ベテルギウスが急に暗くなったのは「爆発の前兆」ではなかった

読む前に予想してみよう!
ベテルギウスが2019年に暗くなったのは、超新星爆発の直前のサインだった
主な原因は星の表面から放出されたガスが冷えてできた「ちりの雲」と考えられている。
- 対象
- 赤色超巨星ベテルギウス
- 規模
- 単一の恒星(VLT・ハッブル等の観測)
- 研究の種類
- 観測+恒星進化モデル
- 確かさ
- ★★★★☆
2019〜2020年にベテルギウスが大きく暗くなり「超新星爆発か」と騒がれた。正体は星が吐き出したガスが冷えてできた“ちりの雲”だった。
ひとことで言うとベテルギウスが暗くなったのは、自分ではいたちりのカーテンのせいだった!
2019年の終わりごろ、天文ファンのあいだに衝撃が走りました。オリオン座の肩に輝く赤い星ベテルギウスが、目に見えて暗くなっていったのです。
ベテルギウスは、いつか超新星爆発を起こすと考えられている星。「ついに爆発するのか!?」と、世界中がざわつきました。
結論から言うと、爆発はしませんでした。では、あの暗さの正体は何だったのでしょうか?
01ベテルギウスってどんな星?
ベテルギウスは、赤色超巨星と呼ばれるタイプの星です。
- 大きさ:太陽系の中心に置いたら、表面が火星の軌道を大きく越えるほど巨大(推定には幅があります)
- 年齢:生まれてから1000万年もたっていないとされる。星としては若いのに、もう人生の最終盤
- 距離:地球から約550〜700光年ほど(見積もりには幅があり、ジョイスらの2020年の研究では約550光年)
重い星ほど燃料を一気に使うので、寿命が短いのです。そして最後には超新星爆発を起こして一生を終えると考えられています。
02「大減光」の正体は“ちりのベール”
2019年末から2020年2月にかけて、ベテルギウスはふだんの半分以下の明るさにまで暗くなりました。この出来事は大減光(グレート・ディミング)と呼ばれています。
さらに、表面の一部が一時的に冷えていたことも、ちりができやすい条件を作ったと考えられています。アメリカのデュプリーらは、ハッブル宇宙望遠鏡などのデータから、星の表面から大量のガスが吹き飛ばされたと分析しました。

03じゃあ、爆発はいつ?
ここが一番気になるところですよね。
ジョイスらの国際チームは2020年、学術誌『The Astrophysical Journal』で、ベテルギウスの明るさの「ゆらぎ」を分析し、星の内部の状態を推定しました。その結果、ベテルギウスは中心でヘリウムを燃やしている段階にあり、爆発までには10万年ほどの時間が残っている可能性が高いとしています。
04もし爆発したら、地球はどうなる?
安心してください。ベテルギウスは十分に遠いので、爆発しても地球の生き物に害はないと考えられています。
むしろ、見ものです。爆発すると、ベテルギウスは数か月にわたってとても明るく輝き、条件によっては昼間でも見えるほどになると予想されています。その後はだんだん暗くなり、オリオン座の肩が「欠けた」姿になるでしょう。
05まとめ
- 2019〜2020年のベテルギウスの大減光は、爆発の前兆ではなかった
- 正体は、星が吐き出したガスが冷えてできたちりのベール
- 爆発はおそらくずっと先。でも、いつか人類が「昼に見える星」を目撃する日が来るかもしれない
冬の夜、オリオン座を見上げたら、左上の赤い星に「まだがんばってるね」と声をかけてあげてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBetelgeuse is a red supergiant, a huge star that is already near the end of its life.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Betelgeuse is a big red star in Orion. At the end of 2019, it became much darker. Its light fell to less than half of its usual brightness. Many people thought the star was going to explode.
But it did not. Scientists used a large telescope in Chile and found the reason. The star threw out gas, and the gas cooled and became dust. This dust blocked part of the star's light, like a curtain.
