Necessity is the mother of invention.
ネセシティ・イズ・ザ・マザー・オブ・インヴェンション
「必要は発明の母。困ったときにこそ、新しい工夫が生まれる」
この言い回しが英語になるまでの道のりは、かなり長いものでした。
もとはラテン語の Mater artium necessitas。「必要は技芸の母」という意味です。1519年、ウィリアム・ホーマンの『Vulgaria』という本に、このラテン語の形で載っています(phrases.org.uk)。
面白いのは、英語圏にありながら、長いこと英語になっていなかったことです。16世紀のイングランドで知られてはいたものの、ラテン語のまま記録されていました。当時ラテン語が読めたのは、ごく一部の人です。
英語の形は、2つ伝わっています。1つは、リチャード・フランクが1658年に書いた『Northern Memoirs』にある「Art imitates Nature, and Necessity is the Mother of Invention」。いまとまったく同じ形ですが、この本が印刷されたのは1694年でした。もう1つは、1671年に上演されたウィリアム・ウィッチャリーの戯曲『Love in a Wood』(出版は翌1672年)の「Necessity, the mother of invention」で、活字になったのはこちらが先です。1519年から数えて、およそ150年かかったことになります。
さらにさかのぼると、プラトンの『国家』に「私たちの必要こそが本当の作り手だ」という趣旨の一節があり、のちの訳者がそれを「必要こそ、われわれの発明の母」と訳しました。
テストの日、定規を忘れたことに気づく。借りようにも、周りも使っている。
そこであなたは、消しゴムの角を当てて線を引いた。あるいは、シャープペンの本体を定規代わりにした。
誰にも教わっていないのに、その場で思いついたはずです。
これがこのことわざの言っていることです。困っていなければ、消しゴムで線を引こうなどとは一生思いません。必要が、先に来る。
なぜこの意味になるのか
necessity は「必要、必需」。ラテン語の necessitas から来ています。invention は invent(発明する)の名詞形で、ラテン語の invenire(見つけ出す)がもとです。
ここが面白いところで、invention はもともと「発明」ではなく「見つけ出すこと」でした。無から作るのではなく、すでにあるものの中から探し当てる。定規が無いときに消しゴムを見つけ出す、あの動きのほうが、語源には近いのです。
使うときの注意・使い分け
前向きな場面で使います。困っている最中の人に向かって言うと、突き放したように聞こえることがあります。乗り越えたあと、振り返って言うのが自然です。
例文で確かめる
We had no oven, so we cooked it in a pan. Necessity is the mother of invention.
オーブンが無かったので、フライパンで作りました。必要は発明の母です。
Necessity is the mother of invention, as this small factory proves.
この小さな工場が示すとおり、必要は発明の母です。
発音・リズム
necessity は「ネセシティ」で、強く読むのは ces のところです。invention は「インヴェンション」で、ven が山。どちらも真ん中が高くなる語で、日本語のように平らに読むと通じにくくなります。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①自由英作文の締めで使わせる形。②長文の科学・技術のテーマで出て、筆者の主張を言い換えた選択肢を選ばせる形。③空所補充で mother / father / child のどれを入れるかを選ばせる形。
- ここで外す
- father と書いてしまう誤りが定番です。英語のことわざでは mother で固定されており、father には替えられません。また、necessary(形容詞)と necessity(名詞)の取り違えも多く見ます。ここは名詞です。
- 決め手
- 主語は necessity(名詞)、be動詞のうしろは the mother of invention。語順も冠詞も動かしません。丸ごと1つの形として覚えてください。
Necessity is the ______ of invention.
必要は発明の( )である。
- 誤答
- father/英語のことわざでは mother で固定です
- 正答
- mother/Mater artium necessitas というラテン語の mater(母)を受け継いでいます
読み方が変わる
Before
「必要は発明の母」という日本語の形でだけ知っていて、英語では言えなかった。自由英作文で使おうとして Necessary is the mother of invention. と書き、名詞と形容詞を取り違えたまま提出していた。
After
ラテン語の mater(母)から来ていると分かるので、mother が動かないことが理屈で納得できる。主語が necessity という名詞であることも、ラテン語の necessitas とつなげて覚えられる。自由英作文の締めで、形を崩さずに使える。
こぼれ話
似た形のことわざに、Idleness is the mother of all vices.(怠惰はあらゆる悪徳の母)があります。英語では「〜の母」という言い方で、ものごとの出どころを指す言い回しがいくつもあります。母が源、という感覚は、ラテン語から受け継がれたものです。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- Where there's a need, there's a way.
Necessity is the mother of invention. を教室で使う(7分)
ねらい: ことわざを、自分の体験に接続させてから覚えさせる
- 「必要は発明の母。聞いたことある人?」と挙手させます。たいてい半分は手が挙がります
- 「では、自分が発明したものを思い出してください。定規を忘れたときとか」と言って30秒待ちます
- ペアで、その場しのぎで思いついた工夫を1つずつ話させます。2分
- 「いま話したのが invention です」と言って、黒板に Necessity is the mother of invention. と書きます
- 最後に、全員で3回声に出して終わります
出口チケット: 「自分が『発明』した工夫を、英語で1文書いてください。I made ___ when I didn't have ___. の形で」
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
あなたは英語の先生です。Necessity is the mother of invention. ということわざについて、次のことをしてください。①このことわざで締めくくれる短い英語の段落を3つ作る。②3つとも、高校生の身のまわりの出来事にする(部活、試験、家の手伝いなど)。③各段落は5文以内にし、最後の1文をこのことわざにする。④各段落の下に、日本語訳を2行だけ付ける。⑤ことわざの解説は書かない。