湖が「爆発」して1700人以上が亡くなった。カメルーン・ニオス湖の正体と、パイプで防ぐ技術

読む前に予想してみよう!
ニオス湖の災害は、火山が噴火して起きた
直接の噴火はなく、湖底にたまっていた二酸化炭素が一気に放出されたことが原因と考えられている。
- 対象
- カメルーンのニオス湖・モヌン湖
- 規模
- 湖2つの長期観測
- 研究の種類
- 化学・同位体分析と12年間の湖沼学的モニタリング
- 確かさ
- ★★★★☆
1986年、カメルーンのニオス湖から大量の二酸化炭素が噴き出し、周辺で1700人以上が死亡。深い湖底にためこまれたガスが一気に出る「湖水爆発」だった。
ひとことで言うと湖の底にたまった二酸化炭素が一気にふき出し、大きな災害になった。
1986年8月21日の夜、西アフリカ・カメルーンの山あいにあるニオス湖で、低いとどろきのような音がしました。
翌朝、湖の周辺の村で、1700人以上の人々と、たくさんの家畜が亡くなっていました。火も爆風もありません。家も壊れていません。
原因は、目に見えない気体でした。これは、地球が持つ「あまり知られていない危険」の話です。
01湖の底に、ガスがたまる
ニオス湖は、火山活動でできた深い湖(最大水深約200m)です。湖の底には、地下のマグマから二酸化炭素(CO₂)がじわじわと供給されています。
深い水の中では、水圧が高いため、ガスは水にたくさん溶けたままでいられます。炭酸飲料のボトルが、ふたを開けるまで泡立たないのと同じ原理です。
しかも熱帯の深い湖では、水温の差などで上下の水が混ざりにくいことがあります。すると、底の層にCO₂がどんどん蓄積していきます。
02なぜ「一気に」出たのか
ボトルを振ると泡が一気に出るように、何かのきっかけで底の水が上に動くと、水圧が下がってガスが泡になります。泡は水を引き上げるので、さらに水が上がってさらに泡が出るという連鎖が起こります。
これが湖水爆発(limnic eruption)です。きっかけとしては、崖の崩落、強い雨、水温の変化などが考えられていますが、1986年に何が引き金だったのかは確定していません。
ふき出したCO₂は空気より重いため、地面を這うように谷を流れ下りました。そのため、湖から数km離れた村でも、眠っている人が気づかないまま窒息したのです。

03パイプで災害を防ぐ
ニオス湖の災害には、他の自然災害と違う特徴があります。原理がわかれば、人の手で防げるのです。
その後、パイプは増設され、湖のガス量は大きく下がったと報告されています。
04どんでん返し:リスクはゼロにならない
ただし、ガスは今も地下から供給され続けています。パイプを止めれば、また少しずつたまっていきます。監視を続けることが欠かせません。
さらにニオス湖には、自然のせき止めでできた不安定な堤があり、決壊による洪水の危険も指摘されています。ガスを抜いても、別のリスクが残るのです。
アフリカには同じように湖の深層にガスをためた湖(キブ湖など)もあり、特にキブ湖はメタンも含むため、研究と監視が続けられています。
05まとめ
- 1986年、ニオス湖から二酸化炭素が噴き出し、1700人以上が窒息死した
- 深い湖の底に、マグマ由来のCO₂が高圧で溶け込んでたまっていた
- 何かのきっかけで底の水が上がると、連鎖的に泡立って一気に放出される
- 現在は長いパイプで少しずつガスを抜き、災害を防いでいる
見えない気体が1700人以上の命を奪い、科学がそれを「防げる災害」に変えた。地球の静かな湖には、まだ私たちが知らない顔があります。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOn the night of 21 August 1986, a huge cloud of carbon dioxide burst out of Lake Nyos in Cameroon.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Lake Nyos is a deep lake in Cameroon, in Africa. A lot of carbon dioxide gas stayed at the bottom of the lake. One night in 1986, the gas suddenly came out.
Carbon dioxide is heavier than air, so it moved down into the valleys. More than 1,700 people died. Today, engineers put long pipes into the lake. The pipes let the gas out slowly and safely.
67 words ・ CEFR A2
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ニオス湖は、アフリカのカメルーンにある深い湖です。湖の底には大量の二酸化炭素がたまっていました。1986年のある夜、そのガスが突然出てきました。
二酸化炭素は空気より重いので、谷へと流れ下りました。1700人以上が亡くなりました。今日、技術者たちは湖に長いパイプを入れています。パイプはガスを少しずつ安全に外へ出します。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
湖からガスが噴き出した災害と、現在のパイプによる対策がテーマなので B。
Q2. Why did the gas move down into the valleys?
Carbon dioxide is heavier than air, so it moved down into the valleys. とあるので D。
Q3. In this passage, "let the gas out" means the pipes ...
let ~ out は「~を外に出す」。ガスを湖から出すという意味なので A。
On the night of 21 August 1986, a huge cloud of carbon dioxide burst out of Lake Nyos in Cameroon. Because the gas is heavier than air, it flowed down nearby valleys, and more than 1,700 people in surrounding villages lost their lives. Scientists found that there had been no volcanic eruption.
Instead, carbon dioxide from magma deep underground had slowly dissolved into the bottom water of the lake, where high pressure kept it from escaping, like the gas in a closed bottle of soda. When something caused the deep water to rise, the gas formed bubbles and was released all at once. Since 2001, long pipes have been used to remove the gas gradually, reducing the risk.
