by the skin of your teethの意味は?歯に皮はありません
入試に出るイディオム|第41回
ぎりぎりで間に合った、を英語でどう言うか。歯の皮という、あり得ないものが出てきます。今日はその1本に加えて、ラテン語のまま150年ほど使われていたことわざ、そして一言で「何でもある」を伝える返しを取り上げます。
監修:原田高志(原田英語.com)
今日は3本。聖書から来た比喩、ラテン語から来たことわざ、そしてお店で店員さんが言う一言です。どれも由来を知ると、忘れなくなります。
by the skin of your teeth
バイ・ザ・スキン・オブ・ユア・ティース 薄氷のことばかろうじて、ぎりぎりのところで
この言い方が英語に入ってくる場所は、はっきりしています。旧約聖書の『ヨブ記』第19章20節です。
ヨブは、財産も子どもも健康も、いっぺんに失った人として描かれます。その彼が自分の体を見て言う場面です。欽定訳聖書(King James Version)では、こう訳されています。
「My bone cleaveth to my skin and to my flesh, and I am escaped with the skin of my teeth.」(骨は皮と肉にへばりつき、私は歯の皮だけで逃れた)
それより前のジュネーヴ聖書では、「I have escaped with the skinne of my tethe.」という形でした。
ここで手が止まってほしいのです。歯に皮はありません。
だからこそ効きます。逃れたときに残っていたのは、存在しないほど薄いものだった。ぎりぎり、という日本語よりずっと強い絵です。
朝、走って改札を抜けて、ホームへ駆け下りる。扉が閉まりかけている。体を滑り込ませたところで、うしろで扉が閉まる。
あのとき、あなたは made it by the skin of your teeth です。
ぎりぎり間に合った、ではありません。「あと0.5秒遅かったら終わっていた」という、失敗との距離のなさまで含めた言い方です。
テストでも使えます。合格最低点ちょうどで受かったとき。I passed by the skin of my teeth.
こう使う
I passed the exam by the skin of my teeth.
かろうじて試験に合格しました。
We caught the last train by the skin of our teeth.
ぎりぎりで最終電車に間に合いました。
He kept his job by the skin of his teeth.
彼はぎりぎりのところで職を失わずに済みました。
発音:skin と of がつながって「スキノヴ」になります。teeth の th は舌を軽く歯にはさんで息だけ。「ティース」と最後を強く切らず、息が抜けるように終わらせてください。
- こう問われる
- ①下線部の言い換えとして barely / narrowly / hardly を並べる形。②長文で he survived by the skin of his teeth が出て、その人物が助かったのかどうかを内容一致で問う形。③整序で by the skin of one's teeth の語順を作らせる形。
- ここで外す
- 所有格を my / your / his に変え忘れる誤りが定番です。主語に合わせて変えます。もう1つ、teeth を tooth と単数にする誤りもよく見ます。必ず複数形です。さらに、hardly と混同して「ほとんど〜しなかった」と否定に読んでしまう誤りがあります。この表現は「やった」ほうです。
- 決め手
- by the skin of ~ の形があれば、結果は成功です。失敗したのではなく、ぎりぎりで達成したことを表します。
We caught the last train ______ the skin of our teeth.
私たちは( )最終電車にぎりぎりで間に合った。
- 誤答
- with/英語では by を使います。with the skin of our teeth とは言いません
- 正答
- by/by the skin of one's teeth で固定の形です
Before
teeth という語が入っているので、歯や食べ物に関係のある表現だと思っていた。長文で escaped by the skin of his teeth が出てきたとき、「歯を食いしばって」のような根性の話だと読み、その人物が実際に助かったのかどうかを答えられなかった。
After
「歯の皮」という、存在しないほど薄いもので逃れたという絵で持てるようになる。結果は必ず成功なので、そのあと安堵や幸運の話が続いても文脈が崩れない。barely や narrowly と同じ側の語だと即座に判断できる。
by the skin of your teeth を教室で使う(6分)
ねらい: 聖書由来の比喩を、絵で持たせて定着させる
- 「by the skin of your teeth。歯の皮。どんな意味だと思う?」と聞いて、30秒だけ言わせます
- 「では質問です。歯に皮はありますか」と聞きます。ここで教室が止まります
- 「無いですよね。無いくらい薄いもので逃げた、という意味です」と1文で説明します
- 「じゃあ、みんなが by the skin of your teeth だった場面は?」とペアで30秒話させます
- 出てきたものを3つ板書し、I made it by the skin of my teeth. の形で言わせて終わります
出口チケット: 「by the skin of my teeth を使って、自分の体験を1文で書いてください」
Necessity is the mother of invention.
