ウソ?ホント?検証ウソ

「人は鼻と口で同時に呼吸できない」はウソ。本当に"同時にできない"のは別の動作だった

「人は鼻と口で同時に呼吸できない」はウソ。本当に"同時にできない"のは別の動作だった

読む前に予想してみよう!

人間は、鼻と口を同時に使って呼吸することができない

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人・乳児
規模
数十人規模の生理学実験など
研究の種類
生理学的実験+レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

人は鼻と口で同時に息ができる。運動で息が上がると、多くの人が自然に鼻と口の両方で呼吸している。本当に同時にできないのは「飲み込む」と「息をする」だった。

ひとことで言うと鼻と口、両方いっしょに息はできる! できないのは「ゴックン」しながらの息だよ。

もくじ
  1. 試してみよう:鼻と口で同時に吸う
  2. 運動すると「自然に」鼻と口の両方を使う
  3. 赤ちゃんは「鼻でしか呼吸できない」?
  4. 本当に同時にできないのは「飲み込み」と「呼吸」
  5. なぜ「鼻と口で同時に呼吸できない」が広まったのか
  6. まとめ

「人間は、鼻と口で同時に呼吸できないらしいよ」

こんな"豆知識"を聞いたことはありませんか? 聞いた瞬間、思わず試してしまった人もいるはず。

結論から言うと、これはウソです。人は鼻と口で同時に息ができます。でもこの話、まったくのデタラメというより、本当の「できないこと」と混ざって広まった可能性があります。

01試してみよう:鼻と口で同時に吸う

口を軽く開けて、鼻と口の両方から「スーッ」と吸ってみてください。鼻の穴の入り口と、唇のあたりの両方に、空気が通る感じがするはずです。

実はこれ、私たちは運動中に自然にやっています。

02運動すると「自然に」鼻と口の両方を使う

鼻は空気を温め、湿らせ、ほこりを取り除くフィルターの役目をしますが、通り道が細いので、たくさんの空気は通せません。そこで、息が上がると口も「追加の通り道」として使うのです。このとき、鼻からも口からも同時に空気が流れています。

03赤ちゃんは「鼻でしか呼吸できない」?

この話の元になったかもしれないのが、赤ちゃんについての説明です。

赤ちゃんは、おっぱいを飲みながら鼻で呼吸できる体のつくりになっていて、昔から「鼻でしか呼吸できない(絶対的な鼻呼吸)」と言われてきました。ところが、この説明にも見直しが入っています。乳児の呼吸に関する研究をまとめた報告では、鼻がふさがったときに口で呼吸できる赤ちゃんも多いとされており、「鼻でしか呼吸できない」は言い過ぎだとされています。

04本当に同時にできないのは「飲み込み」と「呼吸」

では、私たちが本当に「同時にできない」ことは何でしょう。それが、飲み込むことと息をすることです。

のどの奥では、空気の通り道(気管)と食べ物の通り道(食道)が交差しています。そのため、食べ物を飲み込む瞬間には、

  • 軟口蓋(のどちんこのあたり)が上がって鼻への通り道をふさぎ
  • 喉頭蓋(こうとうがい)というフタが気管の入り口をふさぎ
  • 呼吸が一瞬止まる

という見事な連携プレーが起きています。

のどは、空気と食べ物が交差する"踏切"。飲み込む瞬間は呼吸が止まる
のどは、空気と食べ物が交差する"踏切"。飲み込む瞬間は呼吸が止まる

試しに、つばを飲み込みながら息を吸ってみてください。……できませんよね。

05なぜ「鼻と口で同時に呼吸できない」が広まったのか

この豆知識は、「試したくなる」「試すと一瞬混乱する」という、広まりやすい条件がそろっています。意識して呼吸すると不自然になり、「あれ、できてるのかな?」とわからなくなるのです。

