待つほど長く感じる?A watched pot never boilsの意味
入試に出るイディオム 第36回
見つめている鍋はなかなか沸かないA watched pot never boils、聞かれても答えられないBeats me.、積み重なった末に限界を迎えるthe last straw。3つの表現の由来といまの使われ方、入試での狙われ方までまとめました。
監修:原田高志(原田英語.com)
今日も3つの表現を由来から見ていきます。フランス国王の命令で書かれた報告書、由来が2説に分かれたままの19世紀アメリカの口語、17世紀から19世紀半ばにかけて『羽根と馬』から『わらとらくだ』へ変わった言い回し。時代も場所もばらばらですが、どれも今日の会話や長文にそのまま出てきます。
A watched pot never boils.
ア・ウォッチト・ポット・ネヴァー・ボイルズ 我慢のことば待っている間は、時間がやけに長く感じられるものだ
1785年、フランス国王ルイ16世の命令で、ベンジャミン・フランクリンはある調査団に加わっていました。調べていたのは、当時話題になっていた『メスメリズム』という治療法が本物かどうかです。フランクリンはその報告書の中で、彼自身が暦で書いていた架空の人物『Poor Richard』の言葉として『a watched pot is slow to boil(見つめている鍋は、なかなか沸かない)』を引用しました。いまの形『A watched pot never boils.』がそのまま印刷物に現れるのは、それから60年以上あとの1848年、イギリスの作家エリザベス・ギャスケルの小説『メアリー・バートン』でのことです。
模試の結果発表ページを、朝から何度も開き直してしまう。合格発表の番号を、同じ場所を何度も見直してしまう。友だちからのLINEの返信を待って、スマホを置いてはまた手に取る。実は、見ている間は何も進んでいません。鍋から目を離したときに限って、ふと湯気が立っているものです。
こう使う
I know you're nervous about the results, but a watched pot never boils.
結果が気になるのは分かるけど、気にしても仕方ないよ。
Stop refreshing the page every five seconds. A watched pot never boils.
5秒おきにページを更新するのはやめなよ。焦っても始まらないから。
発音:watchedの-edは濁らず「トゥ」に近い音。potにアクセントを置くと、鍋を指す感じが伝わります。
- こう問われる
- ①ことわざの空所に入る動詞を選ばせる形(boils / boil / builds など紛らわしい形を並べる)。②会話文の応答選択で、相手を急かさず『焦っても仕方ない』と伝える一言として選ばせる形。
- ここで外す
- 3単現のsを落として『A watched pot never boil.』と書いてしまう誤り、あるいは『じっくり取り組め』という場面のRome wasn't built in a day.と意味の場面を混同してしまう誤り。
- 決め手
- 話の中身が『結果を早く知りたくて待っている』場面ならA watched pot never boils.、『時間をかけてこつこつ取り組め』という場面ならRome wasn't built in a day.が正解。
- 誤答
- boil(3単現のsを忘れた形)
- 正答
- boils(見つめている鍋はなかなか沸かない、が正解)
Before
A watched pot never boils.を見ても鍋の話としか読めず、そこで止まっていた
After
会話文や長文で『気をもんでも仕方ない、待つしかない』という場面が来たら、このことわざ一発で意味を取れるようになる
A watched pot never boils. を教室で使う(6分)
ねらい: ことわざの直訳と、実際に使われる場面を切り分けて読む力をつける
- 先生「鍋を見つめていると、お湯は早く沸くと思う人?」と挙手を取る
- watchedが『見張られている』という受け身の形だと確認し、なぜ受け身なのかを問う
- ペアで『何かを待ちながら、つい確認してしまうこと』を1つ挙げさせ、英語で言わせてみる
- Rome wasn't built in a day.との違いを、『待つ場面』か『気長に取り組む場面』かで仕分ける
出口チケット: 試験の結果を待って焦っている友だちに、このことわざを使ってかける一言を1文で書きなさい
Beats me.
ビーツ・ミー 困惑のことばさっぱり分からない、お手上げだ
beatにはもともと、殴るという意味だけでなく、『相手を打ち負かす、上回る』という意味がありました。辞書は、この言い回しを1800年代半ばのアメリカ英語のスラングとして扱っています。どこから生まれたかは、はっきり分かっていません。辞書が挙げているのは2つで、①ポーカーで勝ち目のない手札を持ったプレーヤーが、相手の手を見て『It beats me.(この手には敵わない)』と負けを認めた場面から来たという説、②それより古い、beatを『面食らった、途方に暮れた』の意味で使っていた用法から来たという説です。どちらも『かもしれない』という書き方で、決着はついていません。はっきりしているのは、『It』が落ちて『Beats me.』の形になり、『分からないこと』全般に使われるようになったことです。
小テストの答え合わせで、先生が『なぜここでtheが要るの?』と聞いてくる。理由を考えたけれど、パッと出てこない。友だちに『次の授業、何を持っていくんだっけ』と聞かれたときも同じです。分からないことは、正直に分からないと言うしかありません。
こう使う
"Why won't my phone connect to the Wi-Fi?" "Beats me. Have you tried restarting it?"
「なんでスマホがWi-Fiにつながらないんだろう」「さあね。再起動してみた?」
Beats me why the bus is running so late today.
