「ロンドン橋落ちた」や「ハンプティ・ダンプティ」など、だれもが知っているマザーグース。かわいい童謡の裏には、人柱の言い伝えや、実際の殺人事件を歌った縄跳び歌までひそんでいます。こわーいマザーグース12曲を、どこまでが実話でどこからがウワサかの判定つきで紹介します。

本当は怖いマザーグース|ロンドン橋・斧・ハンプティ・ダンプティの真相
The dark side of nursery rhymes
先に結論(30秒)リジー・ボーデンの斧の歌は、実際の殺人事件がもと(ただし歌の中身はデタラメ)ロンドン橋の人柱説、バラの輪のペスト説、ハンプティの大砲説は、どれも証拠のないウワサでも、首切り・殺人・お葬式を歌詞そのもので歌うマザーグースは本当にある
怖さを💀で5段階に。さらに、それぞれの怖い話を3つに判定しました:実話本当にあった事件 歌詞がガチ説がなくても歌詞そのものが怖い ウワサ後から作られた説
第一章 What is Mother Goose?

マザーグースとは?30秒でわかるうんちく

マザーグース(Mother Goose)は、イギリスを中心とした英語圏で、昔から口伝えで歌われてきた童謡・わらべうたの総称です。イギリスでは「ナーサリーライム(nursery rhymes)」=「子ども部屋の詩」と呼ぶのがふつうで、「マザーグース」は主にアメリカと日本での呼び名です。

名前の由来フランスのペローが1697年に出した昔話集『がちょうおばさんの話(Contes de ma mère l’Oye)』。これが英訳され、18世紀後半にロンドンのニューベリー社が童謡集を『Mother Goose’s Melody』と名づけました。
数1000以上ともいわれ、ほとんどが作者不明。子守歌・なぞなぞ・数え歌・早口言葉・遊び歌まで、種類もいろいろです。
英米人の教養聖書やシェイクスピアと並ぶ「だれでも知っている言葉」。小説・映画・ニュースの見出しに、説明なしで引用されます。
日本では1921年に北原白秋が『まざあ・ぐうす』として訳し、1975年からの谷川俊太郎の訳『マザー・グースのうた』で大ブームになりました。
暖炉のそばで子どもたちに歌を聞かせるマザーグースのおばあさんとガチョウのイラスト
▲ 「マザーグース」はおばあさんの名前。でも実在の人物ではありません
うんちく:アメリカ・ボストンには「本物のマザーグース、エリザベス・グースのお墓」という観光名所がありますが、これは作り話。マザーグースは特定の人ではなく、昔話を語るおばあさんのイメージです。
第二章 Creepy Nursery Rhymes

こわーいマザーグース12選|ヤバい度ランキング

ヤバい順に12曲。英語の歌詞(さわりの部分)と和訳、怖い説、そして真相まで一気にどうぞ。

1位

リジー・ボーデン、斧を手に

Lizzie Borden took an axe
ヤバい度💀💀💀💀💀判定実話
1892年のリジー・ボーデン事件をイメージした、薄暗い家の階段と手斧のイラスト
▲ 事件が起きたのは、ふつうの家の、ふつうの夏の朝でした
Lizzie Borden took an axeリジー・ボーデン 斧を手に
And gave her mother forty whacks;お母さんを40回 打ちのめした
When she saw what she had done,自分のしたことに気がついて
She gave her father forty-one.お父さんには41回

縄跳びをしながら子どもたちが歌った、いちばんヤバい1曲です。もとになった事件は作り話ではありません。1892年8月4日、アメリカ・マサチューセッツ州フォールリバーで、お金持ちのアンドリュー・ボーデンと妻のアビーが、自宅で刃物で殺されました。疑われたのは、家にいた次女のリジー(当時32歳)。

ところが翌1893年6月の裁判で、決め手になる証拠がなく、リジーは無罪になります。犯人はいまも分かっていません。それでも世間は「リジーがやった」と決めつけ、この歌が子どもの遊び歌として広まりました。じつは昔から伝わるマザーグースではなく、マザーグース風に作られた替え歌です。

