あまりにも身近だからこそ、その奇妙で、面白くて、ぶっ飛んだ事実を知らないまま使っている人がほとんどです。
今回は、ネイティブスピーカーですら「え、マジで?」と驚く英語の超絶トリビア10選をお届けします。
──読み終わるころには、あなたの英語の見え方が変わっているはずです。
- 「run」──たった3文字なのに645個の意味を持つ怪物単語
- 10億まで「B」が一度も登場しない──数字のアルファベット問題
- シェイクスピアが発明した1,700語──「eyeball」も「lonely」も彼のおかげ
- 「Big Bad Wolf」の語順が変えられない理由──脳が従う秘密の音法則
- 形容詞には「絶対的な順番」がある──ネイティブも説明できないルール
- 「I never said she stole my money」──同じ文が7つの意味になるマジック
- 「Goodbye」の本当の意味は「God be with you」
- 「&(アンパサンド)」はかつてアルファベットの27番目だった
- 「nightmare」の「mare」は馬ではなく悪魔だった
- 英語には母音が1つもない単語が存在する
1「run」──たった3文字なのに645個の意味を持つ怪物単語
英語で最も意味の数が多い単語は何か。答えは、あのシンプルな3文字──“run” です。
オックスフォード英語辞典(OED)の第3版改訂で、動詞形だけで645の異なる意味が確認されました。辞書での記述は75カラムにも及びます。
走る(run a race)、経営する(run a business)、水を出す(run the water)、立候補する(run for office)、ストッキングが伝線する(run in stockings)、番組を流す(run a show)──これが全部同じ単語というのは、もはや異常です。
OED「最多意味数」の王座の変遷 👑
OED編集に携わったサイモン・ウィンチェスター氏は、「”set”は上品で安定的な単語、”run”は筋肉質でエネルギッシュな単語。時代が動的な言葉を求めた結果だ」と表現しています。
ちなみに “run” の語源は11〜12世紀の教会時計にまで遡ります。歯車が軸の周りを回転する動きを古英語で “runne” と呼んだのが始まり。「走る」よりも「回転する」が先だったのです。
210億まで「B」が一度も登場しない──数字のアルファベット問題
One, Two, Three, Four, Five… と英語で数字をひたすら書き出していくと、ある驚くべき事実に気づきます。
アルファベットの「B」は、なんと1,000,000,000(One Billion)に到達するまで一度も登場しません。
One(1)から Nine hundred ninety-nine million nine hundred ninety-nine thousand nine hundred ninety-nine(999,999,999)まで──約10億個の数字を書き出しても、使われるのは A, D, E, F, G, H, I, L, M, N, O, R, S, T, U, V, W, X, Y の文字だけ。
さらに驚くべきことに、「J」と「K」は英語の数字の綴りには永遠に登場しません。どんなに大きな数字を書いても、です。
もう一つ面白い事実:“Four” は、文字数と数字の値が一致する唯一の数字です(F-O-U-R = 4文字で4)。また “Forty” はアルファベット順に文字が並んでいる唯一の数字の単語です。
3シェイクスピアが発明した1,700語──「eyeball」も「lonely」も彼のおかげ
ウィリアム・シェイクスピアは、史上最も偉大な劇作家であると同時に、英語史上最大の「単語発明家」でもあります。
その作品群で使われた20,000以上の単語のうち、約1,700語がシェイクスピアによる初出と記録されています。彼は接頭辞や接尾辞の追加、品詞の変換、他言語からの借用など、現代の私たちと同じ手法で──しかし桁違いのスケールで──新語を生み出しました。
日常で使っているのに、シェイクスピア発だと知らない単語たち
さらに、慣用句の世界でもシェイクスピアの影響は絶大です。“break the ice”(氷を壊す=打ち解ける)、“wild goose chase”(無駄な追跡)、“good riddance”(せいせいした)──これらすべてシェイクスピア由来です。
4「Big Bad Wolf」の語順が変えられない理由──脳が従う秘密の音法則
「オオカミと三匹の子ブタ」に出てくる “Big Bad Wolf”。この語順を「Bad Big Wolf」に変えてみてください。
……なんか、気持ち悪くないですか?
これは “ablaut reduplication”(母音交替反復) と呼ばれる、英語ネイティブが無意識に従っている秘密の音韻法則のせいです。
ルール:母音の順番は必ず I → A → O
似た音を繰り返す表現では、高い母音(口の前で発音する I)が先に来て、低い母音(口の奥で発音する A, O)が後に来る。逆にすると「気持ち悪い」と感じる。
だからこそ、以下の表現はすべてこの順番でしか「しっくり来ない」のです:
3語の場合は I → A → O の順番がさらにはっきりします:bish-bash-bosh、tic-tac-toe。おとぎ話の “fee-fi-fo-fum” もこの法則に従っています。
そして “Big Bad Wolf” は、この母音ルールが次のセクションで紹介する形容詞の順番ルールを「上書き」した結果なのです。
言語学者によると、この法則の理由は「口の前から後ろに向かって発音する方が自然に感じる」から。この傾向は英語だけでなく、異なる言語族をまたいで確認されています。
5形容詞には「絶対的な順番」がある──ネイティブも説明できないルール
英語ネイティブに「なぜ “a lovely little old rectangular green French silver whittling knife” の語順はこの通りなの?」と聞いても、「なんとなく」としか答えられません。
しかし実は、英語の形容詞には厳密な序列が存在します。これを破ると、ネイティブの耳には「何かがおかしい」と即座に感じられます。
だから “a green great dragon” とは絶対に言わない。必ず “a great green dragon”(意見→色)になります。映画 “My Big Fat Greek Wedding” も、Big(大きさ)→ Fat(意見)→ Greek(出身)で完璧にルール通り。
ここで前セクションの “ablaut reduplication” と繋がります。形容詞のルールでは “Bad”(意見)→ “Big”(大きさ)が正解のはず。しかし “Big Bad Wolf” は母音ルール(I→A)が勝つため、語順が逆転するのです。ネイティブの脳は、2つの無意識ルールの優先順位まで「勝手に」判断しているのです。
6「I never said she stole my money」──同じ文が7つの意味になるマジック
次の英文を声に出して読んでみてください:
I never said she stole my money.
