新人英語教師・教育実習生が最初にぶつかる壁、それが学習指導案です。
この記事では、文部科学省の新学習指導要領に完全対応した指導案の書き方を、
「構造」「各セクションの書き方」「実例」「よくある失敗」まで、
図解・フローチャート・テンプレート付きで徹底解説します。
- そもそも「学習指導案」とは何か?──目的と種類を理解する
- 指導案の全体構造マップ──9つのパーツを俯瞰する
- 【パーツ別 徹底解説①】基本情報・単元名・教材名の書き方
- 【パーツ別 徹底解説②】「三つの観」──生徒観・教材観・指導観
- 【パーツ別 徹底解説③】単元目標と評価規準──3観点を完全攻略
- 【パーツ別 徹底解説④】単元の指導計画──時間配分のコツ
- 【パーツ別 徹底解説⑤】本時の展開──導入・展開・まとめの黄金パターン
- 新人が陥る「5つの落とし穴」と対処法
- 【完全版テンプレート】日本語版 指導案フォーマット
- 【ENGLISH VERSION】Complete Lesson Plan Writing Guide & Template
- まとめ──「書ける教師」は「教えられる教師」
1そもそも「学習指導案」とは何か?──目的と種類を理解する
学習指導案(Teaching Plan / Lesson Plan)とは、「この授業で何を目指し、どのように指導し、どう評価するのか」を一枚の文書にまとめた授業の設計図です。建築でいう「設計図」、料理でいう「レシピ」、映画でいう「脚本」に相当します。
ここが重要:指導案は「書類仕事」ではありません。授業を設計する思考プロセスそのものです。指導案を書く力=授業を設計する力。だからこそ、新人時代にこの力を鍛えることが、教師としてのキャリア全体を左右します。
指導案が必要になる4つの場面
指導案の2つの種類:「細案」と「略案」
分量:A4で3〜8ページ
特徴:生徒観・教材観・指導観を含む詳細な記述。発問や指示の具体的な文言まで記載。板書計画・ワークシートも添付。
書く頻度:年数回
分量:A4で1ページ
特徴:本時の目標・授業展開(導入・展開・まとめ)を中心にコンパクトにまとめたもの
書く頻度:毎日〜毎週
この記事では主に「細案」の書き方を解説します。細案が書ければ、略案はそのダイジェスト版として自然に書けるようになります。
2指導案の全体構造マップ──9つのパーツを俯瞰する
まず全体像を把握しましょう。英語科の細案は、一般的に以下の9つのパーツで構成されています。
指導案の最大のポイントは、9つのパーツがバラバラではなく、論理的に一貫していることです。
「生徒観」で見えた課題 → 「教材観」でこの教材の価値を分析 → 「指導観」で課題×教材のアプローチを決める → 「単元目標」で到達点を設定 → 「評価規準」で到達度の物差しを作る → 「指導計画」で時間配分を決める → 「本時の展開」で具体的活動を設計
この「一本の線」が通っていることが、良い指導案の絶対条件です。
3【パーツ別 徹底解説①】基本情報・単元名・教材名の書き方
指導案の冒頭に記載する基本情報は、「誰が」「いつ」「どこで」「何を」教えるのかを明確にする部分です。漏れがあると印象が悪くなるので、チェックリスト的に確認しましょう。
4【パーツ別 徹底解説②】「三つの観」──生徒観・教材観・指導観
ここが指導案の「思考の核」。新人が最も苦戦する部分ですが、フレームワークを使えば確実に書けます。
🅰 生徒観(Student Profile)──「誰に」教えるのか
「この教室にはどんな生徒がいて、どんな強み・課題があるのか」を分析した記述です。
FRAMEWORK
生徒観を書く4つの視点
GOOD EXAMPLE
生徒観の記入例(中学2年・英語)
本学級は、男子19名・女子16名の計35名で構成されている。5月実施のアンケートでは「英語の勉強が好き」と回答した生徒は全体の72%であり、英語学習に対して概ね前向きなクラスである。ペア活動では活発にコミュニケーションを取ろうとする生徒が多い一方、クラス全体への発表に消極的な生徒も見られる。
4技能の中では「聞くこと」「話すこと(やり取り)」は比較的得意だが、「書くこと」に苦手意識を持つ生徒が約4割おり、特に3文以上のまとまった英文を書く活動では手が止まる生徒が目立つ。スローラーナーの生徒(5名程度)に対しては、ワークシートに語彙のヒントを載せるなどの支援を行っている。
🅱 教材観(Material Analysis)──「何を」使って教えるのか
「この単元の教材が持つ価値・特性・言語材料を分析した記述」です。
FRAMEWORK
教材観を書く3つの視点
🅲 指導観(Teaching Approach)──「どう」教えるのか
生徒観で見えた課題を、教材観で分析した教材の力を使って、どのように解決するか。これが指導観です。
教材観で見えた可能性:AIというテーマは生徒の興味関心が高い
→ 指導観(方針):AIに対する自分の意見を英語で書く活動を設定し、興味関心の高さを活用して「書くこと」への苦手意識を克服する。段階的にモデル文→穴埋め→自由記述とステップを踏むことで、全ての生徒が達成感を味わえるよう工夫する。
5【パーツ別 徹底解説③】単元目標と評価規準──3観点を完全攻略
新学習指導要領で最も大きく変わったのが評価の観点。従来の4観点から3観点に再整理されました。
新人最大の注意点:「単元目標」と「評価規準」は別物!
