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ウーパールーパーはなぜ“子どもの姿”のまま大人になる? 大人の姿にすると再生力が落ちる

ウーパールーパーはなぜ“子どもの姿”のまま大人になる? 大人の姿にすると再生力が落ちる

読む前に予想してみよう!

ウーパールーパーは、甲状腺ホルモンを与えると陸で暮らす姿に変態することがある

研究カード(どんな研究?)
対象
メキシコサンショウウオ(アホロートル)
規模
実験室で飼育された個体(数は研究ごとに異なる)
研究の種類
実験研究・ゲノム解析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

ウーパールーパーは、えらのある幼生の姿のまま大人になり卵を産む「幼形成熟」。甲状腺ホルモンの働きが弱いためで、大人の姿に変わらせる(変態させる)と再生力が落ちる。

ひとことで言うとウーパールーパーは、子どもの姿のまま大人になる、ふしぎな生き物!

もくじ
  1. ウーパールーパーとは? 正体はメキシコのサンショウウオ
  2. なぜ大人の姿にならない? 甲状腺ホルモンの合図が弱い
  3. 驚異の再生能力:手足も、しっぽも
  4. 変態させると、再生が遅くなり形も乱れる
  5. まとめ

結論から言うと、ウーパールーパーの成体は「子どもの姿のまま大人になる」のがふつうです。頭のふさふさした外えらも、背中のひれも、幼生(子ども)時代の特徴。それを残したまま成熟して卵を産みます。これを幼形成熟(ネオテニー)と呼びます。

原因のカギは甲状腺ホルモン。そして、この「大人にならない」性質は、彼らの驚異的な再生能力とも関係していました。

01ウーパールーパーとは? 正体はメキシコのサンショウウオ

ウーパールーパーは日本で広まった呼び名で、和名はメキシコサンショウウオ、英語ではアホロートル(axolotl)。野生ではメキシコシティ南部、ソチミルコの水路などにしかいない両生類です。

近い仲間のトラフサンショウウオは、ふつうカエルと同じように変態して陸に上がります。ところがアホロートルは、ふつう一生を水の中で、幼生の姿のまま過ごします。

水中型のまま大人になるのがふつう。変態した陸上型はめったに見られない
水中型のまま大人になるのがふつう。変態した陸上型はめったに見られない

02なぜ大人の姿にならない? 甲状腺ホルモンの合図が弱い

両生類の変態は、甲状腺ホルモンが合図になって起こります。アホロートルでは、この合図の仕組みのどこかが弱くなっているのです。

実はこの発見はとても古く、1920年にはイギリスの生物学者ジュリアン・ハクスリーが、甲状腺を食べさせたアホロートルが変態したことを『Nature』誌に報告しています。

ただし、なぜ甲状腺の働きが低いままなのか、根本の理由はまだよく分かっていません。2019年の論考(Crowner ら)は、ホルモンを測るだけの研究から一歩進んで、解読されたゲノムや遺伝子操作の手法を使って調べる必要があると指摘しています。

03驚異の再生能力:手足も、しっぽも

アホロートルは、切れた手足やしっぽ(中の脊髄ごと)を、元どおりの形に作り直せます。人間を含むほとんどの脊椎動物にはできない芸当です。

2018年には、そのゲノム(全遺伝情報)が解読されました。大きさは約320億塩基対と、ヒトの約10倍。体づくりに大事な遺伝子 Pax3 がなく、よく似た Pax7 がその役目を肩代わりしているらしい、という意外な発見もありました。

2025年の研究では、腕の「どの位置から作り直すか」を決めるのに、レチノイン酸という物質を分解する酵素が欠かせないことがわかりました。肩の近くで切ったのか、手首で切ったのかを、細胞が“覚えている”仕組みの一端です。

04変態させると、再生が遅くなり形も乱れる

「大人の姿」になると、すぐれた再生力の一部を手放すことになるようです。カエルも、オタマジャクシのころは足を再生できるのに、変態するころにその力を失います。

05まとめ

ウーパールーパーが子どもの姿のまま大人になるのは、甲状腺ホルモンの働きが弱いせい。そしてその姿は、すぐれた再生能力と一緒に保たれていました。「大人にならない」ことが、むしろ最強の武器なのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAxolotls are salamanders that live in the wild only in a few places in Mexico, such as the canals of… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Axolotls are salamanders that live in the wild only in a few places in Mexico, such as the canals of Xochimilco. Unlike their close relatives, which change their bodies and move onto land, axolotls usually stay in water and keep their larval features, such as feathery gills, even after they become adults. This is called neoteny.

