今週のスラングまとめスラング考現学 第2回
今週のまとめ:「それAIじゃん」から全力の人形自慢まで、5つの新語
原田英語がお届けします
日曜日のコーナー「今週のスラングまとめ」…今週辞書に加わった新語から、特におもしろい語をピックアップして小ネタつきでおさらい。 コーナー一覧
日曜日は「今週のスラングまとめ」です。この3日間で辞書に加わった34語から、友達に話したくなる5語を選びました。AIが悪口になり、年上の名作が「おじさん枠」にされ、同じ言葉が世代で正反対に聞こえる。今週の新語は、世代のすれ違いがよく見える顔ぶれになりました。
1「それ、AIじゃん」が悪口になった
1語目はthat's so AIです。直訳すると「それ、めっちゃAI」。イギリスの新聞が9月に「α世代のいちばんの悪口」として特集し、小学生が安っぽいグッズや親の苦しい言い訳まで「AI」と呼んでいると伝えました。
ポイントは、AIと関係ないものにも使うところです。見た目だけそれっぽくて中身が怪しいもの、感情のこもっていない返事、盛りすぎた話。つまり「AI」が「ニセモノ」の代名詞になっているわけです。日本語なら「嘘くさ」「パチモン感」が近い言い方です。
同じ週には、有名人に似ているけれど少し残念な人を指すchoppelgangerも辞書に入りました。ロボットやAIをけなすclankerと並べると、いまの子どもたちがどれだけ「本物かどうか」に敏感かが見えてきます。
2unc slop:年上の「名作」をばっさり
2語目はunc slop。uncは uncle の略で、30代以上をいじって呼ぶ言い方。slopは、もとは豚にやる残飯のような、どろどろの食べ物のことです。合わせると「おじさん向けの古くさい作品」。
1990〜2000年代のゲームやアニメを、年上世代が「昔はよかった」と持ち上げると、若い世代がこの一言で切り捨てます。2026年に入って古典の名作をこう呼ぶ画像が出回り、30代以上のファンが反論して大論争になりました。
若者が年上を突き放す言い方といえば、少し前のok boomerがあります。boomer が「親の世代」だったのに対して、unc は「ちょっと上のお兄さん・お姉さん」まで入ります。からかわれる年齢が、じわじわ下がってきているのです。
3no borax no glue:材料ゼロの無理ゲー
3語目はno borax no glue。borax はホウ砂、glue はのり。どちらもスライム作りに欠かせない材料です。その2つを抜いてスライムを作ろうとするのは、どう考えても不可能。そこから「無理なのはわかってる」という自虐のひと言になりました。
使い方は、how to から始まる悩みの文の最後にくっつけるのが定番です。how to stop thinking about him no borax no glue なら「あの人のことを考えないようにする方法(無理なのはわかってる)」。日本語の無理ゲーや「詰み」にかなり近い感覚です。
2024年2月にTikTokで広まり、2026年になっても解説記事が出ています。スライムの作り方を検索していた子どもたちの言葉が、失恋の嘆きの決まり文句になったわけで、言葉の転がり方としてもかなり愉快な1語です。
4バブみ:同じ言葉が、世代で正反対に聞こえる
日本語からはバブみを選びました。赤ちゃんの「バブー」に、「〜っぽさ」を表す「み」をつけた語です。もとはオタク界隈で、年下のキャラに母性を感じて甘えたくなる気持ちを指していました。
今月、テレビの昼の番組でインフルエンサーのなえなのさんが「赤ちゃんみのこと」と説明すると、共演者から「悪口やんか!」とツッコミが入りました。若い世代にとっては、ほっぺがふっくらした幼い顔立ちへのほめ言葉。ところが上の世代には「子どもっぽい」という悪口に聞こえるのです。
英語で言うなら baby-faced や、小さくてかわいいものを指す smol が近いところです。unc slop と同じく、世代によって受け取り方がまったく違う言葉が、今週はそろいました。
5My American Girl Doll:皮肉ぬきの全力自慢
最後は、今日辞書に入ったばかりのMy American Girl Dollです。2009年のホームビデオで、男の子がアメリカン・ガールの人形を「来たばかり」と大はしゃぎで紹介する音声が、2026年の夏の終わりからTikTokで使われはじめ、9月に一気に広がりました。
音声に口パクを合わせたあと、自分の「人形」を見せます。といっても本物の人形ではなく、合格通知、新しいエアフライヤー、飼いはじめた子猫など、ごくふつうの物です。見せる物がふつうであるほど、はしゃぎっぷりとの差で笑えます。
悪口の多かった今週の中で、この1語だけは、小さな喜びを皮肉ぬきで自慢しています。見た人を幸せにするための投稿を指すjoybaitと並べてみると、SNSにはとげのある言葉と同じくらい、やさしい言葉も生まれているのがわかります。
明日の月曜日は「ヒップホップ・洋楽スラング解剖」。今週の999のように、音楽から生まれた言葉を取り上げます。それまでに、身の回りの「自慢の人形」をひとつ探してみてください。
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