地球・歴史・物理ビミョー

ポールシフトとは? 地磁気の逆転は本当に起きる。でも「人類滅亡」はウワサだった

ポールシフトとは? 地磁気の逆転は本当に起きる。でも「人類滅亡」はウワサだった

読む前に予想してみよう!

地球の磁石のN極とS極は、過去に何度も入れ替わってきた

研究カード(どんな研究?)
対象
地層・溶岩・氷床コアの磁気記録
規模
世界各地の地質記録
研究の種類
古地磁気学の観測研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

地磁気のN極とS極が入れ替わる「地磁気逆転」は過去に何百回も起きた事実。最後は約77万年前(チバニアン)。ただ、近く起きる証拠も大量絶滅の証拠もない。

ひとことで言うと地球の磁石のN極とS極は、昔なんども入れかわった。でも今すぐではない!

もくじ
  1. ポールシフトとは? 2つの意味がごちゃまぜになっている
  2. 地磁気の逆転は「岩石の方位磁針」に記録されていた
  3. 千葉の地層「チバニアン」が記録した最後の逆転
  4. いま地磁気は弱まっている。でも「逆転間近」ではない
  5. どんでん返し:「逆転で大量絶滅」説はどうなった?
  6. まとめ

「ポールシフトが起きて地球がひっくり返る」「そのとき人類は滅亡する」――ネットや動画でときどき見かける話です。

結論から言うと、ポールシフトのうち「地磁気の逆転」(方位磁針のN極とS極が指す向きが入れ替わること)は、地球の歴史で何百回も起きてきた本当の現象です。最後の逆転は約77万年前で、その証拠が千葉県の地層に残り、「チバニアン」という地質時代の名前にまでなりました。ただし、近いうちに逆転が起きるという確かな証拠はなく、過去の逆転が大量絶滅を起こした証拠も見つかっていません。

01ポールシフトとは? 2つの意味がごちゃまぜになっている

「ポールシフト」という言葉は、実は2つの違う話が混ざって使われています。

1つ目は地磁気の逆転。地球は巨大な磁石のようになっていて、いまは方位磁針のN極が北を指します。この磁石の向きが、ときどき入れ替わるのです。地球の外核にある、ドロドロに溶けた鉄の流れが磁場を作っていて、その流れの変化によって起きると考えられています。

2つ目は、地球の自転軸そのものが急にひっくり返るという話。こちらは、映画や陰謀論でよく出てきますが、数日で地軸がひっくり返るような科学的根拠はありません。この記事で扱うのは1つ目、本当に起きる地磁気の逆転です。

02地磁気の逆転は「岩石の方位磁針」に記録されていた

なぜ何十万年も前の磁石の向きがわかるのでしょうか。

溶岩が冷えて固まるときや、海底に泥が積もるとき、その中の磁気を帯びた小さな鉱物が、当時の地磁気の向きにそろって固定されます。いわば、岩石の中に「化石になった方位磁針」が入っているのです。

世界中の地層や海底の岩石を調べると、N極とS極の向きが何度も入れ替わってきたことがわかります。NASAの解説によると、過去8,300万年の間に183回の逆転があり、平均すると数十万年に1回のペースです。

03千葉の地層「チバニアン」が記録した最後の逆転

さらに、米ウィスコンシン大学のシンガーらが、溶岩・海底の堆積物・南極の氷床コアの記録を突き合わせた研究(2019年)では、最後の逆転は一瞬で起きたのではなく、約2万2,000年かけて、磁場が弱まったり乱れたりをくり返しながら進んだと考えられています。

地層に閉じこめられた「化石の方位磁針」が、地磁気の逆転を記録している
地層に閉じこめられた「化石の方位磁針」が、地磁気の逆転を記録している

04いま地磁気は弱まっている。でも「逆転間近」ではない

人工衛星の観測によると、地球の磁場はこの200年ほどで平均約9%弱まっています。特に南米から南大西洋にかけては南大西洋異常帯と呼ばれる磁場の弱い場所が広がり、ここを通過する人工衛星は故障のリスクが高まります。

「やっぱり逆転が近い!」と思うかもしれません。でも欧州宇宙機関(ESA)もNASAも、今の弱まりは自然なゆらぎの範囲内で、逆転が差し迫っている証拠ではないと説明しています。逆転が始まったとしても、数百年〜数千年以上かけてゆっくり進むと考えられています。

05どんでん返し:「逆転で大量絶滅」説はどうなった?

