原田先生のとっておきの話

「AI時代に英語はいらない」が大嘘である9つの科学的根拠【損失750億円の実例・脳科学・年収データで完全論破】

🤖 AI × ENGLISH EDUCATION

「AIがあるのに
なぜ英語を学ぶの?
に対する科学的な最終回答

5億ドルの契約消滅、外交問題、誤認逮捕──
AI翻訳の「致命的失敗」と脳科学が突きつける不都合な真実

「もうAIが翻訳してくれるんだから、英語なんていらなくない?」
2025年、この問いは子どもの素朴な疑問ではありません。
文科省の中央教育審議会が次期学習指導要領で正式に議論している「国家レベルの問い」です。
しかし同じ2025年、AI翻訳の誤りが5億ドル(約750億円)の契約を吹き飛ばし、国営放送の信頼を揺るがし、無実の人を逮捕させている──この現実を、あなたは知っていますか?

1AI翻訳の「致命的な事故簿」──5億ドル消滅から誤認逮捕まで

「AI翻訳の精度は95%以上」──テック企業はそう宣伝します。しかし残りの5%が何を引き起こすか、具体的に想像したことはありますか? 医療で95%の精度とは、20回に1回は誤診するということ。飛行機の着陸が95%成功するとは、20回に1回は墜落するということ。「5%の失敗」は、命や国家の信用を奪うレベルの事故を意味します。

実際に起きた事例を見てみましょう。

💥 CASE 1:5億ドルの契約消滅

国際テクノロジー展示会での製品デモ誤訳(2025年)

2025年の国際テクノロジー展示会で、ある大手企業の製品デモにおいてAI翻訳が致命的な誤訳を生成。専門用語の微妙なニュアンスが誤って伝わり、取引相手は製品の安全性に重大な懸念を抱いた。結果、5億ドル(約750億円)規模の契約が破談となった。この金額は中小企業の年商ではありません。グローバル企業の大型契約です。たった一つの「翻訳ミス」が、何百人もの社員の何年もの努力を無に帰しました。

問題の核心:AI翻訳は「専門分野の文脈」を理解しません。工学用語の “tolerance”(許容差)を「寛容さ」と訳し、 “critical failure mode”(重大故障モード)の “critical” を「批判的な」と訳す──こうした誤訳が連鎖すると、技術的な信頼性そのものが疑われます。

💥 CASE 2:国営放送の信頼崩壊

NHKの「尖閣→釣魚島」AI自動翻訳事件(2025年2月)

NHKの国際報道ライブ配信において、AI自動翻訳が生成した中国語字幕で、日本の「尖閣諸島」が中国側の主張する「釣魚島」という呼称で表示された。しかもこれは1回の偶発的なミスではなく、過去4日間にわたって複数の同様の誤訳が確認された。国営放送が、領土問題に関して相手国の主張する呼称を無自覚に使い続ける──これが外交的にどれほど深刻か、説明するまでもないでしょう。

問題の核心:AIは「尖閣諸島」を地名として翻訳しただけです。しかし政治的・歴史的文脈を理解しないAIにとって、「尖閣諸島」と「釣魚島」は単なる同一地点の異なる表記に過ぎません。「どちらの名称を使うかが政治的立場を表明する」という判断は、人間にしかできないのです。

💥 CASE 3:祝賀がお悔やみに

Facebook自動翻訳による国王即位「弔辞」事件(2024年7月)

マレーシアの公共放送がマレー語で投稿した国王即位の祝賀メッセージを、Facebookの自動翻訳が英語で「お悔やみの言葉(condolences)」として表示。国王の即位を「死去」と誤認させるような翻訳が全世界に発信され、Meta社が公式に謝罪する国際的事態となった。これは単なる誤訳ではありません。ある国の最高権威者への祝賀を弔辞に変えた──文化的侮辱です。人間なら絶対に犯さないミスです。
💥 CASE 4:無実の人が逮捕

Facebook翻訳による誤認逮捕──「おはよう」が「攻撃せよ」に

パレスチナ人男性がアラビア語で「おはよう(目覚めよ)」と投稿したところ、Facebookの翻訳AIが英語で“attack them”(攻撃せよ)と変換。テロリストの扇動と見なされ、男性は実際に警察に逮捕された。アラビア語の「يصبحهم」は文脈によって「おはよう」にも「彼らを攻撃する」にもなりえます。しかしこの男性は建設現場の前で撮った自撮り写真と共に投稿しており、文脈を見れば「おはよう」であることは明白でした。AIは画像を見ません。文脈を読みません。ただ「統計的に最も可能性が高い」訳を出力しただけです。
💥 CASE 5:公式サイトが大恥

