宇宙・NASAビミョー

【逆転】金星では「1日」が「1年」より長い。しかも太陽は西から昇る

【逆転】金星では「1日」が「1年」より長い。しかも太陽は西から昇る

読む前に予想してみよう!

金星では太陽が西から昇る

研究カード(どんな研究?)
対象
金星の自転と大気
規模
1つの惑星(地上レーダー・探査機の観測)
研究の種類
観測+理論モデル
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

金星は自転1回に約243日、公転1周に約225日。自転で見れば1日は1年より長い。ただし日の出から日の出までは約117日。

ひとことで言うと金星はくるっと1回まわるのに、1年よりも時間がかかるよ!

もくじ
  1. 金星は「逆回転」している
  2. 「日の出から日の出」で数えると約117日
  3. 地面はのんびり、空気は猛スピード
  4. 地表は460℃超えの“灼熱地獄”
  5. なぜ逆回転なのか? まだ決着していない
  6. まとめ

「1日が1年より長い」。なんだかなぞなぞみたいですが、これは本当に存在する惑星の話です。舞台は、地球のおとなりの金星。

金星は、自分でくるっと1回転(自転)するのに約243日かかります。いっぽう、太陽のまわりを1周(公転)するのは約225日。つまり、自転1回のほうが公転1周より長い。これが「1日が1年より長い」の正体です。

……と言い切りたいところですが、実はこの話にはもうひとひねりあります。最後まで読むと、友だちにちょっと自慢できますよ。

01金星は「逆回転」している

太陽系の惑星の多くは、北極の上から見て反時計回りに自転しています。ところが金星は時計回り。いわば逆回転の惑星です。

そのため、金星の地表に立てたとすると、太陽は西から昇って東に沈むことになります。『天才バカボン』の主題歌で歌われた世界が、金星では現実なのです。

02「日の出から日の出」で数えると約117日

ここで、さっきの「もうひとひねり」です。

私たちが普段「1日」と呼んでいるのは、太陽が南の空に来てから、次にまた南に来るまでの時間です。これを太陽日(たいようじつ)といいます。

金星は、逆向きにゆっくり自転しながら、同時に太陽のまわりを公転しています。この2つの動きが組み合わさると、日の出から次の日の出までは約117地球日になります。

  • 自転1回(星を基準にした1日):約243日 → 1年(約225日)より長い
  • 日の出から日の出(太陽を基準にした1日):約117日 → 1年より短い

つまり「1日が1年より長い」は、どちらの「1日」で数えるかによって答えが変わる、というわけです。だから判定は「ビミョー」にしました。

自転と公転の組み合わせで、金星の「日の出から日の出」は約117日になる
自転と公転の組み合わせで、金星の「日の出から日の出」は約117日になる

03地面はのんびり、空気は猛スピード

金星の地面はのろのろ回っているのに、上空の雲は約4日で金星を1周するほどのスピードで流れています。この現象をスーパーローテーション(超回転)と呼びます。地面よりも空気のほうが何十倍も速く回っているなんて、不思議ですよね。

日本の金星探査機「あかつき」は、この大気の謎を調べるために2015年から金星を周回して観測を続けました。北海道大学の堀之内らは2020年、学術誌『Science』で、あかつきの観測データから、太陽の加熱で生じる大気の波「熱潮汐」が、低緯度の雲の層の上部へ勢い(角運動量)を運び、超回転を保っているしくみを報告しています。あかつきは2024年に通信が途絶え、2025年9月に運用を終えました。

04地表は460℃超えの“灼熱地獄”

ついでに、金星の環境も知っておきましょう。金星は、地球のおとなりなのにまったく住めない星です。

  • 地表の温度:約460℃。鉛も溶けるほどの暑さ
  • 気圧:地球の約90倍。深さ900mの海の底にいるのと同じくらいの圧力
  • 空:硫酸の雲におおわれている

大気のほとんどが二酸化炭素で、熱を閉じこめる温室効果が極端に強くはたらいているのです。太陽にもっと近い水星よりも、金星のほうが暑いほどです。

05なぜ逆回転なのか? まだ決着していない

金星がなぜ逆回転しているのかは、まだはっきり分かっていません。

  • 大昔に巨大な天体がぶつかって回転がひっくり返った説
  • 分厚い大気と太陽の引力がブレーキをかけ続け、回転がゆっくり変わっていった説

などが考えられています。フランス国立科学研究センター(CNRS)のコレイアとラスカーは2001年に学術誌『Nature』で、大気の潮汐や惑星内部の摩擦などを組み合わせて計算すると、金星の自転は最初の状態がさまざまでも、いまのような逆回転の状態に行き着きうることを示しました。

