「見ているだけ」で伸びにくい理由
YouTubeで英語の動画を見るのは、それだけでも意味があります。英語の音に慣れる、英語圏の文化に触れる、英語への興味が続く――どれも大切なことです。
ただ、「見ているだけ」の状態には、いくつかの落とし穴があります。
- 映像で内容がわかってしまう:英語がわからなくても、映像で話の流れがつかめるため、英語を処理していないことがある
- 日本語字幕を読んでいるだけ:日本語字幕をつけっぱなしだと、英語ではなく日本語を読む時間になりがち
- 難しすぎる、またはやさしすぎる:自分のレベルと合っていない動画では、学びが少ない
- 1回見て終わり:新しい動画を次々と見るだけで、同じ表現に何度も出会う機会が少ない
言語習得の研究では、「理解できるインプット」を大量に受けることが大切だと考えられています(Krashenのインプット仮説)。ポイントは「理解できる」という部分。ただ英語が流れているだけでは不十分で、自分がある程度理解できる英語に、注意を向けて触れることが必要です。
ポイント:YouTubeは「楽しむ視聴」と「学ぶ視聴」を分けると、効果がぐっと上がります。
ジャンル別:英語学習での使い分け
YouTubeの英語動画は、ジャンルによって英語の特徴も、学べることも違います。目的に合わせて使い分けましょう。
① 学習者向けの英語解説チャンネル
発音、文法、フレーズなどを、学習者向けにわかりやすく解説する動画です。話すスピードがゆっくりめで、ポイントが整理されているのが特徴です。
向いている人:初級〜中級。「知識」を増やしたいとき
② やさしい英語ニュース・学習者向けニュース
学習者向けに、やさしい語彙やゆっくりした話し方でニュースを伝える番組があります。BBC Learning Englishのように、放送局が学習者向けのコンテンツを出している例もあります。
向いている人:中級。時事的な語彙や、試験のリスニング対策に
③ TED・TED-Ed
プレゼンテーションや、教育用アニメーションです。教養を深めながら、まとまった説明を聞き取る練習ができます。
向いている人:中級〜上級。受験・資格試験の長文やリスニングの背景知識づくりに
④ Vlog・日常系
英語圏の人の日常を撮影した動画です。教科書には出てこない、自然な会話表現や口語が聞けます。
向いている人:中級〜上級。「生きた英語」に触れたいとき
⑤ ドキュメンタリー・解説系
科学、歴史、自然などを扱う動画です。ナレーションがはっきりしていることが多く、語彙力と教養が同時に身につきます。
向いている人:中級〜上級。アカデミックな語彙を増やしたいとき
⑥ 趣味の動画(ゲーム実況・料理・スポーツなど)
自分の好きなことを英語で見るのは、続けるための最強のモチベーションです。
向いている人:全レベル。楽しむ視聴として、英語に触れる時間を増やしたいとき
字幕と再生速度を使いこなす
YouTubeには、英語学習に役立つ機能がそろっています。
字幕の段階的な使い方
- 日本語字幕:内容をつかむため(最初の1回だけ)
- 英語字幕:音と文字を結びつけるため
- 字幕なし:耳だけで理解する練習
同じ動画を、この順番で何回か見るのがおすすめです。レベルが上がってきたら、1をとばして英語字幕から始めましょう。
自動生成字幕に注意
YouTubeの字幕には、動画の制作者がつけた字幕と、音声から自動で作られた字幕(自動生成字幕)があります。自動生成字幕は便利ですが、聞き間違いや句読点の抜けがあることも少なくありません。学習に使うなら、できるだけ制作者がつけた字幕のある動画を選びましょう。
再生速度の活用
- 0.75倍:難しい部分を聞き取る、オーバーラッピングの練習をする
- 1.0倍:ふだんの視聴
- 1.25倍以上:慣れた動画で、速い英語への耐性をつける
便利な操作
パソコンでは、キーボードの矢印キーで数秒ずつ戻したり進めたりできます。聞き取れなかった部分をすぐにくり返し聞けるので、リスニング練習の効率が上がります。
※動画をダウンロードしたり、字幕をコピーして公開したりするのはやめましょう。YouTubeの画面上で視聴・学習するのが基本です。
受け身を能動に変える5つのテクニック
「学ぶ視聴」をするための具体的なテクニックを紹介します。
① 見る前に「目的」を1つ決める
「今日はこの動画で、使えるフレーズを3つ見つける」「結論を一言で言えるようにする」など、目的を決めてから見ると、集中の度合いが変わります。
② 一時停止して「予測」する
話の区切りで一時停止して、「次に何を言うだろう?」と予測してみましょう。予測したあとに聞くと、答え合わせのように注意して聞くことができます。
③ フレーズ・ハンティング
動画の中で「使えそう!」と思った表現をノートに書き留めます。たとえば、次のような表現です。
- It turns out that...(〜ということがわかった)
- The thing is...(実はね、問題は…)
- I ended up doing...(結局〜することになった)
見つけたフレーズは、自分の文を作って練習しましょう。
- It turns out that my phone was in my bag all along.
