原田先生のとっておきの話

レイ・ダリオが警告する 「世界秩序の崩壊」と “Stage 6″の衝撃 ― ミュンヘン安保会議2026で”公式に死亡宣告”された戦後秩序 ―

WORLD ORDER × BIG CYCLE × STAGE 6

レイ・ダリオが警告する
「世界秩序の崩壊」と
“Stage 6″の衝撃

― ミュンヘン安保会議2026で”公式に死亡宣告”された戦後秩序 ―

🚨 2026年2月、世界のリーダーたちが”同じこと”を言い始めた

「戦後の世界秩序はもう存在しない」――ドイツ首相、フランス大統領、米国務長官がほぼ同時にこの言葉を口にしました。そして世界最大のヘッジファンド創業者レイ・ダリオは、その裏にある500年に一度の歴史的サイクルを読み解き、「今がどの段階にいるか」を明確に警告しています。

2026年2月14日。世界のヘッジファンド界の巨人、レイ・ダリオ(Ray Dalio)がSNSに投稿した長文が世界中を震撼させました。

https://x.com/RayDalio/status/2022788750388998543?s=20

タイトルは端的でした。

―― Ray Dalio ――“It’s Official: The World Order Has Broken Down”
(公式に宣言する:世界秩序は崩壊した)

この投稿は、ちょうどドイツ・ミュンヘンで開催されていたミュンヘン安全保障会議(MSC)2026の発言を受けたものでした。今年で62回目となるこの会議で、世界のリーダーたちが次々と「戦後秩序の終焉」を宣言したのです。

🌍 ミュンヘン安保会議2026 ― 「戦後秩序の死亡診断書」

2026年2月13日〜15日に開催されたミュンヘン安全保障会議では、60カ国以上の首脳・65名以上の外相・30名以上の防衛相が一堂に会しました。今年の公式レポートのタイトルは「Under Destruction(破壊中)」。議長のヴォルフガング・イッシンガーは「壊し屋の政治(wrecking-ball politics)の時代に入った」と宣言しました。

💬 各国リーダーの発言(2026年2月)

🇩🇪 メルツ独首相:「数十年間続いてきた世界秩序は、もはや存在しない」「大国間政治の時代に入った。自由はもはや当然のものではない」

🇫🇷 マクロン仏大統領:「ヨーロッパの旧来の安全保障構造は存在しない。ヨーロッパは戦争に備えなければならない」「地政学的パワーにならなければならない」

🇺🇸 ルビオ米国務長官:「旧い世界は、率直に言って消え去った。我々は地政学の新時代に生きている」

注目すべきは、米国・ドイツ・フランスという西側の三大国のリーダーがほぼ同じ認識を示したこと。「戦後秩序の崩壊」はもはや一部の識者の見解ではなく、世界のリーダーたちの共通認識になったのです。

📊 レイ・ダリオの「ビッグサイクル」理論とは何か?

レイ・ダリオは、世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者。資産規模は約1,540億ドル(約23兆円)に達した伝説的な投資家です。

彼が2021年に発表した著書『Principles for Dealing with the Changing World Order(変わりゆく世界秩序への対処法)』で展開したのが「ビッグサイクル(Big Cycle)」理論。過去500年間の帝国の興亡パターンを分析し、オランダ、イギリス、アメリカ、中国という覇権国家の「盛衰の法則」を6つのステージで体系化しました。

🔄 ビッグサイクルの6つのステージ

Stage 1: 新しい秩序の確立(新リーダーが権力を掌握)

Stage 2: 統治システムの構築(制度・インフラの整備)

Stage 3: 平和と繁栄の時代(経済成長・国力のピーク)

Stage 4: 過剰な支出と債務の膨張(衰退の始まり)

Stage 5: 内部対立の激化と外部の台頭(戦争の一歩手前)

Stage 6: 秩序の崩壊・戦争(内戦/国際戦争 → 新秩序へ)

ダリオの分析では、このサイクルは平均して約150年で一巡し、アメリカは建国から245年、今まさにこのサイクルの終盤に差しかかっているとしています。

⚡ 「5つの力」が同時に動いている ― なぜ今が危険なのか

ダリオの理論で最も重要なのは、ビッグサイクルを動かす「5つの力」が今、同時に作用しているという指摘です。

5つの力 内容 2026年の現状
① 通貨・債務サイクル 巨額債務と紙幣の増刷が通貨の価値を毀損 米国債務38兆ドル超。利払いだけで年間1兆ドル規模に
② 内部の秩序/混乱 貧富格差・左右のポピュリズム・政治的分断 米国の上位1%が資産の32%を保有。左右の対立が激化
③ 外部の秩序/戦争 覇権国と台頭国の衝突(軍事・経済・技術・資本) 米中対立の激化。台湾問題。NATOの揺らぎ
④ 自然災害 干ばつ・洪水・疫病が経済を疲弊させる 気候変動による災害の激増。パンデミック後の余波
⑤ テクノロジー 技術革新が既存秩序を破壊・再編 AI革命。半導体戦争。デジタル通貨の台頭

