睡眠・休息ビミョー

いびきをかく人の隣で寝ると、睡眠が1時間削られている? 「隣で寝る人」の眠りの科学

いびきをかく人の隣で寝ると、睡眠が1時間削られている? 「隣で寝る人」の眠りの科学

読む前に予想してみよう!

いびきは、いびきをかいている本人の睡眠にしか影響しない

研究カード(どんな研究?)
対象
夫婦・パートナー
規模
10組(ポリソムノグラフィー)+1,032人(調査)ほか
研究の種類
小規模介入研究+観察研究
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

いびきと睡眠時無呼吸が疑われる夫の治療を一晩の途中から始めると、隣の妻の睡眠効率が74%から87%に上がった。単純計算で約1時間分。ただし別室で寝ても差が小さかった研究もある。

ひとことで言うといびきは本人だけの問題じゃない。隣の人の眠りも削っているかも!

もくじ
  1. 治療を始めたら、妻の睡眠が1時間分増えた計算に
  2. 1000人の女性調査でも
  3. ところが「別々に寝ても変わらない」結果も
  4. まとめ

「ゴォォォ……ガッ……スー……ゴォォ」。

家族の誰かのいびきで眠れなかった経験、ありませんか? いびきは「本人の健康問題」として語られることが多いですが、実は隣で寝ている人の睡眠にも影響していることがわかっています。

この「隣の人」に注目した研究は、アメリカをはじめ各国で行われてきました。

01治療を始めたら、妻の睡眠が1時間分増えた計算に

すると、夫の治療が始まった後半では、

  • 妻の1時間あたりの目覚め(覚醒反応)の回数が、中央値で21回から12回に減少
  • 妻の睡眠効率(寝床にいた時間のうち眠れていた割合)が74%から87%に上昇

という変化が見られました。研究チームは、8時間寝床にいるとすれば、13ポイントの改善は一晩あたり約62分の睡眠に相当すると計算しています。

つまり、重いいびきや無呼吸のそばで寝ていた妻は、一晩あたり1時間ほどの睡眠が削られていた可能性があるのです(無呼吸が疑われる夫10組・一晩だけの試算です)。

021000人の女性調査でも

2000年にスウェーデンで行われた、30〜64歳の女性1,032人のアンケート調査でも、ひどいいびきをかく夫と暮らす女性は、睡眠の乱れ、朝の頭痛、日中の眠気を訴えることが多いという結果が出ています。

2003年の研究では、閉塞性睡眠時無呼吸の患者54人がCPAP治療を始めると、パートナーの生活の質(QOL)や日中の眠気も改善したと報告されました(治療前後を比べた観察です)。

いびきの「音の波」は、隣で寝る人の眠りまで揺らしている
いびきの「音の波」は、隣で寝る人の眠りまで揺らしている

03ところが「別々に寝ても変わらない」結果も

ただし、話はそう単純ではありません。

2009年のフランスの研究では、いびきをかく男性のパートナーの女性16人に、「一緒に寝る夜」と「一人で寝る夜」の両方で検査を受けてもらいました。すると、睡眠時間・睡眠効率・短い覚醒(アラウザル)の指標には統計的な差がありませんでした。一人で寝た夜は、浅い眠りの割合や目覚めの指標がやや少なかった程度です。

理由としては、長年いびきの隣で寝てきた人は音にある程度慣れている可能性や、検査室での一晩だけでは差が出にくい可能性などが考えられます。いびきの音の大きさや、パートナーの敏感さによっても影響は変わるでしょう。

そもそも、いびきはなぜ起きるのでしょう。眠ると、のどのまわりの筋肉がゆるんで空気の通り道がせまくなります。そこを空気が通るときに、のどの奥の柔らかい部分が振動して音が出るのがいびきです。仰向けやお酒を飲んだ後、鼻づまりのときに大きくなりやすいのはこのためです。

