Ignorance is bliss.
イグノランス・イズ・ブリス
「知らないほうが幸せなこともある(知らぬが仏)」
このことわざは、Thomas Gray の詩「Ode on a Distant Prospect of Eton College」から来ています。題は「遠くからイートン校をながめて」という意味です。Wiktionary は、この詩を1742年としています。
詩の語り手は、Where once my careless childhood stray'd(かつて私がのんきな子ども時代を過ごした場所)と、学校をながめます。
そこでは少年たちが遊んでいます。詩は、彼らがこれから来る苦しみを知らずに遊んでいると書きます。
そして最後の一節で、こう結びます。where ignorance is bliss, 'Tis folly to be wise(知らないことが幸せであるところでは、賢くなるのは愚かだ)。
期末テストの結果が、ネットで見られるようになりました。でも明日から、家族で旅行です。
あなたは決めます。点数は、帰ってきてから見よう。
旅行の間、テストのことは一度も頭に浮かびませんでした。
「知らないままのほうが、楽しめたな」
英語なら Ignorance is bliss. と言えます。
なぜこの意味になるのか
ignorance は「知らないこと」、bliss は「この上ない幸せ」です。「知らないことが、この上ない幸せ」という並びになります。Gray の原文には where(〜であるところでは)が付いており、場面を限った言い方でした。
使うときの注意・使い分け
「知らないほうが、気が楽なこともある」と言うことわざです。Cambridge Dictionary は「状況のすべての事実を知らないほうが、よいこともある」と説明しています。
例文で確かめる
Don't tell me the ending of the movie. Ignorance is bliss.
映画の結末は言わないで。知らないほうが楽しめるから。
I didn't look at the price of the dinner. Ignorance is bliss.
夕食の値段は見ませんでした。知らないほうが幸せなこともあります。
発音・リズム
ignorance と bliss を強く「イグノランス・イズ・ブリス」と言います。bliss は短く「ブリス」で、bless(ブレス)とは母音が違います。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①下線部の言い換えで、It is sometimes better not to know. を選ばせ、Ignorant people are always happy. を並べる形。②日本語のことわざ「知らぬが仏」に当たる英語を選ばせる形。③反対の考え方の Knowledge is power. と並べ、筆者がどちらの立場かを問う内容一致。
- ここで外す
- 「無知な人はいつも幸せだ」と、誰にでも当てはまる話として訳す答案が出ます。もう1つは、bliss を bless(祝福する)と読み違え、「無知は祝福する」と動詞で訳す誤りです。
- 決め手
- 選択肢に sometimes や some things のような、場面を限る語があるかを見ます。Gray の詩は where(〜であるところでは)と場面を限っています。always や all で言い切る選択肢は、このことわざの意味ではありません。
I didn't check my test score until after the trip. Ignorance is bliss.
- 誤答
- 旅行が終わるまでテストの点数を見なかった。無知な人はいつも幸せだ。
- 正答
- 旅行が終わるまでテストの点数を見なかった。知らないほうが幸せなこともある。
読み方が変わる
Before
ignorance を「無知」、bliss を「至福」と1語ずつ訳して「無知は至福だ」で止まり、筆者が無知をほめているのか皮肉なのか判断できなかった
After
「知らないほうが気が楽な場面もある」と、場面を限った言い方として読める。内容一致で、always と言い切る選択肢を選ばずに済む
こぼれ話
英語版 Wiktionary の「知らぬが仏」の項は、その意味を ignorance is bliss としています。Wikisource にある Gray の詩集には、注が付いています。この詩は Gray の英語の作品で初めて印刷されたもので、1747年に出た、という注です。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- What you don't know can't hurt you.
- 反対の意味
- Knowledge is power.
Ignorance is bliss. を教室で使う(6分)
ねらい: Ignorance is bliss. を「知らないほうが幸せなこともある」と場面を限って読み、日本語の「知らぬが仏」と結びつけられるようにする
- 黒板に「知らぬが仏」と書き、「英語にも同じことわざがあります」と言って Ignorance is bliss. を書きます
- 「もとは1つの詩の最後の一行です」と伝え、where ignorance is bliss, 'Tis folly to be wise を板書します
- 「where は『〜であるところでは』です。いつでも知らないほうがいい、とは言っていません」と確認します
- ペアで、「知らないままのほうが楽だったこと」を1つずつ言い合い、Ignorance is bliss. で締めさせます
出口チケット: 「映画の結末を聞かないでおいた」という場面の英文を、Ignorance is bliss. を使って2文で書かせる
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
Ignorance is bliss. を使った会話を3つ作ってください。条件は次のとおりです。①高校生のテスト・映画・家族の場面にする。②知らないままのほうが気が楽だった理由が、会話から分かるようにする。③それぞれに日本語訳を付ける。④最後に、Knowledge is power. を使った反対の立場の会話を1つ足し、2つの考え方の違いを日本語で一言添える。