心理学ホント

【共通テストに出た】「それウソでした」と言われても信じ続ける。信念の固執の実験

【共通テストに出た】「それウソでした」と言われても信じ続ける。信念の固執の実験

読む前に予想してみよう!

間違った情報は、「それは間違いでした」とはっきり訂正すれば、ほぼ完全に影響が消える

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生
規模
各数十人規模
研究の種類
実験研究(種明かし手続き)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

ニセの情報で作られた思い込みは、「あれは作り話でした」と種明かしされても残り続けた。自分で理由を考えた人ほど、思い込みは強く残った。

ひとことで言うと「ウソだったよ」と言われても、一度信じたことはなかなか消えないらしい!

もくじ
  1. 「よくできました」と、ウソをつかれた学生たち
  2. 理由を「自分で考えた」人ほど抜けない
  3. SNS時代の「訂正が効かない」問題
  4. まとめ

ネットで見たニュースが、あとで「誤報でした」と訂正された。でもなぜか、最初の印象が頭から離れない――。

これは、あなたの頭が固いからではありません。人間の心には、根拠がなくなっても信念を持ち続けてしまうクセがあるのです。心理学ではこれを「信念の固執(belief perseverance)」と呼びます。

2024年度の大学入学共通テスト(追試験)英語リーディングでは、この現象を扱った長文が出題されました。元になった古典的な実験を見てみましょう。

01「よくできました」と、ウソをつかれた学生たち

根拠は完全に消えたのに、思い込みだけが残った。しかも、横で見ていた「観察者」にも同じことが起きました。

02理由を「自分で考えた」人ほど抜けない

1980年には、アンダーソンらがさらに踏み込んだ実験をしました。

参加者に消防士の事例を2つ読ませます。ある人には「リスクを取る人ほど優秀な消防士」、別の人には「慎重な人ほど優秀」と読める事例を見せました。さらに一部の人には、「なぜそうなるのか」を自分で文章に書いて説明してもらいました。

そのあと「事例は作り話でした」と種明かし。それでも参加者の多くは、最初に読んだ方向の考えを持ち続けました。そして、自分で理由を書いた人ほど、その考えが強く残る傾向がありました。

自分で作った「納得のストーリー」は、元の証拠が消えても、独り立ちして生き残るのです。

土台(根拠)を抜かれても、思い込みの塔は立ち続ける
土台(根拠)を抜かれても、思い込みの塔は立ち続ける

03SNS時代の「訂正が効かない」問題

この現象は、現代の誤情報(misinformation)研究にもつながっています。

2012年のレビュー論文では、誤った情報は訂正された後も人の判断に影響し続ける「継続的影響効果」が、数多くの研究で確認されていると整理されました。単に「それは間違い」と言うだけでは、穴があいた部分を埋める説明がないため、元の情報が使われ続けてしまうのです。

では、どうすれば思い込みを外せるのか。ロスらの1975年の実験では、ただ「デタラメでした」と伝えるのではなく、「人は種明かしされても思い込みが残りやすい」という心の仕組みまで説明すると、間違った自己評価がほぼ消えました。

04まとめ

一度信じたことは、根拠が消えても簡単には消えない。だからこそ、情報を信じる前の一呼吸が大切です。

そして誰かの思い込みを解きたいときは、「間違いだよ」だけでなく、代わりの説明と「人ってそういうものだよね」という仕組みの話を添えてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy do false ideas stay in our minds even after they are corrected? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why do false ideas stay in our minds even after they are corrected? In a 1975 experiment at Stanford University, Ross and his colleagues asked students to tell real notes from fake ones. The researchers then gave each student random feedback, saying that they had done well or badly. Afterwards, they explained clearly that the feedback had been fake.

Even so, students who had been told they did well still rated their ability highly, and those told they did badly rated it low. In a later study, people who wrote their own explanation for a false idea held on to it even more strongly. Our own stories seem to survive after the evidence disappears.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

なぜ間違った考えは、訂正された後でさえ心に残るのでしょうか。1975年のスタンフォード大学での実験で、ロスらは学生たちに、本物の文書と作られた文書を見分けるよう求めました。その後研究者たちは、各学生に「よくできた」または「できなかった」という、ランダムに決めた結果を伝えました。その後、その結果がニセモノだったとはっきり説明しました。

それでも、よくできたと言われた学生は自分の能力を高く評価し続け、できなかったと言われた学生は低く評価し続けました。後の研究では、間違った考えについて自分で説明を書いた人は、その考えをさらに強く持ち続けました。自分で作ったストーリーは、証拠が消えた後も生き残るようです。

4択リーディングクイズ

Q1. What was the feedback in the 1975 experiment based on?

Q2. What happened after the researchers explained that the feedback was fake?

Q3. According to the later study, what makes a false belief stronger?

重要単語

  • perseveranceC1
    名詞固執、粘り強さBelief perseverance makes false ideas hard to remove. ふつうは「忍耐、根気」というほめ言葉。心理学の belief perseverance では「固執」と訳す。動詞は persevere。
  • discreditC1
    動詞信用を失わせる、誤りだと示すThe evidence was later discredited. dis(否定)+credit(信用)。受動態 be discredited で「誤りだと示される」の形が多い。
  • debriefingC1
    名詞(実験後の)種明かし、事後説明After the debriefing, participants learned the truth. brief(要点を伝える)に de- がついた語。心理実験の手順を問う長文で出る。
  • misinformationB2
    名詞誤情報Misinformation spreads quickly online. 不可算名詞。意図的な偽情報は disinformation と区別される。情報リテラシー系の長文で頻出。
  • confirmation biasC1
    名詞(句)確証バイアスConfirmation bias leads us to ignore opposing facts. 自分の考えに合う情報ばかり集める傾向。belief perseverance と並んで入試頻出の認知バイアス。
  • persistB2
    動詞持続する、残り続けるThe rumor persisted even after it was denied. persist in ~ing「~し続ける、固執する」の語法が頻出。形容詞は persistent(しつこい、持続的な)。
  • cling toB2
    熟語~にしがみつく、固執するSome people cling to old ideas. cling-clung-clung と不規則変化。stick to ~ / adhere to ~ が言い換えとして出る。

動画でもっと知る

実験で「よくできました」とウソの結果を伝え、あとで「あれはデタラメでした」と種明かししても、思い込みは消えなかったらしい。別の実験では、自分で理由を考えた人ほど残りやすかった。フェイクニュース時代に知っておきたい心のクセ。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Ross, Lepper & Hubbard (1975) Perseverance in self-perception and social perception: biased attributional processes in the debriefing paradigm, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Anderson, Lepper & Ross (1980) Perseverance of social theories: the role of explanation in the persistence of discredited information, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  3. Lewandowsky et al. (2012) Misinformation and its correction: continued influence and successful debiasing, Psychological Science in the Public Interestdoi.org