「迷信を覚えたハト」は本当に迷信? スキナーの名作実験、23年後の再検証で揺らいだ

読む前に予想してみよう!
ラッキーアイテムを持つと成績が上がる、という研究は追試でもしっかり確認されている
「ラッキーボールだと言われるとゴルフのパットが上達する」という有名研究は、追試では効果が再現されなかった。
- 対象
- ハト/日本の大学生
- 規模
- 数羽〜20人程度
- 研究の種類
- 動物実験・小規模実験
- 確かさ
- ★★☆☆☆
偶然のエサで"儀式"を覚えたとされるスキナーのハト。再検証では、エサ直前の行動はハト共通の「エサ待ちのつつき」だった。人の"お守り効果"も追試で揺らいだ。
ひとことで言うと「ハトの迷信」は、実はハトにとって"ふつうの行動"だったかもしれない
心理学の教科書でおなじみの「迷信を覚えたハト」の話を知っていますか?
ハトが何をしていても関係なく、決まった時間ごとにエサが出る。するとハトは、たまたまエサの直前にしていた動き——くるっと回る、首を振る——を、まるで儀式のように繰り返すようになった。アメリカの心理学者B・F・スキナーが1948年に報告した、有名な実験です。
「偶然を因果とカン違いする」。人間の迷信もこれと同じ——そう説明されてきました。
ところが、この名作実験には、あまり知られていない続編があるのです。
0123年後、ハトを"秒単位"で見直した
もしスキナーの説明どおり「エサ直前の動きが偶然強化される」なら、エサ直前には各ハトの"お気に入りの儀式"が出るはずです。でも実際は、エサ直前はみんな同じ「エサ待ちのつつき」でした。
研究者たちは、これを「偶然の強化」ではなく、エサが近づくと自然に出てくる、ハトという種に備わった行動として説明しました。スキナーが見た「迷信」は、観察の仕方によって生まれた見え方だった可能性があるのです。
02人間でやると、どうなった?
では人間はどうでしょう。1987年、日本の心理学者小野浩一が、大学生を対象にユニークな実験を行いました。
部屋には3本のレバーとポイントの表示器。実はポイントはレバー操作と無関係に出る仕組みでした。それでも一部の学生は、「レバーをこの順番で引くと出る」といった独自のパターンを作り上げました。ある学生は、ポイントが出た直前の動きをきっかけに、ジャンプして天井に触るという行動まで始めたと報告されています。
ただし、このような"迷信行動"をはっきり作り上げたのは参加者の一部でした。人は偶然から法則を作ることがある。でも、誰もが簡単にそうなるわけではないのです。

03「ラッキーボールで上達」も、追試で消えた
迷信をめぐっては、もうひとつどんでん返しがあります。
2010年、「『ラッキーボールですよ』と言われてゴルフのパットをすると成功率が上がる」という研究が有名な学術誌に載り、「縁起かつぎは自信を高めて実力を引き出す」と話題になりました。
ところが2014年、別の研究者が同じ方法で追試をしたところ、効果は再現されませんでした。お守りで実力が上がる、という話は、少なくとも「確かな事実」とは言えない状態です。
04まとめ
スキナーのハトは、「人間はなぜ迷信を信じるのか」を説明するたとえとして、今も役に立ちます。でも、実験そのものの解釈は後の研究で大きく見直されたのです。
名作実験も、細かく見直すとひっくり返ることがある。これこそが「迷信」に流されない、科学の考え方そのものです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1948, the American psychologist B.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In 1948, B. F. Skinner gave food to hungry pigeons at regular times, no matter what they did. He said that the pigeons started to repeat the movements they made just before the food came, like turning around. He called this "superstition."
But in 1971, other scientists watched pigeons much more carefully. Just before the food came, almost all the pigeons did the same thing. They pecked near the food box.