ネセシティ・イズ・ザ・マザー・オブ・インヴェンション 起死のことば必要は発明の母。困ったときにこそ、新しい工夫が生まれる
この言い回しが英語になるまでの道のりは、かなり長いものでした。
もとはラテン語の Mater artium necessitas。「必要は技芸の母」という意味です。1519年、ウィリアム・ホーマンの『Vulgaria』という本に、このラテン語の形で載っています(phrases.org.uk)。
面白いのは、英語圏にありながら、長いこと英語になっていなかったことです。16世紀のイングランドで知られてはいたものの、ラテン語のまま記録されていました。当時ラテン語が読めたのは、ごく一部の人です。
英語の形は、2つ伝わっています。1つは、リチャード・フランクが1658年に書いた『Northern Memoirs』にある「Art imitates Nature, and Necessity is the Mother of Invention」。いまとまったく同じ形ですが、この本が印刷されたのは1694年でした。もう1つは、1671年に上演されたウィリアム・ウィッチャリーの戯曲『Love in a Wood』(出版は翌1672年)の「Necessity, the mother of invention」で、活字になったのはこちらが先です。1519年から数えて、およそ150年かかったことになります。
さらにさかのぼると、プラトンの『国家』に「私たちの必要こそが本当の作り手だ」という趣旨の一節があり、のちの訳者がそれを「必要こそ、われわれの発明の母」と訳しました。
テストの日、定規を忘れたことに気づく。借りようにも、周りも使っている。
そこであなたは、消しゴムの角を当てて線を引いた。あるいは、シャープペンの本体を定規代わりにした。
誰にも教わっていないのに、その場で思いついたはずです。
これがこのことわざの言っていることです。困っていなければ、消しゴムで線を引こうなどとは一生思いません。必要が、先に来る。
こう使う
We had no oven, so we cooked it in a pan. Necessity is the mother of invention.
オーブンが無かったので、フライパンで作りました。必要は発明の母です。
Necessity is the mother of invention, as this small factory proves.
この小さな工場が示すとおり、必要は発明の母です。
発音:necessity は「ネセシティ」で、強く読むのは ces のところです。invention は「インヴェンション」で、ven が山。どちらも真ん中が高くなる語で、日本語のように平らに読むと通じにくくなります。
- こう問われる
- ①自由英作文の締めで使わせる形。②長文の科学・技術のテーマで出て、筆者の主張を言い換えた選択肢を選ばせる形。③空所補充で mother / father / child のどれを入れるかを選ばせる形。
- ここで外す
- father と書いてしまう誤りが定番です。英語のことわざでは mother で固定されており、father には替えられません。また、necessary(形容詞)と necessity(名詞)の取り違えも多く見ます。ここは名詞です。
- 決め手
- 主語は necessity(名詞)、be動詞のうしろは the mother of invention。語順も冠詞も動かしません。丸ごと1つの形として覚えてください。
Necessity is the ______ of invention.
必要は発明の( )である。
- 誤答
- father/英語のことわざでは mother で固定です
- 正答
- mother/Mater artium necessitas というラテン語の mater(母)を受け継いでいます
Before
「必要は発明の母」という日本語の形でだけ知っていて、英語では言えなかった。自由英作文で使おうとして Necessary is the mother of invention. と書き、名詞と形容詞を取り違えたまま提出していた。
After
ラテン語の mater(母)から来ていると分かるので、mother が動かないことが理屈で納得できる。主語が necessity という名詞であることも、ラテン語の necessitas とつなげて覚えられる。自由英作文の締めで、形を崩さずに使える。
Necessity is the mother of invention. を教室で使う(7分)
ねらい: ことわざを、自分の体験に接続させてから覚えさせる
- 「必要は発明の母。聞いたことある人?」と挙手させます。たいてい半分は手が挙がります
- 「では、自分が発明したものを思い出してください。定規を忘れたときとか」と言って30秒待ちます
- ペアで、その場しのぎで思いついた工夫を1つずつ話させます。2分
- 「いま話したのが invention です」と言って、黒板に Necessity is the mother of invention. と書きます
- 最後に、全員で3回声に出して終わります
出口チケット: 「自分が『発明』した工夫を、英語で1文書いてください。I made ___ when I didn't have ___. の形で」
You name it.
ユー・ネイム・イット 自負のことば何でもありますよ、挙げてもらえれば何でも
まず、この絵を頭に置いてください。品物がぎっしり並んだ小さな店に、あなたが入ります。
「ねじはありますか」「あるよ」「工具は?」「あるよ」
何を聞かれても在庫がある。そこで店主は、いちいち答えるのをやめてこう言います。You name it.