06まとめ

  • 金星は自転1回に約243日、公転1周に約225日
  • 逆回転なので、太陽は西から昇る
  • ただし「日の出から日の出」で数えると約117日なので、判定はビミョー

「1日」という当たり前の言葉も、宇宙では定義しだいで答えが変わる。そこが天文学のおもしろいところです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerVenus spins once on its axis in about 243 Earth days, but it orbits the Sun in about 225 days. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Venus spins once on its axis in about 243 Earth days, but it orbits the Sun in about 225 days. In that sense, a day on Venus is longer than its year. Because thick clouds hide the surface, scientists used radar in the 1960s and reported in 1963 that Venus slowly spins backward. As a result, the Sun rises in the west and sets in the east there.

However, if we count a day from one sunrise to the next, it lasts only about 117 Earth days, which is shorter than a year. While the ground turns slowly, the clouds race around the planet in about four days. Venus is also extremely hot, with surface temperatures above 460 degrees Celsius.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

金星は約243地球日で自転軸のまわりを1回転しますが、太陽のまわりは約225日で1周します。その意味では、金星の1日は1年より長いのです。厚い雲が地表を隠しているため、科学者たちは1960年代にレーダーを使い、1963年に金星がゆっくりと逆向きに自転していると報告しました。その結果、金星では太陽が西から昇り、東に沈みます。

しかし、日の出から次の日の出までを1日と数えると、それはわずか約117地球日で、1年より短くなります。地面はゆっくり回っている一方で、雲は約4日で惑星を1周するほどの速さで流れています。金星はまた非常に暑く、地表の温度は460℃を超えます。

4択リーディングクイズ

Q1. How did scientists learn that Venus spins backward?

Q2. Which statement is true according to the passage?

Q3. What can we infer about the statement "a day on Venus is longer than its year"?

重要単語

  • rotationB2
    名詞自転Venus has a very slow rotation. rotate(回転する)の名詞形。天体では rotation(自転)と revolution(公転)をセットで覚える。
  • revolutionB2
    名詞公転One revolution around the Sun takes 225 days on Venus. 「革命」と同じ語。revolve(回る)から。the Industrial Revolution「産業革命」も頻出。
  • retrogradeC1
    形容詞逆行の・逆回りのVenus has retrograde rotation. retro-(後ろへ)+grade(進む)。反対は prograde(順行の)。
  • greenhouse effectB2
    名詞(句)温室効果A strong greenhouse effect makes Venus extremely hot. greenhouse gas「温室効果ガス」とセットで、環境問題の長文で最頻出。
  • superrotationC1
    名詞超回転(スーパーローテーション)Superrotation means the air moves faster than the planet spins. super-(超えて)+rotation。大気が惑星の自転より速く回る現象。
  • subtleB2
    形容詞微妙な・とらえにくいThe answer is more subtle than it seems. b は発音しない(/ˈsʌtl/)。a subtle difference「微妙な違い」は入試の頻出コロケーション。
  • sustainB2
    動詞維持する・持続させるWaves in the atmosphere sustain the fast winds. sustainable「持続可能な」(SDGs の S)と同じ語。sus-(下から)+tain(保つ)。

動画でもっと知る

4コマでわかる

【逆転】金星では「1日」が「1年」より長い。しかも太陽は西から昇るの4コマ漫画
金星は1回自転するのに約243日、太陽を1周するのに約225日。つまり「1日」が「1年」より長い。しかも逆回転だから太陽は西から昇る。ただし日の出から日の出までは約117日というオチ付き。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Goldstein & Carpenter (1963) Rotation of Venus: Period Estimated from Radar Measurements, Sciencedoi.org
  2. Correia & Laskar (2001) The four final rotation states of Venus, Naturedoi.org
  3. Horinouchi et al. (2020) How waves and turbulence maintain the super-rotation of Venus' atmosphere, Sciencedoi.org
  4. NASA, Venus: Facts, NASA Sciencescience.nasa.gov