「育てる」に体温が宿る bring up — 今日のイディオム5つ
入試に出るイディオム 第2回
bring up は「育てる」だけでは足りません。raise が中立的に「上向きに伸ばす」のに対し、bring up は「そばに置き、日々かかわって上に運ぶ」——手ざわりのある育児の言葉です。ほか turn down / make up / run out of / carry out を、語源・記憶フック・音の連結まで音声つきで。
監修:原田高志(原田英語.com)
今日の5つも、また基本動詞の句動詞です。「基本動詞は簡単だから後回し」と考えて、じつは受験生を最後まで苦しめる敵——それがこの層です。今日も一つひとつ、「なぜその意味になるのか」から入ります。理屈が見えれば、あとは思い出すだけになります。
音で学ぶ
ネイティブ音声で、聞く・くり返す・訳を確かめる。全部この場でできます。
速さ・和訳・練習の設定
読む速さ
聞き取れないときは 0.75x へ。音はそのまま、速さだけ変わります
和訳
ふだんは英文だけ。1文ずつ確かめたいときは、その文の「和訳」を押すと、そこだけ開きます
シャドーイング
オンにして文を押すと、同じ1文を3回くり返します。あいだの無音で、自分の口を動かしてください
bring up
ブリング・アップ①(子どもを)育てる ②(話題を)持ち出す
なぜこの意味になる? bring は「(自分のところへ)連れてくる」、up は「上へ」。子どもを一人前の大きさへ「連れ上げていく」——それが bring up の絵です。②の「話題を持ち出す」も同じ発想。会話の水面下にあった話を、みんなに見えるところまで up、つまり浮き上がらせる、というイメージです。育てるも話題も、「下から上へ運ぶ」動作なのです。
こう使う
She was brought up by her grandparents in a small village.
彼女は小さな村で祖父母に育てられた。
Please don't bring up that subject in front of the kids.
子どもたちの前でその話題を持ち出さないでください。
発音:bring UP と up にはっきり強勢。「ブリンガップ」と2語をつなげて一息で。会話では bring ' em up(彼らを育てる)のように them の音が短くなることも。
こぼれ話 — 受動態 be brought up が使えるのは「育てられた」の意味だけで、「話題に出された」の意味では the topic was brought up と主語に注意。ちなみに well brought-up はハイフンでつなぐと形容詞になり「育ちのいい」—— a well brought-up girl と言えるだけで、少しだけ英語が大人びます。
turn down
ターン・ダウン①(申し出・依頼を)断る ②(音量・温度を)下げる
なぜこの意味になる? turn は「回す・向きを変える」、down は「下へ」。①はどこから来たか——一説にはトランプ遊びに由来し、配られたカードを気に入らず裏返して伏せる(turn down)動作から「拒む」の意味になったと言われます。差し出されたものを、そっと下向きに返す——断り方の絵として妙に納得のいく由来です。②はもちろん、昔のダイヤル式ラジオでつまみを下方向に回した動作そのもの。
こう使う
She turned down the job offer after much thought.
彼女はよく考えた末、その仕事の申し出を断った。
Can you turn down the music? I'm on the phone.
音楽の音量を下げてくれる?電話中なんだ。
発音:turn DOWN と down に強勢。「ターンダウン」よりも「ターンダーウン」と down を少し引きずるほうが自然です。turn it down のように目的語が代名詞のときは、必ず turn と down のあいだに入れます。
こぼれ話 — ホテル業界の turndown service(ターンダウン・サービス)は、夕方に部屋を整えベッドカバーをめくって(turn down)寝る準備をしておくサービスのこと。「断る」ではなく②の方の意味です。「断りサービス」だと思ってしまう人が意外と多い、外資系ホテルの英語小話です。
make up
メイク・アップ①化粧する ②でっち上げる ③埋め合わせる ④仲直りする ⑤構成する
なぜこの意味になる? make は「作る」、up は「完成の方へ・すっかり」。up は「上へ」だけでなく「〜し切る」の完成のマーカーでもあります(eat up=食べ切る、fill up=満たし切る)。だから make up は「作り切って一つの形にする」。顔を仕上げるのが化粧、話を仕上げるのがでっち上げ、欠損を仕上げるのが埋め合わせ——芯は動いていないのです。
こう使う
I'll make up for the time I missed by working this weekend.
