本屋に行くとトイレに行きたくなる「青木まりこ現象」。40年たっても原因がわからない日本発の謎

読む前に予想してみよう!
本屋でトイレに行きたくなる原因は、紙のインクのにおいだと科学的に証明されている
においの説は有名だが、確かめた研究はほとんどない。原因は今もわかっていない。
- 対象
- 体験談中心
- 規模
- 学術的な研究はほとんどない
- 研究の種類
- 関連する生理学研究からの推測
- 確かさ
- ★☆☆☆☆
本屋で便意をもよおす「青木まりこ現象」は1985年の雑誌投稿が由来。におい・姿勢・緊張など説は多いが、学術的な検証はほとんどなく原因は不明。
ひとことで言うと本屋でトイレに行きたくなる人は本当にいる。でも、なぜかはまだ誰にもわからない!
もくじ
本屋で新刊をながめていたら、急にお腹がゴロゴロ……。図書館で調べものをしていたら、なぜかトイレに行きたくなる――。
「え、それ私もある!」と思った人、実はかなり多いはずです。この現象には、日本でちゃんと名前がついています。「青木まりこ現象」です。
01名前の由来は、1985年の読者投稿
1985年、書評誌『本の雑誌』の読者投稿欄に、青木まりこさんという女性が「なぜか書店に行くと便意をもよおす」という悩みを寄せました。
すると、「私も同じです」という反響が次々と寄せられ、誌面でも取り上げられるほどの話題に。投稿者の名前をとって、「青木まりこ現象」と呼ばれるようになりました。今ではテレビやネットでも取り上げられ、海外でも"Mariko Aoki phenomenon"として紹介されることがあります。
02有名な説①:紙やインクのにおい
いちばんよく聞くのが、本の紙やインクのにおいが腸を刺激するという説です。
たしかに、書店には新しい本特有のにおいがあります。ただ、どの成分が、どのように腸を動かすのかを確かめた研究は、ほとんど見当たりません。図書館の古い本でも起きるという人もいて、においだけで説明するのは難しそうです。
03有名な説②:前かがみの姿勢
本棚の下の段を見るとき、私たちは前かがみやしゃがんだ姿勢になります。
排便の姿勢を比べた研究では、しゃがむ姿勢のほうが、座る姿勢より楽に排便できることが示されています。前かがみの姿勢がお腹を圧迫したり、腸の出口の角度を変えたりして、便意を感じやすくなる――という説明は理屈としてはありえます。ただし、本屋での姿勢と便意の関係を直接調べた研究はありません。

04有名な説③:条件づけ・緊張・リラックス
ほかにも、こんな説があります。
- 条件づけ説:家のトイレで本を読む習慣がある人は、「本=トイレ」と体が覚えてしまった
- 緊張説:たくさんの本を前に「何を選ぼう」とプレッシャーを感じたり、静かな空間で緊張したりする
- リラックス説:好きな本に囲まれてリラックスし、腸が動き出す
腸と脳は、神経やホルモンを通じて密接につながっています(腸脳相関)。緊張するとお腹が痛くなる、という経験は多くの人にあるでしょう。
05正直に言うと「研究はほとんどない」
ここまで読んで、「で、結局どれが正しいの?」と思ったかもしれません。
正直に言うと、わかりません。この現象をきちんと調べた学術研究は、日本語でも英語でもほとんど見当たりません。どのくらいの人が経験しているのか、誰に起きやすいのかといった基本的なデータすら、信頼できる形ではまとまっていないのです。
それに、体験談には「記憶のかたより」もありえます。本屋でトイレに行きたくなったときは「また青木まりこ現象だ!」と強く印象に残る。でも、何も起きなかった日のことは覚えていません。名前がついたことで、かえって意識しやすくなった可能性もあります。
06それでもこの現象が愛される理由
青木まりこ現象は、誰にでも話せて、「わかる!」と共感しやすい謎です。しかも、一般の読者の投稿から名前がついたという、ちょっと微笑ましい経緯があります。
科学がまだ答えを出していないからこそ、「自分はどの説だと思う?」と考える楽しさが残っているのかもしれません。もしかしたら、この記事を読んだあなたが、いつかこの謎を解く研究者になるかもしれません。
07まとめ
- 「青木まりこ現象」は、1985年の雑誌への読者投稿が名前の由来
- においの説、前かがみの姿勢説、条件づけ説、緊張説など、説はたくさんある
- でも学術的な検証はほとんどなく、原因は今もわかっていない
「多くの人が体験している」と「原因がわかっている」は別のこと。身近な謎ほど、実はまだ誰もちゃんと調べていなかったりするのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people suddenly feel the need to use the toilet when they visit a bookstore.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do you ever need to go to the toilet in a bookstore? Many people in Japan say yes. In 1985, a woman named Mariko Aoki wrote about this to a magazine. Many readers answered, "Me too!"
