まず、この絵を頭に置いてください。品物がぎっしり並んだ小さな店に、あなたが入ります。
「ねじはありますか」「あるよ」「工具は?」「あるよ」
何を聞かれても在庫がある。そこで店主は、いちいち答えるのをやめてこう言います。You name it.
ここでの name は名詞ではなく動詞で、「名前を挙げる、指定する」という意味です。直訳すれば「あなたがそれを挙げる」。相手に言わせる形をとった、言い切りの一言です。
つまり「挙げてごらん。それ、うちにあるから」。全部を並べる代わりに、相手に挙げさせる。それだけで「何でもある」と伝わります。
一覧を全部言わずに済ませる、言葉の節約の技でもあります。
「あいつ何部だっけ」と聞いたら、返ってきた答えが長い。
「サッカーもやってたし、軽音もやってたし、生徒会も、あと放送部も。You name it.」
このとき友だちは、全部を数え上げるのをやめたわけです。挙げてみろ、たぶんやってるから、と。
日本語の「何でもござれ」「挙げたらきりがない」に近い一言です。リストの途中で切り上げるときの決まり文句だと思ってください。
なぜこの意味になるのか
name は古くから名詞と動詞の両方で使われてきました。動詞の name は「名前をつける」だけでなく、「名指しする、指定する、挙げる」という意味を持ちます。
Name your price.(言い値でいいよ)、Name the day.(日にちを決めて)。どれも相手に決めさせる形です。You name it. も同じ仲間で、決める権利を相手に渡しています。
使うときの注意・使い分け
ややくだけた言い方です。店や紹介の場面で、気前のよさや品ぞろえの多さを伝えるときに使われます。あらたまった書き言葉には向きません。
例文で確かめる
Pens, pencils, erasers, glue. You name it, we have it.
ペン、鉛筆、消しゴム、のり。挙げてもらえれば、何でもありますよ。
She has tried every sport. Tennis, judo, archery, you name it.
彼女はあらゆるスポーツをやってきました。テニス、柔道、アーチェリー、何でもです。
発音・リズム
3語を続けて「ユーネイミッ」のように言います。name の e は読まず、it の t はほとんど落ちます。1語ずつ区切ると、決まり文句に聞こえません。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①会話文の応答選択で、長い列挙のあとに入る一言として選ばせる形。②リスニングで、店員や紹介者の発言の締めとして出る形。③言い換えとして anything you can think of を選ばせる形。
- ここで外す
- 疑問文だと思って読んでしまう誤りが定番です。You name it? と読むと「あなたがそれに名前をつけるの?」になってしまいますが、これは問いかけではなく、言い切りの決まり文句です。声に出すときも、文末は下げます。 もう1つは、name を名詞で読んで「あなたの名前」と取り違える誤りです。ここでの name は動詞で、「挙げる、指定する」の意味になります。
- 決め手
- 直前に3つ以上のものが並んでいたら、この表現は「ほかにもまだある」という締めです。質問ではありません。
- 誤答
- Name is yours./そのような言い方は英語にありません
- 正答
- You name it./挙げてもらえれば何でもありますよ、という締めです
読み方が変わる
Before
name を名詞としか知らなかったので、会話文で You name it. が出てくると「あなたの名前?」と読んでしまい、そこで話の流れが切れていた。応答選択の問題で、長い列挙のあとに何が入るのか見当がつかなかった。
After
name が動詞で「挙げる」だと分かるので、列挙の締めとして即座に判断できる。同じ動詞の使い方が出てくる Name three countries in Europe.(ヨーロッパの国を3つ挙げなさい)のような文も、その場で読めるようになる。
こぼれ話
同じ形の言い回しに、Name it and it's yours.(言ってごらん、あげるよ)があります。name を使った言い方は、どれも相手に選ばせる形をしています。英語には、こういう「決定権を渡す」言い回しが意外と多くあります。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- anything you can think of
- 反対の意味
- We're out of stock.
You name it. を教室で使う(5分)
ねらい: name が動詞として使えることを、体験で入れる
- 「Name three animals.」と英語で言って、指名します。生徒は面食らいますが、動物を3つ言えます
- 「いま、君は name されたわけです。name は動詞で『挙げる』」と黒板に書きます
- 「では You name it. はどういう意味?」と聞きます。ここで多くが自力でたどり着きます
- 教室にあるものを次々に聞く役をやります。「ペンある人」「定規は」「はさみは」と3つ聞いて、最後に自分で You name it. と言ってみせます
- ペアで、自分の好きな食べ物を4つ挙げてから You name it. で締める練習を2往復させます
出口チケット: 「You name it. で終わる文を1つ書いてください。前に3つ以上並べること」
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
あなたは英会話の相手役です。私と、お店での短い会話を4往復してください。条件は次のとおりです。①あなたが店員、私が客です。②店の種類は文房具店、パン屋、電器店のどれかにしてください。③私が何かを尋ねたら、必ず3つ以上を並べてから You name it. で締めてください。④1回の発言は15語以内にしてください。⑤会話が終わるまで、文法の説明や日本語訳は書かないでください。