優秀な人が集まるほど、ダメな決定をすることがある。「集団思考」と"話し合いで消える情報"の罠

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話し合いでは、メンバーそれぞれが持つ情報がまんべんなく共有されやすい
実験では、全員が知っている情報ほど話題になり、一部の人しか知らない情報は話されにくい傾向があった。
- 対象
- 大学生・組織の事例
- 規模
- 事例研究+グループ実験
- 研究の種類
- 事例研究・実験・レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
仲の良いエリート集団が異論を封じて失敗する「集団思考」。理論の検証はまちまちだが、話し合いで"みんなが知っている情報"が中心になる現象は確かめられている。
ひとことで言うと会議で「みんな賛成」のときこそ、ちょっと立ち止まろう!
学級会、部活のミーティング、会社の会議。「みんなで話し合って決めた」ことは、ひとりで決めるより正しそうに思えます。
ところが歴史には、優秀な人たちが集まって話し合ったのに、とんでもない決定をしてしまった例がいくつもあります。
アメリカの心理学者アーヴィング・ジャニスは、こうした失敗を「集団思考(グループシンク)」という言葉で世に広めました。
01エリート集団が、なぜ失敗したのか
ジャニスが注目したのは、1961年にアメリカ政府がキューバへの侵攻を試みて大失敗した「ピッグス湾事件」などの事例です。大統領の周りには、優秀なブレーンが集まっていました。それでも、計画の明らかな問題点は見過ごされました。
ジャニスは、こうした集団に共通する特徴を挙げています。
- 「自分たちは間違えない」という無敵感
- 反対意見を言いにくい空気と、自分の中での疑問の封印
- 「全員賛成している」という全員一致の錯覚
- 都合の悪い情報をリーダーに届けない「門番」役の存在
仲が良く、まとまりの強いグループほど、「この空気を壊したくない」という気持ちが働き、批判的に考えることをやめてしまうというのです。
02ただし、理論の検証はビミョー
集団思考は、ビジネス書などで今もよく紹介されます。でも、科学的な検証の結果は意外とまちまちです。
1998年に25年分の研究をまとめたレビューでは、事例研究の多くは理論をある程度支持していたものの、実験研究では、たとえば「グループの結束が強いほど失敗しやすい」という中心的な予測が、はっきり確認されないことも多かったと報告されています。
集団思考は「必ず起きる法則」というより、危険なパターンを整理したチェックリストとして使うのがよさそうです。

03確かめられた罠:「みんなが知っている情報」ばかり話す
一方、もっとシンプルで、実験ではっきり確かめられた現象があります。
みんなが知っている情報は、誰でも口にできるぶん、話題になりやすい。一方、自分しか知らない情報は、本人が言い出さない限り話題に出ない。こうして、グループの"知恵の総量"は活かされないままになってしまうのです。
04まとめ
話し合いは、うまくいけば一人ではたどり着けない答えを生みます。でも、空気を読みすぎると、情報も異論も消えてしまう。
会議で「全員賛成です」となったら、それは喜ぶべき瞬間であると同時に、立ち止まるべき合図でもあるのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe psychologist Irving Janis used the word "groupthink" to describe how smart, close groups can make…
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people think a group makes better decisions than one person. But this is not always true. In an experiment, college students worked in groups of four to choose the best student leader. Some facts were given to everyone.
Other facts were given to only one person. The groups talked mostly about the facts that everyone knew. Important facts that only one person knew were often lost, so groups often chose the wrong person.
74 words ・ CEFR A2
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多くの人は、集団のほうが一人よりも良い決定をすると考えています。しかし、これはいつも正しいわけではありません。ある実験で、大学生たちは4人のグループになって、最もふさわしい生徒会の代表を選びました。ある情報は全員に配られました。
別の情報は一人だけに配られました。グループは主に全員が知っている情報について話しました。一人だけが知っている大事な情報はしばしば埋もれてしまい、グループはよく間違った人を選びました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
But this is not always true. として、集団の話し合いで情報が埋もれる失敗を説明しているので C。
Q2. What did the groups talk about most?
The groups talked mostly about the facts that everyone knew. とあるので C。
Q3. In this passage, "lost" means the important facts were ...
一人だけが知っている情報が話し合いで使われなかった、という意味なので A。物理的になくしたわけではない。
The psychologist Irving Janis used the word "groupthink" to describe how smart, close groups can make terrible decisions. He studied cases such as the failed US invasion of Cuba in 1961. In such groups, members feel they cannot be wrong, keep their doubts to themselves, and believe that everyone agrees.
However, later research has given mixed support for the full theory. A clearer problem was shown in a 1985 experiment. Groups of four students chose among three candidates.
Some information was shared by all members, but other information was given to only one person. The groups mostly discussed shared information, so they often missed the best candidate. Asking everyone to share what they know first can help.
117 words ・ CEFR B1
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心理学者アーヴィング・ジャニスは、「集団思考(グループシンク)」という言葉で、頭が良く結束の強い集団がひどい決定をしてしまうことを表しました。彼は1961年のアメリカによるキューバ侵攻の失敗などの事例を研究しました。そうした集団では、メンバーは自分たちが間違うはずがないと感じ、疑問を自分の中にしまい込み、全員が賛成していると信じます。
しかし、その後の研究は理論全体に対してまちまちの支持しか示していません。もっとはっきりした問題が1985年の実験で示されました。4人の学生のグループが3人の候補者の中から選びました。
ある情報は全員が共有していましたが、別の情報は一人だけに与えられていました。グループは主に共有された情報について話し合ったため、最適な候補者を見逃すことがよくありました。最初に全員が知っていることを出し合ってもらうことが役に立ちます。
4択リーディングクイズ
Q1. What does "groupthink" describe?
