日本語と英語はリズムの作り方が違う
日本語は、「か・ば・ん」「と・う・きょ・う」のように、1つ1つの音(モーラ)をほぼ同じ長さで並べていく言語です。俳句の五・七・五を指で数えられるのは、この性質のおかげです。
一方、英語は強く読む部分(強勢)と弱く読む部分がはっきり分かれている言語です。強い部分は長く・高く・はっきり、弱い部分は短く・低く・あいまいに発音されます。そして、強い部分がほぼ一定の間隔で現れるように聞こえる、という特徴があるとよく説明されます。
たとえば次の2文を比べてみましょう。
- Cats eat fish.
- The cats have eaten the fish.
2文目は単語が倍近く多いのに、ネイティブが話すと、かかる時間はそこまで大きく変わらないことがあります。強い部分(cats、eat、fish)の間にある弱い部分をギュッと詰めて発音するからです。
日本語の感覚で1語1語を同じ強さ・同じ長さで読むと、英語らしさが失われるだけでなく、聞き取りのときも「弱い部分の速さ」についていけなくなります。
ポイント:英語は「強・弱・弱・強・弱」の波でできている。この波を意識するだけで、聞こえ方も話し方も変わります。
単語の強勢:どこを強く読むかで通じるかが決まる
英語の単語には、2音節以上なら必ずいちばん強く読む音節があります。これを単語の強勢(アクセント)と呼びます。辞書では発音記号の中に ˈ の記号や太字などで示されています。
強勢の位置を間違えると、1つ1つの音が正確でも通じにくくなることがあります。日本人が特に間違えやすい単語を見てみましょう(大文字が強勢)。
- HOtel ではなく hoTEL
- Event ではなく eVENT
- CAreer ではなく caREER
- baNAna(「バナナ」の最初ではなく真ん中)
- VIdeo(ヴィディオウ)
- CHOColate(最初が強く、全体は2〜3音節ほど)
カタカナ語として日本語に入っている単語ほど、日本語の感覚で読んでしまい、強勢がズレやすいので要注意です。
品詞で強勢が変わる単語
同じつづりでも、名詞と動詞で強勢の位置が変わる単語があります。
- REcord(名詞:記録)/reCORD(動詞:記録する)
- PREsent(名詞:贈り物)/preSENT(動詞:贈呈する、発表する)
- OBject(名詞:物体)/obJECT(動詞:反対する)
名詞は前、動詞は後ろに強勢が来る傾向がある、と覚えておくと便利です(例外もあります)。
ポイント:新しい単語を覚えるときは、意味と一緒に「どこが強いか」も必ずチェックしましょう。
文の強勢:内容語を強く、機能語を弱く
単語レベルの次は、文レベルの強勢です。基本ルールはシンプルです。
- 内容語(強く):名詞、一般動詞、形容詞、副詞、疑問詞、否定語(not、never、can't)、指示代名詞(this、that)
- 機能語(弱く):冠詞、前置詞、接続詞、助動詞、be動詞、人称代名詞、関係代名詞
自作例文で確認してみましょう。強く読む部分を太字にしています。
- I need to buy some milk on the way home.
- What did you do last weekend?
- She didn't want to go to the party.
強調で意味が変わる
さらに、話し手が特に伝えたい語は、ルールを超えてもっと強く言われます。
- I didn't take your pen.(取ったのは私じゃない)
- I didn't take your pen.(あなたのペンは取っていない)
- I didn't take your pen.(ペンは取っていない、別の物ならともかく)
同じ文でも、どこを強く言うかでニュアンスが変わります。リスニングでは、いちばん強く聞こえた語が話し手のいちばん言いたいことだと考えると、要点をつかみやすくなります。
ポイント:聞き取りでは、強く聞こえる内容語を拾えば文の骨組みがわかります。全部を聞き取ろうとしなくて大丈夫です。
手をたたいて身につけるリズム練習
リズムは頭で理解するより、体で覚えるのが早道です。道具がいらない「手拍子練習」を紹介します。
ステップ1:強い所で手をたたく
次の文を、太字の所で手をたたきながら読みます。手拍子の間隔が一定になるように意識してください。
- Dogs chase cats.
- The dogs will chase the cats.
- The dogs have been chasing the cats.
3文とも手拍子は3回。間の弱い部分が増えても、手拍子のテンポは変えずに、弱い部分を詰めて読むのがコツです。最初は難しいですが、弱い部分を「ささやく」ようなつもりで言うとうまくいきます。
ステップ2:短い英文で試す
教科書や問題集から短い英文を選び、内容語に印をつけて同じように手をたたきながら読みます。
ステップ3:音声と一緒に
スクリプトつきの音声を流しながら、強く聞こえる所で指で机をたたきます。聞き取れない単語があっても、強い所のタイミングがわかれば、どこに大事な単語があるか見当がつきます。
ステップ4:チャンツや歌で
リズムのはっきりした英語の歌やチャンツを使うのもおすすめです。音楽のビートと英語の強勢が重なることが多いので、自然にリズム感が身につきます。
ポイント:手拍子のテンポは一定、弱い部分は詰める。これが英語リズムの基本の動きです。
1週間メニューとよくある失敗
1週間メニュー(1日10〜15分)
- 1日目:カタカナ語になっている英単語10個の強勢を辞書で確認し、正しく音読
- 2日目:名詞・動詞で強勢が変わる単語(record、present など)を例文つきで5組練習
- 3日目:Dogs chase cats. の3文で手拍子練習
- 4日目:教科書の短い英文5文に内容語の印をつけ、手拍子で読む
- 5日目:スクリプトつき音声で、強く聞こえた単語だけをメモ
- 6日目:同じ音声で、強い所で机をたたきながら聞く→音読する
- 7日目:自分の音読を録音し、強弱のメリハリがあるかお手本と比べる
よくある失敗
- 全部の単語をはっきり読む:丁寧なつもりでも、英語としては平坦に聞こえます。弱い部分は思い切って弱く。
- 強勢=声を大きくするだけと思う:強勢は「大きさ」だけでなく「長さ」と「高さ」も伴います。強い音節は少し長く、少し高く。
- カタカナ語の強勢をそのまま使う:「ホテル」「イベント」は特に要注意です。
- リズム練習を1回で終わらせる:リズムは筋トレのようなもの。短時間でも毎日続けるのが効果的です。
リズムが身につくと、弱形や音の連結も自然に起こるようになります。つまり、リズム練習は発音とリスニング両方の土台づくりなのです。