Scientists explain that the axolotl's thyroid hormone system, which normally starts metamorphosis in amphibians, is not very active. When axolotls are given this hormone, they can change into a land form. However, a 2014 study found that axolotls that had been forced to change regrew their limbs about half as fast, and their new bones were more likely to have abnormal shapes.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ウーパールーパー(アホロートル)は、野生ではソチミルコの水路など、メキシコのごく限られた場所にしかいないサンショウウオです。体を変えて陸に上がる近い仲間と違い、ウーパールーパーはふつう水の中にとどまり、大人になった後もふさふさしたえらなどの幼生の特徴を保ちます。これを幼形成熟(ネオテニー)と呼びます。

科学者によると、両生類でふつう変態の合図となる甲状腺ホルモンの仕組みが、ウーパールーパーではあまり活発ではありません。このホルモンを与えられると、陸上型に変わることがあります。しかし2014年の研究では、無理に変態させられたウーパールーパーは手足を再生する速さが約半分になり、新しい骨の形に異常が出やすくなることがわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happened to the axolotls that were forced to change in the 2014 study?

Q3. What can we infer from the passage?

重要単語

  • neotenyC1
    名詞幼形成熟(幼い姿のまま大人になること)Neoteny allows axolotls to live in water all their lives. ギリシャ語 neos(若い)+teinein(引き延ばす)が語源とされる。neo- は neon, neonatal(新生児の)にも。
  • metamorphosisC1
    名詞変態Frogs go through metamorphosis from tadpoles. meta-(変化)+morph(形)。動詞は metamorphose。カフカの小説『変身』の英題も The Metamorphosis。
  • regenerateB2
    動詞再生するAxolotls can regenerate lost limbs. re-(再び)+generate(生み出す)。名詞 regeneration は再生医療(regenerative medicine)の文脈で頻出。
  • thyroid hormoneC1
    名詞(句)甲状腺ホルモンThyroid hormone controls metamorphosis in amphibians. thyroid は「盾の形の」が語源。thyroid gland で「甲状腺」。発音は /ˈθaɪrɔɪd/。
  • gillB2
    名詞えらThe axolotl breathes partly through its feathery gills. ふつう複数形 gills で使う。lungs(肺)と対比して覚える。
  • endangeredB1
    形容詞絶滅の危機にあるWild axolotls are critically endangered. endanger(危険にさらす)の過去分詞。endangered species「絶滅危惧種」は入試の定番コロケーション。

4コマでわかる

ウーパールーパーはなぜ“子どもの姿”のまま大人になる? 大人の姿にすると再生力が落ちるの4コマ漫画
ウーパールーパーの大人は、えらをつけた“子どもの姿”のまま。甲状腺ホルモンの働きが弱く、大人の姿に変わらない(変態しない)まま卵を産む。ホルモンで無理に変態させると陸上型になるけど、自慢の再生力が落ちてしまうらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Crowner et al. (2019) Rediscovering the Axolotl as a Model for Thyroid Hormone Dependent Development, Frontiers in Endocrinologydoi.org
  2. Rosenkilde & Ussing (1996) What mechanisms control neoteny and regulate induced metamorphosis in urodeles?, International Journal of Developmental Biologydoi.org
  3. Monaghan et al. (2014) Experimentally induced metamorphosis in axolotls reduces regenerative rate and fidelity, Regenerationdoi.org
  4. Nowoshilow et al. (2018) The axolotl genome and the evolution of key tissue formation regulators, Naturedoi.org
  5. Duerr et al. (2025) Retinoic acid breakdown is required for proximodistal positional identity during axolotl limb regeneration, Nature Communicationsdoi.org