Microsoft Copilotの「養子縁組キット」誤訳(2024年9月)

Microsoftの公式サイトで、企業向けの「Adoption Kit」(導入支援キット)が日本語に自動翻訳された結果、「養子縁組キット」と表示された。”Adoption” には「採用・導入」と「養子縁組」の両方の意味がありますが、IT文脈で「養子縁組」は明らかに不適切。世界最大のAI企業の公式サイトですら、自社のAI翻訳のミスを防げなかった──これがAI翻訳の現状です。
💡

これらは「AIがまだ発展途上だから」起きた事故ではありません。AI翻訳の構造的な限界から生じた必然的な事故です。なぜそう言えるのか──次のセクションで、その本質的な理由を解説します。

2なぜAI翻訳は「永遠に完璧にならない」のか──構造的限界の正体

「今はまだダメでも、いずれAIは完璧になるでしょ?」──この楽観論が、最も危険な誤解です。

AI翻訳の限界は「精度が低い」のではなく、「言語の本質」と「AIの仕組み」が根本的に相容れないことにあります。ここを理解すると、「いずれ解決する問題」ではなく「構造的に解決不可能な問題」であることが見えてきます。

限界①:言語は「コード」ではなく「生き物」

プログラミング言語は一対一で変換できます。Pythonの “print” はJavaの “System.out.println” に対応する。しかし自然言語はそうではありません。

日本語の「よろしくお願いします」は、文脈によって “Nice to meet you”(初対面)にも “I look forward to working with you”(ビジネス)にも “Please take care of this”(依頼)にも “Thank you in advance”(メール)にもなります。さらに、本心では「あまり期待していない」場合にも使う。一つの表現が持つ意味の「幅」を、AIは確率計算でしか判断できないのです。

立教大学の山田優教授はこう指摘します。「翻訳には、何を伝えたいかの『命題』と、どう伝えたいかの『モダリティー』の2要素が必要。状況や経緯をAIに理解させていないと、意味は合っていてもニュアンスが違うという”AIの誤訳”が生まれる」。

限界②:AIは「行間」を読めない

英語の会議で “That’s an interesting idea…”(面白いアイデアですね)と言われたら、日本人は額面通り受け取りがちです。しかし英語ネイティブはトーンと文脈から「実は反対している」と即座に読み取ります。

この「行間」には、声のトーン、発言のタイミング、表情、過去のやりとりの記憶、組織内の力関係──無数の情報が含まれています。AIはテキストの表面だけを処理します。「言葉の裏にある意味」は、翻訳の対象にすらなっていないのです。

限界③:「自信満々に嘘をつく」──ハルシネーション問題

AIの最も恐ろしい特性は、間違っている時も「自信満々に」出力することです。人間の翻訳者なら「この部分は自信がないので確認してください」と注記できます。AIは常に100%の確信をもって──100%間違った翻訳を出力します。

これが「Workslop(ワークスロップ)」と呼ばれる新しい問題を引き起こしています。AIの低品質な出力を無批判に使うことで、組織全体の品質が低下する現象です。

AI翻訳の構造的限界 具体例 「いつか解決する」が無理な理由
政治的文脈 尖閣→釣魚島 「正解」が立場によって変わる
文化的判断 祝賀→お悔やみ 人間関係・社会的文脈の理解が不可欠
多義語の文脈判断 Adoption Kit→養子縁組キット 業界知識と意図の理解が必要
暗示・皮肉・行間 “That’s interesting”=反対 非言語情報がテキスト化されていない
感情・関係性の機微 怒りと失望の区別 共感・経験・記憶に基づく判断

限界④:翻訳市場が「成長し続けている」という事実

もしAI翻訳が本当に「十分」なら、人間の翻訳者は失業しているはずです。しかし現実はまったく逆です。

3,080億円
日本の翻訳市場規模(2023年)
年8%成長──AI普及後も拡大が止まらない
$120億
世界のプロ通訳市場(2024年)
2029年まで年8%成長予測

AIが翻訳を自動化するほど、「AIでは対応できない高度な翻訳・通訳」の需要がむしろ増えているのです。日本政府が2030年目標として掲げる「交渉レベル」の同時通訳AI(2025年時点の目標は「議論レベル」止まり)ですら、まだ実現していません。

“AI can translate words. Only humans can translate meaning.”