単元目標=「〜できるようにする」(ゴール)
評価規準=「〜している」「〜できている」(ゴール到達を測る物差し)
目標=行き先、評価規準=到着したかどうかの判定基準、と覚えましょう。
CAN-DO目標のOK/NG比較
「本文の内容を読み取る」
「新出語彙を覚える」→ 問題点:文法項目の習得が目標になっている。「英語で何ができるか」が見えない。
「異文化理解について読んだ内容をもとに、自分の考えを理由とともに書くことができる」→ ポイント:「誰に」「何のために」「どんな英語で」「何ができるか」が明確。
6【パーツ別 徹底解説④】単元の指導計画──時間配分のコツ
「単元全体をどのような流れで何時間かけて指導するか」を示す部分です。
ポイント:「◆(記録に残す評価)」はすべての授業で行う必要はありません。単元を通してバランスよく3観点を評価することが大切です。
7【パーツ別 徹底解説⑤】本時の展開──導入・展開・まとめの黄金パターン
ここが指導案のメインディッシュ。50分の授業を3段階に分け、時間配分・活動・教師の指示・評価を記述します。
⏱ 時間配分の黄金比率
🟠 導入(Introduction)── 10分
🔵 展開(Development)── 35分
展開こそが授業の核心。「教師の活動」と「生徒の活動」を明確に分けて記述することがポイントです。
🟢 まとめ(Closing)── 5分
振り返りシートに「今日できたこと」「まだ難しいこと」を記入。「今日のめあて」への達成度を自己評価させる。→「主体的に学習に取り組む態度」の評価材料にもなる。② 次時の予告 Preview(2分)
「次回は今日読んだ内容をもとに、自分の意見を英語で書きます」と次への見通しを持たせて終わる。
プロのコツ:「本時の展開」はメイン活動から逆算して設計しましょう。導入でどんな準備が必要か、展開前半でどんなインプットが必要か──メインから遡って考えると無駄のない50分になります。
8新人が陥る「5つの落とし穴」と対処法
目標に「書くこと」を掲げているのに、本時の展開に書く活動がない。研究授業でも最も多い失敗パターンです。
対処法:書き終えたら、「目標→評価規準→メイン活動→評価方法」の4点が一直線に並んでいるかチェックしましょう。
「教師が説明する」「教師が板書する」「教師が例文を示す」──気づけば教師の独壇場。
対処法:50分のうち生徒が英語を使って活動する時間が最低25分以上あるか確認。Teacher Talking Timeは全体の30%以下が目安です。
「展開で35分」と書いても、実際にやると活動が多すぎて終わらない。
対処法:実際に声に出してシミュレーションしてみましょう。説明・指示・活動をリアルタイムで読み上げると時間感覚がつかめます。必ず「余白の5分」を確保しておくのがプロのコツ。
生徒観で「リスニングが苦手」と書いているのに、教材観や指導観でリスニングに一切触れていない。
対処法:生徒観で挙げた「課題」は必ず指導観で「解決策」として回収しましょう。赤ペンで対応関係を線で結んでみると抜け漏れが見つかります。
「80%以上正答できる」は基準(criterion)。規準(standard)は「〜している」の質的な記述です。
対処法:評価規準は数値ではなく「〜している」の形で書く。数値はルーブリック(添付資料)に。
9【完全版テンプレート】日本語版 指導案フォーマット
ここまでの解説を踏まえた、コピー&ペーストで使える完全版テンプレートです。
1. 基本情報
| 日時 | 令和○年○月○日(○)第○校時 |
| 対象 | 第○学年○組(○名:男子○名、女子○名) |
| 場所 | ○○教室 |
| 授業者 | 教諭 ○○ ○○ / ALT: ○○ ○○ |
| 科目名 | 外国語(英語コミュニケーションⅠ) |
| 使用教科書 | ○○○○(○○出版) |
| 単元名 | Lesson ○ “○○○○○○” |
2. 単元について
(1)生徒観
〔クラスの英語力の全体像、4技能5領域の強み・課題、学習スタイルの特徴、個別配慮事項を記述〕
(2)教材観
〔題材内容の価値、新出言語材料の特性、既習事項との関連、言語活動への展開可能性を記述〕
(3)指導観
〔生徒観×教材観を踏まえた具体的指導方針を記述〕
3. 単元の目標
〔CAN-DO形式(「〜できる」)で記述〕
4. 単元の評価規準
| 知識・技能 | 思考・判断・表現 | 主体的に学習に取り組む態度 |
|---|---|---|
| 〔~している〕 | 〔~している〕 | 〔~しようとしている〕 |
5. 単元の指導計画(全○時間)
| 時 | 学習内容 | 評価(◆記録に残す) |
|---|---|---|
| 1 | 〔記入〕 | 〔記入〕 |
| … | 〔記入〕 | 〔記入〕 |
| 本時 | 〔記入〕 | 〔◆ 記入〕 |
6. 本時の目標
〔本時の目標を「〜できる」で記述〕
7. 本時の展開(○/○時間目)
| 段階 | 時間 | 学習活動(生徒) | 指導上の留意点(教師) | 評価規準・方法 |
|---|---|---|---|---|
| 導入 | 10分 | 〔記入〕 | 〔記入〕 | 〔記入〕 |
| 展開 | 35分 | 〔記入〕 | 〔記入〕 | 〔記入〕 |
| まとめ | 5分 | 〔記入〕 | 〔記入〕 | 〔記入〕 |
8. 添付資料
□ 板書計画 □ ワークシート □ ルーブリック □ 座席表 □ その他
10【ENGLISH VERSION】Complete Lesson Plan Writing Guide & Template
How to Write a Lesson Plan
for English Classes in Japan
A comprehensive guide aligned with Japan’s Course of Study (学習指導要領)
What is a Lesson Plan (学習指導案)?
