植物も夜は「寝る」? ネムノキの葉が閉じる理由と、リンネが考えた“花時計”

読む前に予想してみよう!
植物の葉の開閉は、真っ暗な場所に置くとすぐに止まってしまう
暗い場所でもしばらくは約24時間のリズムで開閉が続く。これが体内時計の証拠になった。
- 対象
- マメ科の植物やシラカバなど
- 規模
- 野外・実験室の観察
- 研究の種類
- 観察研究と総説
- 確かさ
- ★★★☆☆
夜に葉をたたむ「就眠運動」は本当にある。暗い場所でも続くことから体内時計の発見につながった。ただ動物の睡眠と同じものではない。
ひとことで言うと夜に葉っぱをとじる植物がいる。体の中に時計があるんだ!
夕方、公園のネムノキを見上げてみてください。昼間は羽のように広がっていた小さな葉が、ぴったりと閉じているはずです。
名前のとおり「眠る木」。こうした、夜になると葉をたたむ動きを就眠運動といいます。じつはこの動きが、生物学の大発見――体内時計の発見につながりました。
01真っ暗な戸棚の中でも、葉は動き続けた
1729年、フランスの天文学者ド・メラン(de Mairan)は、オジギソウの葉が昼に開いて夜に閉じることに注目しました。そこで鉢を光の入らない戸棚に入れてみたのです。
すると、太陽の光がまったく届かないのに、葉はほぼ毎日のリズムで開いたり閉じたりを続けました。植物は外の明るさに反応しているだけでなく、自分の中に時計を持っている――これが、のちに「概日(がいじつ)リズム」と呼ばれる仕組みの最初の手がかりになりました。
02葉の付け根の「ちょうつがい」が動く
マメ科の植物の葉の付け根には、葉枕(ようちん)というふくらんだ部分があります。ここの細胞が、カリウムなどのイオンと一緒に水を出し入れして、ふくらんだりしぼんだりすることで、葉が上下に動くのです。
日本では、上田実さん(現・東北大学)らが、マメ科植物から葉を開かせる物質・閉じさせる物質を探し出す研究を進めてきました(Ueda & Yamamura、2000年)。植物の“眠り”の裏には、ちゃんと化学のスイッチがあるのです。

03木の枝まで「夜に垂れる」
就眠運動は小さな草だけの話ではありません。
高さ数メートルの木が、毎晩こっそり“うなだれて”いる。人の目では気づけない、ゆっくりした動きです。
04リンネの「花時計」
18世紀の植物学者リンネは、花が開く時刻が種類ごとに違うことに注目し、花壇に植えるだけで時刻がわかる「花時計」のアイデアを書き残しました。朝に開く花、昼に開く花、夕方に開く花……。
ただし実際には、花の開く時刻は気温・天気・緯度でずれます。リンネの花時計は、正確な時計というより「植物は時刻を知っている」ことを示す、ロマンあふれる思考実験だったといえます。
05まとめ
植物は夜になると、葉をたたみ、枝を垂らし、静かに“おやすみモード”に入ります。それは動物の睡眠とは別物ですが、脳がなくても時刻を知り、毎日のリズムを刻んでいることの証拠です。
今夜、近くの草むらを懐中電灯で照らしてみてください。昼とは違う、植物の“寝顔”が見られるかもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany plants, such as the silk tree, fold their leaves at night.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Some plants fold their leaves at night, as if they are sleeping. About 300 years ago, a French scientist put a mimosa plant in a dark cupboard.
Even without sunlight, the leaves kept opening and closing almost every day. This showed that plants have a clock inside them. Even big trees move at night. Birch branches hang down by up to about 10 centimeters.
64 words ・ CEFR A2
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夜になると、眠っているかのように葉をたたむ植物があります。約300年前、フランスの科学者がオジギソウを真っ暗な戸棚に入れました。
日光がなくても、葉はほぼ毎日開いたり閉じたりしました。これは、植物が体の中に時計を持っていることを示していました。大きな木も夜に動きます。シラカバの枝は最大で約10センチ垂れ下がるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
夜に葉をたたむ植物と、そこからわかった体内時計の話なので D。
Q2. Where did the French scientist put the mimosa plant?
put a mimosa plant in a dark cupboard とあるので B。
Q3. In this passage, "fold" means ...
fold は「折りたたむ」。葉を折り重ねるように閉じることなので A。
Many plants, such as the silk tree, fold their leaves at night. This is called nyctinasty, or sleep movement. In 1729, the French astronomer de Mairan put a mimosa plant in a dark cupboard. The leaves kept opening and closing on an almost daily rhythm, which showed that plants have an internal clock.
The leaves move because cells at their base take in or release water, so they swell or shrink. In 2016, researchers used laser scanners to measure birch trees at night and found that the branches drooped by up to about 10 centimeters before returning in the morning. However, these movements are not the same as sleep in animals.
