英語圏には、願いごとをするときに人差し指と中指を交差させるしぐさがあります。
手を胸のあたりに上げて、2本の指をねじるように重ねる。それだけです。スポーツの中継でも、合格発表を待つ人の映像でも、よく映ります。
このしぐさが先にあって、それを言葉にしたものが Fingers crossed. です。もとは I'll keep my fingers crossed for you.(あなたのために指を組んでおきます)という長い形で、そこから頭とうしろが落ちました。
⚠ いつ始まったのかは、はっきり分かっていません。十字を切るしぐさから来たという説がよく紹介されますが、確かな裏づけがあるわけではありません。「幸運を祈るしぐさ」として英語の文章に出てくるのは、20世紀に入ってからです。
由来があいまいなのに、しぐさのほうは英語圏の子どもでも知っている。言葉というのは、そういうこともあります。
友だちが「これから面接なんだ」と言う。緊張しているのが見て取れる。
そこで長い励ましは要りません。Fingers crossed. と一言だけ言って、指を組んでみせます。
2語です。Good luck. と同じ場面で使えますが、少し違いがあります。
Good luck. は「幸運を」と相手に渡す言い方です。Fingers crossed. は「こちらで祈っておくね」。自分が何かをしている形になっているぶん、一緒にいる感じが出ます。
だから、結果を待っているあいだにも使えます。試験が終わって、発表までの数日。その間ずっと Fingers crossed. です。
なぜこの意味になるのか
cross はもともと「十字、交差したもの」を表す名詞で、そこから「交差させる」という動詞が生まれました。
cross the street(通りを横切る)、cross your arms(腕を組む)、cross your legs(脚を組む)。どれも「交差させる」という1つの動きです。
Fingers crossed. も同じ仲間で、指を交差させた状態を表しています。体の部位 + crossed の形は、英語でよく使われます。
使うときの注意・使い分け
くだけた言い方ですが、失礼にはなりません。友だちにも、同僚にも使えます。あらたまった手紙では I wish you the best. のほうが自然です。
例文で確かめる
Fingers crossed. You'll do great tomorrow.
祈っていますね。明日はきっとうまくいきますよ。
I'll keep my fingers crossed until the results come out.
結果が出るまで、ずっと祈っています。
発音・リズム
crossed の -ed は /t/ の音1つです。「クロスド」ではなく「クロスト」。2語をつなげて「フィンガーズクロスト」と、ひと息で言い切ります。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①会話文で、これから試験や面接に向かう人への応答として選ばせる形。②リスニングで、別れぎわの一言として出る形。③言い換えとして I hope it goes well. を選ばせる形。
- ここで外す
- crossed を動詞の過去形だと思って読む誤りがあります。「指が交差した」という過去の出来事ではありません。ここでの crossed は状態を表す形で、Fingers (are) crossed. の are が落ちた言い方です。 もう1つは、済んだことに使ってしまう誤りです。この表現はこれから起きることにしか使えません。結果が出たあとに言うと、意味が通りません。 ⚠ そしてもう1つ。指を組むしぐさには、「うそをつくときの言い訳」という別の顔があります。子どもが背中に手を回して指を組み、「これなら約束を破っても許される」とする遊びです。ただし Fingers crossed. と口に出して言う場合は、ほぼ必ず「幸運を祈る」のほうです。
- 決め手
- これから起きることかどうかで決まります。未来の話なら Fingers crossed.、済んだ話なら別の表現です。
- 誤答
- That's too bad./悪い知らせへの応答なので、ここでは合いません
- 正答
- Fingers crossed./うまくいくよう祈っていますね、という一言です
読み方が変わる
Before
Fingers crossed. を見ると「指が交差した」と読んでしまい、会話文の応答としてなぜそれが入るのか分からなかった。Good luck. しか知らなかったので、結果を待っているあいだに言える表現が無かった。
After
be動詞が落ちた形だと分かるので、その場で「祈ってるね」と読める。しかもこれから起きることにだけ使うという線が引けるので、応答選択で迷わない。
こぼれ話
同じ「幸運を祈る」を、体のしぐさで言う表現は英語にいくつもあります。knock on wood(木をたたく)は、せっかくの幸運が逃げないようにする言い方です。
日本語の「指を組む」には、こういう意味はありません。かわりに絵馬を書いたり、お守りを持ったりします。
祈り方は文化ごとに違うのに、祈りたくなる場面は同じです。試験の前、発表の前、誰かの手術の日。そこだけは、どの国でも変わりません。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- I hope it goes well.Wish you luck.
- 反対の意味
- It's hopeless.
Fingers crossed. を教室で使う(5分)
ねらい: しぐさと一緒に、口に入れてしまう
- 何も言わずに、人差し指と中指を組んでみせます。「これ、知ってる人」と聞きます
- 何人か手が挙がります。「意味は?」と聞くと、たいてい『幸運』と返ってきます
- 「英語では Fingers crossed. と言います」と黒板に書きます
- 「Fingers are crossed. の are が落ちています」と、are を書いてから消してみせます
- ペアで、片方が「明日テスト」「明日試合」と言い、もう片方が指を組んで Fingers crossed. と返す。役を替えて2往復させます
出口チケット: 「これから起きることを1つ書いて、その下に Fingers crossed. と書いてください」
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
あなたは英会話の相手役です。私と短い会話を4往復してください。条件は次のとおりです。①私がこれから起きる予定を1つ話し、あなたが Fingers crossed. で返す流れにしてください。②Fingers crossed. は1回だけ使ってください。③そのあと、私が結果を報告する場面まで進めてください。④結果が出たあとは Fingers crossed. を使わず、別の表現で返してください。⑤1回の発言は15語以内にしてください。