前回この5つの力が同時に作用したのは1930年〜1945年。つまり世界大恐慌から第二次世界大戦に至る時期です。ダリオは「今と1930年代の構造的な類似性」を繰り返し指摘しています。

💰 「資本戦争(Capital War)」の恐怖 ― お金が武器になる時代

ダリオが最も緊急に警告しているのが「資本戦争(Capital War)」です。2026年2月、ドバイで開催された世界政府サミットで彼はこう述べました。

“We are on the brink. That means not in, but it means we are quite close to a capital war, and it would be very easy to go over the brink into a capital war, because there are mutual fears.”

「我々は瀬戸際にいる。まだ突入してはいないが、資本戦争の一歩手前だ。相互の恐怖があるため、一線を越えるのは極めて容易だ」

資本戦争とは、お金そのものが武器になる戦争です。具体的にはこんな形を取ります。

🔒 資産凍結・没収

敵国の海外資産を凍結・差し押さえ

🚫 資本市場の遮断

資本市場へのアクセスを禁止

⛔ 禁輸・封鎖

貿易・資源の輸出入を遮断

ダリオは歴史的な前例として、第二次世界大戦前にアメリカが日本に対して行った経済制裁を引き合いに出しています。1941年、ルーズベルト大統領は日本の在米資産を凍結し、パナマ運河を閉鎖し、石油・ガスの禁輸を実施。これにより日本の貿易の4分の3、石油の80%が断たれました。追い詰められた日本はやがて真珠湾攻撃へと突き進んだのです。

「同じような構図が、今日の米中関係、さらには米欧関係でも起こりうる」とダリオは警告しています。

⚔️ ダリオが警告する「5つの戦争」

ダリオの理論では、国家間の衝突は5つの種類の戦争として段階的に進行します。そして通常、軍事戦争に至る前に、残りの4つがすでに始まっているのです。

1. 貿易・経済戦争 ― 関税、輸出入規制(✅ 進行中

2. テクノロジー戦争 ― 技術の囲い込みと遮断(✅ 進行中

3. 地政学戦争 ― 領土・同盟をめぐる駆け引き(✅ 進行中

4. 資本戦争 ― 金融制裁・資本規制(✅ 瀬戸際

5. 軍事戦争 ― 実際の武力衝突(⚠️ 回避が急務)

ダリオの言葉を借りれば、「国際関係は国際法よりもジャングルの掟に従う」。国連が個々の大国より強い権力を持たない以上、最終的には力がものを言う――これが500年間の歴史から導き出された冷酷な現実です。

🏛️ 「ツキディデスの罠」― 覇権国 vs 新興国の宿命

ダリオの警告と重なるのが、ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が提唱した「ツキディデスの罠(Thucydides’s Trap)」です。

古代ギリシャの歴史家ツキディデスは、ペロポネソス戦争について「アテネの台頭と、それがスパルタに抱かせた恐怖が戦争を不可避にした」と記しました。アリソン教授はこのパターンを過去500年間の16事例に適用し、そのうち12回が戦争に終わったことを示しました。

12/16

過去500年間、台頭する大国と既存の覇権国の対立 → 75%が戦争に至った

今、米国と中国はまさに「17番目の事例」の渦中にあります。ダリオ自身も著書の中で「最も爆発的な紛争は台湾をめぐる米中間の衝突だ」と明記しています。

興味深いことに、習近平国家主席自身もこの概念に言及し、「ツキディデスの罠を回避するために共に努力しなければならない」と述べたことがあります。しかしダリオの分析では、構造的な力が75〜80%の結果を決め、人間の努力が変えられるのは残りの20〜25%に過ぎません。

📈 1930年代と2020年代 ― 不気味な類似

ダリオが著書で最も詳しく分析しているのが、第二次世界大戦に至る1930年代との比較です。その類似点は背筋が凍るほど正確です。

要素 1930年代 2020年代
債務危機 大恐慌後の破綻的債務 米国債務38兆ドル超
金利 ゼロ金利 → 大量紙幣増刷 ゼロ金利からの急激な利上げ
ポピュリズム ファシズム vs 共産主義 右派 vs 左派ポピュリズム
貿易戦争 スムート・ホーリー関税法 米中関税戦争
覇権の挑戦 英国の衰退 → 独・日の台頭 米国の相対的衰退 → 中国の台頭
同盟の動揺 国際連盟の機能不全 NATO・国連の揺らぎ

ダリオは著書の中でこう述べています。「戦争について最も確実に言えることは2つだけだ。①計画通りにはいかない ②想像より遥かに悲惨になる」

🪙 投資家への明確なメッセージ ― 「債券を売り、金(ゴールド)を買え」

ダリオの投資家へのアドバイスは驚くほど明確です。

“Sell out of all debt and buy gold because wars are financed by borrowing and printing money, which devalues debt and money.”