休んだ時間は今週末働いて埋め合わせます。
Women make up nearly half of the workforce in this company.
この会社の従業員のほぼ半分は女性が占めている。
発音:make UP と up に強勢。ただし名詞の makeup(化粧・構成)は前寄りに MAKE-up。==動詞は後ろ・名詞は前==という英語のアクセント規則の代表例です。
こぼれ話 — make-up class は「補講」——授業を1回休んだぶんを「作り足す」授業。海外の大学のシラバスに頻出する語なので、留学準備で覚えておくと得。ちなみに「メイクアップした顔」の意味で makeup を数えられる名詞のように a makeup とは言えません。無冠詞・不可算です。
run out of
ラン・アウト・オブ〜を使い果たす、〜が切れる
なぜこの意味になる? run はもともと「勢いよく進む」、out of は「〜の中から外へ」。「(供給が)中身から外へ走り出て、袋が空になる」——それが run out of の絵です。時間・お金・ガソリン・アイデア……入れ物の中身が「走り去っていく」感覚が主語の run に残っています。時間に追われる感覚を、英語は「時間が走って外に出ていく」と表現するわけです。
こう使う
We're running out of milk. Can you buy some on your way home?
牛乳が切れかけている。帰りに買ってきてくれる?
Time is running out — we need to make a decision now.
時間がなくなってきている——今決めないと。
発音:3語をひとかたまりで RUN-out-of。run に強勢、out of は「アウタヴ」と弱く速く。会話では I'm running out of time.(時間がなくなってきた)と進行形で使うことがとても多く、リスニングでの頻出フレーズです。
こぼれ話 — 受動態の be run out of には「(人が)追い出される」というまったく別の意味があるので注意。He was run out of town.(彼は町から追い出された)。同じ形なのに主語が変わると意味が別物——この二重生活は英語のあちこちに潜んでいて、辞書を引く癖の大切さを教えてくれる句動詞のひとつです。
carry out
キャリー・アウト(計画・命令・実験などを)実行する、遂行する
なぜこの意味になる? carry は「運ぶ」、out は「外へ・完了まで」。設計図や指示書のなかにあったものを、現実世界へ「運び出す」——carry out のイメージはそれに尽きます。out には「外へ」の空間的な意味と「〜し切る(完遂)」の意味の両方があり、carry out はそのどちらも同時に効いています。「運び出して、やり切る」の二重の out です。
こう使う
The team carried out a series of experiments over three months.
チームは3か月にわたって一連の実験を行った。
It is our duty to carry out the plan as agreed.
合意された通りにその計画を遂行するのが私たちの務めだ。
発音:carry OUT と out に強勢。「キャリアウト」と2語をつなげて。アメリカの飲食店で見る carry-out はハイフンでつなぐと名詞で「持ち帰り(=takeout)」の意味に。==同じ2語で「実行する」と「持ち帰り」——文脈次第==という句動詞の性格がよく出ています。
こぼれ話 — carry out an experiment(実験を行う)、carry out a survey(調査を実施する)、carry out one's duty(職務を果たす)と、名詞と組み合わせるコロケーションが決まっているのが特徴。論文やビジネスメールでは do より carry out を選ぶだけで、一段フォーマルに聞こえます。TOEIC・英作文でも重宝する一語です。
よくある質問
bring up と raise はどう違いますか?
raise は「上に伸ばす・上げる」の一般語で、子育てにも家畜の飼育にも野菜の栽培にも使えます。bring up は人(とくに子ども)に限定され、「そばに置いて手をかけて育てる」という日常のかかわりが強く出ます。同じ「育てる」でも、raise は年輪、bring up は毎日のご飯——そんな距離感の違いです。
make up は意味が多すぎて覚えられません。どう整理すればいいですか?
「無い状態から作り上げる」がすべての中心です。①化粧をする=顔を作る、②話をでっち上げる=話を作る、③埋め合わせる=欠けた分を作る、④仲直りする=壊れた関係を作り直す、⑤構成する=全体を作っている。「make(作る)+ up(完成の方へ)」で全部つながっていると押さえれば、意味の枝分かれが暗記から理解に変わります。