beatにはもともと、殴るという意味だけでなく、『相手を打ち負かす、上回る』という意味がありました。辞書は、この言い回しを1800年代半ばのアメリカ英語のスラングとして扱っています。どこから生まれたかは、はっきり分かっていません。辞書が挙げているのは2つで、①ポーカーで勝ち目のない手札を持ったプレーヤーが、相手の手を見て『It beats me.(この手には敵わない)』と負けを認めた場面から来たという説、②それより古い、beatを『面食らった、途方に暮れた』の意味で使っていた用法から来たという説です。どちらも『かもしれない』という書き方で、決着はついていません。はっきりしているのは、『It』が落ちて『Beats me.』の形になり、『分からないこと』全般に使われるようになったことです。
小テストの答え合わせで、先生が『なぜここでtheが要るの?』と聞いてくる。理由を考えたけれど、パッと出てこない。友だちに『次の授業、何を持っていくんだっけ』と聞かれたときも同じです。分からないことは、正直に分からないと言うしかありません。
なぜこの意味になるのか
beatには『打つ』だけでなく『相手を上回る、打ち負かす』という意味があります。『(この問題が)自分を負かす』→『自分の力では歯が立たない、答えが出ない』という流れで、『分からない』の意味に落ち着きました。
使うときの注意・使い分け
I don't know.より軽く、投げやりに聞こえることもあるので、目上の人にはI'm not sure.のほうが無難です。
例文で確かめる
"Why won't my phone connect to the Wi-Fi?" "Beats me. Have you tried restarting it?"
「なんでスマホがWi-Fiにつながらないんだろう」「さあね。再起動してみた?」
Beats me why the bus is running so late today.
今日のバスがなんでこんなに遅れてるのか、さっぱり分からない。
発音・リズム
ビーツ・ミーと2語がひと息でつながります。tの音は次のmに引っ張られて弱く短くなります。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①会話文の応答選択で、質問に対して『分からない』と答える一言として選ばせる形。②No idea.やI have no clue.と並べ、場面の硬さに合う表現を選ばせる形。
- ここで外す
- 『打ち負かす』という直訳に引っ張られ、Beats me.を『それはすごい』という驚きの反応だと勘違いしてしまう誤り。
- 決め手
- 直前が疑問文で、答える側が理由や方法を知らないと示す場面かどうかを見る。知らないことを軽く言う場面ならBeats me.が正解。
- 誤答
- That beats everything.(『それは驚きだ』という別の意味の言い回しで、理由を知らないという返事にはならない)
- 正答
- Beats me.(『さあ、分からない』という返事として自然)
読み方が変わる
Before
Beats me.を見ても、meが『私』としか読めず、誰が何を打ち負かすのか分からず止まっていた
After
beatに『打ち負かす→説明がつかない』という流れがあると分かり、会話文で『理由を聞かれて答えられない』場面が来たら、即座にこの一言だと判断できるようになる
こぼれ話
同じbeatを使うbeat around the bush(遠回しに言う)は、こちらの『打ち負かす』ではなく『叩く』のほうです。狩りで、茂みのまわりを棒で叩いて鳥を追い出す役目から来ています。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- No idea.I have no clue.
- 反対の意味
- I know exactly why.
Beats me. を教室で使う(5分)
ねらい: 口語表現の『分からない』を、硬さの違いで並べ替えられるようにする
- 先生「I don't know.を、もっとくだけた一言で言うと?」と問いかける
- Beats me. / No idea. / I have no clue.を黒板に並べ、フォーマルな順に並べさせる
- ペアで『今日、宿題ある?』『さあ』のようなやり取りを英語で言わせてみる
- 『それは驚きだ』の意味で使うThat beats everything.との違いを確認する
出口チケット: 友だちに道を聞かれて分からないとき、Beats me.を使った1往復の会話を書きなさい
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
次の指示をAIに貼ってください。 「Beats me. を使った短い会話を3つ作ってください。①先生に理由を聞かれる場面 ②友だちに予定を聞かれる場面 ③店員に商品の場所を聞かれる場面、の3パターンで、日本語訳も付けてください」