ピンクノイズで深い眠りが増える? 「眠れる音」のウワサを研究で検証してみた

読む前に予想してみよう!
ピンクノイズを深い睡眠のリズムに合わせて流すと、記憶テストが良くなった実験がある
2013年の研究で、脳波に同期させた短い音で深い眠りの波が強まり、単語の記憶成績が上がった。
- 対象
- 健康な若年成人・高齢者
- 規模
- 各十数人(統合で10研究177人)
- 研究の種類
- 実験室での交差試験・メタ分析
- 確かさ
- ★★☆☆☆
脳波に合わせて音を鳴らすと深い眠りの波が強まり、記憶が良くなった実験はある。ただし記憶への効果は小さく、「流しっぱなしの音」の証拠はまだ弱い。
ひとことで言うと音で眠りを助けられるかも。でも魔法の音ではない!
「ザーッ」という雨音のような音を流すと、ぐっすり眠れる――。動画サイトや睡眠アプリで、ホワイトノイズやピンクノイズを見かけたことがある人も多いはず。
なかには「ピンクノイズで深い眠りが増える!」という宣伝も。これって本当なのでしょうか?
調べてみると、答えは「半分ホント」。実験で効果が出た方法は、私たちがスマホで流しているものとは、ちょっと違っていたのです。
01ホワイトとピンク、何が違う?
どちらも、いろいろな高さの音がまざった「ザー」という雑音です。
- ホワイトノイズ:低い音から高い音まで、すべて同じ強さでまざった音。テレビの砂嵐のような「シャー」という鋭い感じ
- ピンクノイズ:高い音ほど弱くなるようにまざった音。雨音や川のせせらぎに近い、やわらかい「ザー」
光にたとえると、白い光はすべての色が均等、ピンク(赤っぽい)光は低い側(赤)が強め――というイメージから、こう名づけられています。
02脳波に「合わせて」鳴らしたら深い眠りが強まった
ブランコを押すとき、ちょうどいいタイミングで押すと大きく揺れますよね。それと同じで、脳の波のリズムに合わせて“音で押す”と、深い眠りの波が大きくなる、というわけです。
その後、アメリカ・ノースウェスタン大学の研究チーム(Papalambrosさんら、2017年)も、高齢者で似たような効果を報告しています。
ただし、話はここで終わりません。2021年にスイスの研究チーム(Wunderlinさんら)が、同じような「脳波に合わせて音を鳴らす」実験10本・177人分をまとめたところ、記憶への効果は小さく、統計的にもギリギリ「傾向あり」のレベルでした。深い眠りの波を強めること自体は再現されやすい一方で、「記憶が良くなる」まで確実に言えるかは、まだ検証中なのです。研究チームは、市販の機器を勧められるほどの証拠はまだないとも書いています。

03「流しっぱなし」の効果は、まだ証拠が弱い
ここで注意したいのは、この実験の音は“流しっぱなし”ではないことです。脳波を測る機械を使って、決まった瞬間にだけ短い音を鳴らしていました。
では、スマホで一晩中ピンクノイズやホワイトノイズを流す方法はどうか。アメリカ・ペンシルベニア大学などの研究チーム(Riedyさんら)が2021年に関連研究をまとめた分析では、連続した雑音が睡眠を良くするという証拠は、質が非常に低く、はっきりしないと結論づけています。
ただし、外の車の音や家族の物音など、突然の騒音を“かき消す”目的なら、一定の雑音が役に立つ場面もあると考えられています。急な音より、ずっと同じ音のほうが脳は気にしにくいからです。
「ピンクノイズを流すだけで深い睡眠が増え、記憶力アップ」という宣伝は、研究結果を広げすぎた表現です。効果が確認されたのは、脳波に同期させる特別な方法。市販のアプリや動画で同じ効果が出るかは、まだわかっていません。
04まとめ
ピンクノイズの研究は本物。でも、効果が確かめられたのは「脳の波に合わせて鳴らす」ハイテクな方法でした。
流しっぱなしの音は、「眠りの魔法」ではなく「騒音よけのカーテン」くらいの存在。そう割り切って使えば、心強い味方になってくれるかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPink noise is a soft, rain-like sound in which higher sounds are weaker than lower ones, and many sleep…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Some apps play pink noise to help people sleep. It sounds soft, like rain. Can it make sleep deeper? In a 2013 study in Germany, scientists played short sounds at exactly the right moments of deep-sleep brain waves.