たった7語の単純な文。しかし、どの単語を強調するかによって、意味が完全に変わります。
文法的にはまったく同じ文。変わるのはストレス(強勢)の位置だけ。これは英語が「ストレスタイミング言語」であることの象徴的な例で、日本語の「ピッチアクセント」とはまったく異なる仕組みです。
7「Goodbye」の本当の意味は「God be with you」
何気なく毎日使っている “Goodbye”。この言葉の起源を知ったら、ちょっとだけ見え方が変わるかもしれません。
“Goodbye” は “God be with you”(神があなたとともにあらんことを)の短縮形です。
16世紀後半(1565〜1575年頃)に “God be with ye” が “Godbwye” → “Goodbye” と縮まっていったと記録されています。つまり毎回の「バイバイ」に、じつは祝福の祈りが込められていたわけです。
↓
God b’w’y
↓
Godbwye
↓
Goodbye
God’s wounds → Zounds
God’s blood → ‘Sblood
By our Lady → Blimey
8「&(アンパサンド)」はかつてアルファベットの27番目だった
「&」この記号、英語では “ampersand”(アンパサンド)と呼びます。じつはこの記号、かつてはアルファベットの27番目の文字でした。
19世紀初頭まで、子どもたちがABCを暗唱するとき、Zの後に「&」を付け加えていました。そのとき最後の「&」を読むときに、こう言っていたのです:
暗唱の最後:
X, Y, Z, and per se and
「X, Y, Z、そしてそれ自体が “and”」
“and per se and”(アンド・パー・セ・アンド)が早口で繰り返されるうちに、いつしか “ampersand” に変化した──これがこの記号の名前の由来です。
そして記号の形自体にも秘密があります。「&」はラテン語の “et”(= and)の文字を合体させた合字(リガチャ)です。よく見ると、”E” と “t” が融合しているのがわかります(特に筆記体のフォントで顕著)。
このように、間違った発音がそのまま定着して新しい単語になることを “mondegreen”(モンデグリーン)と呼びます。”ampersand” はその代表例です。
9「nightmare」の「mare」は馬ではなく悪魔だった
“Nightmare”(悪夢)の “mare” は、馬(mare)だと思っていませんか?
実は違います。この “mare” はゲルマン神話に登場する女性の悪霊のこと。古英語では “marōn” と綴られ、眠っている人の胸の上に座り込んで窒息させたり、恐ろしい夢を見せたりする邪悪な存在でした。
ゲルマンの「mare(マーレ)」伝承
🐴 夜中に馬に乗って疲れさせるとも信じられていた(翌朝、馬が汗だくに)
🌳 木の枝をねじ曲げる力を持つとも言われた
🌍 スカンジナビア諸語やドイツ語にも同様の語源を持つ単語が存在
つまり “nightmare” の本来の意味は「夜の馬」ではなく 「夜の悪魔」。中世ヨーロッパの人々にとって、悪夢は文字通り「悪霊に襲われること」だったのです。
10英語には母音が1つもない単語が存在する
英語のすべての音節には母音(vowel sound)が必要──これは基本ルール。しかし綴りの上では母音(a, e, i, o, u)が1つも含まれない英語の単語が存在します。
その代表例が “crwth” と “cwtch”。
中世ヨーロッパで広く使われた。
または「居心地の良い場所」。
これらはウェールズ語由来で、ウェールズ語では “w” が母音として機能するため可能な綴りです。英語に借用される際も、この独特な綴りがそのまま保たれました。
他にもよく知られている「ほぼ母音なし」の単語として、“rhythm”、“myth”、“gym”、“lynch” などがありますが、これらには “y” が含まれており、英語では “y” が母音として機能する場合があります。完全にa/e/i/o/uを含まないのは、上記のウェールズ語由来の単語だけです。
英語は世界中の言語から単語を借用してきた結果、自身のルールに反する単語が大量に含まれています。この「なんでもアリ」な柔軟性こそが、100万語を超える語彙を持つ英語の強さであり、同時に学習者を泣かせる原因でもあります。
まだまだある!ミニトリビア集
まとめ──英語は「例外」と「驚き」の宝庫
世界で最も多くの人が学んでいるこの言語は、
実は世界で最もカオスな言語でもあります。
英語を「知っている」と思ったそのとき、
英語は必ず、あなたの想像を超えてくる。
