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🔍 指導法の都市伝説中学校高校📖 約10分

英語の授業は100%英語でやるべきって本当? 日本語の使いどころを論文で判定

「授業は英語で」と言われると、日本語を一言でも使うと負けのような気がしてきます。でも学習指導要領が言うのは「英語で行うことを基本とする」。研究でも、短く的確な日本語は単語の定着を助けることが多いのです。

判定ほぼウソ

エビデンスの強さ:母語による短い説明が語彙学習を助けたという実験は複数あるが、逆の結果の研究もあり、条件(学習者の年齢・熟達度・何を教えるか)で結果が変わる。

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英語の授業は100%英語でやるべきって本当? 日本語の使いどころを論文で判定のイメージ
💡3行まとめ
  • 「100%英語でなければダメ」はほぼウソ。学習指導要領の解説も、趣旨に合っていれば補助的な日本語を認めています。
  • 単語の意味を日本語で短く添えると、英語だけの説明より定着がよかった実験が複数あります。
  • ただし「英語に触れる量を増やす」は正しい目標。日本語は英語を増やすための道具として、場面を決めて使いましょう。
⚖️判定:ほぼウソ

高校の学習指導要領は「授業は英語で行うことを基本とする」と定めていますが、その解説は、ポイントは「英語に触れる機会」と「実際のコミュニケーションの場面」をつくることであり、その趣旨の授業であれば、必要に応じて補助的に日本語を用いることも考えられると説明しています 1。つまり、公式の方針も「100%」ではありません。

研究でも、韓国の小学生443人と大学生286人を対象にした実験で、単語を教えるときに母語と結びつけると、英語だけの説明より語彙がよく身につき、とくに小学生でその効果が大きいと報告されています 2。

「ほぼ」とつけたのは、反対の結果もあるからです。スペインの中等学校の研究では、語彙は英語だけで教えた方がよく学べ、文法は母語も使った方がよいという結果でした 3。日本語を使えば使うほどよい、という話ではありません。

なお、ここで「ウソ」と判定しているのは「100%英語でなければダメ(決まりだから・日本語は一言でも害になるから)」という部分です。制度の上では、解説が補助的な日本語を認めているので「必須」ではありません。一方、研究のほうは、「単語や文法を説明する場面」だけを取り出して、英語だけで説明するか、母語も使って説明するかを比べたものです。授業全体を100%英語で進めたクラスと、日本語もまぜたクラスの成果を直接くらべたわけではありません 243。「授業の何%を英語にするのが最も効果的か」は、学習者や目標によって変わる条件しだいの問題です。

そもそも「英語の授業は100%英語で」って?

ひとことで言うと、この説は「英語の授業では、日本語を一言も使わず、すべて英語で進めなければならない」というものです。

出発点は、「外国語は外国語だけで教えるべきだ」という、20世紀の外国語教育で長く常識とされてきた考え方です 5。日本では学習指導要領の「授業は英語で行うことを基本とする」が、現場で「日本語禁止」「オールイングリッシュ」と受けとめられることがあります 1。

🎈たとえるなら

外国の山を登るとき、ガイドが現地のことばだけで話してくれると、ことばの勉強にはなります。でも、「この先は崖だから右へ」という大事な一言だけは、わかることばで言ってくれた方が安全で、結局たくさん歩けます。英語の授業の日本語も、全行程をわかることばで案内するのではなく、迷いそうな分かれ道でだけ使う道しるべだと考えるとよいでしょう。

「英語で行うことを基本とする」と「100%英語」のちがい

学習指導要領の「英語で行うことを基本とする」 「100%英語でなければダメ」
ねらい 英語に触れる機会と、実際のコミュニケーションの場面をつくる 日本語をなくすこと自体が目的になりがち
日本語は? 趣旨に合っていれば、必要に応じて補助的に使うことも考えられる 一言も使わない
注意されていること 英語の直後に毎回日本語訳をつけるような安易な使い方 ―

左の列は高校の学習指導要領の解説の説明です 1。

判定の理由を3つで

  1. 公式の方針も「100%」ではない:解説は、趣旨に合った授業なら、必要に応じて補助的に日本語を用いることも考えられると説明しています 1。
  2. 母語を短く添えた方が、単語がよく身についた実験がある:韓国の小学生・大学生の実験では、母語と結びつける説明の方が英語だけの説明より語彙の習得と保持に有利でした 2。英語と母語のちがいまで説明すると、さらに伸びた研究もあります 4。
  3. 「日本語が増えると英語が減る」とは限らない:教育実習生の授業の分析では、実習生の母語使用の量は、生徒が母語と外国語をどれだけ使うかにほとんど影響していませんでした(母語使用が全体に少ない授業での結果です)6。

「ほぼ」とつけたのは、語彙は英語だけの方がよく学べたという逆の結果もあるからです 3。「英語に触れる量を増やす」こと自体は正しい目標です。

どこから広まった?