🔎 真相歌の数字はデタラメです。アビーはリジーの実の母ではなく継母で、傷はおよそ19か所。父は10か所ほど。凶器も大きな斧ではなく手斧(hatchet)と考えられています。そして何より、リジーは裁判で無罪でした。
📺 いま話題2026年9月17日に Netflix のドラマ『Monster: The Lizzie Borden Story』の配信が始まり、日本でも「リジー・ボーデン」がよく検索されています。事件の家は今、泊まれる博物館(Lizzie Borden House)になっています。
2位

ロンドン橋落ちた

London Bridge Is Falling Down
ヤバい度💀💀💀💀💀判定ウワサ
霧のテムズ川に崩れかけた古いロンドン橋と、橋くぐり遊びをする子どもたちのイラスト
▲ 何度かけ直しても落ちる橋。最後に立てる「見張り」とは…
London Bridge is falling down,ロンドン橋が落ちる
Falling down, falling down.落ちる 落ちる
London Bridge is falling down,ロンドン橋が落ちる
My fair lady.マイ・フェア・レディ

日本でも「ロンドン橋落ちた 落ちた 落ちた」でおなじみ。じつは長い続きがあります。橋を木と粘土でかけ直す→流される、レンガ→崩れる、鉄→曲がる、金と銀→盗まれる……。何をやってもダメで、最後に「夜どおし見張りを立てよう(Set a man to watch all night)」となります。

怖い説:この「見張り」は、橋が崩れないように土台に生き埋めにされた人柱だというのです。「鍵をかけて閉じこめろ(Take the key and lock her up)」という歌詞がある版もあり、閉じこめられた生けにえのことだ、と。ほかに、1014年にヴァイキングの王オーラヴが橋を引き倒した事件の歌だ、という説もあります。

🔎 真相人柱説は、1894年にイギリスの民俗学者アリス・ゴムが唱えた推測です。ロンドン橋に人が埋められた証拠は見つかっていません。中世のロンドン橋は火事や氷で本当に何度も壊れていたので、「何度直しても落ちる橋」そのものを歌った、と考えるのが自然です。歌詞がまとまった形で本に載ったのは1744年です。
💡 うんちく1831年にかけられたロンドン橋は、1968年にアメリカの実業家に売られ、アリゾナ州のレイクハバスシティに移されて今も立っています。エリザベス女王が亡くなったとき(2022年9月)、首相に知らせる暗号は「London Bridge is down(ロンドン橋が落ちた)」でした。
3位

誰がコマドリを殺したの?

Who Killed Cock Robin?
ヤバい度💀💀💀💀💀判定歌詞がガチ
コマドリのお葬式に集まった森の鳥たちのイラスト
▲ 犯人はスズメ。森の動物たちがお葬式の役目を次々に引き受けます
Who killed Cock Robin?だれがコマドリを殺したの?
I, said the Sparrow,「わたし」とスズメが言いました
With my bow and arrow,「わたしの弓と矢で
I killed Cock Robin.わたしがコマドリを殺したの」

いきなりの犯人の自白から始まります。続いて、ハエが「わたしが死ぬのを見た」、魚が「わたしが血を受けた」、フクロウが「わたしが墓をほる」、ミヤマガラスが「わたしが牧師をやる」……と、森の生き物たちが次々に名乗り出て、淡々とお葬式が進んでいきます。最後はコマドリのために鐘が鳴って終わり。最初の4連は1744年の本に載っています。

日本では、魔夜峰央のマンガ『パタリロ!』のアニメ版のエンディング曲「クックロビン音頭」の「だーれが殺したクックロビン♪」でおなじみですね。

🔎 真相1742年にイギリスの首相ウォルポールが失脚した事件の風刺だ、という説もありますが、歌はそれより古いともいわれ、確かな証拠はありません。とはいえ殺人・自白・お葬式を歌っているのは歌詞そのもの。説がなくても十分に怖い1曲です。
4位