111 words ・ CEFR B1
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ネムノキなど多くの植物は、夜に葉をたたみます。これは就眠運動と呼ばれます。1729年、フランスの天文学者ド・メランはオジギソウを真っ暗な戸棚に入れました。葉はほぼ毎日のリズムで開いたり閉じたりし続け、植物に体内時計があることが示されました。
葉が動くのは、葉の付け根の細胞が水を取りこんだり出したりして、ふくらんだりしぼんだりするからです。2016年、研究者たちはレーザースキャナーで夜のシラカバを測定し、枝が最大で約10センチ垂れ下がり、朝には元に戻ることを発見しました。ただし、こうした動きは動物の睡眠と同じものではありません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
就眠運動と、そこからわかった体内時計、葉の動くしくみ、木の枝の動きを述べているので C。
Q2. Why do the leaves move?
cells at their base take in or release water, so they swell or shrink とあるので A。
Q3. Why was de Mairan's experiment important?
暗闇でもリズムが続いたことで which showed that plants have an internal clock とあるので B。最終文から A は誤り。
In 1729, the French astronomer de Mairan put a mimosa plant in a dark cupboard. Its leaves kept opening and closing on a roughly daily cycle, even without sunlight. This was the first clue to what are now called circadian rhythms, internally generated cycles of about 24 hours.
Mimosa is not unusual in moving at night. Many plants, including the silk tree and wood sorrel, fold their leaves at dusk, a behavior known as nyctinasty. The movement comes from the pulvinus, a swollen joint at the base of the leaf. Its cells change volume by moving potassium and other ions together with water.
Even trees do something similar. Using laser scanning on windless nights, a 2016 Finnish and Austrian study found that birch branches and leaves drooped by up to about 10 centimeters, reaching their lowest point around sunrise. Nobody is sure why leaves fold at night. One idea is that it reduces heat loss.
Another is that it helps nocturnal predators find plant-eating insects. Calling nyctinasty "sleep" is a metaphor, because it lacks features of animal sleep, such as a raised arousal threshold.
184 words ・ CEFR B2
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1729年、フランスの天文学者ド・メランは、オジギソウを真っ暗な戸棚に入れました。日光がなくても、葉はおよそ1日周期で開いたり閉じたりし続けました。これが、現在「概日リズム」と呼ばれる、体内で生み出される約24時間の周期の最初の手がかりとなりました。
夜に動く植物はオジギソウだけではありません。ネムノキやカタバミなど多くの植物は、夕暮れに葉をたたみます。これは就眠運動として知られる行動です。動きを生み出すのは、葉の付け根のふくらんだ関節である「葉枕」です。葉枕の細胞は、カリウムなどのイオンを水と一緒に移動させて体積を変えます。
木でさえ似たことをしています。2016年のフィンランドとオーストリアの研究は、風のない夜にレーザースキャンを使い、シラカバの枝や葉が最大で約10センチ垂れ下がり、日の出前後に最も低くなることを見いだしました。なぜ葉が夜にたたまれるのかは、はっきりわかっていません。熱が逃げるのを減らすためという説があります。夜行性の捕食者が植物を食べる虫を見つけやすくするためという説もあります。
就眠運動を「眠り」と呼ぶのはたとえにすぎません。覚醒閾値の上昇といった、動物の睡眠の特徴がないからです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
就眠運動の発見の歴史、しくみ、木での例、理由をめぐる議論、睡眠との違いを述べているので B。
Q2. When did birch branches reach their lowest point?
reaching their lowest point around sunrise とあるので D。
Q3. Why does the author say calling nyctinasty "sleep" is a metaphor?
it lacks features of animal sleep, such as a raised arousal threshold とあるので C。metaphor は「たとえ」。
重要単語
- circadian rhythmC1名詞(句)概日リズム(約24時間のリズム)Leaf movements follow a circadian rhythm.
circa(約)+dies(日)。時差ぼけ(jet lag)の説明でも出る重要語。 - foldB1動詞たたむ、折りたたむSome plants fold their leaves at dusk.
fold one's arms「腕を組む」。-fold は「~倍」の意味の接尾辞にもなる(twofold=2倍)。 - internal clockB2名詞(句)体内時計Plants have an internal clock even without a brain.
body clock, biological clock とも言う。internal ⇔ external(外部の)。 - hypothesisB2名詞仮説There are several hypotheses about why leaves close at night.
複数形 hypotheses。動詞 hypothesize(仮説を立てる)。 - droopC1動詞垂れ下がる、しおれるBirch branches droop slightly at night.
drop(落ちる)と似たイメージ。drooping eyelids「垂れたまぶた」。 - metaphorB2名詞比喩、たとえSaying that plants sleep is a metaphor.
like/as を使う simile(直喩)と区別して「隠喩」とも訳す。入試の文学的問題でも出る。 - nocturnalC1形容詞夜行性のNocturnal predators hunt insects at night.
反対語は diurnal(昼行性の)。nocturne(夜想曲)と同語源。
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ネムノキやカタバミが夜に葉をたたむ「就眠運動」。約300年前、オジギソウを真っ暗な戸棚に入れても葉が毎日開閉し続けたことから、植物に体内時計があることを示す最初の手がかりになった。シラカバの枝も夜に垂れるらしい。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Minorsky (2019) The functions of foliar nyctinasty: a review and hypothesis, Biological Reviewsdoi.org
- Puttonen et al. (2016) Quantification of Overnight Movement of Birch (Betula pendula) Branches and Foliage with Short Interval Terrestrial Laser Scanning, Frontiers in Plant Sciencedoi.org
- Ueda & Yamamura (2000) Chemistry and Biology of Plant Leaf Movements, Angewandte Chemie International Editiondoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










