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テッポウエビの「バチン!」はハサミの音じゃなかった。正体は一瞬で潰れる泡と、謎の閃光

テッポウエビの「バチン!」はハサミの音じゃなかった。正体は一瞬で潰れる泡と、謎の閃光

読む前に予想してみよう!

テッポウエビの大きな音は、ハサミの先どうしがぶつかって鳴っている

研究カード(どんな研究?)
対象
テッポウエビの仲間(Alpheus heterochaelis など)
規模
数個体〜40個体(各研究)
研究の種類
高速度撮影・水中音響計測・物理モデル
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

テッポウエビの大きな音は、ハサミがぶつかる音ではなく、ハサミから飛び出す水流が作った泡がつぶれる音。つぶれる瞬間には光まで出ていた。

ひとことで言うとテッポウエビは、ハサミから出す水流で泡を作り、その泡がつぶれる力で獲物をしびれさせる!

もくじ
  1. 犯人はハサミではなく「泡」だった
  2. つぶれる泡は、一瞬だけ光っていた
  3. 海の中の「騒音王」
  4. まとめ

暖かい海の浅瀬に潜ると、「パチパチ」「チリチリ」という、揚げ物のような音が聞こえることがあります。

その音の主の一つが、体長数cmのテッポウエビ。片方のハサミだけが体に比べて大きく、それを閉じると、驚くほど大きな「バチン!」という音が出ます。英語では「ピストルシュリンプ(拳銃エビ)」と呼ばれるほどです。

長いあいだ、この音は「ハサミの先どうしが勢いよくぶつかる音」だと考えられてきました。ところが2000年、物理学者たちがその常識をひっくり返します。

01犯人はハサミではなく「泡」だった

オランダ・トゥウェンテ大学のミシェル・フェルスライスさんとデトレフ・ローゼさんたちは、テッポウエビのハサミが閉じる様子を超高速カメラで撮影し、同時に水中マイクで音を記録しました。

ハサミには、片側に出っ張り(プランジャー)、反対側にくぼみがあります。ハサミが閉じると、出っ張りがくぼみに入り込み、中の水をピストンのように一気に押し出します。これが「水鉄砲」の正体です。

泡がつぶれるときに生まれる強い圧力の波は、近くの小魚やエビをしびれさせることがあります。テッポウエビは、泡を弾丸にした狩りをしているのです。

閉じる→水流→泡→つぶれる。音が出るのは最後のステップでした。
閉じる→水流→泡→つぶれる。音が出るのは最後のステップでした。

02つぶれる泡は、一瞬だけ光っていた

話はここで終わりません。翌2001年、同じチームは『Nature』に、さらに驚く報告を出しました。

泡がつぶれる瞬間、ごく短い光が出ていたのです。光の性質から、泡の中は少なくとも約5000ケルビン(太陽の表面に近い温度)という、とんでもない高温・高圧になっていると考えられました。

研究チームはこれを、超音波で泡を光らせる現象「ソノルミネッセンス」にちなんで、シュリンポルミネッセンス(エビ発光)と名づけました。ただし光はとても弱く、人の目で見えるものではありません。高温も一瞬だけの、泡の中だけの話です。

03海の中の「騒音王」

テッポウエビの音は、海の騒音としても知られています。

ハワイのカネオヘ湾でテッポウエビの仲間40匹の音を測った研究(Au & Banks, 1998)では、1m離れた場所での音の強さが183〜189デシベル(水中での基準)に達しました。単純に空気中の音と比べることはできませんが、海の中ではとても大きな音です。

テッポウエビが群れでいる浅い海では、このパチパチ音が昼も夜も鳴り続け、人間が使う水中の音響機器の邪魔になることもあります。

04まとめ

ハサミの音だと思われていたテッポウエビの「バチン!」は、実は泡がつぶれる音でした。しかもその泡は、一瞬だけ太陽の表面のような高温になって光っていた。

小さなエビが、物理学者もうなる「泡の兵器」を使いこなしている。海の中のパチパチ音が、少し違って聞こえてきませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSnapping shrimp are small animals, but the snap of their large claw is surprisingly loud. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Snapping shrimp are small animals, but the snap of their large claw is surprisingly loud. People long believed the noise was made when the two parts of the claw hit each other. In 2000, researchers at the University of Twente in the Netherlands filmed the claw with a high-speed camera while recording the sound underwater. They found that closing the claw pushes out a very fast jet of water.

The pressure inside the jet drops so quickly that a bubble forms. The sound was produced when this bubble collapsed, not when the claw shut. The pressure wave from the collapsing bubble can stun tiny fish, so the shrimp is actually hunting with a bubble instead of a bullet.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

テッポウエビは小さな動物ですが、大きなハサミを鳴らす音は驚くほど大きいものです。人々は長いあいだ、その音はハサミの2つの部分がぶつかるときに出ると信じていました。2000年、オランダのトゥウェンテ大学の研究者たちは、水中で音を録音しながら、高速カメラでハサミを撮影しました。その結果、ハサミを閉じるととても速い水の噴流が押し出されることがわかりました。

噴流の中の圧力が急激に下がるため、泡ができます。音が出たのは、ハサミが閉じたときではなく、この泡がつぶれたときでした。つぶれる泡から出る圧力の波は小魚をしびれさせることがあるので、このエビは実は弾丸の代わりに泡で狩りをしているのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the researchers do in 2000?

Q2. According to the passage, why does a bubble form?

Q3. What does the writer mean by "hunting with a bubble instead of a bullet"?

重要単語

  • clawB1
    名詞(カニ・エビの)はさみ、かぎ爪The shrimp has one claw much bigger than the other. 猫や鳥の「かぎ爪」も claw。人の爪は nail と区別する。
  • jetB1
    名詞噴流、噴出A fast jet of water shoots out of the claw. a jet of water「水の噴流」。ジェット機の jet も「噴き出す空気」から来ている。
  • collapseB2
    動詞・名詞つぶれる、崩壊(する)The bubble collapses in less than a millisecond. 建物の倒壊・経済の崩壊・人が倒れるにも使う多義語。col-(共に)+lapse(滑り落ちる)。
  • stunC1
    動詞気絶させる、しびれさせるThe shock wave can stun small fish. 「唖然とさせる」の意味もあり、stunning は「驚くほど美しい」。stun gun は「スタンガン」。
  • luminescenceC1
    名詞発光The flash was named shrimpoluminescence. lumin-(光)は illuminate「照らす」と同じ語根。bioluminescence は「生物発光」。
  • exaggerateB2
    動詞誇張するWe should not exaggerate the results of a single study. g が2つ続くつづりに注意。名詞は exaggeration。入試の内容一致で頻出。

動画でもっと知る

4コマでわかる

テッポウエビの「バチン!」はハサミの音じゃなかった。正体は一瞬で潰れる泡と、謎の閃光の4コマ漫画
テッポウエビの「バチン!」という爆音、ハサミ同士がぶつかる音だと思ってたら違った。ハサミから出た水の勢いで泡ができて、それがつぶれる音らしい。しかもつぶれる瞬間、泡の中は数千度になって一瞬光る。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Au & Banks (1998) The acoustics of the snapping shrimp Synalpheus parneomeris in Kaneohe Bay, The Journal of the Acoustical Society of Americadoi.org
  2. Versluis et al. (2000) How Snapping Shrimp Snap: Through Cavitating Bubbles, Sciencedoi.org
  3. Lohse, Schmitz & Versluis (2001) Snapping shrimp make flashing bubbles, Naturedoi.org