2021年、Science 誌に「約4万2,000年前、地磁気の一時的な大きなゆらぎ(ラシャンプ・エクスカーション)の時期に、地球規模の環境危機が起き、大型動物の絶滅や人類の文化の変化につながった」という大胆な論文が載りました。

ところが、同じ年のScience 誌には、「絶滅や文化変化についてのデータや先行研究の解釈が誤っている」とする反論が掲載されました。磁場が弱まれば地表に届く宇宙線や紫外線が増える可能性はありますが、それが大量絶滅を起こしたという確かな証拠は、今のところありません。NASAも、過去の逆転の時期の化石記録に大きな異変は見られないとしています。

06まとめ

ポールシフト(地磁気の逆転)は、地球の歴史で何度も起きてきた本当の現象。最後の逆転は約77万年前で、日本の地層「チバニアン」がその証人です。でも、近いうちに起きる証拠も、人類を滅ぼすという証拠もない――これが今の科学の答えです。

方位磁針が北を指すのは、地球の長い歴史のなかでは「たまたま今そうなっている」だけ。そう思うと、手のひらの小さな磁石が、ちょっと壮大に見えてきませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"Pole shift" can mean two different things. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

"Pole shift" can mean two different things. One is a geomagnetic reversal, when the north and south magnetic poles switch places. This has really happened many times. When lava cools or mud settles on the sea floor, tiny magnetic minerals line up with Earth's magnetic field and keep that direction.

According to NASA, there have been 183 reversals in the last 83 million years. The last one was about 770,000 years ago, and rock layers in Chiba recorded it so well that the period was named the Chibanian. The other meaning, a sudden flip of Earth's spin axis, has no scientific basis. Also, there is no evidence that a reversal is about to happen.

114 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「ポールシフト」には2つの違う意味があります。1つは地磁気の逆転で、磁石のN極とS極が入れ替わることです。これは実際に何度も起きてきました。溶岩が冷えるときや海底に泥が積もるとき、磁気を帯びた小さな鉱物が地球の磁場の向きにそろい、その向きを保ちます。

NASAによると、過去8,300万年の間に183回の逆転がありました。最後の逆転は約77万年前で、千葉の地層がそれをとてもよく記録していたため、その時代は「チバニアン」と名付けられました。もう1つの意味である、地球の自転軸が突然ひっくり返るという話には、科学的な根拠がありません。また、逆転が今にも起きるという証拠もありません。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main idea of the passage?

Q2. According to NASA, how many reversals have occurred in the last 83 million years?

Q3. How can scientists know the direction of the magnetic field from long ago?

重要単語

  • geomagnetic reversalC1
    名詞(句)地磁気逆転The last geomagnetic reversal happened long ago. geo-(地球)+magnetic(磁気の)。reverse(逆にする)の名詞 reversal。geography, geology も geo- の仲間。
  • magnetic fieldB2
    名詞(句)磁場Earth's magnetic field protects us from charged particles. field は「分野・野原」のほか物理では「場」。gravitational field「重力場」、electric field「電場」も同じ形。
  • excursionC1
    名詞地磁気エクスカーション(一時的な大きなゆらぎ)An excursion is a short-lived change in the field. ふだんは「遠足・小旅行」。ex-(外へ)+cur(走る)で「いつもの道から外れる」イメージ。
  • sedimentC1
    名詞堆積物Sediments can record the direction of the magnetic field. ラテン語 sedere(座る・沈む)から。sedimentary rock「堆積岩」。地学系の長文で頻出。
  • anomalyC1
    名詞異常、異常帯The South Atlantic Anomaly affects satellites. an-(否定)+homalos(平らな・等しい)で「均一でない」。形容詞 anomalous。abnormality より学術的な響き。
  • imminentC1
    形容詞差し迫ったThere is no sign of an imminent reversal. be imminent「今にも起こりそうだ」。eminent(著名な)とつづりが似ているので注意。
「ポールシフト」の地磁気逆転は、実は地球の歴史で何百回も起きていた。最後の逆転は約77万年前で、その証拠が千葉の地層に残り「チバニアン」という時代名になった。ただ、逆転で人類滅亡…という話には根拠がなかった。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Suganuma, Okada, Head et al. (2021) Formal ratification of the GSSP for the Chibanian Stage and Middle Pleistocene Subseries of the Quaternary System: the Chiba Section, Japan, Episodesdoi.org
  2. Haneda, Okada, Suganuma et al. (2020) A full sequence of the Matuyama–Brunhes geomagnetic reversal in the Chiba composite section, Central Japan, Progress in Earth and Planetary Sciencedoi.org
  3. Singer, Jicha, Mochizuki & Coe (2019) Synchronizing volcanic, sedimentary, and ice core records of Earth's last magnetic polarity reversal, Science Advancesdoi.org
  4. Cooper, Turney, Palmer et al. (2021) A global environmental crisis 42,000 years ago, Sciencedoi.org
  5. Hawks (2021) Comment on "A global environmental crisis 42,000 years ago", Sciencedoi.org