71 words ・ CEFR A2
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1948年、B・F・スキナーは、おなかをすかせたハトに、何をしているかに関係なく決まった時間ごとにエサを与えました。彼は、ハトがエサが出る直前にしていた動き、たとえばくるっと回るような動きをくり返すようになったと言いました。彼はこれを「迷信」と呼びました。
しかし1971年、別の科学者たちがハトをもっとずっと注意深く観察しました。エサが出る直前には、ほとんどすべてのハトが同じことをしていました。エサ箱の近くをつついていたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
スキナーのハトの迷信実験と、その後の注意深い再観察についての文章なので C。
Q2. What did almost all the pigeons do just before the food came, according to the 1971 study?
They pecked near the food box. とあるので B。回るのはスキナーの説明。
Q3. In this passage, "no matter what they did" means the food came ...
no matter what ~ は「何を~しても関係なく」。ハトの行動とは無関係にエサが出たという意味なので D。
In 1948, the American psychologist B. F. Skinner fed pigeons at fixed times, whatever they were doing. He reported that each pigeon came to repeat a particular movement, such as turning in circles, as if the movement caused the food.
Skinner called this "superstition." In his view, the movement a bird made just before the food came was rewarded by chance, so the bird kept doing it. In 1971, two researchers repeated the experiment and recorded the birds' behavior in much more detail.
Just before food arrived, almost every pigeon pecked near the food box. The different movements appeared mainly right after feeding or in the time between meals. So the researchers suggested a simpler explanation. When food is near, pecking is something pigeons naturally do.
126 words ・ CEFR B1
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1948年、アメリカの心理学者B・F・スキナーは、ハトが何をしていても決まった時間にエサを与えました。彼は、それぞれのハトが、まるでその動きがエサを出させているかのように、くるくる回るといった特定の動きをくり返すようになったと報告しました。
スキナーはこれを「迷信」と呼びました。彼の考えでは、エサが来る直前にハトがしていた動きが偶然ごほうびを受けたため、ハトはその動きを続けたというのです。1971年、2人の研究者がこの実験をくり返し、ハトの行動をずっと細かく記録しました。
エサが出る直前には、ほとんどすべてのハトがエサ箱の近くをつついていました。さまざまな動きは主に、エサを食べた直後や、エサとエサの間の時間に現れていました。そこで研究者たちは、もっと単純な説明を示しました。エサが近いとき、つつくのはハトが自然にする行動だというのです。
4択リーディングクイズ
Q1. How did Skinner explain the pigeons' behavior?
the movement a bird made just before the food came was rewarded by chance と説明しているので B。
Q2. When did the different movements mainly appear in the 1971 study?
The different movements appeared mainly right after feeding or in the time between meals. とあるので A。
Q3. What can we infer from the 1971 study?
エサ直前の行動はどのハトも共通のつつきで、研究者たちは pecking is something pigeons naturally do というもっと単純な説明を示したので、スキナーの説明が最善ではない可能性があると推論できる。D。
Skinner's 1948 report of "superstitious" pigeons became a textbook classic. Fed at regular intervals regardless of their behavior, each bird supposedly developed its own ritual, such as turning in circles, because whatever it happened to be doing just before food was accidentally reinforced. Human superstitions, it was argued, arise the same way. In 1971, however, Staddon and Simmelhag repeated the procedure while classifying the birds' behavior in fine detail.
Contrary to Skinner's account, the behavior immediately before food was not an individual ritual but a pecking response near the food box shared by almost every bird; varied movements occurred mainly earlier in the interval. They proposed that these patterns reflected behavior naturally triggered by the approach of food rather than accidental reinforcement. Studies with humans have produced mixed results.
In 1987, Koichi Ono found that some Japanese students receiving points unrelated to their actions invented elaborate patterns, one even jumping to touch the ceiling, but only a minority did so. A 2010 study claiming that a "lucky" golf ball improved putting attracted wide attention, yet a 2014 replication found no effect. Skinner's pigeons remain a useful metaphor, but the experiment's original interpretation has been substantially revised.