So people started to call it the "Mariko Aoki phenomenon." Some people think the smell of paper causes it. Others think it is because we bend down. But no one really knows the reason.
70 words ・ CEFR A2
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本屋でトイレに行きたくなることはありますか。日本では「ある」と言う人がたくさんいます。1985年、青木まりこさんという女性が、このことについて雑誌に投稿しました。たくさんの読者が「私も!」
と答えました。そこで人々は、これを「青木まりこ現象」と呼ぶようになりました。紙のにおいが原因だと考える人もいます。かがむ姿勢のせいだと考える人もいます。でも、本当の理由は誰にもわかっていません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
本屋でトイレに行きたくなる「青木まりこ現象」の話なので B。
Q2. When did Mariko Aoki write to the magazine?
In 1985, a woman named Mariko Aoki wrote about this to a magazine. とあるので C。
Q3. In this passage, "bend down" means to ...
bend down は「かがむ・身をかがめる」。本棚の下の段を見るときの姿勢なので B。
Many people suddenly feel the need to use the toilet when they visit a bookstore. In Japan, this is known as the "Mariko Aoki phenomenon," named after a woman who described the problem in a letter to a book magazine in 1985. After her letter was published, many readers wrote in to say they had the same experience. Several explanations have been suggested. One is that the smell of paper and ink stimulates the bowels.
Another is that bending down to look at low shelves puts pressure on the stomach. Some people also think stress or relaxation plays a role, because the brain and gut are closely connected. However, almost no scientific studies have tested any of these ideas.
119 words ・ CEFR B1
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本屋を訪れると、急にトイレに行きたくなる人がたくさんいます。日本ではこれは「青木まりこ現象」として知られており、1985年に本の雑誌への投稿でこの悩みを書いた女性にちなんで名づけられました。彼女の投稿が掲載された後、多くの読者が同じ経験があると書き送りました。いくつかの説明が提案されています。1つは、紙とインクのにおいが腸を刺激するという説です。
もう1つは、低い棚を見るためにかがむと、お腹が圧迫されるという説です。脳と腸は密接につながっているので、緊張やリラックスが関係していると考える人もいます。しかし、これらの考えのどれも、科学的な研究でほとんど検証されていないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. How did the phenomenon get its name?
named after a woman who described the problem in a letter to a book magazine in 1985 とあるので C。
Q2. Which explanation is NOT mentioned in the passage?
におい・前かがみ・緊張やリラックスは挙げられているが、お菓子を食べることは書かれていないので D。
Q3. What is the most important point the author makes at the end?
最終文 almost no scientific studies have tested any of these ideas が筆者の強調点なので A。
In 1985, a reader named Mariko Aoki wrote to a Japanese book review magazine with an awkward problem. Whenever she browsed in a bookstore, she suddenly needed the toilet. Letters from readers with the same experience poured in, and the "Mariko Aoki phenomenon" got its name. Explanations are easy to find. The most popular suspect is the smell of paper and ink, but little research has identified a chemical that stimulates the bowels this way, and some people feel the same urge among old library books.