そして誰もいなくなった(10人の数え歌)

Ten Little Soldiers
ヤバい度💀💀💀💀💀判定歌詞がガチ
Ten little soldier boys went out to dine;10人の兵隊さん 食事にお出かけ
One choked his little self and then there were nine.1人がのどをつまらせて 残りは9人
……(1人ずつ消えていき……)
And then there were none.そして誰もいなくなった

10人が1人ずつ、のどをつまらせ、寝すごし、ハチに刺され、クマに抱きしめられ……と消えていく数え歌です。もとは1868年にアメリカで作られた歌で、翌年にイギリスで替え歌になって広まりました。

アガサ・クリスティーはこの歌をもとに、孤島に集められた10人が歌詞のとおりに1人ずつ殺されていく推理小説『そして誰もいなくなった』(1939年)を書きました。世界でいちばん売れたミステリーといわれます。

🔎 真相古くからの伝承ではなく19世紀の作詞ですが、マザーグースの本によく入っています。歌の元の題名には先住民や黒人への差別語が使われていたため、今は「10人の兵隊(Ten Little Soldiers)」などに改められています。
5位

オレンジとレモン

Oranges and Lemons
ヤバい度💀💀💀💀💀判定歌詞がガチ
Here comes a candle to light you to bed,ほら ろうそくが来た ベッドまで照らしに
Here comes a chopper to chop off your head!ほら 首切り人が来た おまえの首をはねに
Chip chop chip chop the last man’s dead.チョキン チョキン 最後のひとりが死んだ

ロンドンの教会の鐘が「オレンジとレモン」「5ファージング貸してるよ」としゃべり合う、かわいい鐘の歌……のはずが、最後の3行でいきなりこれです。ロンドン橋と同じように、2人が腕でアーチを作り、その下をみんなでくぐる遊びで歌われ、「チョップ!」でアーチを下ろして1人をつかまえます。

🔎 真相処刑の歌、ヘンリー8世の妻たちの歌、といった説はどれも証拠なし。最後の首切りの部分はあとから付け足されたもので、つかまる瞬間を盛り上げる「おどかし」と考えられています。
6位

バラの輪をつくろう

Ring a Ring o’ Roses
ヤバい度💀💀💀💀💀判定ウワサ
バラの木のまわりで輪になって踊る子どもたちと、霧の中のペスト医師の影のイラスト
▲ 「ペストの歌」は本当? 答えは意外なところに
Ring-a-ring o’ roses,バラの輪をつくろう
A pocket full of posies,ポケットには花束いっぱい
A-tishoo! A-tishoo!ハクション! ハクション!
We all fall down.みんな倒れる

怖い説:1665年にロンドンで大流行したペストの歌だというもの。バラの輪=ペストの赤い発疹、花束=病気よけのハーブ、くしゃみ=末期の症状、みんな倒れる=死。こじつけにしては、できすぎていますよね。アメリカでは「Ring Around the Rosie」と呼ばれ、くしゃみの部分が「Ashes, ashes(灰だ、灰だ)」になります。

🔎 真相民俗学者のあいだでは根拠なしとされています。今の形の歌詞が本に載ったのは1881年で、ペストから200年以上あと。ペスト説が言われ出したのは20世紀の半ばで、1951年にはイギリスの研究者オーピー夫妻がこの説を紹介しつつ、疑っています。そもそも、くしゃみはペストの典型的な症状ではありません。
7位

3匹の盲目のネズミ

Three Blind Mice
ヤバい度💀💀💀💀💀判定歌詞がガチウワサ
Three blind mice, see how they run!目の見えない3匹のネズミ ほら走ってく
They all ran after the farmer’s wife,みんなで農家のおかみさんを追いかけた
Who cut off their tails with a carving knife.おかみさんは肉切り包丁で しっぽをちょん切った