Deep sleep became stronger, and people remembered more words the next morning. But playing noise all night is different. There is not much proof that it helps. It may only cover other sounds.
71 words ・ CEFR A2
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人が眠るのを助けるためにピンクノイズを流すアプリがあります。それは雨のようなやわらかい音です。眠りを深くできるのでしょうか?ドイツの2013年の研究で、科学者たちは深い眠りの脳波のちょうどよい瞬間に短い音を鳴らしました。
深い眠りが強くなり、人々は次の朝により多くの単語を覚えていました。しかし、一晩中雑音を流すのは別の話です。それが役に立つという証拠はあまりありません。ほかの音を隠すだけかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ピンクノイズが睡眠に役立つかどうかを検証しているので C。
Q2. When were the short sounds played in the 2013 study?
played short sounds at exactly the right moments of deep-sleep brain waves とあるので A。
Q3. In this passage, "proof" means ...
proof は「証拠」。何かが本当だと示す事実なので D。
Pink noise is a soft, rain-like sound in which higher sounds are weaker than lower ones, and many sleep apps claim that it deepens sleep. In a 2013 German study, researchers read the brain waves of 11 young sleepers in real time and played short bursts of pink noise exactly when a slow, deep-sleep wave was rising.
The deep-sleep waves became larger, and the next morning the participants remembered word pairs better. When the sounds were played at the wrong time, there was no such effect. However, this method needs special equipment, and a 2021 review found that the memory benefit across studies was small. Another review concluded that the evidence for playing noise continuously all night is weak.
119 words ・ CEFR B1
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ピンクノイズは、高い音ほど弱くなっている、やわらかな雨のような音で、多くの睡眠アプリはそれが眠りを深くすると主張しています。2013年のドイツの研究で、研究者たちは11人の若い参加者の脳波をリアルタイムで読み取り、ゆっくりとした深い眠りの波が上がるちょうどその時に、短いピンクノイズを鳴らしました。
深い眠りの波は大きくなり、翌朝、参加者は単語の組み合わせをよりよく思い出しました。タイミングを間違えて音を鳴らすと、そのような効果はありませんでした。しかし、この方法には特別な機器が必要で、2021年のレビューでは、研究全体での記憶への効果は小さいことがわかりました。別のレビューは、一晩中雑音を流し続けることについての証拠は弱いと結論づけました。
4択リーディングクイズ
Q1. How many young sleepers took part in the 2013 study?
the brain waves of 11 young sleepers とあるので C。
Q2. What happened when the sounds were played at the wrong time?
When the sounds were played at the wrong time, there was no such effect. とあるので A。
Q3. What can we infer about sleep apps that play noise all night?
効果が出たのは特別な機器で脳波に合わせる方法で、流しっぱなしの証拠は弱いので、同じ効果は期待できないと推論できる。C。
Pink noise, a rain-like sound in which higher frequencies are progressively weaker, is widely promoted as a way to deepen sleep, but the evidence depends heavily on how it is delivered. In a 2013 study published in Neuron, German researchers monitored the brain activity of 11 young adults in real time and played brief bursts of pink noise precisely as each slow oscillation of deep sleep was rising. This closed-loop stimulation enlarged the slow waves and improved next-morning recall of word pairs, while sounds delivered out of phase had no such effect. This works like pushing a swing at just the right moment. Similar results were later reported in older adults.
However, a 2021 meta-analysis of ten studies involving 177 participants found that the overall memory benefit was small and only marginally significant, and its authors cautioned that commercial devices could not yet be recommended. A separate systematic review also judged the evidence that continuous noise played throughout the night improves sleep to be of very low quality, although steady sound may help mask sudden disturbances such as traffic.
