NEW別館「マジか!?ことば」英語と日本語の「えっ、マジか!?」を辞書と論文でウラ取りのぞいてみる →
動物・植物ビミョー

カラスの「お葬式」の正体は? 仲間の死体のまわりで騒ぐのは、悲しみより危険を学ぶためらしい

カラスの「お葬式」の正体は? 仲間の死体のまわりで騒ぐのは、悲しみより危険を学ぶためらしい

読む前に予想してみよう!

カラスは仲間の死体を見つけると、その場所をしばらく警戒するようになる

研究カード(どんな研究?)
対象
野生のアメリカガラス・ウェスタンスクラブジェイ
規模
シアトル周辺の17地域・100以上のなわばり(2015年の研究)ほか
研究の種類
野外での提示実験(はく製を使用)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

カラスは仲間の死体を見つけると大声で鳴いて集まる。実験すると、悲しみの儀式というより「ここは危ない」「あの人間が怪しい」を学ぶ行動らしいとわかった。

ひとことで言うとカラスが死んだ仲間のまわりで鳴くのは「ここは危ない」と学ぶためらしい!

もくじ
  1. 仮面の人が「死んだカラス」を見せる実験
  2. カケスにも「お葬式」があった
  3. 死体に触れるのは「まれ」で、ちょっと不思議
  4. まとめ

道ばたにカラスの死体があると、まわりにたくさんのカラスが集まって、ガーガーと大騒ぎしていることがあります。

まるで仲間を弔う「お葬式」のよう。ネットでは「カラスは仲間の死を悲しむ」と紹介されることもあります。

でも、カラスたちは本当に悲しんでいるのでしょうか? この問いに、実験で迫った研究者がいます。

01仮面の人が「死んだカラス」を見せる実験

実験をしたのは、アメリカ・ワシントン大学の2人です。当時大学院生だったケイリー・スウィフトさんと、「カラスは人の顔を覚える」という研究でも知られるジョン・マーズラフさんが、シアトル周辺の住宅地で調べました。

まず、カラスたちに数日間エサを与え、エサ場に慣れさせます。そのあと、人の顔そっくりの仮面をかぶった人が、死んだように見えるカラスのはく製を両手にのせて、エサ場から2mの所に立ちます。

比べるために、カラスを襲う天敵のタカのはく製を見せる場合や、死んだハトのはく製を見せる場合なども用意しました。

つまり、カラスたちは死体を見て、「ここは危ない」「あの人間は怪しい」ということを学んでいたのです。仲間の死体は、「近くに命にかかわる危険があるかもしれない」という大事なサインになるわけです。

仲間の死体は「ここで何かがあった」という危険のサイン。
仲間の死体は「ここで何かがあった」という危険のサイン。

02カケスにも「お葬式」があった

同じような行動は、カラスの親戚の鳥でも見つかっています。

2012年、アメリカ・カリフォルニア大学デービス校のテレサ・イグレシアスさんたちは、ウェスタンスクラブジェイ(アメリカ西部のカケス)で実験をしました。仲間の死体を置いて、反応を見たのです。カケスたちは死体を見つけると、大きな声で鳴きながら集まりました。その場所ではエサ探しが減り、24時間後にもまだ少なめで、48時間後にはもとに戻りました。論文のタイトルでも、この行動は「カケスのお葬式(funerals)」と呼ばれています。

03死体に触れるのは「まれ」で、ちょっと不思議

では、カラスたちは死んだ仲間に寄り添ったり、触れたりするのでしょうか。

2018年、スウィフトさんとマーズラフさんは、カラスが死体に触れるかどうかを詳しく調べました。その結果、カラスが死んだカラスに触れることはまれで、むしろ死んだハトやリスの方によく触れていました(ハトやリスは、カラスがエサにすることもある動物です)。

一方、死んだカラスに触れた数少ない場面では、つついたり引っ張ったりする攻撃的なふるまいや、交尾をしようとするようなふるまいが見られました。こうしたふるまいは、特定の季節にかたよって起きていました。