「AIは言葉を変換できる。しかし意味を翻訳できるのは人間だけだ」

── 翻訳業界で広く引用される格言

3脳科学が証明──英語学習者の脳は物理的に「別モノ」になる

ここからは「英語を学ぶ理由」の中核に迫ります。多くの人が見落としている──いや、知ったら人生観が変わるレベルの科学的事実です。

英語を学ぶことの本当の価値は「英語が話せるようになること」ではありません。脳そのものが物理的に変化し、あらゆる能力が底上げされるのです。

🧠 研究①:バイリンガルの脳は「接続力」が桁違い

2024年10月、マギル大学(カナダ)、オタワ大学、サラゴサ大学の国際共同研究チームが、科学誌 Communications Biology に画期的な論文を発表しました。151名の被験者を対象にfMRIで脳を分析した結果──

マギル大学研究の主要発見(2024年)

発見①:全脳的な機能接続性の向上
バイリンガルは脳全体の機能的接続性が有意に高い。つまり、脳の異なる領域同士の「通信速度」が速く、情報処理の効率が根本的に優れている。
発見②:第二言語の習得が早いほど効果が大きい
第二言語を早い年齢で習得した人ほど、大脳半球間の皮質-小脳接続(左右の脳をつなぐネットワーク)が強固だった。脳の「高速道路」が太く、多くの車線を持つようなもの。
発見③:灰白質の増加
バイリンガルの脳では、左下頭頂小葉と左視床の灰白質体積が増加。実行機能を司る前頭前野の活性化も確認。これは「脳の筋肉が増えた」ようなものです。

これが意味すること:英語学習は単なる「スキルの追加」ではありません。脳のハードウェアそのものをアップグレードしているのです。AI翻訳に任せれば「楽」にはなりますが、この脳の物理的変化は絶対に起きません

🧠 研究②:バイリンガルはアルツハイマーの発症が5年遅い

カナダ・コンコルディア大学の2024年の研究は、さらに衝撃的な結果を報告しています。

コンコルディア大学研究の発見(2024年)

最大5年
バイリンガルはアルツハイマー病の発症が最大5年遅い
驚異的な発見:脳が「縮まない」
アルツハイマー病のモノリンガル患者は海馬(記憶の中枢)が著しく萎縮する。しかしバイリンガルのアルツハイマー患者は、海馬が有意に大きいまま維持されていた。脳が文字通り「守られている」のです。

研究チームはこれを「認知的予備力(Cognitive Reserve)」と「脳予備力(Brain Reserve)」の二重の防御メカニズムと説明しています。2つの言語を切り替え続けることが、脳に「筋トレ」のような負荷をかけ、神経可塑性を維持するのです。

🧠 英語学習がもたらす「認知的メリット」の全体像

実行機能の向上
抑制制御、注意の切り替え、
問題解決能力が
モノリンガルより優れる
🧠
神経効率の向上
同じタスクでもより少ない
脳活動で処理
できる
=脳の「燃費」が良い
🎓
学業成績の相関
バイリンガルの子どもは
数学・理科でも
モノリンガルを上回る傾向
🛡️
認知症リスク低減
発症を最大5年遅延
海馬の萎縮を防ぐ
「脳の保険」効果
💡

決定的なポイント:これらの恩恵は「AI翻訳を使う」ことでは絶対に得られません。自分の脳で2つの言語を処理し、切り替え、思考する──その「認知的負荷」そのものが脳を鍛えているのです。筋トレを誰かに代わりにやってもらっても、あなたの筋肉はつかないのと同じです。

4年収データの残酷な真実──AI時代でも格差は「拡大」している

「でも、AIが翻訳してくれるなら、英語ができなくても稼げるでしょ?」──最新のデータは、この希望的観測を完全に粉砕します。しかも驚くべきことに、AI翻訳が普及した2024〜2025年においても、英語力による年収格差は縮まるどころか、拡大傾向にあります。

