『肖像画家が手足まで描くと高く請求した』『戦争で手足を失った兵士に由来する』。この言い回しには、もっともらしい俗説が2つ語り継がれています。ですが、どちらも実際の記録では裏づけられていません。
実際に使われ始めたのは、第二次世界大戦後の1950年前後のアメリカだと考えられています。19世紀半ばからある『そのためなら右腕をあげてもいい』という、大きな代償を表す言い回しが土台になっていると見られています。『値段の高さ』を、体の一部を差し出すことにたとえた誇張表現、というのがいちばん確からしい説明です。
ずっと欲しかったスニーカーやゲーム機。値段を見た瞬間、『これはちょっと……』と手が止まる。cost an arm and a leg は、そのときの『痛さ』をそのまま言葉にした表現です。実際にお金を失うだけでなく、体の一部を差し出すくらいの感覚だと大げさに言うところが、この表現のおもしろさです。
なぜこの意味になるのか
この言い回しには、よく語られる俗説が2つあります。1つは『昔の肖像画家が、腕や脚まで描く全身像には高い料金を取った』という説。もう1つは『戦争で腕や脚を失った兵士の苦しみに由来する』という説です。どちらも、それを裏づける記録は見つかっていません。
実際には、この言い回しがはっきり使われ始めたのは第二次世界大戦後、1950年前後のアメリカだと考えられています。19世紀半ばからある "I would give my right arm"(そのためなら右腕をあげてもいい=それほど大きな代償を払ってもいい)という言い回しと、大きな労力を意味する古い言い回しが組み合わさって生まれた、という見方が有力です。
使うときの注意・使い分け
文字どおりには『腕と脚を代償に払う』ほどの犠牲を意味する誇張表現。実際の金額そのものより、支払う側が感じる『痛さ』を強調する言い方。
例文で確かめる
This designer bag cost me an arm and a leg, but I don't regret it.
このブランドバッグはものすごく高かったけど、後悔はしていない。
Fixing the car after the accident is going to cost an arm and a leg.
事故のあとの車の修理には、とんでもないお金がかかりそうだ。
発音・リズム
arm and の部分はつなげて【アーマン】に近い音になる。an arm and a leg 全体を、区切らず一息で読む練習をすると自然に聞こえる。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①下線部の意味を問う言い換え問題(『とても高価だ』を選ばせる)。②会話文で、値段への驚きを表す応答として選ばせる形。③文字どおり『体の一部を失う事故の話』だと誤読させる読解問題。
- ここで外す
- 文字どおりに『腕や脚をなくす事故の話』だと誤読してしまう誤り。cost のすぐあとに人を表す語が来る形(cost+人+金額)を見落とし、意味が取れなくなる誤りもある。
- 決め手
- cost のすぐあとに人(me や him など)が来ていれば、an arm and a leg はその『金額』にあたる比喩の部分。値段の高さについての話なら、迷わず比喩の意味で読む。
- 誤答
- broke my arm and my leg(腕と脚を骨折した、という文字どおりの誤った意味)
- 正答
- cost an arm and a leg(ものすごく高かった、という正しい比喩の意味)
読み方が変わる
Before
cost an arm and a leg を見ても、直訳して意味の通らない文としか読めなかった
After
cost のうしろに続く部分を『金額にあたる比喩』として読み替えられるようになり、値段の高さを誇張する表現だとその場で分かる
こぼれ話
『昔の肖像画家が手足まで描くと高く請求した』『戦争で手足を失った兵士に由来する』という2つの説は、どちらも広く語られているが、裏づける記録が見つかっていない俗説だとされている。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- cost a fortunecost a pretty penny
cost an arm and a leg を教室で使う(6分)
ねらい: cost an arm and a leg を、値段の高さに驚く場面で自然に使えるようにする
- 「値段を見て思わず二の足を踏んだもの、ある?」と生徒に問いかける
- cost an arm and a leg を提示し、『体の一部を代償にするほど高い』という誇張表現だと説明する
- 『肖像画家』『戦争』の俗説を紹介し、『どちらも記録では確認されていない』ことを確認する
- 実際に値段に驚いた経験を、ペアで1つずつ英語で言わせる
出口チケット: cost an arm and a leg を使って、値段に驚いた経験を1文書いてみよう。
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
値段の高さに驚いたことを、英語で大げさに伝える練習に使えます。①場面:「欲しかったものの値段を見て驚いた」②その品物と値段を1つ考えてもらい、③自分は cost an arm and a leg を使って驚きを伝えます。そのやり取りを3往復ぶん、英語と日本語訳の両方で作ってください。