今週のスラングまとめスラング考現学 第30回
今週のまとめ:ballhog、outside clothes――服と見た目の新語4つ
原田英語がお届けします
日曜日のコーナー「今週のスラングまとめ」…今週辞書に加わった新語から、特におもしろい語をピックアップして小ネタつきでおさらい。 コーナー一覧
日曜日は「今週のスラングまとめ」です。この1週間に辞書へ加わった語から、服とメイクにまつわる4語を選びました。地味に見える高い服、ベッドに座らせてもらえない服、わざとずらすメイク、子鹿みたいなコーデ。並べると、おしゃれの「見せ方」がそれぞれ違う方向に動いているのが見えてきます。
1ballhog:服好きにだけ値段がバレるコーデ
1語目は今日加わったばかりのballhogです。ぱっと見はグレーのパーカーにふつうのデニム。ところが服にくわしい人が見ると、昔のデザイナーズの一点物や、今では手に入らない古着だとすぐわかる。そんな「通にだけ伝わる」コーデを指します。
広めたのは、配信者のブレイディ・グッドウィンさん(Bradygoo)や、ラッパー・配信者の仲間でつくるグループ「Ball Hog」です。メンバーがInstagramに上げていた服が2026年にTikTokで真似され、10月にはアメリカのファッションメディアも記事にしました。
ロゴを見せない高級感といえば、少し前に流行ったquiet luxuryもあります。あちらは上品な大人のブランド服、ballhog はストリートの古着が中心で、同じ「見せない」でも出どころが違います。ちなみにふつうの英語の ball hog は、バスケでボールを独り占めする人のことです。
2outside clothes:外の服でベッドに座る? 座らない?
2語目はoutside clothes。直訳すると「外の服」、つまり外出に着ていった服です。電車のいすや道のほこりがついているので、その服のままベッドやソファに座るのはありえない、と考える人たちが使います。
きっかけは「外の服でベッドに座らないで」という文字を編みこんだラグの写真でした。Xで3,000万回以上見られ、帰ったらすぐ部屋着に着替える派と、気にしない派で大論争になりました。それから数か月おきに同じ話題がぶり返し、2026年10月にはミームの解説サイトにも項目ができています。
おもに家の中で着る服は inside clothes と呼ばれます。服の値段や流行ではなく、「どこで着たか」で服を分ける言葉なので、ファッション用語というより生活の習慣の言葉です。日本では玄関で靴を脱ぐ習慣があるぶん、この論争を「わかる」と感じる人も多そうです。
3glitchy glam:わざとバグらせる華やかメイク
3語目はglitchy glamです。glitch は画面がバグったときの乱れ、glam は華やかなおしゃれ。左右の目でアイシャドウの色を変えたり、唇を2色に塗り分けたり、ネイルを1本ずつ違う色にしたりと、きっちりそろえるのをやめて「ずれ」を楽しむメイクです。
このメイクを流行の候補に挙げたのは、Pinterestが毎年出している流行予測でした。前衛的なメイクの検索が伸びていたことから2026年のトレンドに選ばれ、美容メディアが次々に取りあげました。
すっぴん風に整えるclean girlの真逆を行くのがポイントです。「整っている=きれい」から「ちょっと崩れている=かわいい」へ。左右で色を変えた目元は binary eyes とも呼ばれます。
4バンビコア:子鹿のやわらかさを服とメイクに
4語目は日本語のバンビコアです。子鹿のバンビのような、やわらかくてガーリーな雰囲気のファッションやメイクのこと。小鹿の斑点を思わせる柄、ファー、ブラウンやベージュの色、レースやリボンを合わせるのが定番です。
韓国のZ世代で流行り、日本のファッション誌が2025年の冬ごろから「レオパード柄の次に来る柄」として紹介しはじめました。2026年10月には、渋谷の若者のトレンドを調べた調査で「次に来るトレンド」にも選ばれています。
〜コアは、英語の-coreを借りた形です。バレエコアの balletcore のように、英語圏でも「名詞+core」で雰囲気をまとめる言い方が量産されています。英語で言うなら Bambicore で、そのまま通じる形になっているのがこの語の強みです。
54語を並べてわかる、今どきの「見せ方」
ballhog は「高いのに見せない」、outside clothes は「どこで着たかで分ける」、glitchy glam は「わざと崩す」、バンビコアは「動物の雰囲気をまとう」。同じ週に入った言葉でも、向いている方向はばらばらです。
共通しているのは、どれもSNSの写真や動画で一瞬で伝わる、ということです。ロゴがなくても服好きは気づき、ラグの文字は一目で読め、左右ちがいの目元は画面越しでもわかる。言葉は、その一瞬の「わかる」に名前をつける道具になっています。
来週もまた、新しく加わった言葉から何本かを選んでまとめます。今日帰ったら、まず outside clothes を着替えるかどうか、自分がどちら派か考えてみてください。
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