観点別評価の3つの観点
現行の学習指導要領のもとでは、各教科の評価は次の3つの観点で行われます。
- 知識・技能
- 思考・判断・表現
- 主体的に学習に取り組む態度
これは、学習指導要領が示す「育成を目指す資質・能力の三つの柱」(知識及び技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)に対応しています。ただし、「学びに向かう力・人間性等」のうち、感性や思いやりなど観点別評価になじまない部分は、個人内評価として扱うこととされています。
観点別学習状況の評価は、観点ごとにA・B・Cの3段階で評価し、それらを総括して評定につなげる仕組みです。小学校(外国語科)・中学校・高校で同じ枠組みが使われています。
ポイント:3観点は別々の力を見るものですが、授業の中では1つの活動で複数の観点を見ることもあります。大切なのは「どの場面で、どの観点を、どんな方法で見るか」を計画しておくことです。
英語科での各観点のイメージ
英語科では、各観点を次のようにイメージすると整理しやすくなります。ここでは一般的な考え方を示しますので、詳しくは国立教育政策研究所が公表している「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」なども参照してください。
知識・技能
- 英語の特徴やきまり(語彙・文法・音声など)を理解しているか
- その知識を、実際のコミュニケーションで使える技能を身につけているか
例:過去形の形を理解し、自分の週末の出来事を過去形で正しく書ける。
思考・判断・表現
- 目的や場面、状況に応じて、情報や考えなどを理解したり、伝え合ったりしているか
例:ALTに地域のおすすめの場所を紹介するという目的に合わせて、理由を添えて分かりやすく話している。
主体的に学習に取り組む態度
- 目的や場面、状況に応じて、情報や考えを伝え合おうとしているか
- 自らの学習を調整しようとしているか
例:相手に伝わるように、言い換えたり、表現を工夫したりしようとしている。
英語科の評価では、「知識があるか」だけでなく、目的や場面、状況に応じて使えるかが大切にされています。
「主体的に学習に取り組む態度」の誤解
3つの観点の中で、最も悩まれやすいのが「主体的に学習に取り組む態度」です。よくある誤解を整理しておきましょう。
誤解1:挙手の回数や提出物の有無で評価する
挙手の回数やノートの提出状況など、性格や行動の傾向を形式的に数えることは、この観点の趣旨とは異なるとされています。
誤解2:他の観点と切り離して評価する
英語科では、「思考・判断・表現」の評価と同じ場面で、一体的に評価することが多いと考えられます。例えばスピーチの場面で、内容の工夫(思考・判断・表現)と、伝えようとする工夫や粘り強さ(主体的に学習に取り組む態度)を合わせて見る、という形です。
誤解3:毎時間評価しなければならない
すべての時間ですべての観点を記録する必要はありません。単元の中で、記録に残す場面を精選することが大切です。
この観点では、粘り強く取り組もうとしているか、自分の学習を調整しようとしているか、という2つの側面から見ることが示されています。振り返りシートの記述なども、材料の一つとして活用できます。
単元の評価計画の立て方
評価計画は、授業が始まる前に単元単位で立てておくのが基本です。次の手順で考えると整理しやすくなります。
- 単元の目標を決める:例「自分の町の魅力を、理由を添えて1分間で紹介できる」
- 単元の評価規準を観点ごとに書く
- 評価の場面と方法を決める:どの時間に、何を使って評価するか
- 記録に残す場面を絞る:指導に生かす評価と、記録に残す評価を区別する
評価計画の例(中学2年・6時間の単元)
- 1〜2時間目:本文の内容理解と表現の練習(指導に生かす評価が中心)
- 3時間目:小テストで語彙・文法の理解を確認(知識・技能)
- 4〜5時間目:ペアで紹介の練習、中間指導
- 6時間目:パフォーマンステスト(思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度)
このように、記録に残す評価は単元の後半に置くことが多くなります。前半は生徒が練習し、つまずきを先生が支える時間です。
評価計画は、同じ学年を担当する先生と共有しておくと、クラスによって評価の場面や基準がずれることを防げます。単元が始まる前に、生徒にも「この単元の最後に何をするか」を伝えておきましょう。
ルーブリックの作り方と例
パフォーマンステストを評価するときは、ルーブリック(評価基準表)を用意すると、評価のぶれを防ぎ、生徒にも目標が伝わりやすくなります。
作り方のコツ
- 観点ごとに、A・B・Cの基準を短い言葉で書く
- Bを「おおむね満足できる」状況として最初に決め、そこからAとCを考える
- 事前に生徒に示し、何を頑張ればよいかを明確にする
例:町の紹介スピーチ(思考・判断・表現)
- A:聞き手が行ってみたくなるよう、理由と具体例を複数挙げて分かりやすく紹介している
- B:理由を添えて、おすすめの場所を紹介している
- C:理由が述べられていない、または紹介の内容が伝わりにくい
Cの生徒には、次の授業で理由の述べ方を個別に支援するなど、評価を指導に生かすことが大切です。
- My favorite place is the river park. It's beautiful, and you can see many birds there.
このようにモデル文を示しておくと、Bの基準が生徒にも具体的にイメージできます。
よくある失敗と改善のヒント
- 評価の記録が多すぎて授業が回らない:記録に残す場面を単元に1〜2回に絞りましょう。
- 学期末にまとめて評価しようとする:単元ごとに記録を終わらせると、学期末の負担が減ります。
- 観点と評価方法が合っていない:「話すこと」の力を筆記テストだけで評価していないか、見直してみましょう。
- 生徒に評価の基準を伝えていない:ルーブリックを事前に示すと、生徒の取り組み方が変わります。
- 英語科内で基準がばらばら:同じ学年を担当する先生同士で、ルーブリックや評価場面をそろえておくと安心です。
評価の詳しい考え方は、文部科学省や国立教育政策研究所が公表している資料で確認できます。解釈に迷ったときは、公式の資料と自校の評価方針を確認しましょう。
今日からできること
観点別評価は、生徒に点数をつけるためだけのものではありません。指導と評価を一体化させ、生徒が「次に何を頑張ればいいか」を分かるようにするための仕組みです。
まずは、次に教える単元について、次の3つを書き出してみましょう。
- 単元の最後に生徒ができるようになってほしい姿(1文)
- その姿を評価する場面(いつ、何で)
- Bの基準(おおむね満足できる状況)
この3つが決まれば、評価計画の骨組みはほぼ完成です。ルーブリックは、Bの基準を生徒にも分かる言葉に書き直すところから始めてみてください。



