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火星の空気から酸素を作った装置MOXIE。2年で作れたのは「小型犬10時間分」

火星の空気から酸素を作った装置MOXIE。2年で作れたのは「小型犬10時間分」

読む前に予想してみよう!

人類はすでに、火星の大気から酸素を作ることに成功している

研究カード(どんな研究?)
対象
火星の大気
規模
2021〜2023年の16回の運転
研究の種類
探査車上での技術実証実験
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

NASAの探査車の装置MOXIEは、火星の二酸化炭素から酸素を作ることに成功。16回の運転で計122g、小型犬が10時間吸う量だった。実用には大型化が必要。

ひとことで言うと火星の空気から酸素を作る実験に成功したよ。でも、まだほんの少しなんだ。

もくじ
  1. 2021年4月20日、火星で初めて酸素ができた
  2. しくみは「二酸化炭素を800℃で分解」
  3. 月の「砂」と火星の「空気」の違い
  4. 16回の運転で、計122g
  5. 本当に必要なのは「ロケットの酸素」
  6. まとめ

火星に人が行く日が来たら、いちばん困るものは何でしょう?そのひとつが、酸素です。

火星の空気は約96%が二酸化炭素。しかも気圧は地球の1%もありません。そのままでは、とても息はできません。

でも、二酸化炭素(CO₂)には酸素(O)が2つ入っています。これを取り出せないか——。そう考えてNASAが火星に送り込んだのが、トースターほどの小さな装置MOXIE(モキシー)です。

012021年4月20日、火星で初めて酸素ができた

MOXIEは、2021年に火星に着陸した探査車パーシビアランスに積まれていました。

NASAによると、2021年4月20日、MOXIEは初めての運転で約5gの酸素を作ることに成功しました。宇宙飛行士がふつうに活動して約10分呼吸できる量です。地球以外の惑星で、その星の資源から酸素を作ったのは、これが人類初でした。

02しくみは「二酸化炭素を800℃で分解」

MOXIEのしくみは、こうです。

  1. 火星のうすい空気を吸いこみ、圧縮する
  2. 約800℃に熱し、特殊なセラミックに電気を流す
  3. 二酸化炭素(CO₂)から酸素原子を1つ引きはがし、酸素(O₂)として集める
  4. 残りは一酸化炭素(CO)として外に出す

これを固体酸化物電解といいます。高温に耐える素材でできています。

MOXIEは、二酸化炭素から酸素だけを引きはがして取り出す
MOXIEは、二酸化炭素から酸素だけを引きはがして取り出す

03月の「砂」と火星の「空気」の違い

月で酸素を作るなら、材料は砂です。掘って、運んで、高温で溶かしたり電気を流したりする必要があります。

いっぽう火星には、うすいとはいえ空気があります。空気なら、どこにいても吸いこむだけで材料が手に入ります。掘る機械もいらず、装置を置いた場所でそのまま酸素を作れる。これが、火星ならではの大きなメリットです。

0416回の運転で、計122g

122gといっても、ピンとこないかもしれません。NASAはこれを「小型犬が10時間で吸う量」とたとえています。装置としては大成功。でも、人が暮らすにはまだまだ足りません。

05本当に必要なのは「ロケットの酸素」

じつは、火星で酸素がいちばんたくさん必要になるのは、呼吸ではありません。

NASAによると、火星に1年いる宇宙飛行士4人が吸う酸素は、合わせて約1トン。いっぽう、その4人を火星の地面から打ち上げるロケットには、燃料を燃やすための酸素が約25トンも必要です。

25トンは122gの20万倍以上。これを地球から運ぶのは大変なので、火星で作れれば旅の荷物がぐっと軽くなります。そのためには、MOXIEをもっと大きくし、長時間休まず動かす必要があります。

