原田英語のスラング・新語辞典

バズミーム解説スラング考現学 第6回

10月1日はTikTokの「ミニお正月」――年内に本気を出す「October theory」

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今日から10月。TikTokでは毎年この日、「今日から本気出す」という宣言動画が一気に増えます。合言葉はOctober theory。1月1日を待たずに、10月1日を2回目の元日にしてしまおうという考え方です。どこから来たのか、なぜ10月なのか、英語でどう言うのかを見ていきます。

1「10月は小さな1月」という考え方

October theory を直訳すると「10月理論」。といっても難しい理屈があるわけではありません。10月に入ると「今年もあと3か月か」と気づいて、なんとなく生活を立て直したくなる。その気持ちに名前をつけて、「だったら今日から始めよう」と背中を押し合うのがこのトレンドです。

動画の中身はさまざまです。朝のランニングを始める人、毎日の出費を記録する人、部屋の片付けを宣言する人。共通しているのは、年が明ける前に、少しだけ変わった自分になっておくというゴールです。英語では、何かに集中して取り組むモードに入ることをlock inと言い、October theory の動画にもよくこの語が並びます。

292日という、ちょうどいい長さ

10月1日から12月31日までを数えると、31日+30日+31日で92日。1年の4分の1ほどです。この「3か月ちょっと」という長さが、October theory の説得力を支えています。

よく一緒に紹介されるのが、新しい習慣が身につくまでの日数の研究です。ロンドン大学の研究チームが2009年に発表した調査では、行動が自動的にできるようになるまで平均で66日ほどかかりました。10月1日に始めれば、年内にその日数を越えられる計算になります。

1月の抱負は「1年かけて変わる」という大きな話になりがちですが、92日なら先が見えます。新年の抱負より気楽な、年末までの短期決戦。それが多くの人に受けた理由の一つです。

3区切りの日にやる気が出る「フレッシュスタート効果」

区切りの日にやる気が出るのは、気のせいではありません。アメリカの研究者ヘンチェン・ダイ、ケイティ・ミルクマン、ジェイソン・リースは2014年の論文で、週の初め・月の初め・誕生日などの節目のあとに、ジムに行く人や目標を検索する人が増えることを示しました。これが「フレッシュスタート効果」です。

節目の日は、過去の自分と今日からの自分を切り分けるきっかけになります。1月1日はその最大の節目ですが、10月1日も「新しい月」「最後の四半期」という二重の区切りです。October theory は、この効果をSNSのノリで使いこなしている、と言えます。

4同じ日に始まる、ほかの10月の合言葉

10月1日のSNSは、October theory だけではありません。ハロウィンを待つ人たちは「spooky season is here!」と投稿し、10月をまるごとハロウィンの月として楽しむspooky monthの画像も流れてきます。

絵を描く人たちにとっては、今日はInktoberの1日目です。31日間、毎日お題に合わせてインクで絵を描く企画で、2026年の最初のお題は Apple(りんご)。1か月お酒を控えるSober Octoberに挑戦する人もいます。

こうして並べると、英語圏の10月1日は「何かを始める日」だらけです。ハロウィンの準備、お絵かき、禁酒、そして自分の立て直し。どれも「1か月」「3か月」と期間を区切っているのが共通点です。

5日本の10月1日と、英語での言い方

日本でも10月1日は区切りの日です。多くの会社で下半期が始まり、就職活動では正式な内定を出せるのが卒業する年度の10月1日以降とされているため、この日に内定式を開く企業が多くあります。衣替えの日として覚えている人もいるでしょう。「下半期も頑張ろう」は、日本版の October theory と言えるかもしれません。

英語で宣言するなら、October theory starts today.(今日から10月リセット)がいちばん手軽です。もう少し気合いを入れるなら、I'm locking in for the last 92 days.(残り92日、本気モード)。年末に見違えた自分を見せる気なら、glow up(見違えるほど良くなる)を使って、Q4 glow up incoming.(第4四半期で変身予定)と書くのも手です。

新年まで待たなくても、始めたい日が始める日です。92日後、少しだけ変わった自分で年を越せたら上出来。明日は金曜日、ことばの仕組みを日英でくらべます。

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