118 words ・ CEFR B1
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1986年8月21日の夜、カメルーンのニオス湖から巨大な二酸化炭素の雲が噴き出しました。このガスは空気より重いため近くの谷を流れ下り、周辺の村で1700人以上が命を落としました。科学者たちは、火山の噴火はなかったことを突き止めました。
そうではなく、地下深くのマグマから来た二酸化炭素が湖の底の水に少しずつ溶け込み、ふたを閉めた炭酸飲料のボトルの中のガスのように、高い圧力によって外に出られずにいたのです。何かが原因で深い水が上昇したとき、ガスは泡になり、一気に放出されました。2001年以降、長いパイプを使ってガスを少しずつ取り除き、危険を減らしています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did scientists find about the cause of the disaster?
噴火はなく、湖底の水に溶けていた二酸化炭素が一気に放出されたので B。
Q2. Why does the passage compare the lake to a closed bottle of soda?
高い圧力でガスが溶けたままになり、何かのきっかけで一気に出る仕組みを説明するたとえなので C。
Q3. What can we infer about the pipes?
ガスを少しずつ抜いて reducing the risk とあるので、再び一気に放出されるのを防ぐためだと推測できる。正解は D。
On the night of 21 August 1986, Lake Nyos in Cameroon released an enormous cloud of carbon dioxide. Denser than air, the gas flowed down surrounding valleys, and more than 1,700 people in nearby villages died of asphyxiation. Kling and colleagues concluded in 1987 that there had been no direct volcanic eruption.
Rather, carbon dioxide of magmatic origin had accumulated in the lake's deep water, which can stay layered and rarely mixes with the surface. Under high pressure, the gas remained dissolved until some disturbance lifted deep water upward; as pressure fell, bubbles formed, pulling more water up in a runaway chain reaction known as a limnic eruption. What triggered it in 1986 has never been established. Once the mechanism was understood, prevention became possible.
Since 2001 at Nyos, and 2003 at nearby Lake Monoun, pipes reaching the lake bed have carried deep water upward, where it degasses in a self-powered fountain. Twelve years of monitoring showed the lakes remained stable while gas content fell by about 12 to 14 percent, prompting calls for more pipes. However, gas continues to enter from below, so monitoring must continue indefinitely, and a weak natural dam presents a separate flood risk.
198 words ・ CEFR B2
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1986年8月21日の夜、カメルーンのニオス湖は巨大な二酸化炭素の雲を放出しました。空気より密度の高いこのガスは周囲の谷を流れ下り、近くの村で1700人以上が窒息によって亡くなりました。クリングらは1987年、直接の火山噴火はなかったと結論づけました。そうではなく、マグマ由来の二酸化炭素が湖の深層水にたまっていたのです。
深層水は層をなしたままで、表層とはほとんど混ざらないことがあります。高い圧力のもとでガスは溶けたままでしたが、何らかの乱れによって深層水が持ち上げられると、圧力が下がって泡ができ、その泡がさらに水を引き上げるという暴走的な連鎖反応が起こりました。これは湖水爆発と呼ばれます。1986年に何が引き金になったのかは、いまだに特定されていません。
仕組みがわかると、予防が可能になりました。ニオス湖では2001年から、近くのモヌン湖では2003年から、湖底まで届くパイプが深層水を上へ運び、そこで水は自らの力で噴き上がる噴水となってガスを放出しています。12年間の観測では、湖は安定したまま、ガスの量が約12〜14%減ったことが示され、パイプの増設が求められました。しかし、ガスは下から入り続けるため監視は無期限に続けなければならず、また弱い天然の堤が別の洪水リスクとなっています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
湖水爆発の仕組みを解明し、それによってパイプでの予防が可能になったことが中心なので C。
Q2. According to the passage, what is known about the trigger of the 1986 event?
What triggered it in 1986 has never been established. とあるので B。
Q3. Why does the author say monitoring "must continue indefinitely"?
gas continues to enter from below とあり、ガスが供給され続けるため監視が必要なので A。
重要単語
- carbon dioxideB1名詞(句)二酸化炭素Carbon dioxide is heavier than air.
di-(2つ)+oxide(酸化物)。CO₂。carbon monoxide(一酸化炭素)との違いに注意。 - asphyxiationC1名詞窒息The victims died of asphyxiation.
動詞 asphyxiate。日常語では suffocation とも言う。 - dissolveB2動詞溶ける・溶かすGas can dissolve in cold, deep water.
「(組織・議会を)解散する」の意味もある。dissolve the parliament。 - degassingC1名詞ガス抜きControlled degassing started in 2001.
de-(取り除く)+gas。defrost(霜取り)、decaffeinated(カフェイン抜き)と同じ de-。 - hazardB2名詞危険・災害要因Scientists monitor this natural hazard.
hazard map「ハザードマップ」でおなじみ。risk は「起こる可能性」、hazard は「危険の源」。 - magmaB2名詞マグマThe gas came from magma deep below.
地表に出たものは lava(溶岩)。magmatic は「マグマの」。
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1986年、カメルーンのニオス湖から見えない二酸化炭素の雲がふき出し、周辺の村で1700人以上が亡くなった。原因は湖の底に高圧でたまっていたガス。今は長いパイプを沈めて少しずつガスを抜き、災害を防いでいる。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Kling et al. (1987) The 1986 Lake Nyos Gas Disaster in Cameroon, West Africa, Sciencedoi.org
- Kling et al. (2005) Degassing Lakes Nyos and Monoun: Defusing certain disaster, PNASdoi.org
- Kusakabe et al. (2008) Evolution of CO2 in Lakes Monoun and Nyos, Cameroon, before and during controlled degassing, Geochemical Journaldoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