「外国語は外国語だけで教えるべきだ」という考えは、20世紀の外国語教育で長く常識とされてきました。母語を使わないモノリンガル(単一言語)の前提です 5。その背景には、母語を使うと学習者が外国語で考えなくなる、外国語に触れる時間が減る、という心配がありました。

日本では、高校の学習指導要領に「授業は英語で行うことを基本とする」が入り、その後中学校にも同じ規定が加わりました 1。この「基本とする」が、現場ではいつのまにか「日本語禁止」「オールイングリッシュ」と受けとめられることがあります。

研究ではどうなってる?

🔬研究ではこう
  • 子どもほど母語の手がかりが効く:韓国の小学生443人・大学生286人の実験では、両方の年齢層で、母語と結びつける説明が英語だけの説明より語彙の習得と保持に有利で、小学生の方がその効果が大きくなりました 2。
  • 大学生でも母語の説明が有利な傾向:中国の大学1年生を対象に、リスニング活動中の語彙説明を母語まじりにするか英語だけにするかで比べた研究では、母語まじりの説明の方が有利な傾向が示されました。どちらの説明も、説明なしよりは語彙がよく身につきました 7。
  • いちばん効いたのは「比べる」説明:中国の高校生137人の研究では、英語だけの説明、母語の訳を添える説明、英語と母語の違いまで説明する対照的な説明を比べたところ、対照的な説明のグループが短期・長期とも最も語彙を伸ばしました。一方、同じ研究でリスニングの理解力が有意に伸びたのは説明なしのグループだけで、対照的な説明のグループや英語だけの説明のグループより伸びが大きかった、という結果も出ています 4。語彙の説明を手厚くすることと、聞いて理解する力を伸ばすことは、同時には両立しにくい場合があるのかもしれません。
  • 逆の結果もある:スペインの中等学校生60人の研究では、語彙は英語だけで教えたクラスの方がよく学び、文法は母語も使った方がよいという結果でした 3。
  • 先生の日本語の量と、生徒の英語の量:教育実習生の授業を分析した研究では、実習生の母語使用は全体に少なく、その量は生徒が母語と外国語をどれだけ使うかにほとんど影響していませんでした 6。

日本語を「ゼロにする」より「短くする」

英語だけで単語を説明しようとすると、先生は長い言いかえや例を重ね、生徒は推測に時間を使います。母語で一言添えれば、意味の確認は数秒で終わり、残りの時間を英語でのやり取りにあてられます。コロンビアの語学学校の研究も、母語の全面禁止は得策でなく、母語は対照分析などに役立てられる一方、英語に触れ、英語で切り抜ける練習とのバランスが必要だと結論しています 8。

じゃあ授業ではどうする?

学習指導要領の解説は、生徒の理解の程度に応じて、話す速さを調整したり、やさしく言いかえたり、くり返したりする工夫を求める一方で、英語の発話の直後に日本語の意味を付け加えるような安易な日本語の使用は、生徒から英語に触れる機会を奪うと注意しています 1。以上をふまえると、実践上は「英語に触れる機会を確保しつつ、学習上の目的がはっきりした場面に限って日本語を補助的に使う」という考え方が妥当でしょう。ただし、これは最適な英語使用率を研究が確定したという意味ではありません(語彙は英語だけの方がよかった研究もあります 3)。

