生成AI時代の英語教師の役割|AIに任せること・先生がすること
生成AIを使えば、英文の添削も、例文づくりも、会話の練習相手も、あっという間に手に入る時代になりました。「英語の先生の仕事は、これからどうなるのだろう」と感じている方もいるかもしれません。この記事では、AIに任せられることと、先生にしかできないことを整理し、これからの英語教師の役割を考えます。

01生成AIで何ができるようになったか
生成AIは、英語の学習や授業準備に関わる多くの作業を手伝ってくれます。
- 英文の文法や表現のチェック
- 難易度を調整した英文の作成(例:易しい英語への書き換え)
- 例文や練習問題のたたき台づくり
- 会話練習の相手(テキストや音声で)
- 英文の要約や、内容についての質問づくり
生徒にとっても、「分からないことをすぐ聞ける」「何度でも練習できる」という点で、心強い学習の相棒になりえます。
一方で、生成AIには誤りを含む出力をすることがある、生徒の実態や授業の文脈までは分からない、といった限界もあります。便利さと限界の両方を知ったうえで使うことが大切です。
ポイント:生成AIは「先生の代わり」ではなく、「先生が使いこなす道具」。何を任せ、何を自分でするかを決めるのが、これからの先生の仕事です。
使い方:AIが身近になった今、語学教育はどう変わるべきかを考えるトークです。英語科会議の前に見て、便利さと課題を1つずつ書き出し、共通理解の材料にします。
02授業準備で先生が使う例
授業準備でAIを使うと、たたき台を作る時間を大きく減らせます。具体的な使い方の例を挙げます。
1. 難易度別の英文を作る
教科書のテーマに関連した短い英文を、易しいもの・標準・やや難しいものの3段階で作ってもらい、生徒の習熟度に応じて使い分けます。
2. 発問や練習問題の候補を出す
「このテーマについて、中学3年生向けに意見を問う質問を5つ」と頼み、候補の中から先生が選んで調整します。
3. モデル文を作る
スピーチやエッセイのモデル文を作ってもらい、生徒のレベルに合うよう先生が書き直します。
- 例:Many people say that smartphones are bad for students. However, I think they can be useful if we use them wisely.
4. ALTとの打ち合わせ資料の英訳
授業の流れを英語でまとめる際の下書きに使い、分かりにくい部分を確認します。
どの場合も、最終的に先生が確認・判断することが前提です。また、利用するサービスや入力してよい情報については、学校や自治体のルールを必ず確認してください。
使うときのプロンプト(指示文)の例
- 「中学2年生向け。語数60語程度。テーマは『週末の過ごし方』。過去形を多く含む英文を書いてください」
- 「次の英文に対して、内容理解を確認するT/F問題を5つ作ってください。答えも付けてください」
学年、語数、テーマ、使わせたい文法など、条件を具体的に伝えるほど、修正の手間が減ります。
03公式のガイドラインと、先生向けのAI教材サービス
まず読むもの
文部科学省の生成AIの利用についてのページでは、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」が令和6年12月26日に公表されています。本体のほかに概要の資料もあるので、まずは概要から読み、自分の学校や自治体の方針とあわせて確かめましょう。
授業準備に使える先生向けのサービス
| サービス | できること | 注意点 |
|---|---|---|
| Diffit | 好きな話題や記事を、レベル別の英文に書き直し、問題もつける | 書き直した文に間違いが入ることがある。無料で使える量に限りがある |
| Twee | 英語の動画やテーマから、練習問題を作る | 先生向けのサービスで、案内は英語 |
| NotebookLM | 自分の資料をもとに要約や問いを作り、英語の音声の番組にもできる | 要Googleアカウント。名前や機能が変わることがある |
どれも「たたき台」を作る道具です。出力は必ず自分で確認し、教科書本文や生徒の個人情報を入力してよいかは、所属先のルールで確かめてから使いましょう。
生徒に使わせる場合
生徒が使うサービスには、利用規約で年齢の条件が決められていることがあります。授業で扱う前に、対象学年が条件を満たすか、保護者の同意が必要かを確かめ、学校の方針に沿って進めましょう。
使い方:教師向けにNotebookLMの使い方を解説するトレーニング動画です。自分の授業資料を1つ入れて要約と問いを作らせ、出力の誤りを確認する練習をします。
04生徒がAIを使うときの指導
生徒がAIを使う場面では、「使わせない」か「自由に使わせる」かの二択ではなく、どう使えば学びになるかを指導することが大切です。
学びにつながる使い方
- 自分で書いた英文を見てもらい、なぜ直されたのかを考える
- 分からない表現の使い方を質問し、例文を複数見る
- 会話の練習相手として使い、言えなかった表現を記録する
学びにつながりにくい使い方
- 課題の英文を最初からAIに書かせて提出する
- 直された文を、理由を考えずにそのまま写す