179 words ・ CEFR B2
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ピンクノイズは、高い周波数ほどしだいに弱くなる雨のような音で、眠りを深める方法として広く宣伝されていますが、その証拠はどのように音を届けるかに大きく左右されます。『Neuron』誌に発表された2013年の研究で、ドイツの研究者たちは11人の若い成人の脳活動をリアルタイムで監視し、深い眠りのゆっくりとした振動が上昇するちょうどその時に、短いピンクノイズを鳴らしました。この閉ループ刺激はゆっくりとした波を大きくし、翌朝の単語の組み合わせの想起を改善しましたが、位相をずらして届けた音にはそのような効果はありませんでした。これは、ちょうどよい瞬間にブランコを押すようなものです。同様の結果は後に高齢者でも報告されました。
しかし、177人の参加者を含む10研究をまとめた2021年のメタ分析では、全体としての記憶への効果は小さく、統計的にかろうじて有意に近い程度で、著者たちは市販の機器はまだ推奨できないと注意を促しました。さらに、別の系統的レビューは、一晩中流し続ける雑音が睡眠を改善するという証拠の質は非常に低いと判断しましたが、一定の音は交通騒音のような突然の妨げを覆い隠すのに役立つかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
第1文で the evidence depends heavily on how it is delivered と述べ、全体でその違いを説明しているので B。
Q2. Why does the author mention pushing a swing?
ちょうどよい瞬間に押すと大きく揺れるブランコのように、脳波に合わせたタイミングが重要だと説明するためなので A。
Q3. What did the authors of the 2021 meta-analysis caution?
its authors cautioned that commercial devices could not yet be recommended とあるので C。
重要単語
- noiseA2名詞雑音、騒音Steady noise can mask sudden sounds at night.
形容詞 noisy。make a noise「音を立てる」。科学では「ランダムな信号」の意味も。 - stimulationC1名詞刺激Acoustic stimulation was timed to each slow wave.
stimulate「刺激する」の名詞形。stimulus(刺激となるもの)との違いに注意。 - oscillationC1名詞振動、(脳波の)周期的な波Slow oscillations appear during deep sleep.
oscillate「揺れ動く、振動する」。比喩的に「(気持ちが)揺れる」にも使う。 - enhanceB2動詞高める、強化するThe sounds seemed to enhance deep sleep.
improve より「質や価値をさらに高める」ニュアンス。名詞 enhancement。 - evidenceB1名詞証拠、根拠There is little evidence for this claim.
不可算名詞なので an evidence は不可。a piece of evidence と数える。 - maskB2動詞覆い隠すSteady sound may help mask sudden traffic noise.
名詞「仮面・マスク」の動詞用法。mask the taste「味をごまかす」。
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動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
公式・一次情報をチェック
- Noise-Induced Hearing Loss(NIH 国立聴覚・伝達障害研究所)nidcd.nih.gov
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「ピンクノイズで深く眠れる」は半分ホント。脳波にピッタリ合わせて音を鳴らす実験では、深い眠りの波が強まり記憶もアップした。でも、スマホで流しっぱなしにする方法の効果はまだはっきりしないらしい。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Ngo et al. (2013) Auditory closed-loop stimulation of the sleep slow oscillation enhances memory, Neurondoi.org
- Papalambros et al. (2017) Acoustic enhancement of sleep slow oscillations and concomitant memory improvement in older adults, Frontiers in Human Neurosciencedoi.org
- Wunderlin et al. (2021) Modulating overnight memory consolidation by acoustic stimulation during slow-wave sleep: a systematic review and meta-analysis, Sleepdoi.org
- Riedy et al. (2021) Noise as a sleep aid: A systematic review, Sleep Medicine Reviewsdoi.org
- Hugh et al. (2014) Infant sleep machines and hazardous sound pressure levels, Pediatricsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











