原田英語のスラング・新語辞典

見出しの気になる言葉スラング考現学 第4回

検索ランキング2位の「chud」は、40年以上前のB級ホラー映画から来た悪口

 原田英語がお届けします

火曜日のコーナー「見出しの気になる言葉」…英字ニュースや新聞の見出しに出てきた、気になるスラング・新語を深掘り。記者はなぜその言葉を選んだのか。元の見出しへのリンクつき。 コーナー一覧

火曜日は「見出しの気になる言葉」です。9月28日、ヨーロッパやアメリカのニュースサイトに「α世代のスラング検索ランキング」の見出しが並びました。1位は予想どおりの「6-7」。気になるのは2位の「chud」です。聞き慣れないこの語、元をたどると1984年のホラー映画に行き着きます。

1見出しに並んだ「chud」と「bop」

9月28日、ヨーロッパのニュースサイトが「From 'Chud' to 'Bop'」という見出しの記事を出しました。英語の単語サイトを運営する会社が、2026年1月から8月までのGoogleの検索データを調べ、α世代(おおむね2010年以降に生まれた世代)のスラングで、意味がよく検索された語を順番に並べたものです。

上位10語は、1位から順に6-7、chud、rizz、cap(no cap)、mog(mogging)、bop、larping、aura、sigma、crash out。辞書に載っている語ばかりですが、並べてみると、大人が首をかしげた語の順番がそのまま見えてきます。

記者が見出しに選んだのは、1位の「6-7」ではなく 2位の chud と6位の bop でした。どちらも、ぱっと見ただけでは意味の見当がつかない短い語です。「これ何?」と思わせる語を見出しに置くのは、記事をタップさせるための定番の手です。

2chud の正体は、地下にすむ怪物

chud(チャッド)の由来とされているのが、1984年のアメリカのホラー映画「C.H.U.D.」です。ニューヨークの地下にすむ怪物が人を襲う話で、題名は Cannibalistic Humanoid Underground Dwellers(人を食べる、地下にすむ人型の生きもの)の頭文字です。

この怪物の名前が、ネットの掲示板で「気持ち悪くて頭の悪いやつ」を呼ぶ悪口に変わりました。そこからSNSに出てきて、コメント欄で荒らしや、話の通じない人を見下して呼ぶときに使われています。

いまの子どもたちは、元の映画を見たことがないまま使っています。意味はほぼ「ダサくてイタいやつ」「負け組」。響きが短くて言いやすいので、軽いからかいから本気の悪口まで幅広く使われています。

3記事は「使わせないで」ではなく「知っておいて」

今回の記事の多くは、親に向けて書かれています。chud と bop はどちらも人を見下す語で、とくに bop は女の子を性的に決めつける悪口として、学校でのいじめに使われることがあるからです。

それでも見出しの語り口は「禁止しよう」ではなく「意味を知っておこう」でした。調べた会社の担当者も、スラングを使うのは仲間だというしるしで、検索された語を見ると人が何に加わろうとしているのかがわかる、という趣旨のことを話しています。

英語を学ぶ側としては、chud や bop は意味を知っておくための語です。自分から人に向けて使う語ではありません。辞書の注意度の表示が2になっているのも、そのためです。

4日本語なら、どのあたりの言葉?

chud を日本語に置きかえると、「キモいやつ」「イタいやつ」あたりが近いでしょう。ネットの悪口が元の意味を忘れられて広まる流れは、日本の草や陰キャの広まり方とよく似ています。

日本でも最近、「テレビで出演者が『やばい』を連発すると見る気がなくなる」という声を紹介する新聞記事が出ました。国がちがっても、新しい言葉に戸惑う大人の姿は同じです。違うのは、英語圏ではそれが検索データのランキングになって、毎年のように見出しを飾ることです。

ちなみに1位の「6-7」は、2025年に英語の辞書サイトの「今年の言葉」に選ばれた語です。意味らしい意味がない語が、辞書サイトにも検索ランキングにも選ばれたことになります。

見出しに知らない語が出てきたら、それはその国の大人たちもまだ知らない語かもしれません。明日の水曜日は「今週の旬JK語」をお届けします。

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