17世紀イギリスの哲学者トマス・ホッブズと、デリー主教ジョン・ブラムホールは、『自由意志は存在するか』という問いをめぐって長く論じ合っていました。そのやり取りは1656年、1冊の本にまとめられて世に出ます。
その本の中に、T. H. thinks to kill two birds with one stone, and satisfy two arguments with one answer.(T.H.は一石二鳥をねらって、2つの論に1つの答えで済ませようとしている)という一文があります。T. H. とは、トマス・ホッブズのことです。オックスフォード英語辞典は、この一文をこの表現の最も古い用例として挙げています。
議論の運び方を指して使われていた言葉が、いまでは日常のちょっとした工夫を表す言葉になっている、というのが面白いところです。
なお、これより古い例も見つかっています。1632年の歴史書には、ある指揮官が「一石二鳥をねらって」進軍した、という使い方が残っています。
電車に乗っている時間は、ただの移動時間にも、勉強時間にもなります。イヤホンをつけて英語のニュースを聞けば、移動しながら耳のトレーニングもできる。
これが kill two birds with one stone です。1つの行動(電車に乗る)で、2つの目的(移動する・勉強する)を同時に達成する、という日常のちょっとした工夫を指しています。
なぜこの意味になるのか
英語で記録に残るいちばん古い例は、1632年に出た歴史書の中の kill two Birds with one Stone です。辞書がよく挙げるのは、その少しあと、1656年に哲学者トマス・ホッブズとデリー主教ジョン・ブラムホールの論争をまとめた本に出てくる一文のほうです。
生まれた当時の bird は狩りの獲物の鳥(特にヤマウズラ)、stone は弾のことでした。はじめは比喩ではなく、狩りの話そのものだったわけです。
使うときの注意・使い分け
鳥や石が実際に出てくる話ではありません。birds は『2つの目的』、stone は『1つの行動・手段』の比喩です。日本語の『一石二鳥』とほぼ同じ発想の慣用句で、和訳ではそのままこの四字熟語を当てることができます。
例文で確かめる
By listening to English podcasts on my way to school, I kill two birds with one stone.
通学中に英語のポッドキャストを聞くことで、私は一石二鳥をこなしている。
Studying with a friend lets you kill two birds with one stone: you learn, and you spend time together.
友達と一緒に勉強すれば一石二鳥だ。勉強もできるし、一緒の時間も過ごせる。
発音・リズム
kill two birds with one stone は、two と one の数字の部分をやや強めに読むと、『2つを1つで』という対比が伝わりやすくなります。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①下線部の言い換え問題で be efficient / accomplish two things at once を選ばせる形。②内容一致で、話者が何をして『得』をしたのかを問う形。
- ここで外す
- birds を実際の『鳥』、stone を実際の『石』のまま読み、動物を傷つける物騒な話だと誤読してしまう誤りが定番です。
- 決め手
- birds は『2つの目的』、stone は『1つの行動』の比喩だと気づけるかがすべて。具体物が出てきたら、まず比喩を疑うこと。
By taking the night bus, I killed two birds with one stone.
- 誤答
- 夜行バスに乗って、石で鳥を2羽仕留めた
- 正答
- 夜行バスに乗って、(移動と宿泊を同時に済ませる)一石二鳥をこなした
読み方が変わる
Before
birds と stone を見ると、『動物を傷つける物騒な話』だと思い込み、そこで読みが止まっていた
After
birds=目的、stone=手段と読み替えられる。下線部の言い換え問題で、be efficient や accomplish two things at once という答えにそのまま近づける
こぼれ話
同じ発想のことわざは、日本語の『一石二鳥』のほかにもいくつかの言語にあります。フランス語には「1つの石で2発(faire d'une pierre deux coups)」という、ほぼ同じ形の言い回しが存在します。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- accomplish two things at oncebe efficient
kill two birds with one stone を教室で使う(5分)
ねらい: 比喩表現の『具体物→抽象的な意味』への変換を練習する
- 板書に kill two birds with one stone とだけ書き、「これ、実際に鳥を殺す話だと思う人?」と挙手を取る
- 「birdsとstoneが指しているものは?」とペアで30秒相談させる
- birds=2つの目的、stone=1つの行動、という答えを確認し、日本語の『一石二鳥』と同じ発想だと伝える
- 生徒自身の生活から「一石二鳥」の例を1つ挙げさせ、英文にする
出口チケット: 自分の生活の中の『一石二鳥』を、kill two birds with one stone を使った英文で書きなさい。
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
あなたは大学入試の英語講師です。kill two birds with one stoneを、比喩の仕組みごと私が説明できるようにしてください。条件:①birdsとstoneがそれぞれ何を指す比喩かを明記する ②この表現が使われた短い会話文(80語程度・日本語訳つき)を作る ③下線部の意味として最も近いものを選ばせる4択問題を3問、各問1行の解説つきで作ってください。