✏️明日の授業でこうする
  1. 日本語を使う場面を先に決めておく:たとえば「新出語の意味の確認(一言だけ)」「日本語と英語の違いの説明」「複雑な活動の手順の最終確認」「生徒の心のケアが必要なとき(体調が悪い、友だちとトラブルがあったなど)」の4つだけ(研究で決まった区分ではなく、実践上の目安です)。それ以外は英語で。
  2. 単語は、まず英語で。伝わらないときだけ日本語を一瞬:新出語は、絵・ジェスチャー・やさしい言いかえで伝えるのが先です。それでも伝わりにくく、訳語を確かめることが学習のねらいに合う場合に限って、語の訳だけを板書などで短く示し、すぐ英語のやり取りに戻ります。解説は、英語の発話の直後に毎回日本語の意味を付け加えるような安易な日本語の使用を戒めているので 1、文ごとに訳を添える形にはしません。
  3. 日英の「ずれ」は日本語で比べる:語彙については、英語と母語の違いまで説明する対照的な説明が最も効果的でした 4。文法の違い(たとえば「~している」がいつも進行形になるわけではないこと)を日本語で比べて説明するのは、この結果を応用した実践上の提案です(文法で同じ効果が出るかは、この研究では調べていません)。
  4. 「同時通訳」をやめる:英語で言ったあとにすぐ日本語で言い直すと、生徒は日本語だけを待つようになります。言いかえ・ジェスチャー・板書で英語のまま伝える工夫を先に。
  5. 英語の割合をふり返る:学校の規程や生徒のプライバシーに配慮したうえで(先生の声だけを記録する方法もあります)、ときどき授業を録音し、英語で話した時間の割合を確かめます。数字より、「どの場面で日本語に逃げたか」を見るのがポイントです。
🗣️先生の英語(そのまま使える)
TThis is a harbor. Look at the picture. Many ships stop at the harbor. (伝わりにくければ、板書で harbor = 港 と一度だけ示す)
TLet me say it again, more slowly. Look at the picture.
THere is one difference between Japanese and English. 日本語の「〜している」は、英語ではいつも -ing になるとは限りません。たとえば「知っている」は I know. です。
TBefore you start, let's check the steps. What do you do first?
⚠️よくある失敗
  • 「日本語禁止」で生徒が置いてけぼり:英語が苦手な生徒ほど、何をすればよいかわからないまま時間が過ぎます。手順の確認だけは確実に。
  • 英語の直後に毎回日本語訳:解説が注意しているとおり、英語に触れる機会を奪います 1。
  • 「日本語OK」が「ほぼ日本語」に:このページで紹介した肯定的な実験が扱っているのは、主に語彙の意味や言語間の違いを限定して説明する場面での母語使用です 724。上の「日本語を使う4つの場面」は、それをふまえた実践上の提案で、授業の大部分は英語で進めます。

❓ よくある質問

Q. 英語の授業はオールイングリッシュでなければいけませんか?

ほぼウソです。学習指導要領の解説は、ポイントは英語に触れる機会と実際のコミュニケーションの場面をつくることだとし、その趣旨の授業であれば、必要に応じて補助的に日本語を用いることも考えられると説明しています 1。公式の方針も「100%」ではありません。

Q. 単語の意味は日本語で教えてもいいですか?

短く添えるのは有効なことがあります。韓国の小学生443人・大学生286人の実験では、母語と結びつける説明が英語だけの説明より語彙の習得と保持に有利で、小学生でその効果が大きくなりました 2。ただし、語彙は英語だけで教えた方がよく学べたという逆の結果もあります 3。

Q. 日本語を使ってよいのはどんな場面ですか?

このページの実践上の目安は、新出語の意味の確認(一言だけ)、日本語と英語の違いの説明、複雑な活動の手順の最終確認、生徒の心のケアが必要なときの4つです。英語と母語の違いまで説明する対照的な説明が、語彙を最も伸ばした研究もあります 4。それ以外は英語で進めます。

Q. 英語のあとに毎回日本語訳をつけるのはだめですか?

避けます。解説は、英語の発話の直後に日本語の意味を付け加えるような安易な日本語の使用は、生徒から英語に触れる機会を奪うと注意しています 1。生徒は日本語だけを待つようになるので、言いかえ・ジェスチャー・板書で英語のまま伝える工夫を先にします。

Q. 授業の何割を英語にするのが最適ですか?

研究で確定した数値はありません。研究は語彙や文法を説明する場面など限られた条件で比べたもので、授業全体を英語だけで行う場合の効果を直接くらべたものではありません 243。一律の数値目標より、場面ごとの判断の基準を共有する方が研究の知見に合っています。

🎓 もう一歩深く(大学院レベル)

🎓院生モードコードスイッチング研究の論点

教師のコードスイッチング(母語と目標言語の切りかえ)の研究は、長く教師の信念や使用の機能・量を記述するものが中心でした。学習成果との関係を実験的に調べた研究は少なかったのですが 7、その後、語彙学習では母語使用が有利という結果が複数報告されています 724。教室での母語使用を研究する Jang Ho Lee 氏と Ernesto Macaro 氏は、年齢差の背景に熟達度の差がある可能性を認めつつ、熟達度だけでは説明しきれないと述べています 2。