06まとめ

  • NASAの装置MOXIEは、火星の二酸化炭素から酸素を作ることに成功した
  • 16回の運転で計122g、最高で1時間12g・純度98%以上
  • 人が帰るロケットには約25トンの酸素が必要。実用化には大型化が欠かせない

小さな箱が作った122gの酸素は、人類が火星で「自分で空気を作って暮らす」ための、最初の一歩でした。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe air on Mars is about 96 percent carbon dioxide, and its pressure is less than 1 percent of Earth's, so… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The air on Mars is about 96 percent carbon dioxide, and its pressure is less than 1 percent of Earth's, so humans cannot breathe it. However, carbon dioxide contains oxygen. To test whether this oxygen could be used, NASA sent a toaster-sized device called MOXIE on the Perseverance rover.

On April 20, 2021, MOXIE made about 5 grams of oxygen, enough for an astronaut to breathe for about 10 minutes. It was the first time oxygen had been made from another planet's resources. By August 2023, MOXIE had run 16 times and produced 122 grams. Unlike Moon soil, which must be dug up, Martian air can simply be pulled in wherever the machine is placed.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

火星の空気は約96パーセントが二酸化炭素で、気圧は地球の1パーセントにも満たないため、人間はそれを吸うことができません。しかし、二酸化炭素には酸素が含まれています。この酸素を使えるかどうかを試すため、NASAはMOXIEというトースターほどの大きさの装置を探査車パーシビアランスに積んで送りました。

2021年4月20日、MOXIEは約5グラムの酸素を作りました。宇宙飛行士が約10分間呼吸できる量です。ほかの惑星の資源から酸素が作られたのは、これが初めてでした。2023年8月までに、MOXIEは16回運転し、122グラムを作りました。掘り出さなければならない月の砂と違い、火星の空気は、装置を置いた場所でそのまま吸いこむことができるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. How much oxygen did MOXIE make on April 20, 2021?

Q3. What advantage does Martian air have over Moon soil as a source of oxygen?

重要単語

  • carbon dioxideB1
    名詞(句)二酸化炭素Mars' air is mostly carbon dioxide. di-(2つの)+oxide(酸化物)。CO2 は酸素原子が2つ、CO(一酸化炭素)は carbon monoxide。
  • oxygenA2
    名詞酸素MOXIE made oxygen on Mars. ギリシャ語の「酸を生むもの」から。発音は /ˈɒksɪdʒən/(オクシジェン)。
  • electrolysisC1
    名詞電気分解Solid oxide electrolysis splits carbon dioxide. electro-(電気)+-lysis(分解)。水の電気分解(electrolysis of water)は理科の定番。
  • purityB2
    名詞純度The oxygen had a purity of 98 percent. pure(純粋な)の名詞形。high purity「高純度」。
  • scale upB2
    動詞(句)規模を大きくするEngineers need to scale up the system. 反対は scale down(縮小する)。ビジネス英語でも頻出。名詞 scale-up。
  • demonstrationB2
    名詞実証、実演/デモMOXIE was a technology demonstration. demonstrate(示す・実証する)の名詞形。「抗議デモ」の意味もある。
  • harvestB2
    動詞・名詞収穫する、取り出して集めるMOXIE harvested oxygen from the Martian air. 本来は作物の「収穫」。科学では harvest energy「エネルギーを取り出す」のように広く使う。

動画でもっと知る

NASAは火星の空気(ほぼ二酸化炭素)から酸素を作ることに成功している。装置MOXIEが2年あまりで作った酸素は計122g、小型犬が10時間で吸う量らしい。4人が火星から帰るロケットには約25トンの酸素が必要。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Hoffman et al. (2022) Mars Oxygen ISRU Experiment (MOXIE)—Preparing for human Mars exploration, Science Advancesdoi.org
  2. NASA (2021) NASA's Perseverance Mars Rover Extracts First Oxygen from Red Planetnasa.gov
  3. NASA (2023) NASA's Oxygen-Generating Experiment MOXIE Completes Mars Missionnasa.gov