「すべての債券を売り、金を買え。戦争は借金と紙幣増刷で賄われ、それが債務と通貨の価値を毀損するからだ」

2026年2月時点で金価格は1オンスあたり約4,900〜5,000ドルで推移しており、1年前から約65〜75%上昇しています。JPモルガンは2026年末に6,300ドル、ウェルズ・ファーゴは6,100〜6,300ドルという予測を出しています。

ダリオの主張のポイントは以下の3つです。

金は「投機対象」ではなく「世界第2の準備通貨」である

各国中央銀行が準備資産の構成を変え、金の購入を加速している

ポートフォリオの5〜15%を金に配分することが合理的

ただし、ダリオは「最も重要なのはよく分散されたポートフォリオを持つことだ」とも強調しています。特定の資産への集中ではなく、危機に備えた構造的な防御を推奨しているのです。

🤔 ダリオの理論に対する反論と留意点

もちろん、ダリオの分析には批判や留意点もあります。公平を期すためにいくつか紹介します。

第一に、「戦争は不可避」とは言っていない。ダリオ自身が繰り返し強調しているように、これは「予言」ではなく「確率的分析」です。彼は著書の結論部分で「本当に成功した国々は、生産性を維持し、収入以上の支出を避け、国民の大多数にとってシステムがうまく機能するようにし、最も重要なライバルとのWin-Winの関係を構築・維持してきた」と述べています。

第二に、歴史は完全には繰り返さない。核抑止力、グローバルなサプライチェーン、デジタル経済など、過去の覇権交代期には存在しなかった要因が数多くあります。

第三に、「金を買え」は彼の一貫したポジションである。ダリオは長年にわたり金への投資を推奨しており、今回の警告が新しいものかどうかは議論の余地があります。SNS上でも「ダリオはこの10年で何度も同じ警告を出している」という指摘がされています。

🔤 英語で読み解くキーワード

この話題を理解するうえで役立つ英語表現を紹介します。

英語表現 発音 意味
world order ワールド・オーダー 世界秩序
rules-based system ルールズ・ベイスト・システム ルールに基づく体制
capital war キャピタル・ウォー 資本戦争(金融を武器にした争い)
on the brink オン・ザ・ブリンク 瀬戸際に(崖っぷちに立って)
Thucydides’s Trap スースィディディーズ・トラップ ツキディデスの罠(覇権交代の力学)
might is right マイト・イズ・ライト 力こそ正義(強者が支配する)
wrecking-ball politics レッキング・ボール・ポリティクス 壊し屋の政治(既存制度を破壊する政治)
diversified portfolio ダイバーシファイド・ポートフォリオ 分散されたポートフォリオ(投資の分散配分)
tit-for-tat escalation ティット・フォー・タット・エスカレーション 報復の応酬によるエスカレーション

💡 日常でも使える表現

“on the brink” は「瀬戸際に」という意味で、日常会話でも頻出。例:”I was on the brink of quitting my job.”(仕事を辞める寸前だった)

“might is right” は「力が正義」。ダリオはこの概念を国際関係の本質として使用。これを否定するのがrules-based order(ルールに基づく秩序)です。

✨ まとめ ― 歴史のサイクルを知ることの意味

レイ・ダリオの警告を整理します。

1945年以降の「ルールに基づく世界秩序」は公式に崩壊が認められた

ダリオの「ビッグサイクル」分析では、世界はStage 6(戦争段階)に突入しつつある

5つの力(債務・内部対立・外部衝突・自然災害・技術革新)が1930年代以来初めて同時に作用

「資本戦争」の瀬戸際にある ― お金が武器として使われる段階

投資家へのメッセージ:債券を減らし、金(ゴールド)を含む分散ポートフォリオを構築せよ

⚠️ ただし「戦争は不可避」ではない ― Win-Winの外交関係が構築できれば回避可能

ダリオの理論が示すのは、歴史は繰り返すのではなく「韻を踏む」ということ。マーク・トウェインの言葉の通りです。

最も大切なのは、こうした大きな流れを「知っている」こと。知っていれば、ニュースの断片が文脈の中に位置づけられ、パニックではなく冷静な判断ができるようになる。ダリオ自身がそう言っています。「サイクルの仕組みを理解しなければ、私たちはただニュースの出来事を観察するだけで、適切な準備も、それを防ぐこともできない」と。

言葉を学ぶということは、世界の見方を手に入れること。英語を通じて、こうした「世界を動かす思考のフレームワーク」にアクセスできることこそが、言語学習の最大の武器だと原田先生は考えています。

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📖 参考:Ray Dalio著『Principles for Dealing with the Changing World Order』(2021年)/ Munich Security Report 2026 “Under Destruction” / CNBC, Fortune, CNN, 各社報道(2026年2月)

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