明るい輪唱のメロディで歌われるのは、包丁でしっぽを切られるネズミたち。怖い説:おかみさんは「血まみれのメアリー」ことイングランド女王メアリー1世、3匹のネズミは彼女に処刑された3人のプロテスタントの司教だ、というものです。

🔎 真相歌詞が残酷なのは本当(判定:歌詞がガチ)。でもメアリー1世説はウワサです。1609年の楽譜集にすでにこの歌がありますが、その歌詞には農家のおかみさんも包丁も出てきません。
8位

かぼちゃ好きのピーター

Peter, Peter, Pumpkin Eater
ヤバい度💀💀💀💀💀判定歌詞がガチ
Peter, Peter, pumpkin eater,ピーター ピーター かぼちゃ好き
Had a wife and couldn’t keep her;奥さんがいたけど つなぎとめられない
He put her in a pumpkin shellだから かぼちゃの殻に閉じこめた
And there he kept her very well.そこで しっかり暮らさせた

奥さんをかぼちゃの中に閉じこめて「めでたしめでたし」。ネットでは「じつは妻を殺して、かぼちゃに隠した歌」という説まで出回っています。

🔎 真相殺人説は根拠のない現代のウワサです。英語の keep には「(お金を出して)養う」という意味もあり、「奥さんを養いきれない貧乏な男が、かぼちゃの家に住まわせた」と読むのがふつう。とはいえ、閉じこめているのは歌詞のとおりです。
9位

てんとう虫、てんとう虫

Ladybird, Ladybird
ヤバい度💀💀💀💀💀判定歌詞がガチ
Ladybird, ladybird, fly away home,てんとう虫 てんとう虫 おうちへお帰り
Your house is on fire and your children are gone.おまえの家は火事だ 子どもたちはもういない

子どもが指にのせたてんとう虫を飛ばすときに歌う、かわいい場面の歌です。なのに、言っていることは「家は火事、子どもはいない」。

🔎 真相収穫が終わった畑を焼く習慣があり、そこにいるてんとう虫に「早く逃げて」と呼びかけた歌だ、と言われます。ちなみに ladybird はイギリス英語。アメリカ英語では ladybug です。
10位

ハンプティ・ダンプティ

Humpty Dumpty
ヤバい度💀💀💀💀💀判定ウワサ
高い塀の上にすわる、ひびの入ったたまごのハンプティ・ダンプティと、下で見上げる王様の兵隊のイラスト
▲ 歌詞のどこにも「たまご」とは書いていない。それには理由があります
Humpty Dumpty sat on a wall,ハンプティ・ダンプティ 塀にすわった
Humpty Dumpty had a great fall.ハンプティ・ダンプティ どすんと落ちた
All the king’s horses and all the king’s men王様の馬と家来が 総出でかかっても
Couldn’t put Humpty together again.ハンプティを元には戻せない

怖い説:1648年、イギリスの内戦でコルチェスターの城壁に置かれた大砲の愛称が「ハンプティ・ダンプティ」。砲撃で塀ごと落ち、二度と元に戻せなかった……というもの。日本語のサイトでも「有力な説」としてよく紹介されています。

🔎 真相この大砲説は、1996年ごろからコルチェスターの観光案内のサイトに載った話が広まったもので、当時の記録に「ハンプティ・ダンプティ」という大砲は出てきません。じつはこの歌、もともとは「塀から落ちたら二度と元に戻らない、なーんだ?」というなぞなぞ。答えはたまごです。歌詞にたまごと書いていないのは、それが答えだから。歌が初めて本に載ったのは1797年で、ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』(1871年)がたまごの姿で描いて定着しました。
11位

ロッカバイ・ベイビー

Rock-a-bye Baby
ヤバい度💀💀💀💀💀判定歌詞がガチ
Rock-a-bye baby, on the tree top,ねんねんころり 木のてっぺんで
When the wind blows, the cradle will rock;風が吹けば ゆりかごゆれる
When the bough breaks, the cradle will fall,枝が折れたら ゆりかご落ちる
And down will come baby, cradle and all.赤ちゃんも ゆりかごも 何もかも