一方で、反対の結果 3 や、Macaro 氏による「教師の母語使用の量は、学習者の言語使用量にほとんど影響しない」という知見 6 もあります。ただし後者は実習生6人・14授業の小規模な事例研究で、学習成果を測ったものでも、母語使用の機能を比べたものでもありません。教師の母語使用の量だけでは生徒の言語使用を説明できない可能性を示すにとどまり、「どの機能で使うべきか」は別に検討が必要です。応用言語学者の Graham Hall 氏と Guy Cook 氏の総説も、授業での「最適な」母語使用とは何かを主要な論点の一つとして取り上げ、母語使用の機能や、先生・生徒の態度の研究を整理しています 5。

🎓院生モード「基本とする」の政策的な意味

学習指導要領の解説は、「授業は英語で行うことを基本とする」の趣旨を、生徒が日常で英語に触れる機会が非常に限られていることを踏まえ、教師が積極的に英語を使い、英語による言語活動を授業の中心にすることだと説明しています。また、教師がただ英語を使って授業を行えばよいということではない、とも明記しています 1。この方針は、インプットの量と質が学習成果を左右するという研究の流れとも整合的です(英語の授業は英語で、はどこまで? も参照)。

研究上の課題は、母語使用の効果が、学習者の年齢・熟達度、目標項目(語彙か文法か)、測り方(直後か遅延か、意味の再生か使用か)によって変わることです。「何%英語で」という一律の数値目標より、場面ごとの判断の基準を共有する方が、研究の知見に合っています。

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📑 出典(8件)

本文の上付き数字に対応。✔ は DOI / ISBN / 公式ページを書誌データベースと機械照合した印です。

  1. 文部科学省 (2018). 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編 英語編 公式ページ ✔ リンク確認済高校の科目構成(英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲ・論理・表現Ⅰ〜Ⅲ)、「支援」の考え方、語数、授業は英語での趣旨を説明した公式の解説
  2. Lee, J. H., & Macaro, E. (2013). Investigating age in the use of L1 or English-only instruction: Vocabulary acquisition by Korean EFL learners. The Modern Language Journal, 97(4), 887-901. doi:10.1111/j.1540-4781.2013.12044.x ✔ DOI照合済韓国の小学生と大学生で、単語の説明に母語を使うと英語だけより語彙がよく残り、とくに子どもで効果が大きかった研究
  3. Shabaka-Fernández, S. (2023). The effect of teacher language use in Spanish EFL classrooms. The Language Learning Journal, 51(2), 161-177. doi:10.1080/09571736.2021.1970794 ✔ DOI照合済スペインの中等学校で、語彙は英語だけで教えた方がよく、文法は母語も使う方がよいという結果を得た研究
  4. Zhang, P., & Graham, S. (2020). Vocabulary learning through listening: Comparing L2 explanations, teacher codeswitching, contrastive focus-on-form and incidental learning. Language Teaching Research, 24(6), 765-784. doi:10.1177/1362168819829022 ✔ DOI照合済中国の高校生137人。英語で説明・母語で説明・母語との対照つき説明・説明なしを比べ、対照つきが最も語彙が伸びた
  5. Hall, G., & Cook, G. (2012). Own-language use in language teaching and learning. Language Teaching, 45(3), 271-308. doi:10.1017/S0261444812000067 ✔ DOI照合済授業での母語使用・訳の役割についての研究をまとめた総説
  6. Macaro, E. (2001). Analysing student teachers' codeswitching in foreign language classrooms: Theories and decision making. The Modern Language Journal, 85(4), 531-548. doi:10.1111/0026-7902.00124 ✔ DOI照合済教育実習生の授業での母語使用を分析し、先生の母語使用の量は生徒の外国語使用の量にほとんど影響しなかったと報告
  7. Tian, L., & Macaro, E. (2012). Comparing the effect of teacher codeswitching with English-only explanations on the vocabulary acquisition of Chinese university students: A Lexical Focus-on-Form study. Language Teaching Research, 16(3), 367-391. doi:10.1177/1362168812436909 ✔ DOI照合済中国の大学生で、単語の説明を母語で短くはさむ方が英語だけより語彙習得で有利な傾向を示した研究
  8. Sampson, A. (2012). Learner code-switching versus English only. ELT Journal, 66(3), 293-303. doi:10.1093/elt/ccr067 ✔ DOI照合済コロンビアの語学学校で、学習者の母語使用には学習上の働きもあり、全面禁止は得策でないと論じた研究

最終更新 2026-10-18 ・ 原田英語 まちがいのご指摘はこちら