When it rains, it pours.
ウェン・イット・レインズ、イット・ポーズ
「降るとなれば土砂降り。悪いことは重なるものだ」
この言い方には、兄にあたる古い形があります。
It never rains but it pours.(降るとなれば必ず土砂降りだ)
こちらはイギリスの古い言い方で、1726年には It cannot rain but it pours という題名の小冊子が出ています。ジョン・アーバスノットらの作とされるものです。
ところが、いま英語圏でよく聞くのはアメリカ式の When it rains, it pours. のほうです。
この形を広めたのは、塩の会社の広告でした。1914年、モートン・ソルト社が自社の塩に付けたキャッチコピーがこれです。
⚠ ここが面白いところですが、広告での意味は逆でした。当時の食塩は湿気で固まってしまい、雨の日には振っても出てきませんでした。同社は固まりにくい塩を売り出し、「雨の日でも、ちゃんと出ますよ」と言いたかったのです。傘をさした女の子の絵は、いまもその缶に残っています。
良い意味で作られた形が、もとのことわざの悪い意味を引き受けて広まった。言葉には、こういうことが起こります。
目覚ましが鳴らなかった。あわてて起きたら、かぎが見つからない。やっと家を出たら、電車が止まっている。
こんな日に、英語ではこう言います。When it rains, it pours.
直訳は「雨が降るときは、土砂降りになる」。悪いことは1つでは終わらない、という感覚です。
日本語の「泣きっ面に蜂」「弱り目にたたり目」が近いのですが、少し違います。日本語の2つは「弱っているところに、さらに」という順番が入っています。英語のほうは順番を言わず、まとめて来ることだけを言います。
なお、良いことが重なったときにも使えます。合格して、誕生日で、しかも部活で勝った日。「来るときは、まとめて来るね」という言い方になります。
なぜこの意味になるのか
pour は古い英語にさかのぼる語で、もとは「流す、そそぐ」という他動詞でした。
そこから、主語を置かずに it pours と言うだけで「(雨が)激しく降る」を表すようになります。英語では天気の主語に it を置く決まりがあるので、It rains. と同じ形です。
⚠ pour と poor(貧しい)は、つづりも意味も別の語です。発音も、アメリカ英語ではほぼ同じに聞こえるので、リスニングでは文脈で判断してください。
使うときの注意・使い分け
会話でよく使われます。相手の不運に対して言うときは、同情の意味になります。ただし、本当に深刻な不幸には向きません。財布をなくした程度までと考えてください。
例文で確かめる
First the rain, then the flat tire. When it rains, it pours.
まず雨、次はパンク。降るとなれば土砂降りです。
Three job offers in one week! When it rains, it pours.
1週間で内定が3つ。来るときはまとめて来ますね。
発音・リズム
pours は「ポ・ア・ー・ズ」と伸ばしません。「ポーズ」に近い、ひと息の音です。r は舌を軽く丸めるだけで、はっきり「ア」とは言いません。
rains と pours は、どちらも語尾の s を /z/ で濁らせます。ここを /s/ にすると、別の語に聞こえます。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①ことわざの意味を選ばせる形。②日本語のことわざとの対応を選ばせる形(泣きっ面に蜂など)。③会話文で、不運が続いた人への応答として選ばせる形。
- ここで外す
- pour を「注ぐ」としか覚えていないと、意味が取れません。pour には「土砂降りに降る」という自動詞の使い方があります。It's pouring. だけで「どしゃ降りだよ」の意味になります。 もう1つは、because のような因果で読んでしまう誤りです。「雨が降るから注ぐ」ではありません。ここでの when は条件に近く、「降るとなれば」という意味です。 古い形 It never rains but it pours. のほうは、but が「〜せずには」という古い用法なので、そのまま直訳すると意味が反転します。「降れば必ず土砂降り」と覚えてください。
- 決め手
- この表現が出てきたら、直前に不運が2つ以上並んでいるはずです。1つしか無ければ、たいてい読み違えています。
- 誤答
- It never rains./「雨は決して降らない」になってしまい、話がつながりません
- 正答
- When it rains, it pours./「来るときはまとめて来るね」という応答です
読み方が変わる
Before
pour は「注ぐ」だと覚えていたので、When it rains, it pours. を「雨が降ると、水を注ぐ」と読んでいた。ことわざだと分かっても、なぜその形で「重なる」の意味になるのか説明できなかった。
After
pour が自動詞で「土砂降りに降る」だと分かるので、天気の話でも比喩でも読める。It's pouring outside.(外はどしゃ降りです)のような日常の1文まで、同時に入る。
こぼれ話
モートン・ソルト社の傘の女の子は、1914年から100年以上、少しずつ絵を描き直されながら、いまも同じ缶に描かれています。
広告のことばが、もとからあったことわざの形を押しのけて定着した例は、そう多くありません。言葉は、正しいほうではなく、よく目にするほうが残るということでもあります。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- It never rains but it pours.Bad things come in threes.
- 反対の意味
- Every cloud has a silver lining.
When it rains, it pours. を教室で使う(5分)
ねらい: pour の自動詞の使い方を、ことわざごと入れる
- 「pour の意味は?」と聞きます。ほぼ全員が「注ぐ」と答えます
- 「では It's pouring. は?」と聞きます。ここで教室が止まります
- 「どしゃ降りです。pour には『激しく降る』という使い方があります」と黒板に書きます
- 「では When it rains, it pours. は?」ともう一度聞きます。今度は自力でたどり着きます
- 「今週あった『まとめて来た』出来事を、隣の人に1つ話してください」と2分取ります
出口チケット: 「It's pouring. を使った短い会話を2往復書いてください」
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
あなたは英語の先生です。When it rains, it pours. を使った短い会話を4往復つくってください。条件は次のとおりです。①Aが不運を3つ続けて話し、Bがこのことわざで受ける形にしてください。②ことわざは1回だけ使ってください。③1回の発言は15語以内にしてください。④会話のあとで、同じことわざを「良いことが重なった場面」で使った会話を、もう1つ短く作ってください。⑤日本語訳は最後にまとめて付けてください。