📊 最新データが示す「不都合な真実」
+230万円
TOEIC 900点以上 vs 600点以下の年収差
1.9倍
ビジネス英語力のある50代女性の年収(平均の1.9倍、+303万円
48.7%
年収700万円以上の層で「英語ができる」と回答した割合

出典:Daijob.com独自調査(2024年)、キャリアインデックス調査

なぜAI翻訳が使える時代に、これほどの格差が存在し続けるのでしょうか? 理由は3つあります。

理由①:英語力は「翻訳力」ではなく「信頼の証」
企業が英語力のある人材に高い給与を払うのは「翻訳してほしい」からではありません。英語力は、学習能力の高さ、国際的な視野、異文化対応力、自己投資する姿勢の「シグナル」として機能しています。これはAIでは代替できません。
理由②:「AI+英語力」人材への需要が急増
Daijob.comの調査によれば、「AI活用スキル+英語力」を持つ人材へのスカウト数は前年比3,322人増加。AIを使いこなせる英語人材は、AIによって不要になるどころか、かつてないほど求められています。
理由③:グローバルでも同じ傾向
英語教育大手ピアソン社の2024年グローバル調査では、英語力上級者の40%が年収800万円以上(初級レベルはわずか10%)。さらに英語力が高い人の78%が仕事に「満足している」のに対し、初級レベルでは46%。英語力は年収だけでなく、人生の満足度にまで直結しているのです。
🌍

逆説的な真実:AI翻訳の普及は「英語不要」ではなく「英語ができる人のアドバンテージ拡大」をもたらしています。AIを使って効率化できるのは英語力がある人だけ。AIは格差を縮めるのではなく、拡大する装置なのです。

5AIに絶対に代替できない「5つの力」──深掘り解説

ここまでの事例とデータを踏まえて、AI翻訳では構造的に代替不可能な5つの力を深掘りします。前セクションの「なぜ完璧にならないか」の裏返しとして、「なぜ人間の英語力が必要か」が見えてきます。

1
リアルタイムの信頼構築力
2025年現在、AIイヤホン翻訳の最高精度でも、0.5〜2秒のタイムラグがあります。日常会話ならこれで十分かもしれません。しかしビジネス交渉の「間」を2秒ずらされることがどれほど致命的か、想像してみてください。商談の場で、相手が重要な条件を提示した瞬間。あなたが即座に英語で「That’s a strong offer, but here’s my concern…」と切り返すのと、2秒間沈黙した後にAIの翻訳を聞いてから日本語で反応するのでは、主導権の所在がまったく異なります

さらに深刻なのは「信頼の質」の問題です。デバイスを通じた会話では、相手は常に「本当にこの人が考えていることなのか、それともAIのアレンジなのか」という疑念を持ちます。英語で直接話す人に対して「この人は自分の言葉で話している」という信頼は、交渉結果に直接影響する無形資産です。

2
「行間」と「空気」を読む国際版スキル
英語圏のビジネスには、日本語の「空気を読む」に相当する高度なスキルがあります。しかしそのルールは日本とまったく異なります。例:“We’ll take that under advisement.”(参考にさせていただきます)
──額面通りに受け取ると「検討してくれる」ですが、実際には「ほぼ却下」を意味することが多い。

“Let’s put a pin in that.”(それはひとまず置いておきましょう)
──「後で議論する」のではなく、「もう議論したくない」の婉曲表現。

こうした「英語圏の空気」は、AIの翻訳文には一切反映されません。なぜなら、言葉自体は正確に翻訳されているからです。問題は「翻訳の精度」ではなく、「翻訳では伝わらない情報の存在」にあります。

3
即興的思考と「考えながら話す」力
グローバル会議で突然 “What’s your take on this?” と振られた時、「ちょっと待って、AIに翻訳してもらうので…」とは言えません。しかし本当の問題は「翻訳の速度」ではありません。「英語で考える」ことと「日本語で考えてから翻訳する」ことは、思考プロセスそのものが異なるのです。

英語で考えると、自然と結論が先に来る思考構造(PREP法:Point → Reason → Example → Point)になります。日本語で考えると、背景説明が先に来る構造になりがち。グローバルビジネスで「で、結論は?」と思われる日本人が多いのは、言語の問題ではなく思考構造の問題です。AI翻訳は言葉を変換しますが、思考構造は変えてくれません。