そこに、赤ちゃんの「鼻呼吸」の話や、「飲み込みと呼吸は同時にできない」という本当の話が混ざって、いつの間にか形を変えて伝わったのかもしれません。

06まとめ

  • 人は鼻と口で同時に呼吸できる。運動中は多くの人が自然にやっている
  • 赤ちゃんの「鼻でしか呼吸できない」も、言い過ぎだとわかってきた
  • 本当に同時にできないのは、飲み込むことと呼吸すること

「できない」と言われたら、まず試してみる。それが科学の第一歩です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerA popular piece of trivia says that humans cannot breathe through the nose and mouth at the same time. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

A popular piece of trivia says that humans cannot breathe through the nose and mouth at the same time. This is simply false. In a 1980 study, healthy adults exercised harder and harder while researchers measured the air passing through their noses and mouths. Most breathed only through the nose at rest, but as they needed more air, they switched to breathing through both at once.

The nose is narrow, so the mouth works as an extra path. What we truly cannot do together is swallow and breathe. When we swallow, part of the throat closes the way to the nose, a small flap covers the airway, and breathing stops briefly. This prevents food from entering the lungs.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

よく知られた雑学に、人は鼻と口で同時に呼吸できないというものがあります。これは単純にまちがいです。1980年の研究では、健康な成人がどんどん運動を激しくしていき、その間に研究者が鼻と口を通る空気を測定しました。ほとんどの人は安静時には鼻だけで呼吸していましたが、より多くの空気が必要になると、両方で同時に呼吸するように切り替わりました。

鼻は通り道が細いので、口が追加の通り道として働くのです。本当に一緒にできないのは、飲み込むことと呼吸することです。飲み込むとき、のどの一部が鼻への通り道を閉じ、小さなフタが気道をふさぎ、呼吸が一瞬止まります。これによって食べ物が肺に入るのを防いでいるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 1980 study measure?

Q2. Why does the mouth work as an extra path for air?

Q3. What is the purpose of breathing stopping briefly when we swallow?

重要単語

  • oronasalC1
    形容詞口と鼻のOronasal breathing is common during exercise. oro-(口)+nasal(鼻の)。oral(口の)と nasal を合わせた語。
  • swallowB1
    動詞飲み込むIt is hard to talk while you swallow. 名詞の swallow は鳥の「ツバメ」。swallow one's pride「プライドを抑える」という比喩もある。
  • soft palateC1
    名詞(句)軟口蓋The soft palate moves when we swallow. palate は「口蓋・味覚」。hard palate は「硬口蓋」。
  • epiglottisC1
    名詞喉頭蓋The epiglottis covers the airway during swallowing. epi-(上)+glottis(声門)。声門の上にあるフタ、と覚える。
  • chokeB2
    動詞むせる、のどを詰まらせるEat slowly so you don't choke. choke on ~「~でのどを詰まらせる」。スポーツでは「重圧で失敗する」の意味も。
  • triviaB2
    名詞雑学、豆知識He loves sharing trivia about the human body. ラテン語で「三叉路」→道ばたの話→「ささいなこと」。形容詞 trivial(ささいな)。

4コマでわかる

「人は鼻と口で同時に呼吸できない」はウソ。本当に"同時にできない"のは別の動作だったの4コマ漫画
「人は鼻と口で同時に呼吸できない」という話、試すとフツーにできる。運動中は多くの人が自然に鼻と口の両方で呼吸しているらしい。本当に同時にできないのは「飲み込み」と「呼吸」。喉にはむせないための仕組みがあった。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Niinimaa et al. (1980) The switching point from nasal to oronasal breathing, Respiration Physiologydoi.org
  2. Bergeson & Shaw (2001) Are Infants Really Obligatory Nasal Breathers?, Clinical Pediatricsdoi.org
  3. Martin-Harris et al. (2005) Breathing and Swallowing Dynamics Across the Adult Lifespan, Archives of Otolaryngology–Head & Neck Surgerydoi.org