- I ended up studying until midnight.
(例文は編集部による作例です)
④ 30秒シャドーイング
気に入った動画の中から30秒ほどを選び、英語字幕を見ながらオーバーラッピング、慣れたら字幕なしでシャドーイングします。
⑤ 見終わったら「1分要約」
見終わったら、動画の内容を1分で英語か日本語で話してみましょう。声に出して説明することで、理解があいまいだったところがはっきりします。英語で話すのが難しければ、最初は3文書くだけでもOKです。
ポイント:1本の動画で5つ全部をやる必要はありません。毎回1つ取り入れるだけで、視聴が学習に変わります。
おすすめ機能:再生リストと「後で見る」
YouTubeを英語学習に使ううえで、意外と大切なのが「動画選び」の時間を減らすことです。
学習用の再生リストを作る
「英語・リスニング」「英語・発音」「英語・楽しむ用」のように、目的別に再生リストを作っておきましょう。勉強の時間になったら、リストから選ぶだけ。おすすめ動画を探し回って時間が過ぎる、ということを防げます。
「後で見る」は「勉強リスト」にする
気になる英語動画を見つけたら、その場で見ずに「後で見る」に入れておきます。そして、決めた勉強時間にまとめて見る。これで、「つい関係ない動画まで見てしまう」ことを減らせます。
おすすめ欄との付き合い方
YouTubeのおすすめ欄は、見れば見るほど次の動画を表示してくれます。勉強中は、おすすめ動画に気を取られないよう、再生リストから再生する、1本見終わったらいったん閉じる、などのルールを決めておきましょう。
英語の動画を「おすすめ」に増やす
逆に、英語の動画をたくさん見て、高評価をつけたりチャンネル登録したりしていくと、おすすめ欄に英語の動画が表示されやすくなります。ふだんのYouTube時間の中で、自然と英語に触れる機会が増えていきます。
YouTube英語学習の1週間メニュー
1日20〜30分で取り組める、ジャンルを組み合わせた1週間メニューの例です。
- 月曜:学習者向け解説――発音や文法の解説動画を1本。学んだポイントを1つノートにまとめる
- 火曜:やさしいニュース――学習者向けニュースを1本。英語字幕→字幕なしで2回見る
- 水曜:TED-Ed――興味のあるテーマを1本。見終わったら1分要約
- 木曜:Vlog――フレーズ・ハンティング。使える表現を3つメモして例文を作る
- 金曜:30秒シャドーイング――今週見た中から気に入った30秒を選んで練習
- 土曜:好きなジャンル――字幕なしで楽しむ。わかった部分に注目
- 日曜:振り返り――今週メモしたフレーズを、見ないで書き出す想起テスト
レベル別の調整
- 初級:学習者向け解説と、やさしいニュースを中心に。日本語字幕も積極的に活用
- 中級:TED-EdやVlogを増やし、英語字幕→字幕なしを基本に
- 上級:ドキュメンタリーや趣味の動画を字幕なしで。シャドーイングや要約を多めに
同じジャンルばかりに偏らず、いろいろなタイプの英語に触れることで、聞き取れる英語の幅が広がっていきます。
まとめ:YouTubeは使い方しだいで最高の教材になる
YouTubeは、英語学習の宝の山です。でも、宝を掘り出すには、ちょっとした工夫が必要です。
- 「楽しむ視聴」と「学ぶ視聴」を分ける
- ジャンルごとの特徴を知って、目的に合わせて使い分ける
- 字幕は「日本語→英語→なし」と段階的に外す
- 目的を決める、予測する、フレーズを集める、シャドーイング、要約で能動的に
- 再生リストで、動画選びの時間を減らす
「見ているだけ」の時間を、少しだけ「使う」時間に変える。それだけで、同じ30分でも英語力への効き目が変わってきます。今日見る1本から、さっそく試してみましょう。



