方メートルの光触媒パネルを並べ、屋外の太陽光で水素を作り続ける実証実験を報告しました(Nishiyama ら, Nature)。発生した水素と酸素の混ざったガスから、水素を安全に分けて取り出すことにも成功しています。

光触媒パネルに日が当たると、水から水素と酸素の泡が出てくる。
光触媒パネルに日が当たると、水から水素と酸素の泡が出てくる。

03葉っぱに勝てる? 効率のリアル

ここで気になるのが「効率」、つまり太陽の光のエネルギーのうち、何%を燃料に変えられるかです。

理論的な上限を見積もった研究でも、植物が太陽光を植物の体(バイオマス)に変える効率の上限は、条件のよい植物で4〜6%ほどとされます(Zhu ら, 2008)。

一方、100平方メートルの実証実験での太陽光→水素の変換効率は、最大でも約0.76%と1%に届きませんでした。実用化には、効率を何倍にも上げつつ、パネルを安く・大量に・長持ちさせる必要があります。

04「二酸化炭素から燃料」の挑戦も

人工光合成には、水素を作るだけでなく、植物のように二酸化炭素(CO₂)も材料にして、燃料やプラスチックの原料を作る研究もあります。成功すれば、空気中の温室効果ガスを“資源”に変えられるかもしれません。ただし、こちらも効率やコストの面で、まだ研究段階です。

05まとめ

人工光合成は、1972年の日本の発見から始まり、100平方メートル規模で水素を作れるところまで来ました。でも、効率もコストも、まだ“実用の入り口”の手前です。

いつか屋根の上のパネルから、電気ではなく燃料が生まれる日が来るかもしれません。葉っぱが何億年もかけて磨いた技に、人類はいま挑んでいるのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLeaves turn sunlight, water and carbon dioxide into sugar and oxygen. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Leaves turn sunlight, water and carbon dioxide into sugar and oxygen. Artificial photosynthesis tries to copy this process to produce fuel. The field began in 1972, when Akira Fujishima and Kenichi Honda of the University of Tokyo reported that shining light on a titanium oxide electrode split water into hydrogen and oxygen. Hydrogen is attractive because burning it produces only water.

Since then, Japanese researchers have improved materials called photocatalysts. In 2021, a team led by Kazunari Domen reported a 100-square-meter panel system that produced hydrogen outdoors using sunlight and safely separated it from oxygen. However, the panels converted only about 0.76% of solar energy into hydrogen at best. Making the technology efficient, cheap and long-lasting is still a major challenge.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

葉は太陽光、水、二酸化炭素を糖と酸素に変えます。人工光合成は、この過程をまねて燃料を作ろうとするものです。この分野は1972年に始まりました。東京大学の藤嶋昭と本多健一が、酸化チタンの電極に光を当てると水が水素と酸素に分かれることを報告したのです。水素は燃やしても水しか出ないので魅力的です。

それ以来、日本の研究者たちは光触媒と呼ばれる材料を改良してきました。2021年、堂免一成が率いるチームは、太陽光を使って屋外で水素を作り、それを酸素から安全に分離する100平方メートルのパネルシステムを報告しました。しかし、パネルが太陽エネルギーを水素に変換できたのは、最大でも約0.76%にすぎませんでした。この技術を効率的で、安く、長持ちするものにすることは、今も大きな課題です。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Fujishima and Honda report in 1972?

Q2. Why is hydrogen an attractive fuel?

Q3. What can we infer about the 2021 panel system?

重要単語

  • photocatalystC1
    名詞光触媒The photocatalyst splits water when light hits it. photo-(光)+catalyst(触媒)。catalyst は比喩的に「きっかけ・促進役」の意味でも入試に出る。
  • hydrogenB1
    名詞水素Hydrogen can be used as a clean fuel. hydro-(水)+-gen(生むもの)=「水を生むもの」。oxygen(酸素)も -gen 仲間。
  • efficiencyB2
    名詞効率The panel's efficiency was still below one percent. 形容詞 efficient(効率的な)。effective(効果的な)との区別が頻出。energy efficiency「エネルギー効率」。
  • scale upC1
    動詞(句)規模を大きくするScientists want to scale up the technology cheaply. at scale「大規模に」も合わせて覚える。反対は scale down。
  • photosynthesisB2
    名詞光合成Plants store sunlight as sugar through photosynthesis. photo-(光)+synthesis(合成)。synthetic(合成の)も同語源。
  • decomposeC1
    動詞分解するLight can decompose water into hydrogen and oxygen. de-(逆に)+compose(組み立てる)。「腐敗する」の意味でも使う。
  • fractionB2
    名詞ごく一部、分数Ultraviolet light is only a small fraction of sunlight. a fraction of ~「~のごく一部」。fracture(骨折)と同じく「割る」が語源。

動画でもっと知る

光を当てるだけで、水から燃料の水素がポコポコ出てくる——そんな「人工光合成」の出発点は1972年の日本の発見だった。100㎡のパネルで水素を作る実験にも成功してるらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Fujishima & Honda (1972) Electrochemical Photolysis of Water at a Semiconductor Electrode, Naturedoi.org
  2. Takata et al. (2020) Photocatalytic water splitting with a quantum efficiency of almost unity, Naturedoi.org
  3. Nishiyama et al. (2021) Photocatalytic solar hydrogen production from water on a 100-m² scale, Naturedoi.org
  4. Hisatomi & Domen (2019) Reaction systems for solar hydrogen production via water splitting with particulate semiconductor photocatalysts, Nature Catalysisdoi.org
  5. Zhu, Long & Ort (2008) What is the maximum efficiency with which photosynthesis can convert solar energy into biomass?, Current Opinion in Biotechnologydoi.org