宇宙・NASAホント

いま見ている太陽は「8分20秒前」の姿だった。夜空はぜんぶ“過去の映像”

いま見ている太陽は「8分20秒前」の姿だった。夜空はぜんぶ“過去の映像”

読む前に予想してみよう!

太陽が突然消えても、地球ではしばらく太陽が見え続ける

研究カード(どんな研究?)
対象
光の速さと太陽・地球間の距離
規模
定義値+天体観測
研究の種類
物理定数・観測・理論
確かさ
★★★★★
3秒でわかる

太陽の光が地球に届くまで平均約8分20秒。だから私たちは常に少し前の太陽を見ている。星になると何年、何万年前の姿になる。

ひとことで言うと太陽の光は、とどくまでに8分ちょっとかかる。見ているのは少し前の太陽!

もくじ
  1. 光は「めちゃくちゃ速い」けど「一瞬」ではない
  2. 「光の速さは有限」を最初に見抜いた人
  3. 太陽の中心から出るには、もっとかかる
  4. もし太陽が突然消えたら?
  5. 夜空の星は「過去からの手紙」
  6. まとめ

今日、太陽を見上げましたか?実はそのとき、あなたが見ていたのは「いまの太陽」ではありません。約8分20秒前の太陽です。

これはSFでも比喩でもなく、ただの物理。光にも“到着時間”があるからです。この事実を知ると、夜空の見え方がガラッと変わりますよ。

01光は「めちゃくちゃ速い」けど「一瞬」ではない

光の速さは、秒速約30万km。1秒で地球を7周半できるほどの速さです。

でも、太陽と地球の距離は約1億5000万km。これを光の速さで割ると……

  • 1億5000万km ÷ 30万km/秒 = 約500秒 = 約8分20秒

つまり、太陽の表面を出た光が私たちの目に届くまで、カップラーメンが3つ近くできるくらいの時間がかかっているのです。

ちなみに地球の軌道は少しだけだ円なので、太陽との距離は1年の中で変わります。到着時間も8分10秒〜8分30秒くらいの間でゆれています。

光が太陽から地球へ届くまで、約8分20秒
光が太陽から地球へ届くまで、約8分20秒

02「光の速さは有限」を最初に見抜いた人

昔の人は、光は一瞬で届くと考えていました。それをくつがえしたのが、17世紀の天文学者です。

フランスの天文学史家ボビスとルケーが2008年にまとめた論文によると、当時パリ天文台の台長だったカッシーニは、光が「少しずつ進む」という考えを実はレーマーより先に提案していたものの、のちにその仮説を取り下げ、発表はレーマーに任せたそうです。大発見が受け入れられるまでには、時間がかかったのです。

いまでは光の速さは秒速299,792,458mと、ぴったり決められています(この値をもとに「1メートル」の長さが定義されているほどです)。

03太陽の中心から出るには、もっとかかる

さらに「マジか!?」な話があります。

太陽の光は、もともと太陽の中心部で起きている核融合で生まれます。ところが太陽の内部はぎゅうぎゅう詰めなので、生まれた光のエネルギーは、粒子にぶつかっては向きを変えるピンボールのような状態に。表面にたどり着くまで、数万年〜十数万年かかると見積もられています(計算のしかたで幅があり、ミタラスとシルズの1992年の計算では約17万年)。

つまり、あなたが今日浴びた日差しのエネルギーは、人類が農業を始めるよりも前に太陽の中心で生まれたものかもしれないのです。

04もし太陽が突然消えたら?

ちょっと怖い想像をしてみましょう。もし今この瞬間、太陽がパッと消えてしまったら?

答えは、約8分20秒間は何も起きない。空には太陽が輝き続け、地球もいつも通り太陽のまわりを回り続けます。

実は、重力の変化も光と同じ速さで伝わると考えられています。2017年には、約1億3000万光年かなたの中性子星の合体で生まれた重力波とガンマ線が、約1.7秒の差でほぼ同時に地球に届いたことが観測され、このことが高い精度で確かめられました。

つまり8分20秒たったとき、空が暗くなるのと同時に、地球は太陽の引力から解き放たれる。その瞬間まで、私たちは何も気づけないのです。

05夜空の星は「過去からの手紙」

この考え方を夜空に広げると、もっとスケールが大きくなります。

  • 月:約1.3秒前の姿
  • 太陽:約8分20秒前の姿
  • いちばん近い恒星(プロキシマ・ケンタウリ):約4.2年前の姿
  • アンドロメダ銀河:約250万年前の姿