A lesson plan (gakushū shidō-an) in Japan’s educational system is a formal document that outlines the design, objectives, procedures, and assessment methods for a lesson or unit. Unlike casual lesson notes, it serves as an official record of pedagogical thinking and is required for research lessons (kenkyū jugyō), teaching practicums, and teacher evaluations.
The 9 Components of a Japanese English Lesson Plan
The 3 Assessment Perspectives (3観点)
Lesson Procedure: The 3-Stage Structure
Greetings, small talk, chants2. Review (3 min)
Recap of previous lesson3. Today’s Goal (4 min)
Write objective on the board in student-friendly language
(Listening / Reading)Activity 2: Practice phase
(Controlled → Semi-controlled)Activity 3: Output phase ⭐
(Main communicative task)
Students evaluate their achievement2. Preview (2 min)
Brief intro of next lesson
English Lesson Plan Template
1. Basic Information
| Date & Period | [Month Day, Year] / Period [#] |
| Class | [Grade] [Class] ([#] students: [#] boys, [#] girls) |
| Location | [Classroom / CALL Room] |
| Instructor(s) | JTE: [Name] / ALT: [Name] |
| Subject | English Communication I |
| Textbook | [Title] ([Publisher]) |
| Unit | Lesson [#]: “[Title]” |
2. About the Unit
(a) Student Profile (生徒観):
[Describe students’ overall proficiency, strengths/weaknesses across 4 skills + 5 domains, learning styles, and students requiring special support.]
(b) Material Analysis (教材観):
[Analyze the unit topic value, target language features (grammar, vocabulary), connections to prior learning, and potential for communicative activities.]
(c) Teaching Approach (指導観):
[Explain HOW you will use this material to address student needs — the “bridge” connecting Student Profile and Material Analysis.]
3. Unit Objectives
[CAN-DO format: “Students will be able to…”]
4. Assessment Criteria
| Knowledge & Skills | Thinking, Judgment & Expression | Proactive Attitude |
|---|---|---|
| [Ss have acquired…] | [Ss are organizing/expressing…] | [Ss are attempting to…] |
5. Unit Plan ([#] lessons total)
| Lesson | Activities | Assessment (◆ = recorded) |
|---|---|---|
| 1 | [Entry] | [Entry] |
| This lesson | [Entry] | [◆ Entry] |
6. Today’s Objective
[CAN-DO format for this specific lesson]
7. Lesson Procedure (Lesson [#] of [#])
| Stage | Time | Student Activities | Teacher Notes & Instructions | Assessment |
|---|---|---|---|---|
| Intro | 10 min | [Entry] | [Entry] | [Entry] |
| Dev. | 35 min | [Entry] | [Entry] | [Entry] |
| Close | 5 min | [Entry] | [Entry] | [Entry] |
8. Appendices
□ Board Plan □ Worksheets □ Rubric □ Seating Chart □ Other
11まとめ──「書ける教師」は「教えられる教師」
指導案は「授業の設計図」であり、教師としての思考そのもの
最初は時間がかかるのは当然です。でも、この設計力こそが一生使えるプロの技術になります。
指導案を書く力は、授業を設計する力。
「書ける教師」は「教えられる教師」です。