75 words ・ CEFR A2
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ベテルギウスはオリオン座にある大きな赤い星です。2019年の終わりに、この星はずっと暗くなりました。その光は、ふだんの明るさの半分以下にまで落ちました。多くの人が、この星は爆発しようとしていると考えました。
しかし、爆発しませんでした。科学者たちはチリにある大きな望遠鏡を使って、その理由を見つけました。星がガスを吐き出し、そのガスが冷えてちりになったのです。このちりが、カーテンのように星の光の一部をさえぎりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
暗くなった星について、爆発ではなく「ちり」が原因だったと説明する文章なので C。A は But it did not. と矛盾。
Q2. How dark did Betelgeuse become?
Its light fell to less than half of its usual brightness. とあるので A。
Q3. In this passage, "blocked" means the dust ...
block は「さえぎる・ふさぐ」。like a curtain(カーテンのように)とあるので、光が通るのを止めたという意味の D。
Betelgeuse is a red supergiant, a huge star that is already near the end of its life. From late 2019 to February 2020, it lost more than half of its usual brightness. This event, called the Great Dimming, made many people wonder if the star was about to become a supernova. In 2021, a team led by Montargès published the answer in Nature.
Using the Very Large Telescope in Chile, they saw that only the southern part of the star had become darker. They concluded that gas thrown out by the star cooled into dust, which blocked part of its light like a veil. According to another study, Betelgeuse probably has about 100,000 years left before it explodes.
118 words ・ CEFR B1
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ベテルギウスは赤色超巨星で、すでに一生の終わり近くにいる巨大な星です。2019年の終わりから2020年2月にかけて、この星はふだんの明るさの半分以上を失いました。「大減光」と呼ばれるこの出来事によって、多くの人がこの星はもうすぐ超新星になるのではないかと考えました。2021年、モンタルジェスが率いるチームが『Nature』でその答えを発表しました。
チリの超大型望遠鏡を使って、彼らは星の南側だけが暗くなっていることを確認しました。そして、星が放出したガスが冷えてちりになり、それがベールのように光の一部をさえぎったと結論づけました。別の研究によると、ベテルギウスが爆発するまでには、おそらく10万年ほど残っています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did many people think when Betelgeuse dimmed?
made many people wonder if the star was about to become a supernova とあるので B。
Q2. What did the Montargès team observe?
they saw that only the southern part of the star had become darker とあるので C。
Q3. What can we infer from the passage?
原因はちりであり、爆発まで約10万年残っているとされているので、減光は爆発直前のサインではなかったと推論できる。正解は A。
Between late 2019 and February 2020, Betelgeuse, the red supergiant that marks Orion's shoulder, faded to less than half its normal brightness. Talk of an imminent supernova spread quickly. The idea was not absurd. The star is thought to be less than ten million years old, but massive stars burn through their fuel fast, and Betelgeuse is in the final stage of its life.
The cause of the so-called Great Dimming turned out to be far less dramatic. Using the Very Large Telescope in Chile, Montargès and colleagues found in 2021 that only the southern part of the star had darkened. In their account, gas thrown off the surface cooled into dust that hung like a veil over part of the star. A temporarily cooler patch on the surface may have helped the dust form.
Hubble data analyzed by Dupree's team also pointed to a large mass ejection. Astronomers still disagree about how much of the dimming came from the dust and how much from the cool patch. The star's mass and distance are hard to measure, but Joyce and colleagues estimated that Betelgeuse is burning helium in its core and probably has around 100,000 years left.