4
AIの出力をチェックする「メタ能力」
これは文科省が最も重視しているポイントです。「AIの出力の正確性・適切性を批判的に検討するには、相応の英語力が必要」──文科省・中央教育審議会の明確な見解。

前セクションで見た通り、AIは「自信満々に嘘をつく」。NHKの尖閣→釣魚島も、Microsoftの養子縁組キットも、AIは何のエラー表示も出さずに出力したのです。「この翻訳は怪しい」と気づけるのは、英語力がある人間だけ。

しかもこの能力は、AI時代になるほど重要性が増します。AIの出力が社会に溢れるほど、「AIの間違いを見抜ける人」と「見抜けない人」の間に、新たな情報格差が生まれるからです。

5
「思考のOS」を拡張する力
日本語で「もったいない」と考える感覚は、英語に直訳できません。逆に英語の “accountability”(結果に対する個人の説明責任)は、日本語の「責任」とは微妙に異なる概念です。2つの言語で思考できるということは、1つの問題に対して2つの認知フレームワークを適用できるということです。マギル大学の研究が証明したように、これは比喩ではなく、脳のネットワーク構造の物理的な違いとして現れます。

AIに翻訳を任せた場合、あなたは常に「日本語の思考フレーム」だけで生きることになります。世界を見る窓が一つしかない状態。英語で思考できる人は、同じ世界をまったく異なる角度から見る窓をもう一つ持っているのです。

6「AIを使いこなす英語力」──新時代のリテラシーとは何か

ここで発想を180度転換しましょう。問いは「AIがあるのに英語を学ぶべきか?」ではありません。「AIを最大限活用するために、英語力が不可欠である」──これが正しい問いの立て方です。

SCENARIO

同じAI翻訳ツールで海外企業にメールを送る2人──

👤 Aさん(英語力なし):
日本語で書いてAIに翻訳させ、そのまま送信
AIが「ご検討ください」を “Please consider.” と訳す。
しかし本来、相手との関係性を考えれば “I would be grateful for your consideration at your earliest convenience.” とすべき場面。
ぶっきらぼうな印象を与え、返信が来ない
「AIのせいで翻訳が悪かったのか、この人が失礼なのか」相手には区別がつかない。
👤 Bさん(英語力あり):
AIの翻訳結果を確認し、ビジネスメールの丁寧さレベルを3段階で調整
相手のメール文体を分析し、フォーマル度を合わせる。
さらにAIに「この相手はイギリス英語を使うので、British Englishに調整して」と指示。
結果:即日返信。”Thank you for your thoughtful email” から始まる好意的な返事。

✅ 同じAIツールを使っていても、英語力の有無で結果が180度変わる

これは「電卓があるから算数は不要」という議論と本質的に同じです。電卓は計算してくれますが、「何を計算すべきか」「その結果が妥当か」を判断するには数学的思考力が必要です。同様に、AI翻訳は言葉を変換してくれますが、「何を、どう、誰に、どんなトーンで伝えるべきか」を判断するには英語力が必要なのです。

新しい公式:AI時代の英語力 = 翻訳力 + AIの出力を評価する力 + AIに適切な指示を出す力 + AIが処理できない部分を自分で補う力。この4つを持つ人材が、AI時代の「最強のコミュニケーター」です。

7文科省の結論──「AI時代だからこそ」英語を学ぶ本質的意義

2024年10月、中央教育審議会の外国語ワーキンググループで、兵庫県芦屋市長の高島崚輔氏がこう問いかけました。

「2050年代には、コミュニケーションはほぼ全部リアルタイムで翻訳される可能性がある。オンラインで私が英語で、別の人が中国語で話しても、たぶんラグもなく対話できる時代になる。それでもなお、外国語を学ぶ意義って何でしょう」

── 高島崚輔(芦屋市長・ハーバード大学卒)、中教審外国語ワーキンググループ第2回にて

この問いを受けて、文科省は「AI時代に外国語を必修とする本質的意義」の再整理を本格化。2025年の最新整理案では、2つの柱が明確に打ち出されました。

🧠
柱①:深い理解の育成
言葉・文化・コミュニケーションへの
深い理解を育むこと。
AIを介さない人間同士の交流でこそ
得られる「多面的視野」がある
💬
柱②:思考と人間関係の深化
外国語で思考すること自体が
思考力を深化させる。
そして直接のコミュニケーションが
人間関係を深化させる