第1文で how smart, close groups can make terrible decisions と説明されているので D。
Q2. What has later research shown about Janis's full theory?
later research has given mixed support for the full theory とあるので C。
Q3. Why would sharing information first help a group?
一人だけの情報が話されずに最適な候補を逃したことが問題なので、最初に出し合えば見落としを防げると推論できる。A。
Irving Janis popularized the term "groupthink" to explain how highly capable, cohesive groups can reach disastrous decisions. Drawing on cases such as the failed 1961 Bay of Pigs invasion, he described typical symptoms: an illusion of invulnerability, pressure that discourages dissent, self-censorship, an illusion of unanimity, and members who shield the leader from unwelcome information. The concept remains popular in business books, yet its empirical support is weaker than many assume. A 1998 review of twenty-five years of research found that case studies generally supported the theory, but laboratory experiments often failed to confirm a central prediction, namely that greater cohesion leads to poorer decisions.
Groupthink may therefore work better as a checklist of warning signs than as a law. A more robust phenomenon emerged from a 1985 experiment in which four-person groups selected a student council candidate. Information that would reveal the best choice was distributed so that each member held unique pieces, yet discussion centered on shared facts and the hidden profile was rarely uncovered. Later work suggests that genuine minority dissent stimulates better thinking than a role-played devil's advocate.
182 words ・ CEFR B2
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アーヴィング・ジャニスは、非常に有能で結束の強い集団がなぜ悲惨な決定に至りうるのかを説明するために、「集団思考」という言葉を広めました。1961年のピッグス湾侵攻の失敗などの事例をもとに、彼は典型的な症状を挙げました。無敵だという錯覚、異論を抑える圧力、自己検閲、全員一致の錯覚、そして都合の悪い情報からリーダーを守るメンバーの存在です。この概念はビジネス書で今も人気ですが、実証的な裏づけは多くの人が思うより弱いものです。25年分の研究をまとめた1998年のレビューでは、事例研究はおおむね理論を支持していたものの、実験室の研究では、中心的な予測、つまり結束が強いほど決定が悪くなるという予測が確認されないことが多かったのです。
したがって集団思考は、法則というより危険信号のチェックリストとして役立つのかもしれません。より確かな現象は、4人グループが生徒会の候補者を選ぶ1985年の実験から明らかになりました。最適な選択がわかる情報は、各メンバーが独自の断片を持つように配られていましたが、話し合いは共有された事実に集中し、「隠れたプロフィール」が明らかになることはめったにありませんでした。その後の研究は、役割として演じる「悪魔の代弁者」よりも、本物の少数派の異論のほうがより良い思考を引き出すことを示唆しています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the author's overall view of groupthink?
実証的な裏づけは弱いとした上で、may therefore work better as a checklist of warning signs than as a law と述べているので D。
Q2. Which prediction of groupthink theory was often not confirmed in experiments?
failed to confirm a central prediction, namely that greater cohesion leads to poorer decisions とあるので C。
Q3. Based on the last sentence, which approach would most likely improve a meeting?
genuine minority dissent が role-played devil's advocate よりも良い思考を引き出すとあるので、本当に反対の人の声を聞く A。
重要単語
- groupthinkC1名詞集団思考Groupthink can lead to disastrous decisions.
group+think。オーウェルの小説の doublethink にならった造語とされる。 - dissentC1名詞・動詞反対意見/異議を唱えるHealthy teams welcome dissent.
dis-(離れて)+sent(感じる)。consent(同意)と対で覚える。 - consensusB2名詞合意Reaching consensus too quickly can be risky.
reach a consensus(合意に達する)がコロケーション。con-(共に)+sens(感じる)で consent と同語源。 - cohesiveC1形容詞結束の強いA cohesive team may avoid conflict.
cohere(くっつく)から。名詞 cohesion(結束)。coherent(筋の通った)とも同語源。 - devil's advocateC1名詞(句)あえて反対する役Someone should play devil's advocate.
play devil's advocate で「あえて反対意見を言う」。カトリックの列聖審査で反論役を務めた役職が由来。 - unanimousC1形容詞全員一致のThe decision was unanimous.
uni-(一つ)+anim(心)。発音 /juˈnænɪməs/ に注意。名詞は unanimity。 - overlookB2動詞見落とすThe group overlooked an important fact.
「見渡す」の意味もある多義語。look over(ざっと目を通す)との違いが入試で問われる。
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話し合えば良い答えが出る…とは限らない。グループで決める実験では、メンバーがもともと共有している情報が話題の中心になり、一人しか知らない大事な情報は埋もれやすかったらしい。会議で全員一致のときこそ要注意。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Esser (1998) Alive and well after 25 years: A review of groupthink research, Organizational Behavior and Human Decision Processesdoi.org
- Stasser & Titus (1985) Pooling of unshared information in group decision making: Biased information sampling during discussion, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
- Nemeth, Brown & Rogers (2001) Devil's advocate versus authentic dissent: Stimulating quantity and quality, European Journal of Social Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