いびきの中には、睡眠時無呼吸のサインが隠れていることもあります。隣で寝ている人は、いびきが急に止まって静かになり、しばらくして大きな音とともに呼吸が再開する——そんな様子に気づける一番近い存在です。気づいたら、本人に伝えてあげることが早めの受診につながります。

04まとめ

いびきは、本人だけの問題ではありませんでした。隣の人の睡眠を削っている可能性があります。

いびきの相談は、家族みんなの睡眠を守るための一歩。「うるさい」と責めるのではなく、「一緒に眠りを取り戻そう」と話してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSnoring is usually discussed as the snorer's health problem, but it can also steal sleep from the person in… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Snoring is usually discussed as the snorer's health problem, but it can also steal sleep from the person in the same bed. In a 1999 study at the Mayo Clinic in the US, ten couples slept side by side in a sleep lab. Partway through the night, each husband began CPAP, a treatment that blows air through a nose mask to stop snoring and breathing pauses.

After that, the number of times the wives woke up per hour fell from 21 to 12, and their sleep efficiency rose from 74 percent to 87 percent. The researchers calculated that this was equal to about 62 more minutes of sleep a night. However, a 2009 French study found little difference when women slept alone.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

いびきはふつう、いびきをかく本人の健康問題として語られますが、同じベッドの人の睡眠を奪うこともあります。1999年のアメリカのメイヨー・クリニックの研究では、10組の夫婦が睡眠検査室で並んで眠りました。夜の途中で、それぞれの夫がCPAPを始めました。これは鼻マスクから空気を送り込み、いびきと呼吸の停止を止める治療です。

その後、妻が1時間あたりに目覚める回数は21回から12回に減り、睡眠効率は74%から87%に上がりました。研究者たちは、これが一晩あたり約62分多い睡眠に相当すると計算しました。しかし、2009年のフランスの研究では、女性が一人で寝てもほとんど差がありませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What is CPAP?

Q2. How did the wives' sleep efficiency change?

Q3. What does the 2009 French study suggest?

重要単語

  • snoreB1
    動詞・名詞いびきをかく/いびきMy father snores very loudly. snorer「いびきをかく人」。heavy snorer「ひどいいびきをかく人」。
  • bed partnerB2
    名詞(句)一緒に寝る人The bed partner's sleep was also measured. partner は「相手・連れ合い」。business partner「事業の共同経営者」など幅広く使う。
  • arousalC1
    名詞覚醒(短い目覚め)Loud noise can cause arousals during sleep. 動詞 arouse「目覚めさせる、呼び起こす」。睡眠研究では「短い覚醒反応」の意味。
  • earplugsB1
    名詞耳栓I use earplugs when I travel. ear(耳)+plug(栓)。plug in「(電源に)つなぐ」の plug と同じ。
  • sleep efficiencyC1
    名詞(句)睡眠効率(寝床にいた時間のうち眠れた割合)Her sleep efficiency improved to 87 percent. efficiency「効率」。形容詞 efficient、反意語 inefficient。
  • medianC1
    名詞中央値The median number of arousals per hour fell from 21 to 12. average(平均値)と区別。データを並べた真ん中の値。統計系の長文で出る。

動画でもっと知る

いびきと無呼吸が疑われる夫に治療の装置をつけたら、隣で寝ていた妻の「眠れていた時間の割合」が74%から87%に。単純計算で一晩約1時間分の睡眠を取り戻したことになるらしい。いびきは家族の問題だった。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Beninati W et al. (1999) The Effect of Snoring and Obstructive Sleep Apnea on the Sleep Quality of Bed Partners, Mayo Clinic Proceedingsdoi.org
  2. Blumen MB et al. (2009) Effect of sleeping alone on sleep quality in female bed partners of snorers, European Respiratory Journaldoi.org
  3. Ulfberg J et al. (2000) Adverse health effects among women living with heavy snorers, Health Care for Women Internationaldoi.org
  4. Parish JM, Lyng PJ (2003) Quality of Life in Bed Partners of Patients With Obstructive Sleep Apnea or Hypopnea After Treatment With Continuous Positive Airway Pressure, Chestdoi.org