注目すべきは、文科省が「英語で情報をやりとりできること」を第一の意義にしていないことです。「深い理解」と「思考の深化」──つまり英語学習の本質は、まさに前セクションの脳科学が裏づけたように、脳と思考そのものを変える営みであると国が公式に認めたのです。

さらに文科省は、AIとの関係について明確なスタンスを示しています。

文科省の公式見解
「AIの出力の正確性・適切性を批判的に検討するには相応の英語力が必要」
「外国語のコミュニケーションのためにAI技術を効果的に活用する力」が必要
「AI vs 英語」ではなく「AI × 英語」が国の方針

2025年、文科省は全国約320校でAIを活用した英語教育の実証事業を開始しました。AIとの英会話練習で「話すこと」「書くこと」の発話量を増やす取り組みです。AIは英語教育の「敵」ではなく、史上最強の「練習相手」として位置づけられているのです。

8世界のエリートはAI時代に「もっと」語学を学んでいる

「AIが翻訳してくれるから語学は不要」──もしこの論理が正しいなら、世界のトップ大学は語学教育を縮小しているはずです。現実を見てみましょう。

ハーバード大学、MIT、スタンフォード大学、オックスフォード大学──AI時代において、これらの大学は語学教育をまったく縮小していません。むしろ、「AI時代だからこそ語学は重要」という方向に舵を切っています

その理由は、ここまで読んだあなたにはもう明白でしょう。

🎓 エリート教育が語学を重視し続ける3つの理由
理由①:認知的アドバンテージ──マギル大学の研究が示す通り、バイリンガルの脳は物理的に優れたネットワークを持つ。世界のエリートは「英語が話せる」ためではなく、「脳のパフォーマンスを上げる」ために多言語を学んでいる。理由②:異文化的知性(Cultural Intelligence)──言語を学ぶことは、その言語の背景にある価値観・思考様式・世界の見方を体得すること。英語の “responsibility”(個人が引き受ける結果への説明責任)と日本語の「責任」(集団の中で生じる義務)は、同じ概念を指しているようで文化的前提がまったく異なる。この差異に気づく力は翻訳AIでは養えない。

理由③:リーダーシップの条件──グローバルリーダーに求められるのは「相手の言語で考え、相手の文化で感じ、自分の言葉で語る」力。AIを介したコミュニケーションでは、フォロワーの心は動かせない。

芦屋市長の高島崚輔氏もハーバード出身の立場からこう述べています。「学校は民主主義を実践する場であり、外国語教育でも多文化共生や多様性の包摂につながる人間性を育むことが今後はより重要になる」。

“The limits of my language mean the limits of my world.”

「私の言語の限界は、私の世界の限界を意味する」

── ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(哲学者)

AIは私たちの「言語の限界」を技術的に拡張してくれます。しかしそれは翻訳エンジンを通した「借り物の窓」です。自分自身の「世界の広さ」を根本的に変えるのは、自分の脳で新しい言語を獲得すること──その営みだけです。

まとめ──AIは「義足」、英語力は「自分の足」

義足は歩けない人を助ける、素晴らしい技術です。
しかし、自分の足で歩ける人が義足を使う必要はありません。
そして義足では、走ることも、踊ることも、地面の感触を味わうこともできない

AI翻訳は「英語が使えない人」を助けてくれます。
しかし、自分の脳で英語を使える人が得るもの──脳の物理的な強化、思考フレームの拡張、リアルタイムの信頼構築、行間を読む力──は、AIには絶対に代替できない

AI翻訳は今も5億ドルの契約を消滅させ、外交問題を引き起こし、無実の人を逮捕させている
AI翻訳の限界は「精度不足」ではなく「構造的な不可能」──永遠に完璧にはならない
バイリンガルの脳は物理的に変化する──全脳接続性の向上、アルツハイマー発症5年遅延
AI時代でも英語力による年収格差は拡大中──TOEIC 900点以上で+230万円
AIは格差を縮めるのではなく拡大する装置──使いこなせるのは英語力がある人だけ
文科省の結論:「AI vs 英語」ではなく「AI × 英語」が国の方針
世界のエリートはAI時代に「もっと」語学を学んでいる

「AIがあるから英語はいらない」は、
「電卓があるから数学はいらない」と同じ誤り。
AIが進化するほど、英語を「自分の力」にしている人のアドバンテージは加速する。