遠くを見ることは、過去を見ること。天文学者が巨大な望遠鏡で遠くの銀河を観測するのは、宇宙の昔の姿を知るためでもあるのです。

06まとめ

  • 太陽の光が届くまで約8分20秒。私たちは少し前の太陽を見ている
  • 光の速さが有限だと最初に示したのは、1676年のレーマー
  • 遠くを見るほど、宇宙の過去が見える

今夜、星空を見上げたら思い出してください。あの光たちは、それぞれ違う時代から、あなたの目に届くために旅してきたのだと。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLight travels at about 300,000 kilometers per second, but the Sun is about 150 million kilometers away. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Light travels at about 300,000 kilometers per second, but the Sun is about 150 million kilometers away. Dividing the distance by the speed gives about 500 seconds, or 8 minutes and 20 seconds. Because Earth's orbit is slightly oval, the time changes a little during the year. The first person to show that light does not arrive instantly was the Danish astronomer Ole Rømer.

In 1676, he noticed that the times when Jupiter's moon Io disappeared into Jupiter's shadow changed depending on the distance between Earth and Jupiter. If the Sun suddenly disappeared, we would notice nothing for about 8 minutes and 20 seconds. Even changes in gravity are thought to travel at the speed of light.

117 words ・ CEFR B1

和訳を見る

光は秒速約30万kmで進みますが、太陽は約1億5000万km離れています。距離を速さで割ると約500秒、つまり8分20秒になります。地球の軌道はわずかにだ円なので、この時間は1年の中で少し変わります。光が一瞬で届くわけではないことを初めて示したのは、デンマークの天文学者オーレ・レーマーでした。

1676年、彼は木星の衛星イオが木星の影に入る時刻が、地球と木星の距離によって変わることに気づきました。もし太陽が突然消えても、私たちは約8分20秒の間、何も気づかないでしょう。重力の変化でさえ、光の速さで伝わると考えられています。

4択リーディングクイズ

Q1. Why does the time for sunlight to reach Earth change a little during the year?

Q2. What did Ole Rømer notice in 1676?

Q3. What can we infer if the Sun suddenly disappeared?

重要単語

  • speed of lightB1
    名詞(句)光の速さ(光速)Nothing can travel faster than the speed of light. at the speed of light「光の速さで」。比喩で「ものすごい速さで」の意味にも使う。
  • light-yearB2
    名詞光年The nearest star is about 4.2 light-years away. 「時間」ではなく「距離」の単位である点がよく問われる。光が1年で進む距離。
  • nuclear fusionC1
    名詞(句)核融合Nuclear fusion powers the Sun. fusion は fuse(溶け合う)の名詞形。反対の核分裂は nuclear fission。
  • gravitational waveC1
    名詞(句)重力波Gravitational waves travel at the speed of light. gravitational は gravity の形容詞。2017年のノーベル物理学賞のテーマとしても有名。
  • astronomical unitC1
    名詞(句)天文単位(太陽と地球の平均距離)One astronomical unit is about 150 million kilometers. 略して AU。astronomical には「天文学的な=けた外れの」の意味もある(astronomical prices)。
  • finiteB2
    形容詞有限のRømer showed that the speed of light is finite. 反対は infinite(無限の)。発音は /ˈfaɪnaɪt/ と /ˈɪnfɪnət/ で母音が変わるので注意。
  • reluctantB2
    形容詞気が進まない・消極的なSome scientists were reluctant to accept the new idea. be reluctant to do「~したがらない」の形で入試頻出。名詞は reluctance。

動画でもっと知る

光の速さは秒速約30万km。それでも太陽から地球まで約8分20秒かかる。つまり、もし太陽がいま消えても、私たちは8分以上気づけない。夜空の星はぜんぶ“過去からの手紙”らしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Bobis & Lequeux (2008) Cassini, Rømer and the velocity of light, Journal of Astronomical History and Heritagedoi.org
  2. Mitalas & Sills (1992) On the photon diffusion time scale for the sun, The Astrophysical Journaldoi.org
  3. Abbott et al. (2017) Gravitational Waves and Gamma-Rays from a Binary Neutron Star Merger: GW170817 and GRB 170817A, The Astrophysical Journal Lettersdoi.org
  4. NASA, Sun: Facts, NASA Sciencescience.nasa.gov