196 words ・ CEFR B2
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スキナーが1948年に報告した「迷信的な」ハトは、教科書の古典となりました。行動に関係なく一定の間隔でエサを与えられると、それぞれのハトはくるくる回るなどの独自の儀式を身につけたとされます。エサの直前にたまたましていた動きが、偶然に強化されたからだというのです。人間の迷信も同じようにして生まれる、と論じられました。しかし1971年、スタッドンとシンメルハーグは同じ手順をくり返しながら、ハトの行動を細かく分類しました。
スキナーの説明とは逆に、エサの直前の行動は個々の儀式ではなく、ほとんどすべてのハトに共通する、エサ箱の近くでのつつき反応でした。さまざまな動きは主に間隔の前半に起きていたのです。彼らは、こうしたパターンは偶然の強化ではなく、エサが近づくことで自然に引き起こされる行動を反映していると提案しました。
人間を対象とした研究の結果はまちまちです。1987年、小野浩一は、自分の行動とは無関係にポイントを受け取った日本の学生の一部が、天井に触れようとジャンプする者まで含めて、手の込んだパターンを作り出したことを見いだしましたが、そうしたのは少数でした。「ラッキー」なゴルフボールでパットが上達すると主張した2010年の研究は広く注目を集めましたが、2014年の追試では効果は見られませんでした。スキナーのハトは今も役に立つたとえですが、実験のもともとの解釈は大きく見直されたのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Staddon and Simmelhag find about behavior just before food?
the behavior immediately before food was not an individual ritual but a pecking response near the food box shared by almost every bird とあるので C。A はスキナーの説明。
Q2. What did Koichi Ono's 1987 study show?
but only a minority did so とあるので B。
Q3. Which statement best summarizes the author's conclusion?
最終文 remain a useful metaphor, but the experiment's original interpretation has been substantially revised が結論なので A。C は2014年の追試と矛盾。
重要単語
- superstitionB2名詞迷信Many athletes have little superstitions before a game.
形容詞 superstitious「迷信深い」。super-(上に)+stit(立つ)が語源とされる。 - reinforcementC1名詞強化(ごほうびで行動が増えること)Food works as reinforcement for hungry animals.
reinforce(強化する・補強する)の名詞形。positive reinforcement「正の強化(ほめて伸ばす)」も頻出。 - coincidenceB2名詞偶然の一致It was just a coincidence, not magic.
coincide(同時に起こる)の名詞形。What a coincidence!「なんて偶然!」は会話の定番。 - ritualB2名詞儀式・決まった手順His pre-game ritual calms him down.
宗教的な「儀式」のほか、毎日の「習慣的な手順」にも使う。a morning ritual「朝の決まりごと」。 - reexamineB2動詞再検証するScientists reexamined the famous experiment.
re-(再び)+examine(調べる)。re-examine とハイフンを入れることもある。 - peckB2動詞(くちばしで)つつくThe pigeons pecked near the food box.
名詞で「軽いキス」の意味もある(a peck on the cheek)。鳥の動作の基本語。 - metaphorB2名詞比喩・たとえSkinner's pigeons are a useful metaphor for human superstition.
like / as を使わない比喩(隠喩)。like を使う比喩は simile(直喩)。
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時間ごとにエサが出るだけなのに、くるくる回る"儀式"を覚えたハト——スキナーの有名な「迷信実験」。でも23年後に細かく観察し直したら、エサ直前の行動はどのハトも同じ「つつき」だったらしい。名作実験にもツッコミは入る。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Skinner (1948) 'Superstition' in the pigeon, Journal of Experimental Psychologydoi.org
- Staddon & Simmelhag (1971) The "superstition" experiment: A reexamination of its implications for the principles of adaptive behavior, Psychological Reviewdoi.org
- Ono (1987) Superstitious behavior in humans, Journal of the Experimental Analysis of Behaviordoi.org
- Damisch, Stoberock & Mussweiler (2010) Keep your fingers crossed! How superstition improves performance, Psychological Sciencedoi.org
- Calin-Jageman & Caldwell (2014) Replication of the superstition and performance study by Damisch, Stoberock, and Mussweiler (2010), Social Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











