まず知っておきたい前提:「1つのアメリカ英語」はない
アメリカ英語とイギリス英語の違いを学ぶ前に、1つ知っておきたいことがあります。それは、どちらの国の中にも、たくさんの地域差や個人差があるということです。
イギリスの中でも、ロンドン、マンチェスター、スコットランド、北アイルランドなどで、発音はかなり違います。アメリカでも、南部、ニューヨーク、中西部などで特徴があります。
この記事で「イギリス英語」と言うときは、主に学習教材や放送でよく聞かれる、イングランド南部の標準的な発音をイメージしています。「アメリカ英語」は、アメリカの教材や放送でよく聞かれる一般的な発音です。
また、英語はアメリカとイギリスだけの言葉ではありません。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、インド、シンガポールなど、世界中でさまざまな英語が話されています。
学習者にとっての結論
- 話すとき:どちらか一方に決めて、一貫させると練習しやすい
- 聞くとき:いろいろなアクセントに触れて、慣れておく
ポイント:どちらが「正しい」ということはありません。違いを知って、どちらも聞き取れるようにすることが目標です。
違い1:R を発音するか、しないか
いちばんわかりやすい違いが、母音の後の R です。
- アメリカ英語:car、water、bird、hard の R をはっきり発音する(舌を丸めるような響き)
- イギリス英語:母音の後の R は発音せず、その前の母音を伸ばすことが多い
聞き比べのイメージ
- car:米「カー(ル)」/英「カー」
- water:米「ワーラー(ル)」/英「ウォータ」
- bird:米「バ(ル)ド」/英「バード」
- teacher:米「ティーチャ(ル)」/英「ティーチャ」
R が復活するとき
イギリス英語でも、R の次に母音で始まる単語が来ると、R が発音されてつながることがあります。
- far away → 「ファーラウェイ」
- your answer → 「ヨーラーンサ」
これをリンキング R と呼びます。
聞き取りのコツ
イギリス英語で「カー」と聞こえたら、car の可能性も考える。語末が「ア」や「ー」で終わっている単語は、つづりに r がある可能性がある、と頭に入れておくと、聞き取りの候補がすぐに浮かぶようになります。
違い2:T の音の変化
T の発音にも、大きな違いがあります。
アメリカ英語:ラ行のような T
アメリカ英語では、母音にはさまれた T(強勢のない音節の前)が、日本語のラ行に近いやわらかい音になることがよくあります。これをフラップT(flap T)と呼びます。
- water → 「ワーラー」
- better → 「ベラー」
- city → 「スィリ」
- get it → 「ゲリッ」
イギリス英語:はっきりした T、または「のどで止める」T
イギリスの標準的な発音では、T をはっきり発音することが多いです。
- water → 「ウォータ」
- better → 「ベタ」
また、イギリスの多くの地域や話し方では、T がのどで一瞬息を止める音(声門閉鎖音)になることがあります。bottle が「ボッウ」、get it が「ゲッイッ」のように聞こえるのはこのためです。
聞き取りのコツ
- 米:「ラ行っぽい音」が聞こえたら T かもしれない
- 英:単語の途中で「一瞬止まる」感じがしたら T かもしれない
ポイント:同じ water でも、アメリカ英語とイギリス英語でかなり違う音に聞こえます。両方のパターンを知っておきましょう。
違い3:母音の違い(bath・hot・go)
母音にも、学習者が気づきやすい違いがいくつかあります。
bath、can't、ask の母音
- アメリカ英語:cat と同じ /æ/(「エ」と「ア」の中間)
- イギリス英語:father と同じ長い /ɑː/(口を大きく開けた「アー」)
例:
- can't:米「キャン(ト)」/英「カーン(ト)」
- ask:米「アスク(エアに近い)」/英「アースク」
- dance:米「ダンス(エアに近い)」/英「ダーンス」
can't の違いは特に重要です。イギリス英語では can と can't の母音自体が違うので、アメリカ英語とは違う方法で聞き分けることになります。
hot、stop の母音
- アメリカ英語:口を大きく開けた「ア」に近い /ɑ/。hot は「ハッ(ト)」
- イギリス英語:唇を少し丸めた短い「オ」 /ɒ/。hot は「ホッ(ト)」
go、home の母音
- アメリカ英語:/oʊ/「オウ」
- イギリス英語:/əʊ/「アウ」に近い、あいまいな音から始まる「オウ」
イギリス英語の no が「ナウ」のように聞こえて戸惑うことがあるのは、このためです。
ポイント:hot が「ハット」と聞こえたらアメリカ英語、「ホット」ならイギリス英語、というように、1つの母音でアクセントを見分けることもできます。
違い4:単語ごとの読み方と強勢の違い
音のルールとは別に、単語ごとに読み方が違うものもあります。代表的な例を紹介します。
- schedule:米「スケジュール」/英「シェジュール」(英国でも「スケジュール」と言う人はいます)
- tomato:米「トメイトウ」/英「トマートウ」
- either:米「イーザー」が多い/英「アイザ」も多い(どちらの国でも両方聞かれます)
- garage:米は後ろを強く「ガラージ」/英は前を強く「ギャラージ」「ギャリッジ」
- advertisement:米は ad-ver-TISE-ment のように後ろ寄りが強い言い方が多い/英は ad-VER-tise-ment のように2番目が強い
tune、new、Tuesday
- アメリカ英語:tune「トゥーン」、new「ヌー」、Tuesday「トゥーズデイ」
- イギリス英語:tune「チューン」、new「ニュー」、Tuesday「チューズデイ」
イギリス英語では、t・d・n の後に「ユ」の音が入ることが多いのです。
辞書で確認しよう
多くの英和辞書やオンライン辞書には、アメリカ式とイギリス式の発音が両方載っています。気になった単語は、両方の音声を聞き比べてみるのがおすすめです。
聞き分け練習・試験対策・1週間メニュー
試験での注意点
TOEIC L&R のリスニングでは、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア(ニュージーランドを含む)の発音が使われることが公式に示されています。IELTS のリスニングでも、さまざまなアクセントの英語が使われます。試験を受ける人は、アメリカ英語だけに慣れていると苦労することがあるので、意識していろいろな英語に触れておきましょう。
1週間メニュー(1日15分)
- 1日目:R の違い。car、water、bird など5語を、辞書の米・英音声で聞き比べ
- 2日目:T の違い。water、better、city を聞き比べ、フラップTを自分でも言ってみる
- 3日目:母音の違い。can't、hot、go を米・英で聞き比べ
- 4日目:単語ごとの違い。schedule、tomato など5語を確認
- 5日目:イギリス英語の学習者向け音声を5分聞き、1〜4日目の特徴を探す
- 6日目:アメリカ英語の同じくらいの長さの音声を聞き、違いを意識する
- 7日目:試験の過去問・公式問題集のリスニングで、話者のアクセントを当てながら聞く
よくある失敗
- 片方だけしか聞かない:好きなアクセントがあってもいいですが、聞き取りでは両方に慣れておきましょう。
- 話すときに混ぜてしまう:R を発音したりしなかったりすると、不自然に聞こえることがあります。話すときは一方に決めるのがおすすめです。
- 「イギリス英語は難しい」と思い込む:違いのポイントを知れば、慣れるのは意外と早いです。
今日は、辞書で water と can't のアメリカ式・イギリス式の音声を聞き比べることから始めてみましょう。