英語圏でいちばん有名な子守歌。それなのに最後は、赤ちゃんがゆりかごごと木から落ちて終わります。18世紀の童謡集にすでに載っている古い歌です。

🔎 真相王家の跡継ぎをめぐる政治の皮肉だ、などの説はありますが、どれも証拠なし。木の枝にゆりかごをつるした昔の暮らしを歌った、というくらいに考えておくのが安全です。
12位

ソロモン・グランディ

Solomon Grundy
ヤバい度💀💀💀💀💀判定歌詞がガチ
Solomon Grundy, Born on a Monday,ソロモン・グランディ 月曜に生まれ
Christened on Tuesday, Married on Wednesday,火曜に洗礼 水曜に結婚
Took ill on Thursday, Grew worse on Friday,木曜に病気 金曜に悪化
Died on Saturday, Buried on Sunday.土曜に死んで 日曜にお墓へ
That was the end of Solomon Grundy.これでおしまい ソロモン・グランディ

人の一生をたった1週間で歌いきる、ちょっと皮肉な歌。英語の曜日の覚え歌としても使われます。1842年の童謡集に記録があります。

🔎 真相特別な事件の歌ではありません。でも「生まれて、結婚して、病気になって、死ぬ」をこんなにあっさり歌われると、なんだかゾッとしますよね。アメリカのDCコミックスに出てくるゾンビのような悪役「ソロモン・グランディ」は、この歌が名前の元ネタです。
第三章 Why so dark?

なぜマザーグースはこんなに怖いの?3つの理由

昔は、死や事件が子どもにも身近だった病気で亡くなる子どもが多く、処刑は広場で見せ物になっていた時代。大人の世界の出来事が、そのまま子どもの歌にまぎれこみました。
口伝えのうちに「おどかし」が足された遊び歌は、つかまる瞬間や倒れる瞬間がいちばん盛り上がります。「オレンジとレモン」の首切りのように、あとから怖い一言が足されたり、リジー・ボーデンのような替え歌が生まれたりしました。
「本当は〇〇の歌」は、後から作られたものが多いペスト説も大砲説も、言われ出したのは20世紀。いちばん怖いのは歌そのものより、もっともらしいウワサが広まっていく人間の心なのかもしれません。

ちなみに日本にも「かごめかごめ」「通りゃんせ」「はないちもんめ」など、「本当は怖い」といわれる童謡があります。こちらも、はっきりした証拠がない説がほとんどです。

第四章 Mother Goose in English

知ってると英語が楽しくなる!マザーグースの元ネタ

マザーグースは英語のネイティブならだれでも知っているので、元ネタを知らないと意味がわからない表現やタイトルがたくさんあります。

英語・作品 元ネタと意味
over the moon 「大喜び」。「Hey Diddle Diddle」の「牛が月を飛びこえた(the cow jumped over the moon)」から。→ over the moon の使い方
All the king’s horses and all the king’s men 「もう取り返しがつかない」。ハンプティ・ダンプティから。英語のニュースや本の見出しでよく使われます
London Bridge is down エリザベス女王の死去を伝える暗号(2022年)。もちろん「ロンドン橋落ちた」から
『そして誰もいなくなった』 アガサ・クリスティー(1939年)。10人の数え歌のとおりに事件が起きる
『ポケットにライ麦を』 アガサ・クリスティー(1953年)。「6ペンスの歌(Sing a Song of Sixpence)」から
『ヒッコリー・ロードの殺人』 アガサ・クリスティー(1955年)。原題は「Hickory Dickory Dock」。時計をのぼるネズミの歌
『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル(1871年)。ハンプティ・ダンプティや、トゥイードルダムとトゥイードルディーはマザーグースの登場人物

英語の勉強としては、声に出して読むのがいちばん。マザーグースは韻(rhyme)をふんでいて、wall/fall、men/again、axe/whacks のように行の終わりの音がそろうので、英語のリズムが体に入ります。

第五章 True or Rumor?