研究者たちの考えはこうです。死んだ仲間は「危険だ」というサインになる一方で、「攻撃したい」「交尾したい」という気持ちも引き起こすのかもしれない。そのため、カラスはどう反応すればよいか混乱している可能性がある、というのです。

人間の「お葬式」のように、静かに悲しむ姿とはだいぶ違うようです。

04まとめ

カラスの「お葬式」は、悲しみの儀式というより、仲間の死から危険を学ぶ授業のようなものでした。

カラスたちは、死体そのものだけでなく、そのそばにいた人間のことまで覚えています。道ばたでカラスが騒いでいたら、そっと距離をとるのが良さそうです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen crows find a dead crow, they often gather and make loud calls. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

When crows find a dead crow, they often gather and make loud calls. This is sometimes called a crow funeral, and some people believe the birds are grieving. Kaeli Swift and John Marzluff of the University of Washington tested this idea near Seattle. After the crows got used to a feeding site, a person stood there holding a stuffed dead crow.

The crows gave alarm calls and gathered in noisy groups. Afterwards, they took longer to approach the food at that site. When the same person returned later without the dead bird, the crows still scolded him. The results suggest that crows use the death of another crow to learn which places and people are dangerous.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

カラスは死んだカラスを見つけると、しばしば集まって大声で鳴きます。これはカラスのお葬式と呼ばれることがあり、鳥たちが悲しんでいると信じる人もいます。ワシントン大学のケイリー・スウィフトさんとジョン・マーズラフさんは、シアトルの近くでこの考えを確かめました。カラスがエサ場に慣れた後、ある人がはく製の死んだカラスを持ってそこに立ちました。

カラスたちは警戒の鳴き声をあげ、騒がしい集団を作りました。その後、カラスたちはその場所のエサに近づくまでに時間がかかるようになりました。同じ人が後で死んだ鳥なしで戻ってきても、カラスたちはやはりしかりつけるように鳴きました。この結果は、カラスがほかのカラスの死を利用して、どの場所や人が危険かを学んでいることを示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. Where did Swift and Marzluff do their experiment?

Q2. What did the crows do when the same person came back without the dead bird?

Q3. What does the study suggest about "crow funerals"?

重要単語

  • funeralB1
    名詞葬式People call this behavior a "crow funeral." attend a funeral「葬式に参列する」。発音は /ˈfjuːnərəl/。
  • conspecificC1
    名詞・形容詞同種の個体(の)Crows reacted strongly to dead conspecifics. con-(同じ)+specific(種の)。species(種)と同じ語根。論文英語で頻出。
  • alarm callB2
    名詞(句)警戒の鳴き声The crows gave loud alarm calls. alarm は「警報・不安」。alarm clock「目覚まし時計」も同じ語。
  • avoidB1
    動詞避けるCrows may avoid places where a dead crow was found. avoid の後は動名詞(avoid doing)。不定詞にしない点が文法問題の定番。
  • dangerA2
    名詞危険Dead crows may signal danger nearby. 形容詞 dangerous、動詞 endanger「危険にさらす」。endangered species「絶滅危惧種」。
  • grieveC1
    動詞深く悲しむSome people believe crows grieve for their dead. 名詞 grief「深い悲しみ」。sadness より重く、死別の悲しみによく使う。

動画でもっと知る

カラスは死んだ仲間のまわりに集まって大声で鳴く「お葬式」をするらしい。実験したら、その後約3日間はその場所のエサになかなか近づかなくなり、死体を手にしていた人間を最長6週間後まで警戒した。悲しんでいるというより「危険を学ぶ場」に近いのかも。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Iglesias, McElreath & Patricelli (2012) Western scrub-jay funerals: cacophonous aggregations in response to dead conspecifics, Animal Behaviourdoi.org
  2. Swift & Marzluff (2015) Wild American crows gather around their dead to learn about danger, Animal Behaviourdoi.org
  3. Swift & Marzluff (2018) Occurrence and variability of tactile interactions between wild American crows and dead conspecifics, Philosophical Transactions of the Royal Society Bdoi.org