電気も車もなかった時代、荷物を運ぶのに、いちばん身近な方法は自分の背中でした。重い荷を背負い、休まず遠くまで運び切る。この『担ぎ続ける』という動きを表していたのが bear という動詞です。やがてこの語は、実際の荷物だけでなく、苦労や痛みを『背負い続ける』という比喩にも使われるようになりました。
クラスの前で発表しているとき、パソコンの画面が固まってしまう。その数秒の気まずい沈黙を埋めるために、英語ではこの一言を使います。『少しだけ、この不便を我慢して付き合ってください』という気持ちを、たった3語で伝えられる言葉です。オンライン会議で音声が途切れたときも、同じ場面です。
なぜこの意味になるのか
bear はもともと古英語 beran(運ぶ、担ぐ)から来ており、重い荷物を『背負って運ぶ』が原義です。そこから『重荷や苦労を背負う=耐える』という意味が生まれ、bear with(〜を我慢して付き合う)という形に発展しました。動物の『クマ』を表す bear とはまったく別の語です(クマは古英語 bera が語源)。
例文で確かめる
Bear with me for a second while I find the right file.
正しいファイルを見つける間、少し待ってください。
Please bear with us; we're experiencing some technical difficulties.
少々お待ちください。技術的な問題が発生しております。
発音・リズム
bear は /beər/。『裸の』を意味する bare とまったく同じ音で、動物のクマも同じ音です。born(/bɔːrn/)とは母音が違うので、混ぜないでください。
入試での出方と、外し方
- こう問われる
- ①会話文の空所補充で、Bear with me. と Wait for me. のどちらを入れるか選ばせる形。②bear を名詞(クマ)だと思わせる紛らわしい選択肢と並べる形。
- ここで外す
- Wait for me. を選んでしまう誤りが定番です。Wait for me. は『(移動する自分を)待って』という意味で、待ち合わせの場面で使います。一方 Bear with me. は『不便や遅れを我慢して付き合って』という意味で、パソコンの不具合や説明の途中など、相手に迷惑をかけていることを詫びる場面で使う点が違います。
- 決め手
- 『これから起きる遅れや不便への詫び』を含む場面なら bear with me、『物理的にこちらへ来るのを待ってほしい』場面なら wait for me。
- 誤答
- wait for me(あなたが来るのを待ちます、の意味になり、パソコンの不具合の詫びには合わない)
- 正答
- bear with me(この不便を我慢して付き合ってください、の意味になり、場面に合う)
読み方が変わる
Before
bear=クマだと思っていたので、Bear with me. を見るたびに『クマと一緒に…?』と一瞬止まっていた
After
bear=重い荷物を背負って運ぶが原義だと知っているので、動物のクマを思い浮かべる必要がなくなり、『少し我慢して付き合って』とすぐに読める
こぼれ話
英語には bear を使った紛らわしい表現がもう1つあります。bear market(弱気相場、値下がりが続く株式市場)です。こちらは『クマを捕まえる前に毛皮を売るな』という古いことわざが由来とされます。18世紀のロンドンで、まだ持っていない株を売る人を bearskin jobber(毛皮売り)と呼んだのが始まりです。Bear with me. の bear とは別の語の話になります。
似た表現・反対の表現
- 似た意味
- Hold on a second.Give me a moment.
Bear with me. を教室で使う(5分)
ねらい: 機材トラブルの場面で Bear with me. をとっさに使えるようにする
- 先生が「発表中に画面が固まったら、何と言いますか」と問いかける
- Bear with me. のカードを見せ、意味と発音を確認する
- 生徒をペアにし、片方が発表者、片方がトラブル役(咳ばらいで合図)を演じるロールプレイをする
- 発表者は Bear with me. を使って数秒つなぎ、発表を再開する練習をする
出口チケット: 自分が実際に困った場面を1つ思い出し、Bear with me. を使った1文を書かせる
AIに貼ると、この表現があなたの生活の中の文になって返ってきます。
Bear with me. を使った短い会話文を5つ作ってください。 条件:①電話・発表・料理中など、場面をそれぞれ変える ②各会話は2〜3行 ③会話のあとに日本語訳を添える