今日のバスがなんでこんなに遅れてるのか、さっぱり分からない。
発音:ビーツ・ミーと2語がひと息でつながります。tの音は次のmに引っ張られて弱く短くなります。
- こう問われる
- ①会話文の応答選択で、質問に対して『分からない』と答える一言として選ばせる形。②No idea.やI have no clue.と並べ、場面の硬さに合う表現を選ばせる形。
- ここで外す
- 『打ち負かす』という直訳に引っ張られ、Beats me.を『それはすごい』という驚きの反応だと勘違いしてしまう誤り。
- 決め手
- 直前が疑問文で、答える側が理由や方法を知らないと示す場面かどうかを見る。知らないことを軽く言う場面ならBeats me.が正解。
- 誤答
- That beats everything.(『それは驚きだ』という別の意味の言い回しで、理由を知らないという返事にはならない)
- 正答
- Beats me.(『さあ、分からない』という返事として自然)
Before
Beats me.を見ても、meが『私』としか読めず、誰が何を打ち負かすのか分からず止まっていた
After
beatに『打ち負かす→説明がつかない』という流れがあると分かり、会話文で『理由を聞かれて答えられない』場面が来たら、即座にこの一言だと判断できるようになる
Beats me. を教室で使う(5分)
ねらい: 口語表現の『分からない』を、硬さの違いで並べ替えられるようにする
- 先生「I don't know.を、もっとくだけた一言で言うと?」と問いかける
- Beats me. / No idea. / I have no clue.を黒板に並べ、フォーマルな順に並べさせる
- ペアで『今日、宿題ある?』『さあ』のようなやり取りを英語で言わせてみる
- 『それは驚きだ』の意味で使うThat beats everything.との違いを確認する
出口チケット: 友だちに道を聞かれて分からないとき、Beats me.を使った1往復の会話を書きなさい
the last straw
ザ・ラスト・ストロー 限界のことば我慢の限界にさせる、最後の一撃
英語には昔、『最後の一枚の羽根が背骨を折る』という言い方がありました。17世紀の文献に初めて登場したときは、まだ『羽根』であり、動物も『らくだ』ではなく『馬』でした。18世紀の終わりごろ、1799年の雑誌『スコッツ・マガジン』が東方のことわざとしてこの言い方を紹介し、そこでは動物が『らくだ』になっていました。19世紀半ば、作家チャールズ・ディケンズが小説『ドンビー父子』で使ったころには、羽根はすでに『わら』に変わっていたことが分かっています。積み荷は少しずつ重くなり、最後に足された一本のわらが、それまで耐えていた背骨をついに折ってしまう。そこから『the last straw』だけでも『限界を超えさせる最後の一押し』を表す言い方として独立しました。
朝練に遅れて注意され、忘れ物をして注意され、それでも我慢していた。だから、最後にグループの連絡を既読スルーしたと決めつけられたとき、思わず言い返してしまった。1つ1つは小さなことでも、積み重なった最後の一言が、我慢の糸をぷつりと切ります。
こう使う
Forgetting my umbrella again was the last straw after a week of bad luck.
ついていない一週間の末に、また傘を忘れたことが我慢の限界でした。
His constant lateness was annoying, but missing the meeting entirely was the last straw.
彼がいつも遅刻するのは迷惑だったが、会議に完全に来なかったことでついに我慢の限界に達した。
発音:strawの語頭のstrは日本語にない子音の並びです。「ストロー」ではなく、sのあとにtを添えるように発音します。
- こう問われる
- ①下線部の言い換え問題で、the last strawをour patience was goneのように書き換えた選択肢を選ばせる形。②長文で、それまで我慢していた人物が急に怒り出す理由として、直前の出来事を選ばせる形。
- ここで外す
- 実際に書かれてしまう誤り:the last strawを『一番最後に起きた出来事』とだけ訳し、missing the connecting flight was the last strawの直前にある『3度の遅延とスーツケースの紛失』という積み重ねを無視して、無関係な選択肢を選ぶ。
- 決め手
- 直前に『すでに何度も我慢していた』という描写があるかどうかを見る。単発の出来事ならjust one more problem、積み重ねの果てならthe last strawが正解。
After three delays and a lost suitcase, missing the connecting flight was the last straw for the tired travelers.
- 誤答
- 疲れた旅行者たちにとって、乗り継ぎ便に乗り遅れたことが最後に起きた出来事だった。
- 正答
- 3度の遅延とスーツケースの紛失のあと、乗り継ぎ便に乗り遅れたことで、疲れた旅行者たちはついに我慢の限界を迎えた。
Before
the last strawを見ても『最後のわら』としか読めず、なぜ怒りの場面で出てくるのか分からなかった
After
『積み重なった末の限界』という絵が浮かぶようになり、長文中で人物が急に怒る場面が来たら、その直前に何が積み重なっていたかを探しに戻れるようになる
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the last straw を教室で使う(6分)
ねらい: 比喩表現を、直訳ではなく場面の絵として読む力をつける
- 先生「らくだの背に、わらを1本ずつ積んでいくとどうなる?」と問いかけ、絵を黒板に描く
- 『重さそのもの』ではなく『それまでの積み重ね』が大事だと確認する
- ペアで『小さなことが積み重なって、最後に怒ってしまった経験』を1つ挙げさせる
- 教科書の長文から人物が怒る場面を1つ探し、その直前に何が積み重なっていたか下線を引かせる
出口チケット: the last strawを使って、自分の経験を1文で書きなさい
よくある質問
the last strawとthe final strawは同じ意味ですか?
はい、ほぼ同じ意味で使えます。the last strawのほうが定着した言い方で、辞書での見出し語もこちらが一般的です。