ここでの name は名詞ではなく動詞で、「名前を挙げる、指定する」という意味です。直訳すれば「あなたがそれを挙げる」。相手に言わせる形をとった、言い切りの一言です。
つまり「挙げてごらん。それ、うちにあるから」。全部を並べる代わりに、相手に挙げさせる。それだけで「何でもある」と伝わります。
一覧を全部言わずに済ませる、言葉の節約の技でもあります。
「あいつ何部だっけ」と聞いたら、返ってきた答えが長い。
「サッカーもやってたし、軽音もやってたし、生徒会も、あと放送部も。You name it.」
このとき友だちは、全部を数え上げるのをやめたわけです。挙げてみろ、たぶんやってるから、と。
日本語の「何でもござれ」「挙げたらきりがない」に近い一言です。リストの途中で切り上げるときの決まり文句だと思ってください。
こう使う
Pens, pencils, erasers, glue. You name it, we have it.
ペン、鉛筆、消しゴム、のり。挙げてもらえれば、何でもありますよ。
She has tried every sport. Tennis, judo, archery, you name it.
彼女はあらゆるスポーツをやってきました。テニス、柔道、アーチェリー、何でもです。
発音:3語を続けて「ユーネイミッ」のように言います。name の e は読まず、it の t はほとんど落ちます。1語ずつ区切ると、決まり文句に聞こえません。
- こう問われる
- ①会話文の応答選択で、長い列挙のあとに入る一言として選ばせる形。②リスニングで、店員や紹介者の発言の締めとして出る形。③言い換えとして anything you can think of を選ばせる形。
- ここで外す
- 疑問文だと思って読んでしまう誤りが定番です。You name it? と読むと「あなたがそれに名前をつけるの?」になってしまいますが、これは問いかけではなく、言い切りの決まり文句です。声に出すときも、文末は下げます。 もう1つは、name を名詞で読んで「あなたの名前」と取り違える誤りです。ここでの name は動詞で、「挙げる、指定する」の意味になります。
- 決め手
- 直前に3つ以上のものが並んでいたら、この表現は「ほかにもまだある」という締めです。質問ではありません。
- 誤答
- Name is yours./そのような言い方は英語にありません
- 正答
- You name it./挙げてもらえれば何でもありますよ、という締めです
Before
name を名詞としか知らなかったので、会話文で You name it. が出てくると「あなたの名前?」と読んでしまい、そこで話の流れが切れていた。応答選択の問題で、長い列挙のあとに何が入るのか見当がつかなかった。
After
name が動詞で「挙げる」だと分かるので、列挙の締めとして即座に判断できる。同じ動詞の使い方が出てくる Name three countries in Europe.(ヨーロッパの国を3つ挙げなさい)のような文も、その場で読めるようになる。
You name it. を教室で使う(5分)
ねらい: name が動詞として使えることを、体験で入れる
- 「Name three animals.」と英語で言って、指名します。生徒は面食らいますが、動物を3つ言えます
- 「いま、君は name されたわけです。name は動詞で『挙げる』」と黒板に書きます
- 「では You name it. はどういう意味?」と聞きます。ここで多くが自力でたどり着きます
- 教室にあるものを次々に聞く役をやります。「ペンある人」「定規は」「はさみは」と3つ聞いて、最後に自分で You name it. と言ってみせます
- ペアで、自分の好きな食べ物を4つ挙げてから You name it. で締める練習を2往復させます
出口チケット: 「You name it. で終わる文を1つ書いてください。前に3つ以上並べること」
動画で見る
よくある質問
by the skin of your teeth の由来は何ですか?
旧約聖書の『ヨブ記』第19章20節です。欽定訳聖書では「I am escaped with the skin of my teeth」と訳されています。歯に皮はありませんから、もともと「ぎりぎり、ほとんど何も残らない状態で」という強い表現でした。
Necessity is the mother of invention. はいつからある言い方ですか?
ラテン語の Mater artium necessitas(必要は技芸の母)という形が、1519年のウィリアム・ホーマン『Vulgaria』に見られます。英語では、1671年に上演されたウィリアム・ウィッチャリーの戯曲『Love in a Wood』(出版は翌1672年)の「Necessity, the mother of invention」がいちばん早く活字になりました。いまとまったく同じ形は、リチャード・フランクが1658年に書いた『Northern Memoirs』にありますが、印刷されたのは1694年です。