197 words ・ CEFR B2
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2019年末から2020年2月にかけて、オリオン座の肩に位置する赤色超巨星ベテルギウスは、ふだんの半分以下の明るさにまで暗くなりました。超新星爆発が目前に迫っているという話は、またたく間に広がりました。それはばかげた考えではありませんでした。この星は生まれて1000万年もたっていないと考えられていますが、重い星は燃料を急速に使い果たすため、ベテルギウスは一生の最終段階にあるのです。
しかし、いわゆる「大減光」の原因は、ずっと地味なものだと分かりました。チリの超大型望遠鏡を使い、モンタルジェスらは2021年、星の南側だけが暗くなっていたことを突き止めました。彼らの説明では、表面から放出されたガスが冷えてちりとなり、ベールのように星の一部をおおったのです。一時的に温度が下がった表面の一部が、ちりの形成を助けた可能性もあります。
デュプリーのチームが分析したハッブルのデータも、大規模な質量放出を示していました。減光のうちどれだけがちりによるもので、どれだけが低温領域によるものなのかについては、天文学者の間でまだ意見が分かれています。星の質量や距離は測るのが難しいのですが、ジョイスらは、ベテルギウスは中心核でヘリウムを燃やしている段階にあり、おそらく10万年ほどの寿命が残っていると推定しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
The cause of the so-called Great Dimming turned out to be far less dramatic とあり、ちりのベールが原因だと説明しているので B。
Q2. According to the passage, what did Joyce and colleagues estimate?
Joyce and colleagues estimated that Betelgeuse ... probably has around 100,000 years left とあるので D。A の「1000万年」は年齢の上限の話で、ジョイスらの推定ではない。
Q3. Which statement best reflects the author's view of the research?
ちりと低温領域の寄与については Astronomers still disagree とあり、寿命の推定についても質量や距離がまだ不確かだと断り、probably と控えめに書いている。主な説明は有力だが細部は未確定という立場なので C。
重要単語
- red supergiantC1名詞(句)赤色超巨星Betelgeuse is a famous red supergiant.
super-(超)+giant(巨人)。表面温度が低いので赤く見える、年老いた重い星。 - supernovaC1名詞超新星(爆発)A supernova can outshine a whole galaxy.
nova はラテン語で「新しい」。突然明るい星が現れたように見えることから。複数形は supernovae / supernovas。 - dimmingB2名詞減光・暗くなることThe sudden dimming surprised astronomers.
dim(薄暗い・暗くする)の動名詞。dim the lights「明かりを落とす」。反対は brighten。 - dustA2名詞ちり・ほこりDust in space can block starlight.
宇宙の「ちり」も部屋の「ほこり」も dust。不可算名詞。dusty「ほこりっぽい」。 - mass ejectionC1名詞(句)質量放出A huge mass ejection came from the star's surface.
eject(放出する・追い出す)は e-(外へ)+ject(投げる)。inject, reject, project と同じ ject の仲間。 - imminentC1形容詞差し迫ったMany people believed an explosion was imminent.
危険や悪い出来事が「今にも起こりそう」なときに使う。eminent(著名な)と混同しやすいので注意。 - speculationB2名詞憶測・推測There was a lot of speculation about the star's future.
speculate(推測する)の名詞形。根拠が十分でない推測というニュアンス。speculation that ~ の同格構文が頻出。
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2019年末、オリオン座のベテルギウスが急に暗くなって「ついに超新星爆発か」と世界がざわついた。でも正体は、星が吐き出したガスが冷えてできた“ちりのベール”。爆発はたぶん、まだずっと先。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Montargès et al. (2021) A dusty veil shading Betelgeuse during its Great Dimming, Naturedoi.org
- Joyce et al. (2020) Standing on the Shoulders of Giants: New Mass and Distance Estimates for Betelgeuse through Combined Evolutionary, Asteroseismic, and Hydrodynamic Simulations with MESA, The Astrophysical Journaldoi.org
- Dupree et al. (2022) The Great Dimming of Betelgeuse: A Surface Mass Ejection and Its Consequences, The Astrophysical Journaldoi.org
- ESO (2021) Mystery of Betelgeuse's dip in brightness solved, European Southern Observatoryeso.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