授業では、例えば次のような活動が考えられます。
- まず自分の力で英文を書く
- AIに見てもらい、指摘された点に下線を引く
- 指摘の理由を自分の言葉で説明する
- 最後にもう一度、自分で書き直す
このように、自分で考える過程を必ず残すことで、AIは学びを深める道具になります。なお、生徒が生成AIを使えるかどうかは、年齢制限や利用規約、学校の方針によって異なるので、事前に確認が必要です。
使い方:生徒と生成AIについてどう話し合えばよいかを考える動画です。この節の「学びにつながる使い方」をもとに、英語の課題でAIをどこまで使ってよいかを生徒と決めます。
05先生にしかできない5つの役割
AIがどれだけ便利になっても、英語の先生にしかできないことがあります。
- 目の前の生徒を知ること:どの生徒がどこでつまずいているか、今日は元気がないか。生徒の様子を見て授業を調整するのは先生の役割です。
- 学ぶ意味を伝えること:なぜ英語を学ぶのか、英語で何ができるようになるのか。先生自身の経験や言葉が、生徒の心を動かします。
- 人と人とのやり取りの場を作ること:教室で友達と英語で話し、笑い合い、分かり合う経験は、AIとの対話だけでは得にくいものです。
- 評価と判断:生徒の成長を見取り、次の目標を示すことは、先生の専門的な判断です。
- 使い方のお手本になること:先生自身がAIを上手に使い、限界も理解している姿を見せることが、生徒にとって一番の学びになります。
ポイント:AIが得意なのは「情報や英文を出すこと」。先生が得意なのは「人を見て、つなぎ、励ますこと」。役割分担を意識しましょう。
06使うときの注意点
生成AIを授業や校務で使うときは、次の点に注意しましょう。
- 個人情報を入力しない:生徒の名前や成績、家庭の情報などは入力しない
- 出力を必ず確認する:文法の誤り、不自然な表現、事実と異なる内容が含まれることがある
- 著作物の扱いに注意する:教科書本文や他人の文章を入力・利用してよいかは、ルールを確認する
- 学校や自治体の方針に従う:使ってよいサービスや範囲は、所属先のガイドラインを確認する
- 評価の公平性に配慮する:AIの使用を認める課題と認めない課題を明確にし、生徒に事前に伝える
文部科学省も、学校での生成AIの利用に関するガイドラインを公表しています。最新の内容は公式サイトで確認しましょう。
07よくある失敗
- AIで作った問題を確認せずに配る:選択肢に正解が2つある、解答が間違っている、といったミスが起こりえます。
- AIを禁止するだけで終わる:生徒は授業の外でAIに触れます。上手な使い方を教えるほうが、長い目で見て生徒のためになります。
- 課題の形が変わらない:「英文を書いて提出」だけの課題は、AIで簡単に済ませられてしまいます。授業中に書く、書いた内容について口頭で説明する、など課題の設計を工夫しましょう。
- 先生だけが使い方を知らない:生徒のほうが詳しいこともあります。先生自身がまず使ってみることが大切です。
- AIの出力をそのまま生徒の評価に使う:AIに採点の補助をさせる場合でも、最終的な評価は先生が根拠を持って行いましょう。
1週間で試すメニュー
- 月:AIで難易度別の英文を1本作り、自分で確認する
- 水:生徒に見せるモデル文を作り、クラスに合わせて書き直す
- 金:英語科の先生と、使ってみた感想と注意点を共有する
使い方:生成AI時代の評価の見直しを扱う動画です。「英文を書いて提出」だけの課題を1つ選び、授業中に書く・口頭で説明するなどの形に作り直します。
08今日からできること
生成AIの時代だからこそ、英語の先生の役割は「英語を教える人」から「英語を使って学ぶ場をデザインする人」へと広がっています。
まずは、次の授業で使うモデル文を1つ、生成AIに作ってもらいましょう。そして、それを自分のクラスの生徒に合わせて書き直してみてください。どこを直したか、なぜ直したかを考えることが、AI時代の英語教師としての判断力を育てる第一歩になります。
同時に、生徒にAIの使い方をどう伝えるか、英語科の先生同士で一度話し合ってみることもおすすめです。共通のルールがあると、生徒も迷わず、安心して学べます。
小さく試し、気づいたことを共有する。その積み重ねが、学校全体の使い方をよくしていきます。
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よくある質問
生徒に生成AIを使わせてもいいのでしょうか?
サービスの利用規約(年齢制限など)や学校・自治体の方針によって異なります。使わせる場合は、自分で考える過程を残す活動と組み合わせ、使い方のルールを事前に示しましょう。
AIの英文は正しいと考えてよいですか?
多くの場合は自然な英文ですが、誤りや不自然な表現、事実と異なる内容が含まれることがあります。授業で使う前には、必ず先生が確認してください。
AIがあれば英語を学ぶ必要はなくなりますか?
AIは便利な道具ですが、人と直接やり取りする力、内容を判断する力、相手に合わせて伝える力は、自分自身の英語力があってこそ発揮できます。英語を学ぶ意味はなくなりません。
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