Posture is plausible in principle. Research comparing positions has shown that defecation is easier when squatting than when sitting, and shoppers often crouch to scan low shelves. Others point to conditioning in people who habitually read on the toilet, or to stress, since experiments show that psychological stress can change how the colon moves through the gut-brain connection.
But those experiments were not done in bookstores. Almost no peer-reviewed study has looked at the phenomenon itself, and even basic figures on how many people experience it are missing. Memory may also play tricks. A visit that ends in a dash to the restroom sticks in the mind, while the many uneventful ones are forgotten.
200 words ・ CEFR B2
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1985年、青木まりこという読者が、ある悩みを日本の書評誌に投稿しました。本屋で本をながめていると、急にトイレに行きたくなるというのです。同じ経験をした読者からの手紙が殺到し、「青木まりこ現象」という名前が生まれました。説明はいくらでも見つかります。最もよく疑われるのは紙とインクのにおいですが、このように腸を刺激する化学物質を特定した研究はほとんどなく、図書館の古い本でも同じ衝動が起きると言う人もいます。
姿勢も、理屈の上ではありえる説明です。姿勢を比べた研究では、座るよりしゃがむほうが排便しやすいことが示されており、買い物客は低い棚を探すときによくしゃがみます。ほかに、トイレで本を読む習慣がある人の条件づけや、緊張を挙げる人もいます。実験によって、心理的ストレスが腸と脳のつながりを通じて大腸の動きを変えうることが示されているからです。
しかし、それらの実験は本屋で行われたものではありません。この現象そのものを調べた査読付きの研究はほとんどなく、どれくらいの人が経験しているかという基本的な数字すらありません。記憶のいたずらもあるかもしれません。トイレへ駆けこむことになった訪問は記憶に残る一方、何も起きなかった多くの訪問は忘れられてしまうのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the author's main point?
説を多数紹介しつつ Almost no peer-reviewed study has looked at the phenomenon itself とまとめているので B。
Q2. Why does the author mention old library books?
紙とインクのにおい説への反例として、図書館の古い本でも同じ衝動が起きるという声を挙げているので A。
Q3. What does the author mean by "Memory may also play tricks"?
A visit that ends in a dash to the restroom sticks in the mind, while the many uneventful ones are forgotten と説明されているので B。
重要単語
- phenomenonB2名詞現象This strange phenomenon has a Japanese name.
複数形は phenomena。入試の文法・語法問題で複数形がよく問われる。 - bowel movementC1名詞(句)排便Stress can affect bowel movements.
bowel は「腸」。医療・健康系の英文で使われる丁寧な表現。 - hypothesisB2名詞仮説There are several hypotheses, but none is proven.
複数形は hypotheses。test a hypothesis「仮説を検証する」がセット。 - gut-brain axisC1名詞(句)腸脳相関(腸と脳のつながり)The gut-brain axis links emotions and digestion.
gut は「腸・内臓」。gut feeling は「直感」という意味になる。 - anecdoteC1名詞体験談、逸話Anecdotes are not the same as evidence.
形容詞 anecdotal。anecdotal evidence「体験談だけの根拠」は科学系長文の頻出語。 - plausibleC1形容詞もっともらしい、ありえそうなThe idea is plausible, but it has not been tested.
反対語は implausible。a plausible explanation「もっともらしい説明」の形で頻出。
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本屋に行くと急にトイレに行きたくなる「青木まりこ現象」。名前の由来は1985年に雑誌へ投稿した女性らしい。紙のにおい説、姿勢説、緊張説…いろいろあるけど、ちゃんとした研究はほとんどなく、原因は今も謎のまま。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Mayer (2011) Gut feelings: the emerging biology of gut–brain communication, Nature Reviews Neurosciencedoi.org
- Rao et al. (1998) Psychological and Physical Stress Induce Differential Effects on Human Colonic Motility, American Journal of Gastroenterologydoi.org
- Sikirov (2003) Comparison of Straining During Defecation in Three Positions: Results and Implications for Human Health, Digestive Diseases and Sciencesdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