ホント?ウワサ? マザーグース○×クイズ

この記事を読んだあなたなら全問正解のはず。ボタンを押すと、すぐに答えが出ます。

Q1「ロンドン橋落ちた」が人柱の儀式を歌ったものだということは、歴史的に証明されている。
答えは「ウワサ」。人柱説は1894年の研究者の推測で、証拠は見つかっていません。
Q2リジー・ボーデンは裁判で有罪になり、死刑になった。
答えは「ウワサ」。1893年の裁判で無罪。犯人はいまも分かっていません。
Q3「バラの輪」がペストの歌だという説は、20世紀になってから広まった。
答えは「ホント」。そのとおり。今の形の歌詞が本に載ったのは1881年で、ペスト説が言われ出したのは20世紀の半ばです。
Q4ハンプティ・ダンプティの元の歌詞には、「たまご」という言葉は出てこない。
答えは「ホント」。そのとおり。もとはなぞなぞで、「たまご」が答えだから歌詞には書かれていません。
Q51831年にかけられたロンドン橋は、いまアメリカにある。
答えは「ホント」。そのとおり。1968年に売られ、アリゾナ州のレイクハバスシティに移されました。
Q6「きらきら星」は、もともと処刑を歌った怖い歌だった。
答えは「ウワサ」。1806年にジェーン・テイラーが書いた星の詩で、怖い意味はありません。
第六章 FAQ

よくある質問

Q. マザーグースとは何ですか?
イギリスを中心とした英語圏で、昔から口伝えで歌われてきた童謡・わらべうたの総称です。イギリスでは「ナーサリーライム(nursery rhymes)」と呼ぶのがふつうです。多くは作者不明で、数は1000以上ともいわれます。
Q. マザーグースはなぜ怖い歌が多いのですか?
昔は子どもにとっても病気や死、処刑が身近だったこと、口伝えのあいだに遊びを盛り上げる「おどかし」や替え歌が加わったことが理由です。ただし「じつは〇〇の歌」という怖い裏話の多くは、20世紀以降に作られたウワサです。
Q. 「ロンドン橋落ちた」は本当に人柱の歌ですか?
証拠はありません。人柱説は1894年に民俗学者アリス・ゴムが唱えた推測です。何度も壊れては直された中世のロンドン橋そのものを歌った、と考えるのが自然です。
Q. リジー・ボーデンは本当に犯人だったのですか?
1893年の裁判で無罪になり、犯人はいまも分かっていません。「斧で40回」の歌は事件のあとに作られた子どもの縄跳び歌で、回数も事実とちがいます。
Q. 「きらきら星」も怖い歌なのですか?
いいえ。「きらきら星(Twinkle, Twinkle, Little Star)」は、イギリスのジェーン・テイラーが1806年に発表した詩で、怖い意味はありません。メロディはフランスの古い歌で、モーツァルトの変奏曲でも知られています。
Q. マザーグースを日本語で読むならどの本がいいですか?
谷川俊太郎の訳『マザー・グースのうた』(草思社、1975年〜)が定番です。古くは北原白秋が1921年に『まざあ・ぐうす』として訳しました。英語と日本語を並べて読める対訳本もたくさん出ています。
第七章 Summary

まとめ|知ったら最後、もう同じ気持ちでは歌えない

マザーグースは英語圏の伝承童謡。イギリスではナーサリーライムと呼ぶ
いちばんヤバいのはリジー・ボーデンの斧の歌。事件は実話、でも歌の数字はデタラメで、リジーは無罪
ロンドン橋の人柱説、バラの輪のペスト説、ハンプティの大砲説は、どれも証拠のないウワサ
それでも「誰がコマドリを殺したの?」「オレンジとレモン」のように、歌詞そのものが怖い歌は本当にある
元ネタを知ると、英語の表現・小説・映画がもっとおもしろくなる